帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「月に眠る覇王」

「月に眠る覇王 ーヌアザ星人登場ー
ウルトラマンダイナ』第14話
1997年12月6日放送(第14話)
脚本 古怒田健志
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

宇宙帝王ヌアザ星人イシリス
身長 59m
体重 5万2千t
ヌアザ星の王で全宇宙を支配しようとしていた。
月の裏側にある古代遺跡「王家の谷」の地下にある棺の中で眠っていたが調査に来たカリヤの体を乗っ取って地球に降り立った。TPC基地のコンピューターを使って月の重力発生装置を復活させて地球に落下させようとする。
ヌアザの神を象った石像に宿って復活を果たすが、正気を取り戻したカリヤに棺の中に残っていた本体の心臓を剣で貫かれ、最後はダイナ・ストロングタイプのストロングパンチで吹き飛ばされて爆発した。
イシリスが死ぬと同時に月にあった古代遺跡も爆発した。
名前の由来はケルト神話の「ヌアザ」とエジプト神話の「イシス」と「オシリス」かな。

 

物語
ガッツディグで王家の谷の地下に眠る古代遺跡の調査に向かったカリヤ達は謎の棺を見付ける。
その中には億年の時を超えた憎しみと哀しみの物語が眠っていた。

 

感想
物語の舞台を地球の外にまで広げ、さらに12億年前と言う遙か昔の時代を出してくる等、ウルトラシリーズの中でもスケールの大きい話となっている。
そのせいか時間が足りなくて描写不足になっているところがあるが、日本のTV作品でここまで壮大な話が作られた事を評価したい。

 

ウルトラシリーズでお馴染みの地底戦車ガッツディグが登場。
宇宙で活躍した地底戦車はガッツディグだけであろう。
話の後半で活躍が無かったのは残念。イシリスとの戦いで使ってほしかった。

 

カリヤと一緒に月の古代遺跡の調査に向かった3人の名前は「シマダ」と「イガラシ」と「ニシ」で、放送当時に横浜ベイスターズの中継ぎ投手だった島田直也五十嵐英樹、西清隆投手がモデルになっているらしい。

 

イシリスに乗っ取られたカリヤは目にクマが出来ていてかなり怪しい。と思ったら、ちゃんと皆気付いていた。
それを追ってきた3人の調査員の体を乗っ取ったエイリアン達が剣を持った状態であそこまで入り込めるのが凄い。もっと前の入り口で検問に引っ掛からないのだろうか……。
因みにエイリアン達の骨格は人間に似ているとの事。ひょっとしたら、滅びを免れた一部が地球に移り住んでいたのかもしれない。

 

月の古代遺跡には重力発生装置があり、イシリスは自分の体を重力発生装置の一部にしていた。自分の肉体を天体の一部にするとは凄い。他にも古代遺跡には炎が燃えるだけの空気が残っている等、12億年前のヌアザ星が現在の地球を遥かに越える科学力を持っていた事が分かる描写がある。
ウルトラシリーズには数多くの種族が登場しているが12億年も前にこれだけ高レベルの技術を持っていた種族は他に思い浮かばない。

 

「力を持つ者にはそうでない者を滅ぼす義務がある。そして優れた者だけが最後に生き残る。それが宇宙の意思だ」と語るイシリス。他にも「自分は生きる使命を与えられた」とも言っていて、かなりの選民思想が見える。
しかし、当のイシリスはとっくの昔に封印されて既に肉体を失っていた。イシリスの考えからすると実はイシリス自身が滅ぼされるべき弱者と言う事になる。
イシリスは自分の死を認めず、ヌアザの神の石像を使って生き続けようとするが、所詮は無駄な足掻きであった。

 

宇宙や月面で繰り広げられたダイナとイシリスの戦い。イシリスはかなりの強敵でカリヤが剣でイシリスの本体の心臓を貫かなかったらダイナは危なかった。
イシリスの封印を解いてしまったカリヤは自分で始末を付ける事に。「禁断の地上絵」でゼネキンダール人を蘇らせてしまったアキヅキ博士と同じ過ちを犯してしまったわけだが、それで探究心を失わないのがカリヤ。
「調べていていつも同じ結論に行き当たる。結局、力を誇示する戦いは、いつも憎しみしか残さない」、「だから俺達がそうならないようにしなくちゃいけない」。
過ちを犯してしまった事より、そこから何を得て何をするのかが大事なのだ。

 

月が舞台なので月面基地ガロアが台詞のみで登場。
今はキシナガが隊長かな? イシリスとの戦いで出番が無かったのが残念。

 

3人のエイリアンがイシリスの消滅を確認して成仏する場面は入れてほしかった。