帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ザム星人の復讐」

「ザム星人の復讐 ーザムリベンジャー登場ー
ウルトラマンネオス』第6話
2001年2月7日発売(第6話)
脚本 武上純希
監督 満留浩昌

 

脳魂宇宙人ザム星人
身長 2m
体重 153kg
ザム星人リーダーの死の責任をネオスと地球人に求め、地球人だけがダークマターから抜け出すのは許せないとして、オオトモ博士に変身して世界会議の妨害を企む。
手から光弾を撃つ。
セブン21のストップ光線を振り解くも戦いの果てに力を使い果たしたのか復讐の完遂を願って消滅した。

 

復讐ロボットザムリベンジャー
身長 63m
体重 7万2千t
ザム星人の残党が操る攻撃用ロボット。
円盤形態から戦闘形態に変形する。両手からミサイルや光線を撃つ。鉄壁の装甲を持つ。
オオトモ博士がフジワラ秘書官に渡したブレスレットに誘導されていて、セブン21がブレスレットを破壊すると活動停止した。
自動迎撃装置でネオ・スラッシュをも弾くバリアーを持つが、最後はバリアーを破壊され、ネオス渾身のパンチによって完全に機能停止した。
名前の意味は「復讐者」。

 

物語
ダークマターに関する世界会議が開かれる事になり、フジワラ秘書官の友人にしてライバルであるオオトモ博士もやって来た。
その頃、謎の円盤が現れて……。

 

感想
ダークマターについて世界的権威が集まる会議が開かれる事になり、アユミ隊員が日本代表に選ばれる。
今回の会議の主題材は「アンバランスからの脱出」で、地球がダークマターから脱出するまで後6ヶ月と言う事が分かる。超常現象が終わる時期が明言されるのは珍しい。

 

今回の話は「ウルトラ警備隊西へ 前編」「ウルトラ警備隊西へ 後編」のオマージュになっていて、謎の男であるショーン・アンクルは本家のマービンに負けず劣らずの怪しさ大爆発。
正体はオオトモ博士を不審に思って調査していたFBI捜査官だが、途中からザム星人の残党の存在を感じとっていたセブン21がその姿を借りていた。
どんでん返しの設定は面白いが、セブン21がショーンをいきなり襲って気絶させ姿を借りてしまうのは問題。ショーンがザム星人の残党に襲われたところを助けるのなら分かるが、襲われる前に有無を言わさず体を乗っ取ってしまってはザム星人の残党とやっている事に変わりが無い。そもそも地球人の意思を無視した干渉はウルトラマンが自らに禁じていた事だと思うのだが……。

 

アメリカに渡って全米一の宇宙物理学者になったオオトモ博士は実はフジワラ秘書官の十年来のライバルだった。フジワラ秘書官が学者だったとは意外。
研究所に行ける派遣留学生を一人決める時、二人は弓道で勝負していた。結果はオオトモ博士が落とした弓の音にフジワラ秘書官が集中力を切らしてしまって敗北。
そして今回、帰国したオオトモ博士にフジワラ秘書官は勝負を挑み、前と同じようにオオトモ博士は弓を落とすがフジワラ秘書官は集中力を切らさず勝利を収める。
10年かかってもキッチリと決着を付けるのがフジワラ秘書官らしい。
そんなフジワラ秘書官を見て「少しだけ見直しました!」と正面切って言えるカグラは恐れを知らなすぎる……。

 

決着が付き、過去を思い返すフジワラ秘書官。
フジワラ「今となっては何もかも良い思い出」、
オオトモ「何故恨まない?」、
フジワラ「恨むって?」、
オオトモ「私は卑怯は手段でヨウコの未来を変えた」、
フジワラ「もう過去の話」、
オオトモ「過去の話?」、
フジワラ「それに私は今の自分に満足している」。
過去の話と言う割には決着にえらく拘っていた気がするが……。これまでHEARTに厳しく当たっていたのも現状に対する不満からのように見えたし。
今回の決着で胸の痞えが取れたのでそう思えるようになったのかな?

