帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「詩織 -ロストメモリーズ-」

Episode EX 詩織 -ロストメモリーズ-」
ウルトラマンネクサス』第31.5話
脚本 赤星政尚
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

インセクトタイプビーストバグバズングローラー
身長 53m
体重 3万5千t
以前より禍々しい姿形となったバグバズンの進化形。
山間部に巣を作ってブルードの群れを産み落としていた親。
ブルードに人を喰わせ、そのブルードを喰う事で捕食を行っている。
バグバズンの300%の硬度を誇っていてストライクバニッシャーの直撃にも耐えられる。
ネクサスにジェネレードナックルで殴られた後、最後はダークフィールドGの闇を光に変換したナックレイジェネレードで倒された。

 

インセクトタイプビーストバグバズンブルード
身長 180cm
体重 150kg
バグバズングローラーに産み落とされ、人間に擬態して街中で人を捕食していた。
体内で人間の意識を奪う媚薬を生成し、それをマーカー代わりにする事で逃げられた女性を何度も襲う。
服を着て人間に擬態し、頭部の共鳴腔でビースト振動波を検知されない波形に変換する事で自分達の存在を隠す等、高度な知能を持つ。
一度はパルスブレイガーの電撃攻撃で撃退されるが、それを学習して自らも電撃攻撃が行えるようになった。
アンノウンハンドによって巨大化させられたが、その肉体を維持する事が出来ず、ネクサスとの戦闘中に肉体が崩壊してしまった。
『コスモス』の「宇宙の雪」のアルケラの着ぐるみを改造している。

 

インセクティボラタイプビーストラクネア
身長 2m~13m
体重 300kg~7500t
地下の倉庫に潜んでいたところを発見され、ナイトレイダーによって殲滅された。
これが平木隊員がナイトレイダーに入隊するきっかけとなった。

 

物語
久し振りに友人の秋子と会った平木隊員は秋子が結婚する事を告げられる。
秋子の結婚相手は平木隊員の婦人警官時代の相棒である高槻刑事であった。
平木隊員がナイトレイダー入隊を決断した経緯とは?

 

感想
放送期間の短縮によってTVで放送されなかった平木隊員の主役回。
『ネクサス』では珍しくナイトレイダー隊員をメインに据えた話で従来の平成ウルトラシリーズに近い雰囲気となっている。

 

本作は元からモノローグが多用されているが、今回の話では平木隊員がモノローグを担当した事で普段のあっけらかんとした表面部分とは異なる複雑な内面が示されて、今回の話を見ているかどうかで平木隊員の印象がかなり変わる。

 

そう言えば孤門とリコ、西条副隊長と溝呂木、平木隊員と高槻、平木隊員と石堀隊員とナイトレイダーの隊員は全員が恋人と別れている。恋愛成就が0%と言うのは長いウルトラシリーズの歴史でも『ネクサス』くらいかもしれない。

 

これまではファウストや溝呂木に使役される事が多かったビーストだが憐編に入るとビーストが独自に動く話が増えて能力等も幅広くなってきた。
今回登場したバグバズンブルードは「幽声 -コーリング-」に登場したバンピーラと同じく自分の存在を隠す能力を開発したビーストで、「木を隠すなら森」とばかりに人間に擬態して街に入り込んだ。
バグバズンブルードは知能も高かったので、このまま進化を続けていたら人間と変わらない姿形と知能を持ったビーストが出現してもおかしくはないのかもしれない。外見も中身も人間と同じだけれど人間を喰う化け物が街に潜んでいるとなったら人間社会に起きる混乱はこれまでの比ではなかったと思う。

 

細かい部分だけれどバグバズンブルードは服をどこから調達したのかな?

