帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「封鎖 -A.D.2009-」

Episode34 封鎖 -A.D.2009-」
ウルトラマンネクサス』第34話
2005年6月4日放送(第34話)
脚本 赤星政尚
監督 北浦嗣巳
特技監督 菊地雄一

 

ノーチラスタイプビーストメガフラシ
全長 55m
体重 3万9千t
ネクサスがメタフィールドを展開するのと同等の能力を備えていて虹の波動で街一つを別の位相と化した。
突起から電撃を発する。
クロムチェスターの攻撃を受けて墜落したところをネクサスの回転ジャンプキックを受けて撤退する。

 

物語
遂に市街地にビーストが出現した!
沙羅によってレーテと新宿大災害の秘密が明かされ、ナイトレイダーはビーストと戦う決意を新たにする。
そして瑞生は憐がネクサスに変身する場面を目撃する。

 

感想
後期のオープニング映像やアイキャッチにあった市街地で戦うネクサスやクロムチェスターの場面が遂に本編でも登場した。
戦いで街が破壊されるのはウルトラシリーズのお約束であるが『ネクサス』だと犠牲者がいなかったのか心配してしまう。この只ならぬ緊迫感は『ネクサス』ならではであった。

 

メガフラシが発する虹の波動の影響で一定以上のエネルギーは拡散してしまう。この事によってナイトレイダーの武器の半分は封じられてしまった。
仮にウルティメイトバニッシャーが使用可能だったとしても、この虹の波動の中では無効化されていたかもしれないと考えるとかなり厄介な能力である。
特にそのような場面は無かったが、おそらくネクサスの光線技も無効化されていたと思われる。ウルトラマンの能力の殆どが光線技なので、それが無効化されるのはかなりの危機であった。

 

スペースビーストとは高度な知性に生じる恐怖を捕食する生命体で、恐怖が広がる事でビースト出現のポテンシャルが高まって新たなビーストが出現してしまうとの事。
なので、来訪者は5年前に人々からザ・ワンとザ・ネクストの記憶を消去する為に世界中にレーテのファントムを出現させて情報操作を行ったのだった。
この人々から集められた恐怖の記憶はフォートレスフリーダムにあるレーテへと集められるのだが、長い年月の末に恐怖が外へと漏れ出し、それが原因となって関東近郊でビーストが出現するようになったらしい。
ウルトラシリーズでは作品ごとに怪獣が出現する理由が設定されているが『ネクサス』の設定は21世紀に入ってから謎の巨大生物が出現するようになった理由付けとしてかなり上手く作られていた。

 

沙羅からビーストの真実を聞かされた西条副隊長は憎しみがあれば恐怖に打ち克てるとするが、沙羅に憎しみだけでは自分は今日まで戦ってこれなかったと諭される。
「恐怖を乗り越える為に必要な想い。それは憎しみなんかじゃない。それは……人を愛する心。人を慈しむ眼差し。私はそれをウルトラマンから教わったの」。
最初のデュナミストである真木の想いを沙羅が受け止め、それが西条副隊長へと受け継がれていく。これもまた一つの絆の物語。

 

レーテやメモレイサーによる記憶消去は人間の脳の神経回路網から特定のキーワードに関する記憶を検出して、それに繋がる神経インパルスを抑制する事によって行われているとの事。
つまり、「記憶消去」と言ってはいるが実際には「抑制」で記憶を消し去っているわけではないので条件が揃ったら処理された記憶が甦る事になる。

 

ビーストが出現した為に青葉ニュータウン一帯はTLTによって封鎖されてしまう。
本来は人々を守るべき地球防衛組織が人々に銃を向ける。このような組織の描かれ方は『平成セブン』や『SEVEN X』等でも見られる。
結局のところ、閉じ込められた事で人々の恐怖や怒りと言った負の感情が増大してビーストにとって有利な状況になってしまう……。

 

