「オビコを見た! ーオビコ登場ー」
『ウルトラマンティガ』第27話
1997年3月8日放送(第27話)
脚本 太田愛
監督・特技監督 川崎郷太
妖怪オビコ
身長 50m
体重 4万2千t
古くは「お彦様」と呼ばれていて、彦野町一帯の闇に棲んでいると言われている闇の力を持つ妖怪。青年の話によると暗い所からいきなり「遊ぼ」と呼びかけてきて、ホリイの死んだおばあちゃんの話によると呼びかけた声に振り向いた人間を喰ってしまうらしい。
明るい光を嫌い、闇から闇に移動し、手にしたチャルメラからナルト状の光線を放つ。火を吐く影法師と行動を共にしている。屋台の鍋は寺近くの井戸と繋がっている。何故か白髪のカツラを被る。
夜鳴きそばの屋台を引いて、オビコの噂を彦野町にばらまいた。その目的は街の人間を恐がらせて失われた昔の村を取り戻す事であった。開発の波で棲み辛くなり、GUTSに昔の村はもう無いと言われ、巨大化して街を破壊しようとする。最後は諦めたのかティガ・マルチタイプのハンドスラッシュをわざと受けて闇に消えていった。
正式名称は「オビコボウシ」と言うらしい。漢字で書くと「お彦法師」かな?
影法師
オビコが引く屋台に潜む妖怪。不定形な闇で火を吐く。
巨大化したオビコが火を吐いているのでオビコと合体して巨大化したと思われる。
物語
彦野町で「オビコを見た!」と言う人間が続出する。
調査を開始したGUTSは屋台を引く謎の老人を追いかける事になる。
果たして、妖怪オビコの目的とは……?
感想
オビコの肩書きはなんと「妖怪」!
妖怪系の怪獣も多くいるウルトラ怪獣でも肩書きがそのままズバリ「妖怪」となっているのはオビコくらいかな。どう見ても妖怪な設定とデザインを持っていた『T』の「タロウの首がすっ飛んだ!」に登場するエンマーゴですら肩書きは「えんま怪獣」であった。
今回の話はウルトラシリーズでは昭和の頃からある妖怪譚だが、今回は街を舞台にオビコの噂が広がって話に尾ひれが付いていくと言う展開がある。これは「口裂け女」や「人面犬」と言った戦後の都市伝説に近い展開で、同じ妖怪譚と言っても昭和の頃とは違った新しいタイプの話になっていた。
GUTSにオビコの話をする和尚さんのお尻に尻尾が!
一瞬だけれど結構驚く場面だった。
オビコを演じた赤星昇一郞さんは「よみがえる鬼神」に登場した平光琢也さんと郷田ほづみさんと「怪物ランド」と言うコントユニットを結成している。
前半はGUTSとオビコの追いかけっこが楽しいコミカル編だが、後半に入ってオビコの目的が明らかになると一気にシリアス編に変わる。
真相が分かってから前半を見直すと、街のあちこちを駆け回るオビコのユーモラスな姿にも寂しさを感じるようになる。
怪獣は平気だがお化けや妖怪は苦手なシンジョウ。お約束通りにこういう人に限って妖怪と遭遇してしまう。シンジョウの後ろでゆっくりと屋台を引くオビコと「後ろにいるよぉ……」なシンジョウの表情が最高すぎる。
因みに最後にオビコの心情を理解したのもシンジョウだったりする。
オビコの話でパニックになった人々が家に閉じこもってしまったので街からは明かりが消えてしまった。それを見たオビコは「昔の村が戻った!」と喜び、昔の村の事をGUTSに話し出す。
しかし、闇の中にあるのは村ではなくて街。昔の村はもうどこにも無くて、明日にはオビコが棲んでいる山にも開発が入る。ダイゴは新しい住処を探すと言うがオビコはそれを拒み巨大化して街を叩き潰そうとするが、たとえ街を壊してももう村は戻ってこない。
ティガとの戦いの中でオビコは闇に包まれた街に昔の村を見るが、それはオビコにだけ見える幻。そして、自分の棲む場所が幻の中にしかないと気付いた時、オビコはこの世から消える事を選ぶのだった。
オビコは自分が昔の村を覚えていたように人間達にも自分の事を覚えていてほしくて街に自分の噂をばらまいて人々を怖がらせたのではないかと考えるGUTS。「人間は二度死ぬ」と言う話があるが、人間だけでなくこの世の全ての存在に「忘れられる」と言う二度目の死があるのかなと思った話であった。