「Episode35 反乱 -リボルト-」
『ウルトラマンネクサス』第35話
2005年6月11日放送(第35話)
脚本 太田愛
監督 阿部雄一
特技監督 菊地雄一
ノーチラスタイプビーストメガフラシ
全長 55m
体重 3万9千t
戦いで負ったダメージの為に地下2千mに逃走して殻の内部で活動を休止していた。
憐を狙って再び出現するが回復が完全ではなかったので虹の波動を使う事が出来なかった。
ガルベロスとの挟み撃ちでネクサスを追い詰めるがナイトレイダーのハイパーストライクバニッシャーで倒された。
フィンディッシュタイプビーストガルベロス
身長 52m
体重 3万9千t
ネクサスがメタフィールを展開するのを妨害する為に出現した。
口から火球を発する。
メガフラシとの挟み撃ちでネクサスを追い詰めるがナイトレイダーの援護を受けたネクサスのシュトロームソードで倒された。
物語
憐からネクサスのデータを得ようと松永管理官は再び強硬手段を取る。
それを知ったナイトレイダーは遂にTLTに対して反乱を起こすのだった!
感想
水槽に浮かぶクラゲを見て吉良沢は「来訪者達が怯えている!?」と驚く。この事で来訪者=クラゲと言うのがハッキリした。
これまでビーストが市街地に現れなかったのは来訪者のポテンシャルバリアで守っていたから。だが、それも弱まって次々とビーストが青葉ニュータウンに現れる事となる。
青葉ニュータウンの封鎖は松永管理官が中心となって行っていた。
憐捕獲について吉良沢は何も知らされていなかった事から吉良沢がTLTの中心から外された事が分かる。
プロメテの子達がラファエルを完成させて医療スタッフが日本に向かっている事が伝えられるが、海本がアンノウンハンドの襲撃を受けて気絶してしまった事でその情報が憐に伝わるのが遅れてしまった。
既にアンノウンハンドの目的はネクサスの光を憐から次のデュナミストに渡す事だったと思われるので、青葉ニュータウンを封鎖してラファエルの無い状態で連戦をさせる事で憐を抹殺するつもりだったのかもしれない。(アンノウンハンドは西条副隊長がいずれ光を掴む事を知っていたので、憐が死んで光が一時的に行方不明になっても構わなかった)
アンノウンハンドと違って憐が死んだらネクサスの光が次にどこに行くのか分からない松永管理官は憐が衰弱したのを見て強硬手段を取る事となった。
これまでは瑞生等を使ってデュナミストの憐を間接的に手中に収めていれば良かったのだが憐が死んでしまったらその手段は無意味となる。なので、今のうちにネクサスの光を解析してしまおうと考えるのだが、これまで利用してきた瑞生から孤門に憐捕獲の情報が伝えられ、そこからナイトレイダーの反乱に至ってしまう。
もし松永管理官が瑞生を憐の監視に当てていなかったら今回の憐捕獲をナイトレイダーに知られる事は無かったと考えると、まさに「策士、策に溺れた」と言った感じ。
憐捕獲の知らせを聞いた孤門は憐を助ける事を決意し、西条副隊長から「事によってはTLTに反旗を翻す事になる」と警告を受けても「分かっています」と力強く答える。
そしてナイトレイダーは和倉隊長に決断を求める。
この時の和倉隊長は色々な事を考えたんだろうなぁ……。他の若者達のように気持ちのままに動ける年齢でも立場でもないし……。
悩む和倉隊長に孤門が訴える。
「隊長! 僕達は何かを守っていると信じて戦ってきた。憐もそうです! 憐はずっと僕達と一緒に戦ってきたんです! たとえTLTに反旗を翻す事になっても、今、彼を見殺しにして、この先、僕達は何を守れますか! 何を救えますか!」。
守るべきはTLTと言う組織ではない。遂に和倉隊長は立ち上がった。
ナイトレイダーを率いて和倉隊長は松永管理官に憐の実験を止めるよう訴える。
憐は仲間だと語る和倉隊長に向かって松永管理官はデュナミストは単なる光の器に過ぎないと返す。
