「生態系の王 ー怪獣キングバモス ロックイーター登場ー」
『ウルトラマンネオス』第7話
2001年2月21日放送(第7巻)
脚本 武上純希
監督 小原直樹
変貌怪獣キングバモス
身長 185cm~62m
体重 160kg~6万9千t
荒神島で成瀬を助けた命の恩人。
実は荒神島の生態系の頂点に立つ存在でロックイーターを喰っていた。普段は大人しくて愛嬌があるが興奮状態に入ると巨大化する。巨大化すると見境が無くなって成瀬にも襲い掛かった。
電流を発し、それを爪に集めて相手を一撃で倒す。
成瀬のオルゴールを聴いて大人しくなったところをネオスのウルトラ・ミニマム光線を受けて元の大きさに戻った。
凶暴竜ロックイーター
身長 210cm~64m(個体差あり)
体重 236kg~7万t(個体差あり)
荒神島で地質調査隊を襲った。
異様に大きい顔が印象的。固体によって大きさはまちまち。
噛み付きや尻尾で攻撃する。HEARTダイヴァーズガンも通用しない。
人間を襲うがキングバモスに襲われる。
物語
荒神島で地質調査隊が消息を絶ち、HEARTが調査に向かう。
そこで見たものは調査隊の生き残り成瀬と怪獣バモちゃんの触れ合いであった。
感想
消息を絶った地質調査隊、人間と触れ合う小型怪獣、怪獣同士の戦い等、『初代マン』の「怪獣無法地帯」をモデルにした話。ピグモンの位置に当たるバモちゃんが実はレッドキングの位置に当たるキングバモスだったと言うアレンジが上手い。
尚、『ネオス』はここから3話連続で九州ロケの話を制作している。
今回ゲストの成瀬を演じるのは宮坂ひろしさん。
平成ウルトラシリーズでは何度かゲスト出演していて『ナイス』では主役としてウルトラマンに変身している。
何者かに喰われた卵を見付けたヒノ隊員のすぐ横にロックイーターが!の場面は結構ビックリする。
その後のヒノ隊員はウエマツ副隊長に引っ付いてばかりいて「謎のダークマター」に続いて怖がりな一面を見せている。
ロックイーターに襲われる地質調査隊。
今回は『ジュラシックパーク』のような恐竜パニックものを狙った演出が見られる。血の付いた眼鏡が落ちる場面は平成ウルトラシリーズでは珍しく生々しい描写であった。
成瀬とバモちゃんを繋ぐオルゴールの音色。それは成瀬の娘が誕生日に送ったものだった。
離婚して会えなくなった成瀬の娘とバモちゃんが重ねられているが、バモちゃんは過度に擬人化されていて頭周りのデザインもメッシュを入れた髪に見えなくもない。
『ターザン』のオマージュがあるが、古典的ギャグ漫画のように地面にめり込むカグラの姿は今の時代ではとても貴重だ。
怪獣と言っても成瀬にとっては大事な友達であるバモちゃん。
カグラ達は一緒に東京に連れて行けないかと訴えるが、フジワラ秘書官は「原則としてダークマター生命体を生息地から移動させる事は出来ない。そして人間に危害を及ぼす危険性のあるものは即刻殲滅する。それが政府の方針です」と答える。
前回の「ザム星人の復讐」の流れを受けてフジワラ秘書官の態度が柔らかくなっていて、この後もバモちゃんを処分しないで済むよう日本政府に掛け合っている。
『ネオス』は全12話と短かった為かHEART隊員はそれほど変化が無かったが、その分、フジワラ秘書官が無理解な上司から現場に理解を示す上司へと変化している。
夜中にロックイーターの群に襲われるカグラ達だったが、突如現れた謎の巨大怪獣によってロックイーターが惨殺される。その巨大怪獣の正体がバモちゃんと判明し、HEARTは荒神島を隔離するか本土上陸を阻止する為にバモちゃんを処分するかを考えるようになる。
それを知った成瀬はバモちゃんを連れて逃げようとするが、そこに巨大なロックイーターが現れ、ロックイーターの攻撃からバモちゃんを庇って成瀬が負傷すると怒ったバモちゃんは巨大化する。
バモちゃんの巨大化は理由付けされていたがロックイーターの巨大化は唐突であった。どうやら個体差らしいが、あんなに大きい怪獣をHEARTが何日も見過ごしていたのは不自然だ。
アニメに登場するかのような可愛らしいデザインのバモちゃんが実はロックイーターの卵を喰らい一撃でロックイーターを殺して踏みつける凶暴怪獣キングバモスだったと言うギャップが面白かった。
キングバモスとロックイーターの怪獣大決戦を見て成瀬は呟く。
「俺が……あいつに近付きすぎたのかも……。そっとしておいてやれば、あいつはこの島の主のままいられたのかも……。生態系の王として……」。
人間をロックイーターが喰って、そのロックイーターをキングバモスを喰う。それが生態系、弱肉強食、食物連鎖、自然界における正常な状態なのだが、キングバモスが人間を守ってしまった為、その状態が崩れてしまった。
いきなり登場した巨大ロックイーターは生態系を崩したキングバモスに対抗する為の進化だったのかもしれない。
凶暴化して見境が無くなったキングバモスは成瀬にも襲い掛かり、カグラはネオスに変身する。
ネオスはキングバモスを倒さないよう気を付けて戦うが事態打開の目処が立たず、遂にネオマグニウム光線を撃とうとする。
その時、成瀬が聴かせたオルゴールの音色でキングバモスは大人しくなり、ネオスはウルトラ・ミニマム光線でキングバモスをバモちゃんに戻すのであった。
戦いが終わり、卵を見守るロックイーターの上空をハートワーマーが飛び去り、広大な風景の中、バモちゃんが目を覚まして成瀬の姿を探し回る。
ダークマターによって生まれた怪獣達によって生態系が出来ている荒神島。最終的には日本政府が特別区域として管理する事になり、キングバモスの保護も単なる感傷でなく生態系のバランスを守る為となった。
つまり、怪獣が存在している状態が変わらず続く事になったのだ。これはウルトラシリーズではかなり異例の展開。今回語られた人間と怪獣の関係は後の『コスモス』を思わせる。荒神島は鏑矢諸島のプロトタイプと言えるのかもしれない。
ハートワーマーの中、成瀬はバモちゃんへの別れを告げる。
「これで……これで良かったんだ。バモ……、もう会いには来れないかもしれないけれど、元気で暮らすんだぞ……。サヨナラ……、さよならバモちゃん……」。
広大な風景の中、成瀬の姿を探していたバモちゃんだったがやがて元気に歩き出した。
自分は動物との触れ合いや別れと言った話に弱いので今回の別れの場面も見ていて思わず涙腺が緩んでしまった。
「ダークマターは怪獣も作るけど、こんな人類の友達も作ってくれたのね」。
今回の話は小原直樹さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。