帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「トーテムの眼」

「トーテムの眼」
ウルトラQ dark fantasy』第11話
2004年6月15日放送(第11話)
脚本 清水信宜・右田昌万
監督 北浦嗣巳

 

物語
陸上部の橘麻衣は熊谷先輩に想いを寄せる女子高生。
ある日、怪しげな店で三つの願いを成就させる「三つ目のトーテムポール」を買うが、それは代償として願った者から大切なものを三つ奪ってしまう恐ろしい悪魔であった。

 

感想
有名な「3つの願い」。麻衣の願いは、
1、熊谷先輩が私と付き合ってくれますように→車に轢かれそうになった熊谷先輩を助けた事がきっかけで両想いだった事が分かる→代わりに自分が轢かれて足が一生不自由になり、手術費用の為に父との思い出が詰まった家が売られる事になる。
2、母を楽にする為に父との思い出を失わない為にお金が欲しい→母が自殺して保険金が入る。
3、母を返して→自分の命と引き換えに母が生き返って自分自身は死亡する。
麻衣の願いと代償が破滅へと繋がっていく展開そのものは悪くはないが『Q倶楽部』の「天使のハナシ」に続いて古典的名作をそのまま捻らず持ってきたのは残念。やはりウルトラシリーズならではの要素が欲しかった。

 

「母を返して」と願ったら嵐の夜にずぶ濡れの母が帰って来る場面は王道ながらもやはりゾッとする。そこから麻衣が自分の死体を見てしまうどんでん返しの結末はかなりの衝撃。ただ、どうして彼女がここまで全てを奪われなければならなかったのか、あまりにも理不尽な結末にやり切れなさを覚える。
麻衣が最初に願ったのは「憧れの先輩と付き合いたい」と言うごく有り触れたささやかなものだった。もし熊谷先輩を彼女から奪う為に三つ目のトーテムポールの力を借りていたのなら、逆に自分が色々なものを奪われてしまうのも因果応報として理解できるのだが、最初の願いに比べて最後の結末が割に合わなさすぎる。
三つ目のトーテムポールには悪魔が封印されていて人の欲望に付け込んで災いをもたらしていると言う設定なので、あえて麻衣を不幸にしたとも考えられるが……。

 

前にも書いたが『Qdf』の主人公である剛一達には事件を解決する力が殆ど与えられておらず、今回も事件のあらましを推測する事は出来ても結局は麻衣を救う事は出来なかった。
主人公達が三つ目のトーテムポールについて麻衣が購入して願いを叶えてもらっている事まで分かっていながら全く手を打てずに麻衣を消滅させてしまうのは残念だった。ここまで事件解決に役に立つ事が出来ないのなら、いっそ剛一達は登場させず、麻衣が自分で三つ目のトーテムポールについて調べて、恐ろしい悪魔の存在を知りながらも願わざるをえなかったとした方が良かった気がする。

 

麻衣の所から姿を消した三つ目のトーテムポールは最初の骨董品店に戻ると今度は二人の女子高生の願いを叶える。
「お笑いタレントの愛人になりたい」「総理大臣になりたい」「世界征服をしたい」と言う女子高生二人の願いを聞き入れた結果はなんと核ミサイルによる世界の滅亡であった。女子高生二人の最後の願いが世界征服だったので核ミサイルによって二人以外の人類は全員死んでしまったと言う事なのかな。パラレル要素がある作品とは言えウルトラシリーズで世界滅亡エンドが出てきたのには驚いた。

 

脚本の清水信宜さんはウルトラシリーズは今回のみの登板となっている。

 

今回の話は右田さんのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。
この後、右田さんは河崎実さんが監督を務める映画の脚本を多く手掛ける事になる。