しかし、和倉隊長は「光を力に変えるのは……人の意志です。デュナミストが自らの意思で己の命を懸けて戦おうとするからこそ光は力となる。私はデュナミストが単なる光の器だとは思わない。光を、人類が手に入れるべき兵器だとも思わない!」と語る。
『ネクサス』におけるデュナミストとネクサスの光を的確に示した言葉であるが、これまでデュナミストとの絡みがあまり無かった和倉隊長が言うのはやや不自然。やはりここは孤門が言った方が説得力があったと思う。
松永管理官との交渉が決裂して遂にナイトレイダーはTLTに反旗を翻してウルトラマンを解放する。
上層部と現場チームが対立する話はどの作品にもあるが、宇宙人の介入等が無くて人間同士の争いでここまで大きな規模となったのは他には『平成セブン』くらいかな。こちらも『ネクサス』と同じく対象年齢を引き上げた作品であった。
フォートレスフリーダムから離脱したナイトレイダーは封鎖されている青葉ニュータウンへ。しかし、そこにはアンノウンハンドの波形が……。次の瞬間、怪しい笑みを浮かべて石堀隊員がパソコンを操作している場面へ。
今見返すと大詰めなのでかなり分かり易くヒントが出ていた事が分かる。
助け出された憐はナイトレイダーに迷惑をかけた事を謝るが和倉隊長は「これは俺達の意思でやった事だ」と答える。
物語の序盤では命令は絶対だった和倉隊長が命令ではなく自分の意思で動いた。
『ネクサス』の序盤は孤門以外のナイトレイダーにあまり感情移入できない作りになっていたが、その序盤があったからこそそこからの和倉隊長や西条副隊長の変化が見応えのあるものとなった。
自分の体の秘密を瑞生に知られた憐は今まで隠していた心情を吐露する。
「ただ人を心配させて悲しませて、出来る当ての無いラファエルを待っている。それだけで俺の時間は終わっていく。それが耐えられなかった」。
天使ラファエルが来ないと思った憐は自分が死ぬ事を誰も知らない場所へと逃げ出す。すると、そこにネクサスの光がやって来た。多くの人を守れる。自分にはまだ出来る事があると分かった憐は戦いを選択する事を迷わなかった。戦っていれば死ぬなんて事は忘れていられる。
しかし、それを聞いた西条副隊長は憐を諭す。
「あなたはこれまで死んでも良いと思って戦ってきた。だからダメージを一切顧みようとしなかった。死ぬ気で戦う事と死んでも良いと思って戦う事は全く違う事よ。生きる為に戦いなさい。たとえ、明日が無くても……」。
これは溝呂木最後の戦いを見て西条副隊長が感じた事なのかもしれない。いくら罪を重ねたとしても西条副隊長は溝呂木に生きてほしかったのだろうか……?
この言葉を聞いた憐はこれまでのように敵の攻撃に無防備に突っ込むのを止め、バリアーを展開して自分の身も守るようになった。
ビースト出現を聞いて孤門は憐をクロムチェスターδに乗せる。戦いから外しても憐は自力で戦場に向かう。それなら体力温存の為に最初から戦闘機に乗せた方が良い。かつての姫矢もそうだったので、さすがに孤門は分かっている。
出来ればこの後にクロムチェスターδに乗っている憐の場面が欲しかった。ウルトラマンに変身する者が戦闘機に乗ると言う他のウルトラシリーズでは当たり前の場面が『ネクサス』では一度も無かったりので。
ウルトラシリーズにおいて夕焼けの戦いにハズレ無し!
太陽が沈みかけると言う何かの終わりを感じさせる光景は見ていて物悲しさを感じる。
チェスターがネクサスの背後に回って分離しての攻撃とそれに続いてネクサスがシュトロームソードで勝利を収める流れが素晴らしかった。最初の頃は対立もあったナイトレイダーとネクサスがこれほどの連携を見せてくれるとは!
ビーストに勝利して孤門が「良し!」と言った後に普段は淡々としている吉良沢も思わず「良し!」と力強く言ったのに思わずニヤリとしてしまった。
ただ、まぁ、いきなりのネクサスのプロレス技連発はさすがにちょっと笑ってしまった。何もそこまで吹っ切らなくてもw