帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「遺跡 -レリック-」

Episode06 遺跡 -レリック-」
ウルトラマンネクサス』第6話
2004年11月6日放送(第6話)
脚本 荒木憲一
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

フィンディッシュタイプビーストガルベロス
身長 52m
体重 3万9千t
謎の遺跡に直接現れたビースト。
両肩の口から火球を吐くがコアインパルスで倒された。
ビーストの中でも特に不死身の生命力と能力を駆使する格上の存在であるフィンディッシュタイプ。
かつてザ・ネクストに倒されたザ・ワンの中枢となる部分が犬に取り憑いてビースト化したので強い生命力を持つらしい。
名前の由来は「ケルベロス」かな。
肩書きの「フィンディッシュ」は「悪魔のような」と言う意味。

 

物語
ネクサスの正体が姫矢だと確信した西条副隊長と孤門。
西条副隊長は姫矢を倒そうと、孤門は姫矢を守ろうとする。
そして姫矢とネクサスの出会いが明らかになる。

 

感想
前回のラストから引っ張った西条副隊長の姫矢狙撃はブラストショットのバリアー能力で阻止される。
前編の最後で盛り上げていながら後編の冒頭であっさりと流されてしまうのはウルトラシリーズに限らず見られる事だが『ネクサス』は連続形式が強かったので他の作品に比べて多かった印象がある。

 

姫矢は召喚したストーンフリューゲルの中へ。
特殊な振動派が周囲を覆う中で西条副隊長が孤門を守ったのに驚く。
特別チームの隊員でありながら人を守る行動が驚きになってしまうのは長い歴史を誇るウルトラシリーズでも西条副隊長くらいだろうなぁ。

 

西条副隊長はこれまであった姫矢がネクサスに変身した事、姫矢がブラストショットでビーストを倒した事、自分が姫矢と遭遇して狙撃した事の全てを報告していなかった。
ナイトレイダーとしてではなく自分自身の手で姫矢を殺すのがその理由らしい。
幼少時のトラウマだけでなく、超人の力を手に入れて人間を捨てた溝呂木と姫矢を重ねたのかもしれない。

 

西条副隊長が姫矢の事を報告しないで自分の手で始末しようとしている事を和倉隊長は薄々感づいている。
和倉隊長は組織の中にいる事を前提にして行動しているが、孤門、西条副隊長、溝呂木は自分の気持ちに基づいて行動していて、それが組織に重大な損害をもたらす可能性を和倉隊長は危惧していると思われる。

 

ストーンフリューゲルに触れた事で姫矢の感情を感じ取ったと言う孤門の話を聞いた西条副隊長は「ビーストに同情しろとでも?」と切り捨てる。
かつて『Q』から『初代マン』へと移行していく中で最強の怪獣としてウルトラマンが設定されたと言う歴史を考えればネクサスをビーストの一種と見るのもあながち見当外れではないのかもしれない。
よく考えたら怪獣もウルトラマンも人間にとって未知の存在なのにウルトラマンを味方としてすぐに受け入れていた他の作品の方が不自然だったのかもしれない。こうして考えていくと『ネクサス』の序盤は「ウルトラマン」と言う言葉への先入観を捨ててみた作りと言える。

 

姫矢と根来の会話、孤門と佐久田の会話、そして姫矢の回想シーンで明らかになる姫矢の過去。
熱血青年で社会に蔓延る不正を暴いていくが、やがて人間不信になり、より真実を求めて人間の極限世界である戦場に身を投じる。そこでセラと言う少女と出会って兄妹のような仲になるが、カメラマンと言う自分の仕事によって死なせてしまった挙句、セラの死の瞬間の写真によってその国の悲惨な真実が世界に明らかになって姫矢は世界的な賞であるピューリート賞にノミネートされる。しかし、自分がセラを死なせた事に姫矢は深い罪悪感を感じる事となった。
姫矢はウルトラシリーズの中でも重くて暗い人生となっている。2000年代初頭は平成仮面ライダーシリーズの成功もあって、それまでよりシリアスでダークな設定が導入される雰囲気があった。

 

姫矢のマンションまで押しかけて情報操作の壁を破ろうとする根来だったが姫矢は話す事は何も無いと拒絶する。かつては同じ報道に身を置いていた二人だったが今はスタンスが真逆になっている。
思えば姫矢は報道には向いていないところがある。社会に蔓延る不正に触れ続けた事で人間不信に陥ったり、セラが殺される瞬間をカメラに収めて世界的な賞にノミネートされた事でカメラから離れてしまったりと心が脆いのに危ういところに触れすぎたところがある。本当は不正が蔓延る社会とか戦争状態の地域とか人喰いの怪獣との戦いとかとは距離を置いた方が良い人間なのかもしれない。

 

姫矢とネクサスの出会いの話では「成長する夢」と言う表現が面白かった。
密林の中に佇む遺跡の雰囲気はセラが生まれ育った国のイメージが付加されていそうだが後に溝呂木が同じ夢を見ているし来訪者の星にもある建物らしいので単なる偶然かな。

 

ネクサスの光は水を連想させる表現がされているがこの理由は何なのだろうか?
ULTRAMAN』からの流れだとウルトラマンが空でビーストが海の属性を持っていそうなのだが……。

 

姫矢ネクサス最初の戦いはザ・ワンの中枢であったガルベロスが相手となった。
ファーストエピソードでは同じペドレオンを4週間引っ張ったのだが、セカンドエピソードでは前回はバグバズンで今回はガルベロスと違うビーストを続けて出してテンポが良くなった。

 

これまで孤門はネクサスを見上げる存在としていたが、姫矢の過去を知った事で遥か高みにいる守護神的な存在から共に戦う人間へと捉え直すようになる。

 

姫矢のプロフィールを手に入れた吉良沢は「この男が2番目か」と呟く。
これまであった姫矢=前副隊長の線が消えたのと引き換えに前副隊長=前変身者=真木?と言う新たな線が引かれた。まぁ、結局はこの線もミスリードであったのだが……。