「2020年の挑戦」
『ウルトラQ』制作第22話
1966年5月8日放送(第19話)
脚本 金城哲夫・千束北男
監督 飯島敏宏
特技監督 有川貞昌
誘拐怪人ケムール人
身長 190cm~30m
体重 40kg~1万5千t
ケムール星と言う2020年の未来の時間を持つ星から来た宇宙人。
医学の驚異的な発達で500歳と言う寿命を得たが肉体の衰えだけは止める事が出来なかったので、地球人の若い肉体へ自分達の生命そのものを移植しようとした。
消去エネルギー源を使って人間をケムール星へと伝送する。変身能力を持ち、自動車よりも速く走る。弱点の頭部を撃たれると巨大化して破壊活動を行った。
Xチャンネル光波による交信で神田博士に計画を知られ、その全容を「2020年の挑戦」と言う小説に書かれてしまい、Kミニオードを設置した東京タワーからXチャンネル光波を照射されると自らに消去エネルギー源を浴びせて消滅し、代わりに誘拐された人達が戻ってきた。
名前の由来は「煙」から。
物語
空飛ぶ円盤や人間消滅と言った奇想天外な事件が次々に起きる。
話を聞いた一平は神田博士が書いた「2020年の挑戦」と言う小説を思い出す。果たして、真相は……。
感想
ケムール人はウルトラシリーズで初めて着ぐるみが作られた宇宙人で、最後に巨大化して破壊活動を行うなどウルトラシリーズに登場する宇宙人の基本となった。
又、ウェットスーツで宇宙人を作ると言うのは後のウルトラマンへと繋がり、ケムール人を演じた古谷敏さんは『ウルトラマン』でウルトラマンのスーツアクターを担当する事となった。
自衛隊の会議で空飛ぶ円盤の事を報告しても信じてもらえなかった天野二佐。「宇宙指令M774」の事があっても世間的には宇宙人はまだまだ認知されていないようだ。
由利子、先輩になる。
友田記者の事を「ひよっこ」と言って先輩風を吹かせていたが、実は役者の年齢では由利子役の桜井浩子さんより友田記者役の土屋靖雄さんの方が8才ほど年上だったりする。
よぼよぼのおじいさん刑事に見えて実は敏腕だった宇田川刑事。電話ボックスで由利子を消去エネルギー源から助ける場面がカッコイイ。
主人公の万城目が話の前半で消滅させられた事で緊迫感が一気に増した。
ケムール人が由利子を誘き寄せる為に万城目に変身した為、最後に本物の万城目が戻ってきても、由利子はその姿にケムール人が変身した偽者を重ねて思わず逃げてしまった。
このように主人公でも絶対に安心安全な立場にいるとはならないのは一般人が主人公である『ウルトラQ』ならではと言える。
ケムール人が消滅すると誘拐された人達が戻ってきたのだが、神田博士の行方はどうなったのだろうか?
最後に消去エネルギー源に触れた宇田川刑事が消滅してしまったのを見るに、ケムール人の計画はまだ完全に潰えていないように思える。
「ケムール星人」ではなくて「ケムール人」であったり、2020年と言う未来の時間を持っていたりと、ケムール人は単なる宇宙人ではなくて別の時間軸にある地球からやって来たように思える。
東京タワーを倒した怪獣はいくつかいるが東京タワーに倒された怪獣(正確には宇宙人だけど)はケムール人くらいだろうなぁ。
今回の話は2014年1月に「『ネオ・ウルトラQ』特別上映part3」の1本として総天然色版が劇場公開された。
今回の話は有川監督の『ウルトラQ』監督最終作となっている。
『ウルトラQ倶楽部』の「2025年からの使者(前編)」「2025年からの使者(後編)」「諸人こぞりて(続・2025年からの使者)」は今回の話の後日談、『ウルトラマンZ』の「2020年の再挑戦」は今回の話の後日談のような話になっている。