帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ヒーロー失格」

「ヒーロー失格」
ウルトラマンR/B』第7話
2018年8月18日放送(第7話)
脚本 小林雄次
監督 市野龍一

 

火炎骨獣グルジオボーン
身長 60m
体重 6万2千t
愛染マコトがグルジオボーンクリスタルで変身した。
口からボーンブレスターを吐いて街を破壊する。
ロッソとブルによる風・水・雷の合わせ技で動きを封じられた後、ロッソフレイムとブルアクアの合体光線フレイムアクア・ハイブリットシュートで倒された。

 

物語
メカゴモラに捕らえられていたコマ姐の命を奪っていたかもしれないと考えたイサミは戦いが怖くなってウルトラマンにも変身できなくなってしまう。
一方、愛染マコトは自らグルジオボーンに変身して……。

 

感想
「気分じゃない」と言ってオープニングナレーションを休むイサミ。
『R/B』のオープニングナレーションは実にフリーダムだが、主人公であるカツミとイサミが担当しているので、彼らの現在の心理状態を示す場にもなっている。

 

「探訪! 綾香市の怪しいお店」と言う番組に紹介されるクワトロM。地元密着型とは思えないタイトルの番組だ。
地元TV局の生放送番組に出演するのでウルトラマンに変身できないと言うのは『R/B』でしか出来ない展開であろう。

 

ウルトラマンはじめました」の時と違って今回は愛染マコトが変身していると言うのが明確になっているので、グルジオボーンはイサミが変身するのをちゃんと待っていたり、カツミとイサミの兄弟喧嘩に呆れてロッソにビンタしたりと前回以上に人間臭い動きになっている。

 

『オーブ』の『オリジンサーガ』のパーテルもだったが本作に登場するダーリンも人工知能でありながら愛染マコトの行動に疑問を投げかける場面がある。
愛染マコトの目的は「自分の方がウルトラマンに相応しい事を証明する」なので勝ち方にも拘りがあるのだが、ダーリンにはそういう面倒臭い拘りが無いので「変身アイテムを奪う」「変身できないのならそのまま倒す」を提案する事が出来る。このドライさは機械だからこそと言えるかな。

 

ブルに変身できなくなったイサミはルーブジャイロを分解して調べてみようと言い出す。
ウルトラシリーズの変身アイテムは不思議アイテム的な扱いになっていて、このように機械として扱うのは意外と珍しい。過去だと『ガイア』くらいかな。『パワード』や『ティガ』や『ネクサス』等でも変身アイテムを解析する話があったが超常的な物と言う扱いだった。

 

カツミとイサミが兄弟喧嘩をしたと聞いたウシオが兄弟Tシャツを出した時の音が『レオ』のものであった。又、その後のイサミの部屋の場面で本棚に「アストラ」と言う本が置かれている。

 

愛染マコトと打ち解けていたコマ姐。
コマ姐は人を見る目があって愛染マコトの本性も見抜きそうだったが、コマ姐は子供達を守る存在なので、愛染マコトから子供っぽい部分を感じ取ったのかもしれない。愛染マコトの悪事は結局「子供っぽさ」から来るものだったし。

 

病室を出る時の愛染マコトの他人に見られていないところで出す真顔が怖かった。

 

前の戦いでコマ姐の命を奪っていたかもしれないと考えたイサミはウルトラマンとして戦うのが怖くなるが、それを聞いた愛染マコトは「そんな事でいちいち悩むな! 悩んだところで答えは出ない!」と叩っ切る。
いや、あんたが憧れるオーブも悩んだし怖がったよと言いたい。イサミと同じくオーブもナターシャの一件以降はオーブオリジンに変身できなくなっていたし。

 

「愛染マコトはぁ~! どんな時でもぉ~! 悩まな~い!」。
愛染マコトの変身シーンは大仰な感じがキャラクターに合っていて実に良い。

 

イサミに言われた「10秒で片付ける」に対して「9秒で片付ける」と言ったり、グルジオボーンにビンタされると「倍返し!」と言ってビンタを返したりと実は負けず嫌いなカツミの性格が表れている。

 

勝手が全く分からなかった「ウルトラマンはじめました」の時と違って今回のロッソとブルは持てる能力を色々駆使して見事にグルジオボーンを倒している。
基本的にヒーロー作品での強さ表現は火力の強さや動きの速さや耐久力の高さだったりするのだが、『R/B』は「戦術」でロッソとブルの成長を表現している。

 

愛染マコトは少しでもクレナイ・ガイを感じさせる人物を集めたり、自身もガイの真似をしたり『オーブ』の主題歌である『オーブの祈り』の歌詞を掲げたりとウルトラマンオーブ(クレナイ・ガイ)に並々ならぬ想いがある事が描かれている。
愛染マコトは他にも変身アイテムを奪うのは外道な宇宙人がよくやる姑息な作戦と言ったり、ヒーローは二者択一の状況になっても悩まないと言ったりしていて、オーブを基準に自分なりのヒーロー像を作り上げている事が分かる。
そしてカツミとイサミがその理想のヒーロー像に相応しくない事に苛立ち、自分が理想のヒーローを体現しようと動き出す。愛染マコトのこの行動は『ティガ』のマサキ・ケイゴや『ダイナ』のゴンドウ参謀等に近いが、マサキ・ケイゴやゴンドウ参謀の第一の目的が「地球や人類を守る事」で、その目的を達成する為に必要な「理想のヒーロー」を求めたのに対し、愛染マコトには「何かを守る」と言う部分がすっぽりと抜け落ちていて「自分がヒーローになる」が第一の目的になってしまっている。
ヒーローを目指していながらヒーローの本質を見落としていた愛染マコトはやがてマサキ・ケイゴやゴンドウ参謀にもあった救いすら与えられない悲惨な末路を辿る事になる。つまり、今回の話で「ヒーロー失格」だったのは戦う事に悩んだイサミではなくて悩む事が無い愛染マコトの方であったのだ。

 

『R/B』第7話までに登場した人物の中でクレナイ・ガイと言う人間に最も近いのは実はコマ姐だったと思うのだが、そこに気付けない時点で愛染マコトはクレナイ・ガイと言う人間の本質を見ていなかった事が分かる。

 

「俺達兄弟が何故ウルトラマンの力を授かったのか、それは分からない。けれど、目の前に救える命がある限り俺達はこれからも戦い続ける」。
因みにこの「目の前の救える命」を捨ててしまったのが後に登場する美剣サキだったりする。

 

 

 

 


【監督コメント付】『ウルトラマンR/B(ルーブ)』次回予告 第7話「ヒーロー失格」

 

 

ウルトラマンR/B Blu-ray BOX I

ウルトラマンR/B Blu-ray BOX I

  • 発売日: 2018/11/22
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

ウルトラ怪獣シリーズ 91 グルジオボーン

ウルトラ怪獣シリーズ 91 グルジオボーン

  • 発売日: 2018/07/07
  • メディア: おもちゃ&ホビー