「宇宙からの暗殺獣 ー怪獣グラール登場ー」
『ウルトラマンネオス』第11話
2001年4月21日発売(第11巻)
脚本 武上純希
監督 高野敏幸
ゾフィー
身長 45m
体重 4万5千t
グラールとの戦いでエネルギーを使い果たしてしまったネオスの前にセブン21と共に姿を現す。
究極進化帝王メンシュハイト
身長 210cm
体重 不明
ダークマターで生まれた怪物。
自らを「ザム星の盟主」とし、グラールを使ってザム星人を宇宙に追い出して滅ぼそうとしている。
ザム星人の少年を引き渡すよう地球に脅しをかけるが……。
暗殺怪獣グラール
身長 66m
体重 6万6千t
メンシュハイトがダークマターで生まれた突然変異体を合成して作り上げた生命体。メンシュハイトに反抗した者全てを滅ぼしていく。
青い光の玉で地球に送り込まれ、ザム星人を探し出して壺型宇宙船を破壊し、その後もザム星人の少年を狙ってHEART基地を襲撃した。
口から火球を吐き、角から光線を撃つ。切り札として背ビレを光らせて威力を溜めた光線を吐く。
カラータイマーを通じてネオスのエネルギーを吸収して追い詰めるが、ネオマグニウム光線とウルトラ・エディ・ビームの連発を受けて倒された。
脳魂宇宙人ザム星人
身長 61m
体重 7万3千t
地球に壺型宇宙船を隠していたがグラールに発見されて破壊される。仲間を守ろうと一人が巨大化してグラールに抵抗するが倒されてしまった。
10億人のザム星人のDNA情報である種(シード)を託された少年はその場を逃げ延びるがメンシュハイトの執拗な追撃を受ける。
手から威力の弱い光線を撃って自らの身を守る。
少年はザム星人の未来を担っている存在で地球人やネオスの事を信じようとするが……。
物語
怪獣グラールに襲われるザム星人の壺型宇宙船。
HEARTはザム星人の生き残りである一人の少年を保護するが、それを追ってメンシュハイトが地球に現れる。
感想
いよいよ『ネオス』最後のエピソード。
グラールの出現にヒノ隊員は「アンバランス・ゾーンから抜けてダークマターの怪獣ともおさらばできるんじゃなかったのか」と不満を漏らし、ウエマツ副隊長は「こいつがダークマター最後の怪獣だ」と決意を新たにする。
ダークマター漂う宇宙空間を脱すれば異変は起こらなくなると戦いの期限が設けられているのはウルトラシリーズでも『ネオス』ぐらい。他の作品はあても無く戦い続けるか、シリーズ通しての敵を倒さないと戦いは永遠に終わらないようになっている。
HEARTはメンシュハイトが放った機械に追われるザム星人と思われる少年を助けて保護する。
少年が持っているシードレコーダーはウルトラマンのカラータイマーに似ているが、やはりこれには意味があるんだろうなぁ。
因みにこの時のメンシュハイトが放った機械の名前は「トラッカー(追跡者)」と言うらしい。
HEART基地を闇に包みこんで通信に侵入して姿を現したメンシュハイトは自らを「ザム星の盟主」として「ザム星人の少年はザム星を逃亡した危険分子で地球人に危害を加える」「これはザム星内部の問題なので少年を即刻引き渡せ」と詰め寄ってくる。
この辺りの展開は『私が愛したウルトラセブン』を思い出す。
ザム星人の少年の説明でメンシュハイトはダークマターが生み出した怪物と判明する。
今回のシリーズでは無かったが、もし地球を覆っていたダークマターの中から新たな人型生命体が生まれていた場合、人類はどうしたのだろうか? やはり怪獣として対処したのだろうか?
