帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「優しい標的」

「優しい標的 ーギャンザー クレア星雲人登場ー
ウルトラマンダイナ』第15話
1997年12月13日放送(第15話)
脚本 長谷川圭一
監督・特技監督 村石宏實

 

諜報宇宙人クレア星雲人シオン
身長 180cm
体重 75kg
クレア星雲から来た惑星調査員で地球人類の存在を確認する為に遥か彼方から派遣されたが宇宙船に予想外の事故が起きて地球に不時着したと語るが正体は侵略者であった。
緑色の石でマイを操り、物質変化の電磁波でギャンザーを出現させる。
マイを使ってTPC主要施設の機密データを入手しようとするがリョウによって妨害され、次にギャンザーを使ってTPC基地を破壊しようとするがこれも失敗に終わる。最後は宇宙船で逃走しようとしたところをリョウ怒りの誘導ミサイルで倒された。

 

尖兵怪獣ギャンザー
身長 62m
体重 6万3千t
シオンが使う怪獣で街中に現れて破壊活動を行う。ガッツイーグルの電磁ネットで動きを封じられそうになるがシオンによって転移させられた。
目と両手から青い光弾を発する。右手が切断されても中からムチが飛び出る。
次に山火事を起こしてTPC基地を危機に陥らせるが、ダイナ・フラッシュタイプのソルジェント光線で倒され、山火事もネイチャーコントロールで鎮火させられた。

 

物語
TPCに保護された宇宙人シオンに想いを寄せるマイとそれを危惧するリョウ。
皆がシオンを危険視する中、マイはシオンを信じようとする。しかし、シオンの目的は……。

 

感想
ウイニングショット」でのヒムロに続いて今度は宇宙人シオンに想いを寄せるマイ。
本人も言っているが、マイは想いを寄せるとちょっと冷静さを失うところがある。恋は盲目と言ったところかな。
メディカルセンターの人に心配されて「失礼しちゃう。私、これでもスーパーGUTSの隊員なのよ」と不満を口にするが、スーパーGUTS隊員として信頼できないのは確か。相手を信じて素直に接する事が出来るのは人間として悪くないとは思うが。

 

マイと違ってリョウはシオンに対して冷静に対処した。と言いたいところだが、シオンが言った通り最初から疑ってかかっていた節がある。
しかし本当はマイのように素直に信じたかったと最後にアスカに漏らしている。
リョウが自分の本音(スーパーGUTS隊員としては弱さとも言える)を他人に漏らすのはこれが初めて。アスカとリョウはお互いに今まで誰にも明かさなかった自分の本音や弱さを明かせる不思議な関係となっている。

 

勤務が終わっても私服姿で楽しく話をしているアスカとマイは仲の良い友達、又は年の近い兄妹に見える。
それとは対照的に隊服姿でシオンとマイについてしんみりと語るアスカとリョウは年の離れた姉弟、又はお互い腹を割って話せるパートナーに見える。
常に冷静なリョウはマイにとっての憧れだが、一方のリョウも素直に相手と接しられるマイにある種の憧れを抱いているように見える。

 

ギャンザーのデザインがカッコイイ。
最初に街に登場した時の手前に群衆を置いての破壊シーンが決まっていた。

 

ギャンザーとの戦い終わった後、ダイナがネイチャーコントロールで山火事を鎮火するが、なんとウルトラ水流であった。まさか平成になって見られるとは思わなかった。

 

リョウ「あなたはこの世で一番大切なものを踏みにじったんだから……!」、
シオン「何かな? 地球の平和? それとも正義ってやつか?」、
リョウ「乙女の純情よ!」。
ウルトラシリーズはターゲットが少年なので物語も男中心である事が多く、昭和のウルトラシリーズでは女性が中心の話は少なかった。なので今回のように女性隊員のやり取りをメインで扱った話が作られるようになったのは時代の変化を感じた。

 

意外だがシオンはマイに嘘は一つも吐いていない。マイに言っている事は全部真実だった。ただ「侵略」と言う一言を入れていなかっただけなのだ……。
『A』の「復讐鬼ヤプール」に話が似ているが、「調査にやって来た宇宙人」「宇宙船が壊れた」「宇宙人を信じられるかどうか」「死んだのではなく星に帰った」等、実は『帰マン』の「怪獣使いと少年」にも話が似ている。「怪獣使いと少年」と違って今度の宇宙人は侵略者だったが……。

 

「女はね、残酷な現実より優しい嘘が……」。
マイにシオンの真実を教えなかったリョウの理由。
この言葉を聞くと最終回のアスカがワームホールに飲み込まれたと言う残酷な現実をアスカは父親と一緒に宇宙を飛んでいると言う優しい嘘で……とも言えるような気がしてくる。

 

今回のエンディングはマイの映像を中心に構成されている。