「父の背中 ー宇宙三面魔像ジャシュライン登場ー」
『ウルトラマンメビウス』第37話
2006年12月23日放送(第37話)
脚本 谷崎あきら・赤星政尚
監督・特技監督 アベユーイチ
ウルトラの父
身長 45m
体重 5万t
誰からも尊敬されている宇宙警備隊の大隊長。
神秘の力を秘めたウルトラアレイを持っている。
ジャシュラインを圧倒し、ゴールジャシュラーの光線もウルトラアレイで防ぐ。
カラータイマーからエネルギーを送ってメビウスを復活させ、その後はメビウスの戦いを見守った。メビウスに励ましの言葉を掛け、大勢の人々の称賛を浴びながら光の国へ帰っていった。
宇宙三面魔像ジャシュライン
身長 60m
体重 6万t
エリダヌス座宇宙を荒らし回る大悪党で宇宙ストリートファイト連勝街道驀進中!
時空波に引かれてメビウスを倒しに来た。
三つの顔を持ち、それぞれ人格が異なる。上の怒り顔は「ジャジャ」が口癖で盾をブーメランにして投げ、真ん中の笑い顔は「シュラ」が口癖で格闘が得意、下の冷血顔は「イン」が口癖で念動力を駆使する。三つの顔全ての力を合わせると相手を黄金像に変えるゴールジャシュラーを撃つ事が出来る。
CREW GUYSを撃墜し、メビウスを黄金像に変えるが、ウルトラの父が登場した事で形勢が逆転。凶暴化して挑むも押され、最後は地球の地殻を刺激して地球ごとメビウス達を倒そうとしたが、メビュームバーストで倒された。
倒した相手の死体を集めると言う趣味を持っている。
物語
コウキは父親と一緒に「ウルトラの父降臨祭」に行く事を楽しみにしていたが、仕事の都合で父親が行けなくなってふて腐れてしまう。
コウキと出会ったミライが父親の大変さを語ると、そこにジャシュラインが襲来する。
変身して戦うメビウスだが黄金像にされてしまう。その時、ウルトラの父が降臨した!
感想
「ウルトラの父降臨祭」は冬の時期に何度か現れて奇跡を起こしたウルトラの父の偉業を称えて祝うもので怪獣頻出期に出来たらしい。
因みにウルトラの父が登場したのは『A』の「奇跡! ウルトラの父」(10月)と「復活! ウルトラの父」(12月)、『T』の「ウルトラ父子餅つき大作戦!」(12月)と「ウルトラの父と花嫁が来た!」(3月)、『レオ』の「レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」(1月)、『80』の「大空にひびけウルトラの父の声」(12月)となっている。どの作品でも冬の時期に必ず登場しているので、この時期に降臨祭が行われるようになるのは納得。(もっとも、『レオ』と『80』での登場は地球の人々には知られていないと思うけれど)
「ウルトラの父降臨祭」ではケーキを食べたりプレゼントを交換したりするらしく、街中でも色々なイベントが行われていた。時期的な事を考えるとクリスマスと一緒にされているのかもしれない。(「復活! ウルトラの父」でウルトラの父がサンタクロースの姿で現れた事があるし)
降臨祭のポスターには「ウルトラマンアクションショー」と言う一文がある。この世界でも着ぐるみによるヒーローショーがあるようだ。どのような形で行われているのか気になる。
そう言えば、この世界では昔からウルトラマンや怪獣のソフビが売られているが、どこの会社が売っているのだろうか。ひょっとして、この世界にも円谷プロやバンダイがあるのだろうか。
今回は父子家庭と思われる家族の話。こういう子供中心の話は第2期ウルトラシリーズを思わせて懐かしい。
父親の突然の仕事に憤っていた子供が怪獣出現と言う突然の仕事に向かうミライを見て自分の父親の仕事にも理解を示すようになると言う展開。
真夜中に仕事をしている時の背中、足を挫いた自分を背負った時の背中、自分の事を見てくれていない(と思っていた)時の背中、自分の事を見てくれている時の背中、そういう父の背中を合わせる事で「父親」と言う存在を示したのが上手かった。
拗ねるコウキを諭すミライ。普段は幼く見えるミライだが子供と絡むとさすがに大人に見える。
昭和のヒーローは大人っぽくて平成のヒーローは子供っぽいと言われるが、その原因の一つにゲストの年齢があるのかもしれない。
昭和のヒーロー作品では子供のゲストが多く、ヒーローは子供を諭して守る大人な存在として描かれていたが、平成のヒーロー作品では子供のゲストが少なくなって大人のゲストが増えた。そして大人のゲストから人生や仕事について教わる事が多くなり、結果、平成のヒーローは未完成な若者と言う印象になったのではないかと思われる。
ゴールジャシュラーでメビウスを黄金像に変えるもカラータイマーだけ黄金に変わっていない事を知ったジャシュラインはカラータイマーを破壊しようとする。
絶体絶命のピンチに陥るメビウス。そこに上空から七色の光線が! そして地上に降り立つ緑の光球からウルトラの父が出現する!
ウルトラの父の登場シーンが「別れの日」のタロウの登場シーンと似ているのは父子的な意味で狙ったのかもしれない。
「奇跡! ウルトラの父」でのヒッポリト星人戦を始め今までイマイチ強さを示せていなかったウルトラの父だが今回は十分な貫禄! ジャシュラインを圧倒する戦闘力もだが、西岡徳馬さんの声や内山まもるさんの漫画を髣髴とさせるマントもウルトラの父の貫禄に大きく貢献している。
今回の話は「ウルトラマンが像に変えられる」と言うウルトラの父が初めて登場した『A』のヒッポリト星人編との共通点が見られる。
ウルトラの父の光球がヒッポリト星人戦と同じく緑がかっていたのが嬉しい。
因みにヒッポリト星人は『メビウス』には登場しなかったが、前回の「ミライの妹」でトリヤマ補佐官とマル秘書が持っている雑誌の表紙に出ている。
宇宙ストリートファイト連勝街道爆走中!で「ウルトラの父を倒せば自分の名前が売れる!」と豪語するジャシュラインはウルトラシリーズでは珍しいタイプの敵キャラ。
トーテムポールを思わせるデザインや三つの顔からなる多彩なキャラや能力と『メビウス』に登場した宇宙人の中でもかなり面白い存在であった。
今回はコウキと父親、メビウスとウルトラの父と言う二組の父子を描いている。
コウキと違ってメビウスはただウルトラの父の背中を見るだけではなく、ジャシュラインとの戦いでは逆にウルトラの父がメビウスを背後から見守る、つまり、ウルトラの父がメビウスの背中を見る構図がある。
メビウスは宇宙警備隊の新人である若きウルトラマンだが、その一方で人々の期待を背負った地球の守護者でもあるのだ。
メビウスは「ウルトラの父が来てくれなければジャシュラインに勝てなかった」と落ち込むが、ウルトラの父は「カラータイマーが黄金に変えられなかったのはメビウスがジャシュラインに屈しなかった証だ」として「君自身が諦めない限り、それは敗北ではない」と語る。
そして自分達に感謝を述べる人々に目をやり、「ウルトラマンとして戦うと言う事は決して彼らの想いを裏切らないと言う事。彼らの希望であり続けると言う事だ。そうすれば、君はもっと強くなれる」と言葉を掛ける。
そして強く大きな背中を人々に見せ、ウルトラの父は光の国へ帰っていくのであった。