再びメガフラシが現れた事を受けて吉良沢は孤門に「憐のいる場所に再びビーストが現れた。アンノウンハンドの目的は明白です。ウルトラマンの……抹殺」と告げる。
わざわざ孤門に告げたのは憐の事を助けてほしいと言う願いが入っていると思われる。
この後に孤門が憐に向かって言った「もう変身するな」は実は吉良沢が言いたかった言葉だったのかもしれない。

 

今まではメタフィールドやダークフィールドのように別の位相が作り出されていたが今回は街一つを別の位相と化すとビーストの能力は確実に進化している。
メガフラシがダークフィールドGを展開しないで虹の波動で街を別の位相と化したのはネクサスがダークフィールドGの闇を光に変換する事を恐れた他、街の住民を人質に取る事でネクサス相手に有利に戦う事も目論んでいたと思われる。

 

メフィストツヴァイとの戦いで光を奪われた影響か、それとも連戦による疲労か、この頃から憐の衰弱が激しくなってくる。
しかし、憐は変身するなと言った孤門に向かって「孤門の仕事はこの世界を守る事だろう?」と告げると自分もその為にネクサスの力を使いたいと言って変身する。
その場面を目撃してしまい、瑞生は憐がネクサスだった事を知ってしまうのだった。

 

メガフラシとの空中戦は『ネクサス』最後のCG戦闘となった。
当初は最終回のノアとザギの戦いもCG戦闘になる予定だったらしい。是非とも見てみたかった。
因みに阿部監督が手掛けた『ギンガ』の「劇場スペシャル」ではギンガとザギの空中戦が描かれている。本作のリベンジであろうか?

 

憐に付きまとっていた監視者の正体が海本だと判明。さらに海本はクラスAの超能力者で、来訪者からより正確な情報を引き出す為のコンタクティを生み出す為に海本の遺伝子情報を基に生み出されたのがプロメテの子であった事も明らかになった。
沙羅はラファエルの開発を中止させてビースト対策を優先させたが、海本はプロメテの子達と協力して秘密裏にラファエルの開発を進めていて、監視者として憐のデータを採取してラファエルの開発に活用していたらしい。
あの怪しさ大爆発な格好は海本先生の趣味だったのかな……? 監視者の正体を知った吉良沢と憐の反応を是非とも見てみたかった。

 

沙羅は海本とプロメテの子達が秘密裏にラファエルの開発を続けていた事を黙認していた。
かつて最初のデュナミストの真木が自分に託された想いに応えてこの世界を守り抜いたように今のデュナミスト達も多くの人から想いを託されている。いかにアンノウンハンドが強大でもその想いを断ち切る事は出来やしないと未来に通じる希望を確かに感じて沙羅は北米本部に戻っていった。
そして最終回でウルトラマンが紡いできた絆が最後のデュナミストへと繋がり、皆の想いを託された孤門はノアに変身して世界を守り抜くのだった。

 

これまで若者を利用していた松永管理官に反発を覚えていた首藤チーフだったが、松永管理官の娘である若者・葉月の存在を通して気持ちの整理をしていく。
確かに松永管理官は強引な手法を使っているが、ビースト出現を止めなければ、いづれまた新宿大災害のような大惨事が起こってしまう。かつてその惨事で最愛の人を失ったのは他ならぬ松永管理官であった。
首藤「一つ言えるのは、お父様は世界を守る為に戦っている」。

 

仕事のせいで娘と疎遠になったが、その仕事によって娘との和解が果たされた。
しかし、父親と和解したと言う娘の記憶も気持ちも消去しなければいけないのが今の松永管理官の仕事。
「私は決して忘れない。今日の事……」と言う松永管理官の言葉が重い。

 

黒い巨人がネクサスの遺跡を破壊するヴィジョンを見る吉良沢。
これまで「アンノウンハンド」と言う掴み所の無かった敵が「ザギ」と言う明確な姿形を持って現れた。

 

今回の話では真木の消息は明らかにならなかったが、それでも『ULTRAMAN』の回想場面で真木の姿が見られたのは嬉しかった。

 

ULTRAMAN』のDVDのブックレットに『ULTRAMAN』と『ネクサス』を繋ぐ小説『“N" THE OTHER』が掲載されている。