「Episode33 忘却 -A.D.2004-」
『ウルトラマンネクサス』第33話
2005年5月28日放送(第33話)
脚本 村井さだゆき
監督 北浦嗣巳
特技監督 菊地雄一
ノーチラスタイプビーストメガフラシ
全長 55m
体重 3万9千t
アンノウンハンドによって市街地の真ん中に送り込まれた。
虹の波動で人々を絡め取る。
名前の由来は「アメフラシ」かな。
肩書きの「ノーチラス」は「オウム貝」と言う意味。
物語
憐の前に現れた謎の女の子・葉月。彼女は松永管理官の一人娘だった。
一方、度重なる事件を受けてTLT北米本部から査察官の沙羅が来日する。
レーテに関する大いなる謎が今明かされる!
感想
最終回に向けて一挙に謎が明かされる。
今から20年前、アメリカの砂漠地帯に謎の発光体が墜落。駆け付けたアメリカ軍は数体の不定形生命体「来訪者」を捕獲。来訪者は超新星爆発で故郷の星を失い、光量子情報体となって飛来した宇宙の難民だった。
人類は来訪者を通じてオプチカムフラージュやメモレイサーと言ったオーバーテクノロジーの数々と膨大な知識と情報を得たが、来訪者はこれらのテクノロジーを来るべきスペースビーストによる終焉=地球の滅亡を防ぐ目的にのみ使用を許可していた。
これら今回の話で明かされた情報にこれまでの話で語られた情報を合わせると来訪者とスペースビーストに関する設定の殆どは推測が出来るようになっている。
劇中では「新宿大災害」と称されている新宿に巨大隕石が落下した事件も実はウルトラマンとビーストの最初の戦いを隠蔽したものであった。ビーストの記憶がさらなるビーストの災いを招くとして来訪者達は身を挺して世界中の記憶を封印した。それこそが「忘却の海レーテ」であった。
TVシリーズと劇場版がリンクしている作品は数多くあるが『ネクサス』は『ULTRAMAN』とどのようにリンクするのかが物語において重要な位置を占めていて、度々言及されていた「レーテの開放」とは劇場版の物語をTVシリーズで開放する事を意味していた。TVシリーズで劇場版の要素が出てくる話は『ネクサス』以外にもたくさんあるが、今回のモニターにザ・ネクストの姿が映った時の衝撃は自分が見てきた作品の中でも屈指のものであった。
「監視者 -ウォッチャー-」に続いて石堀隊員はTLTの謎を追及していて、吉良沢が関係しているプロメテウス・プロジェクトの存在を突き止め、TLTが自分達にも記憶処理を施しているのではとの疑いを口にし、TLT北米本部から査察に来た沙羅がかつてBCSTに所属して新宿大災害に関係していて、その沙羅が特効薬ラファエルの開発を中止した事で一人のプロメテの子が見殺しにされる事を明かし、遂に新宿を舞台に戦うザ・ネクストとザ・ワンと言う自分達が記憶処理を施されていた決定的な証拠の映像を見付け出す。
ただし、石堀隊員が実は黒幕アンノウンハンドであったと分かってから一連の流れを見ると、この時の石堀隊員はワザと皆がTLTに不信を抱くように情報を提示していた事が分かる。思えばTLT北米本部にハッキングした時に新宿大災害の真相の映像しかダウンロードできなかったと言うのは都合が良過ぎていた。
基地最深部のSECTION-0にアンノウンハンドと思われる存在が侵入を試みる。自動防御システムで迎撃されたが、この事から西条副隊長はアンノウンハンドがTLT関係者であると言う溝呂木の言葉に確信を抱く事になる。
その西条副隊長の指示で石堀隊員はTLT北米本部をハッキングして新宿大災害の映像を見付けたので、この冒頭の侵入事件は西条副隊長を焚き付ける為のアンノウンハンドの罠だったと思われる。
新宿大災害の記事で「行方不明者数670人余り」との記述がある。
ヒーローの戦いで被害の具体的な数字が出る事は珍しいかな。
自分は他に思い浮かぶとしたら『クウガ』くらいである。
今まで伏せられていた数々の謎が一挙に明かされて様々な設定が次々と繋がっていく流れは見ていて快感だった。
ただ、新宿大災害についてはTVシリーズの序盤からその存在を示してほしかった。今回の話でいきなり隕石の落下云々と出たのはさすがに唐突過ぎた。
松永管理官は全ての謎を知っているような顔で査察に加わっていたが「予知者 -イラストレーター-」や「予兆 -プロフェシー-」を見ると本来は松永管理官はそこまで詳しくレーテの秘密を知ってはいけない立場だったように思える。
松永管理官がいつどのような手段を使って新宿大災害の秘密を知ったのか気になる。
これまで仕事の面しか描かれなかった松永管理官の家族の面が描かれる。
仕事では底の知れない男が家庭では年頃の娘に悪戦苦闘。
その娘が自分の仕事に関わるのを一度はMPの監視を断る等して避けようとしたが、結局はビースト出現に出くわして否応無く関わる事になってしまった。
今まで分けていた仕事と家庭が絡まってしまい、松永管理官の心は激しく揺れる事になる。
いきなり出てきて憐をデートに誘う葉月。それを見た瑞生は葉月の顔を写真に収めるがモロバレであった。
動揺したのは分かるが仮にもMPが真正面から相手の写真を撮って尚且つ写真を撮った事を相手に見抜かれてしまうのはプロとして問題あり過ぎる。
葉月はデートの中で憐に好きな人の存在をはっきりと口に出させ、さらに人を好きになる事から遠ざかろうとする憐の姿勢を注意し、最後に憐と瑞生の舞台を用意すると一挙に二人の仲を進展させる。
いきなり出てきたキャラがいきなり話を進めるがそれが不自然にならなかったのは恋愛に敏感な年頃の女の子が持つ力かな。
いきなり現れた葉月を見て「誰々?」と面白そうに尋ねて「知らないわよ!」と瑞生に怒鳴られる。これが尾白の最後の出番であった……。
遂に来た本格的な市街地戦!
街中に立つウルトラマンの姿はウルトラシリーズでは定番なのだが『ネクサス』ではここまでの引っ張りによってとても胸騒ぐ場面となった。
憐に助けられた子供は現れたネクサスを見て「ウルトラマン……?」と呟く。
「詩織 -ロストメモリーズ-」に続いて処理されたはずの記憶が甦っていく。
今回の話は村井さんのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。