帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「HOPELESS」

Episode3 HOPELESS
ULTRASEVEN X』第3話
2007年10月19日放送(第3話)
脚本 福田卓郎
監督 鈴木健二

 

宇宙商人マーキンド星人
身長 170cm~190cm
体重 70kg~100kg
商人として侵略ではなくビジネスをしていると主張するエイリアン。自分の星の科学は使うが地球人を無理矢理に働かせる事は無く、雇う前に仕事でのリスクを説明して報酬もきちんと支払う。
クライアントからの依頼で大量のホープレスを雇って謎の侵略兵器を開発していた。仕事の邪魔をするジン達を排除する為に人間の皮を破ってエイリアンの姿を現す。ジン=セブンXの戦いは自己満足だと断じ、自分のクライアントは地球人であったと明かした。
右手と両目から放つ光弾で戦うがセブンXのアイスラッガーで弾き飛ばされて爆発した。
名前の由来は「マーチャント(商人)」と「商人(あきんど)」かな。

 

物語
脳が異常収縮した死体が次々と発見された。
ジンとケイはホープレスに紛れてタマルと言う男が紹介する仕事場へと向かう。
果たしてタマルの目的とは? そして死んだホープレス達の本音とは……。

 

感想
現在の日本の労働・雇用の問題をテーマにした話。
エイリアンの存在を軸にしているのでウルトラシリーズとしてきちんと成立している。

 

ジンが休みの日に公園でタマルに声を掛けられる場面はタマルのキャラクターとBGMの効果もあって『SEVEN X』では珍しくコミカルな雰囲気になっている。

 

『SEVEN X』の世界は政府の管理が隅々まで行き届いているが前回の「CODE NAME“R”」でその管理に従って生きる事が出来ない人々が描かれた。
政府が管理する社会で生きられず、かと言って地球外に脱出する事も無かった人達はどうなるのか。それが今回登場した「ホープレス」、希望を失った怠け者の負け犬であった。
こういう人達にやたらと横文字を付けたがるのが現在の日本らしい。いつか現実世界でも「ホープレス」と言う言葉が使われそうだ。

 

今回は仕事の話なのでジンはケイに「どうして危険な仕事であるエージェントをしているのか?」と問う。それに対するケイの答えは「地球を守る為には給料が安すぎる。しかし、それでもエージェントとして働こうとする強い信念がある」であった。
しかし、過去の記憶を失っているジンは自分がエージェントと言う仕事を選んだ理由が分からない。それはそのまま「どうしてセブンXとして戦うのか?」と言う自分自身に対する疑問に繋がっていく。

 

脳が異常収縮した男の遺体が発見され、DEUSはエイリアンによるキャトルミューティレーションの可能性を挙げる。
ケイはエイリアンが地球人を奴隷化する為の実験の結果ではないかと考える。これは『セブン』の「恐怖の超猿人」を思い出す。

 

公園で声をかけてきたタマルの名刺からジンは他のホープレスと一緒にある地下工場へと連れて来られる。
給料の高さを餌にエイリアンが若者を集める展開は『平成セブン』の「地球より永遠に」を思い出す。

 

タマルが紹介する仕事は「時給はまぁまぁでキツイけれどリスクの無い仕事」と「時給は凄く良くて楽だけれどリスクのある仕事」の二つ。
「リスクの無い仕事」は肉体労働や精密作業と言った現実世界と同じ仕事で、「リスクのある仕事」は巨大装置を動かすエネルギーを脳から絞り出すと言うSF作品ならではの仕事だった。
「脳のエネルギーを絞り出す」と言うのは現実には無いが、肉体労働や精密作業も肉体や神経を磨り減らすので人間のエネルギーを絞り出していると言える。そう考えるとタマルが紹介するリスクのある仕事も実はそれほど滅茶苦茶なものとは言えないのかもしれない。

 

タマルの正体がマーキンド星人と言うエイリアンで、クライアントからの依頼で侵略兵器を開発している事を知ったジンとケイは実力行使に出る。
タマルは自分はビジネスをしているだけと言うが、ジンは侵略兵器の開発に手を貸している以上は同罪だと断じる。しかし、それでは事情を知っていても仕事に加わった地球人達も同じように倒すのかと言うタマルの問いにジンは迷った末にタマルとホープレスは違うと答える。
残念ながらこれは説得力に欠ける返答。ジンがタマルとホープレスは違うと言った根拠は地球人かどうかと言う事だけ。記憶を失い、確固たる目的が無い状態で「エイリアン=悪 地球人=善」と言う単純な図式で戦おうとしたジンの危うさが浮き彫りになってしまった。

 

ジンとケイはタマルに雇われていたホープレス達を解放しようとするが、事情を説明されてもホープレス達は仕事を止めようとしなかった。
政府がホープレスに課す仕事は他の人が嫌がるキツイ仕事。そして政府が管理する社会から外れたホープレス達はカードを持つ事が出来ないので現金を手にしなければ生きていく事が出来ない。ホープレス達にとっては、この社会がどうなるかより自分の明日の生活が大事。個人を省みなくなった社会は、やがて個人から省みられなくなるのだ。
因みにこの世界の政府はグラキエスと言うエイリアンに支配されている。政府がホープレス達に課した仕事の内容は明かされていないが、ひょっとしたら、グラキエスの地球支配に関わる仕事、いわゆるエイリアンの地球侵略に手を貸す仕事だった可能性がある。(そう考えるとグラキエスが支配するこの社会の政府よりタマルの方がよっぽど人道的であったと思う)

 

今回のセブンXは巨大化しないまま戦いを終えている。
ウルトラシリーズで巨大化が無いと正直言って違和感を覚えるが、『セブン』で巨大化しない話があったので『SEVEN X』でも巨大化しない話があっても自分的にはOKになっている。

 

最後にタマルは自分に侵略兵器を作るよう依頼してきたクライアントは地球人であったと衝撃の告白をする。
この地球人とは一体誰であろう? グラキエスは既に地球を支配しているので新たな侵略兵器は必要無いし、作るのなら自分達で作るだろう。DEUSを使って今回の計画を妨害しているので、タマルのクライアントはグラキエスではないと言って良いだろう。
そうなると地球にいてグラキエスとは別の人達がタマルに依頼したと考えられる。エレアはタマルの正体を知らなかったので、エレア達とは別のグラキエスに対抗しようとしている組織がクライアントだった可能性がある。(その地球人がタマルの正体をどこまで知っていたのかは不明だが、エイリアンの支配から脱する為に別のエイリアンに侵略兵器を作らせると言うのも皮肉なものだ)
そう考えると結果的にセブンXはグラキエスの地球支配の手助けをしてしまったと言える。

 

今回の話は福田さんの現時点でのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。