深読みかもしれないが『ネオス』の登場怪獣で妙に人間っぽい動きをしていた怪獣が何体かいたのはダークマターが人間に近い怪獣を生み出す可能性を示していたのかもしれない。
HEART基地にやって来た内閣情報局特別保安部隊のキサラギはザム星人の少年を捕らえてメンシュハイトに引き渡そうとする。ミナト隊長はHEARTは内閣情報局の管轄外だと訴えるが内閣の決定には逆らえない。
あれ? HEARTは内閣情報局直属の組織で今までもフジワラ秘書官を通じて干渉を受けていた気がするが……。
他の組織が特別チームを強制的に管轄下に置くのは『G』の「悪夢との決着」を思い出す展開。
後のHEARTと内閣情報局の対立は『平成セブン』を思い出すが、『G』のアーミーや『平成セブン』の地球防衛軍と違って軍事的側面を殆ど見せていなかった内閣情報局がいきなり武力制圧を行うのはちょっと唐突だった。
内閣情報局に捕らわれたザム星人の少年を見て、ウエマツ副隊長は「内閣の決定には逆らえない」、ヒノ隊員は「あんな見かけでもナナ隊員を傷付けた油断ならない奴」とするが、カグラは違った。
ザム星人少年「信じていた……。僕は君の事を信じようとしていた……。でもそれは間違っていた……」、
カグラ「間違ってなんかいない! 約束は……必ず守る!」。
カグラがザム星人の少年の護送を阻止しようとしている事を聞いたミナト隊長はキサラギ、そしてHEARTに向かって宣言する。
「我々HEARTは危機に陥った人間を信条、国籍、人種に関わらず救出をするのが究極の使命である。何人と言え他人の未来を奪う事は許されない。たとえ異星人であろうとHEARTはその未来を守らなければならない」。
「信条、国籍、人種」とあえて地球内の言葉で表したのはスタッフの現実への訴えでもあったのだろう。これと近いのがかの有名な『A』の「明日のエースは君だ!」に登場する「どこの国の人達とも……」だと思う。
「これはHEARTの隊長としての命令だ!」と言うミナト隊長の言葉を聞き、ヒノ隊員とウエマツ副隊長は「政府の決定に反抗は出来ない。けど、隊長の命令には逆らえないな」と答え、内閣情報局を倒してザム星人の少年を解放してグラールと戦う。
ヒノ「あのザム星人の子を大人しく引き渡せば全て丸く収まるのに、なぜ戦うんです? 俺達」、
ウエマツ「分かってるだろ? 俺達は隊長から叩き込まれてるからだ。命の重さってやつをな」。
今回の話に限らずウエマツ副隊長とヒノ隊員の掛け合いは多いが、二人のキャラが見事にはまっていてどれも面白かった。
ザム星人の少年は最初はナナ隊員を信用できず光線を撃ったが、そのナナ隊員が自分を助けようとしているのを知って驚く。
ザム星人少年「なぜ……、なぜ助ける? 僕はあなたを傷付けた」、
ナナ「いいえ、あなたは自分を守ろうとしただけ。もし私があなたの立場でも、きっと同じ事をしていたわ」。
「ザム星人の復讐」で「ザム星人の脳は地球人と違って決して復讐を忘れはしない」と説明されたが、ザム星人の少年は復讐を忘れなかったザム星人とは違う反応を見せるようになっていった。地球人と触れ合う事で脳の作りが変わっていったのだろうか?
グラールに向かって走るカグラを見てザム星人の少年が「ネオス……」と呟き、それをナナ隊員が見つめる。その他にも苦戦するネオスを見て「カグラ君」と言ったりしていて、ナナ隊員は正体に気付いているかのような雰囲気があった。
グラールの切り札である背ビレを光らせてから吐く光線は地面を破壊しながら進む様が迫力満点!
地面を破壊していく攻撃は『ネオス』の他の話や『平成セブン』でも見られた演出で今後も最強必殺技の演出として残していってほしい。
やっとの思いでグラールを倒したネオスだったが力尽きて倒れてしまう。
その時、そらから二つの光が舞い降り、ゾフィーとセブン21が姿を現す……!
今回、グラール戦以降は『初代マン』と『セブン』の最終回を意識した展開が続いている。
と言う事で次回「光の戦士よ永遠に」に続きます。