帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「星の破壊者」

「星の破壊者 ー宇宙工作員ケサム登場ー
ウルトラマンマックス』第7話
2005年8月13日放送(第7話)
脚本 大倉崇裕梶研吾
監督 梶研吾
特技監督 菊地雄一

 

宇宙工作員ケサム
身長 180cm~49m
体重 67kg~1万4千t
星を汚し滅ぼさんとする種族を抹殺する使命を帯びていて、様々な星を渡り歩いては文明を破壊してきた。
空間転移や爆弾の起爆装置と言った様々な機能を組み込んだ特殊スーツを着用している。
特殊スーツの制御装置にトラブルが起きた為に地球に不時着し、ミズキ隊員と出会った事で考えに変化が起こる。セットした爆弾で地球を破壊する為にDASHやマックスと戦うがマクシウムソードで倒され、最後は爆弾の起爆装置を解除して力尽きた。

 

物語
宇宙からの落下物を調査しに朝霧山に向かったミズキ隊員は負傷している男を発見する。
星々を渡り歩いていると言う男性ケサムをミズキ隊員は介抱するが、ケサムの真の目的は……。

 

感想
ケサムを演じた菊地謙三郎さんは『仮面ライダー龍騎』で神崎士郎を演じていた。
因みに後の「エリー破壊指令」に登場する宇宙工作員ケルスを同じ『仮面ライダー龍騎』で北岡秀一を演じた小田井涼平さんが担当している。

 

ケサムが地球に不時着する原因となった特殊スーツの制御装置のトラブルはどのようなものだったのかは不明。ケサムがかなりのダメージを負っていた理由も含めて気になるところ。

 

エリー破壊指令」での描写から宇宙工作員はロボットのような印象を受けるが実際のところはどうだったのだろうか?
ダメージを受けたケサムは全身にスパークが走り、流した青い血もオイルや液体のように見えた。もし、ケサムをロボットとするなら、死に間際に涙を流す場面をエリーに絡めて考察してみるのも面白い。

 

ケサムが落下した朝霧山山麓にヒジカタ隊長は娘と一緒に行った事があるらしいが深く触れられる事は無かった。
因みにこの回でやたらとヒジカタ隊長が手にしている懐中時計は娘からのプレゼントらしい。
ヒジカタ隊長を演じた宍戸開さんは「ペンダントの中に娘の写真が入っている」「妻とは離婚している」と色々なアイデアを出したようだが残念ながら劇中には反映されなかった。

 

ミズキ隊員は霧が出て通信不能になったところを視界の悪さも手伝って崖を滑り落ちている。
この霧はケサムがセットした爆弾周辺から出ているが両者の繋がりは特に説明されていない。
霧に囲まれているのに通信可能な場面もあるので霧と通信不能は関係無いのかもしれないが、それではなぜミズキ隊員のダッシュパッドが通信不能になったのか気になる。ケサムが何かしら妨害工作をしたようには見えないし……。

 

怪我をしたケサムを見たミズキ隊員は「地球人であろうと宇宙人であろうと苦しんでいる人を助けるのはDASHの務め」と語る。
他にも遠い星の人達が出会って交流できる素晴らしさを語っている。
この時点ではミズキ隊員がどうしてこのような考えに至ったのか分からないのでやや違和感と言うか唐突感を覚えるが、後の「星座泥棒」での話を頭に入れて見ると納得出来るところがある。
勇士の証明」で語られたミズキ隊員のマックス観もこれらが基盤となっているようだ。

 

そんなミズキ隊員の考えに対してケサムは「宇宙のあちこちで無益な戦争が繰り返されている」「知識は文明を生み、文明は争いを生む」「心を通わせるどころではない」と返す。自分達の判断で勝手に星や命を消し去っている奴らに言われたくはないが……。
これらはケサム自身の体験談か、それとも与えられた使命に組み込まれている理由付けなのかは不明。
続けてケサムは「人類は戦争をし、自然を破壊し、地球が自分達のものだと思っている」と人類を批難する。ケサムは単に自分達以外の生物を無視している今の人類のあり方を批判したのだろうが、「人類は地球が自分達のものだと思っている」と言う発言は後にデロスの民の存在が明らかになる事で真実であった事が証明されてしまった。

 

ケサムの糾弾に対してミズキ隊員は「今の人類は地球を蝕んでいるが、その過ちに気付いて正そうとしている人もいる」と反論する。これは「無限の侵略者」でカイトがスラン星人に対して語った台詞と殆ど同じ。
ただ、今回の話のみで考えると、森の開発プロジェクトが進められていると言うように人類の過ちの描写はあるのだが、それを正そうとする人類の描写が無いので、どうにも説得力に欠けている。

 

今回は印象に残る映像がいくつかある。
まずセットした爆弾が爆発した時のイメージ映像で廃墟の街が映し出されたのに驚いた。雰囲気的には『ターミネーター』かな。(ロボットが人類を滅ぼそうとする話だし)
ケサムが飛んでくるミサイルを止めて、そこにダッシュバードを誘導して爆発させるのは今までに無い作戦で面白かった。
マックスとケサムの戦いは爆弾を抱えたハンディキャップの様相もあった。
特撮セットでは手前に川が流れている。おそらくこれがミズキ隊員が水を汲んできたと言う川であろう。細かい。
マックスを上回るスピードで背後に回り込み、捕獲光線でマックスを絡め取って空に投げ飛ばすケサム。それを脱出したマックスが放たれた光弾を避けながら手にしたマクシウムソードでケサムを一刀両断にする流れはこれぞCGバトルと言う動きで快感。
マックスがケサムを斬った時の漫画チックな演出もウルトラシリーズではあまり無いので印象に残った。

 

事件解決後、文明を滅ぼして地球を救うと言うケサムの考えに対して、エリーは文明が無ければ自分が存在していない事を語る。
もし、ケサムがロボットだと仮定するなら、文明を否定したケサム自身が文明の産物だったと言う興味深い矛盾が生まれる事になる。

 

ヒジカタ隊長はミズキ隊員が報告を怠った事を注意しながらも、ケサムを信じようとしたミズキ隊員の気持ちは否定しなかった。
「宇宙に住む者同士が心からお互いを信頼し合える日が来るといいな」と言うヒジカタ隊長の言葉にカイトは「必ず来ます! きっと来ますよ、近い将来!」と珍しく強い口調で答える。おそらくこれはマックスの存在を頭に入れての発言であろう。

 

今回登場したケサムはCGモーションディレクターの板野一郎さんがデザインしたウルトラ怪獣第1号となっている。

 

今回の話は推理作家の大倉崇裕さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。又、これまで脚本で参加していた梶さんのウルトラシリーズ監督デビュー作にもなっている。

 

 

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  • 発売日: 2012/10/26
  • メディア: DVD