 

気のせいか今回は「χ(カイ)ニュートリノ」と言う言葉を随分と耳にした。
このχニュートリノはビースト出現に関わっていて「χ獣=怪獣」と言う事になっている。

 

高槻と言う表の世界の人間を出す事で今回はナイトレイダーと言う裏の世界の仕事の特殊性が際立った。やはり堅気の仕事ではない。
普通の人間だとたとえ刑事でもアラクネアやバグバズンブルードと言った小型のビーストにも対抗できないのに対してナイトレイダーはその両方を瞬時に殲滅している。その後も巨大なバグバズングローラーを見た高槻が「あんなデカいのどうやって戦うんだ?」と言った直後にクロムチェスターの攻撃が始まる等、普通の人間では太刀打ちできないビーストに対抗する為に作られたナイトレイダーの存在意義を示した話となった。
さらに今回はストライクバニッシャーも通じなかったバグバズングローラーを最後にネクサスが現れて倒す事で特別チームでも太刀打ちできない巨大怪獣を倒すウルトラマンと言うウルトラシリーズの基本構造がきちんと描かれた話でもあった。

 

今回は他の話では見られないほのぼのとしたナイトレイダーが見られる貴重な話。特に西条副隊長の仕草の可愛らしさは「あんた、キャラが違うぞ!!」と思わずツッコミたくなるレベルw 事件が起きていない時はこういう感じなのかな。

 

バグバズンブルードが変装したフードの男を追撃する場面はまず憐が追いかけて、それを見た平木隊員が別方向から追いかけると言うシチュエーションは「監視者 -ウォッチャー-」で監視者を追った時と似た展開になっている。流石に平木隊員は孤門より手馴れていた。

 

MPは今回もイレイズ対象者である高槻に逃げられている……。

 

瑞生が監視者に怪我をさせられた時に憐が異常に怒っていたが、今回も秋子を傷付けられた高槻が似たような反応を示していて、そこから高槻の代わりに憐がネクサスに変身してバグバズンブルードとバグバズングローラーを殴る展開が出てくる。
バグバズングローラーを殴った拳を高槻に向かってアピールする場面が実に憐らしい。姫矢どころか他のウルトラマンでもこういう場面はあまり見られないと思う。強いて挙げれば『ダイナ』のアスカがやりそうな感じかな?

 

バグバズングローラーとの戦いでネクサスはダークフィールドGの闇を光に変換したナックレイジェネレードを使用する。
ダークフィールドGを展開してもその闇をネクサスの技に使われてしまう事を恐れてか、この後のアンノウンハンドはダークフィールドGを展開しなくなる。

 

憐はナイトレイダーの場面には関われないので前半は目立っていたのだが後半は物語から外れてしまい、一方の孤門もネクサスに変身できないのでラストバトルでは蚊帳の外になってしまった。
『ネクサス』はウルトラ作品の主人公像を孤門とデュナミストの二人に分けているのだが、その事によって今回の話では孤門と憐の立ち位置が難しくなってしまった。

 

過去の病院の場面では高槻は平木隊員が扉の向こう側にいる事を知らなくて、平木隊員は中に入りたくとも入れなくて涙したが、今回は高槻は平木隊員がいる事を知っていて「好きだった」と過去形で想いを告げ、平木隊員は中に入らずに去っていく。
ここで平木隊員は瑞生に挨拶しているので、この後に高槻は記憶処理されるのだろうが、おそらく二人は事情を呑み込んで受け入れたと思う。たとえ記憶が甦っても時間は戻らない。二人はもう過去には戻れないのだ。

 

以前に根来が記憶を消される事は今まで生きてきた証を失う事で誰にも他人の人生を奪う権利は無いとMPの存在を非難した事があった。
あの時、高槻がビースト事件と共に平木隊員への告白の記憶を失わなかったら平木隊員は今とは違う人生を歩んでいたのは確かだったであろう。

 

今回はTV放送されなかった事もあって番外編のような位置付けになっているが実はMPが処理した記憶も状況によっては甦る可能性があると言う終盤に繋がる話でもあった。

 

「無理は……体に毒だぞ」。
この時の石堀隊員をどう解釈するかによって石堀隊員への印象がかなり変わる。