 

派遣留学生が決まった時に学校から貰ったと言うブレスレットをオオトモ博士は「復讐が成し遂げられた記念」として渡し、フジワラ秘書官は「友情の証」として受け取る。
実はこれはザム星人の残党の罠で「友情の証」と称したブレスレットで地球人達を復讐の光で殺害するのが目的だった。
と言う事は本物のブレスレットは他にあるのだろうか? それともブレスレットを貰ったと言う話そのものがでっち上げられたものだったのだろうか?

 

カグラはオオトモ博士のバッグの中にあった放電装置で捕らえられ、気絶しているうちにエストレーラーを奪われてしまう。
ザム星人の残党は「故郷を追われ、宇宙を彷徨う我々にとって指導者を失う事は死にも等しい」と計画を破壊したネオスへの復讐を宣言し、「地球人だけがダークマターを抜け出す事は許せない。地球人も故郷を追われれば良いんだ」と語る。
はっきり言って逆恨みもいいところだ。どうして「謎のダークマター」でザム星人のリーダーは部下に計画の詳しい説明をしていなかったのだろうか……。

 

「許してくれ」と訴えるカグラに対し、ザム星人の残党は「自分達の脳は地球人と違って決して復讐を忘れはしない」と答える。
地球人とザム星人を対比させたかったのだろうが、後に語られる地球人とザム星人の共存の流れには要らない設定だったような気がする。

 

そんなザム星人の残党に向かって正体を明かしたセブン21は「復讐するは我にあり。この星の神は人間同士の勝手な復讐を許してはいない」と説得する。
いやいや、「我々は地球人とは違う」と言い切っているザム星人に向かって地球の神を持ち出して説得しても何の効果も無いだろう。案の定、ザム星人の残党に「神なんて地球人の戯言で我々にそんな掟は通じない」と言われてしまっている。
ここは『平成セブン』の「わたしは地球人」にあった「復讐の為の復讐は宇宙の掟も許していない」の方が合っていた気がする。

 

今回のセブン21の変身はウルトラアイこそ無いがセブン風になって嬉しい。
ザム星人の残党は最初はオオトモ博士の姿でセブン21と戦う。ウルトラマンと生身の人間の戦いは珍しくて面白い試みだった。
ネオスが巨大な姿で戦い、セブン21は人間大の姿で説得すると両者の差別化が出来ていた。
ところで今回の話は「人間の姿と記憶をコピーして行動する」と言う点でウルトラマンであるセブン21と復讐者となったザム星人の残党に多くの共通点があったのが気になる。

 

ゴツゴツしたイメージが多いロボ怪獣の中でザムリベンジャーはスマートなデザインとなっている。CGを使った変形シーンを含めてアニメっぽい雰囲気が独特だった。

 

オオトモ博士がザム星人の残党の変身だった事を知ったフジワラ秘書官は「あのザム星人は記憶をコピーしながら人の心までは理解できなかったのね」と呟き、それを受けてミナト隊長が「人の心は不思議なものだ。憎しみさえも時と共に懐かしさに変えてしまう」と答え、最後に再びフジワラ秘書官が「だから許し合えるのかも……」と呟く。
人の心は不思議だとする話では人の心の闇に焦点を当てる事が多いので、今回のように「許し合える心」を不思議とするのは捻っていて面白かった。
今回の話から今まで嫌われ役だったフジワラ秘書官の描かれ方が急速に変わっていく。最初は仲が悪かったHEARTとフジワラ秘書官の関係の変化は後の地球人とザム星人の関係を予感させるものとなった。

 

地球人に復讐を誓うザム星人の残党であったが、今回の目的が世界会議の妨害ならフジワラ秘書官より会議に出席するアユミ隊員に近付く方が自然だったと思う。
又、オオトモ博士が実はザム星人の残党が変身したものだった為にフジワラ秘書官とオオトモ博士のドラマの意味も薄くなってしまったのが残念だった。

 

上にも書いたが今回の話は「ウルトラ警備隊西へ 前編」「ウルトラ警備隊西へ 後編」のオマージュになっているのだが、『ネオス』の本筋に関わる重要回で過去の作品のオマージュをしてしまった為に上手くまとまっていないところが多々あった。自分は内容が薄い話よりてんこ盛りで濃い話の方が好きなのだが、さすがに今回の話はもう少し要素を取捨選択するべきだったと思う。

 

今回の話は満留監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。

 

 

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