帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「マリオネットの夜」

「マリオネットの夜 ー超空間波動怪獣サイコメザード登場ー
ウルトラマンガイア』第13話
1998年11月28日放送(第13話)
脚本 長谷川圭一
監督 根本実樹
特技監督 佐川和夫

 

超空間波動怪獣サイコメザード
身長 66m
体重 3万6千t
以前に砂漠化した街で人間の頭の中を覗いていた。人間に興味を持っていて砂漠化した街や城岩温泉郷を実験所に選んだ。一ヶ月前にアメリカのあるリゾート地にも現れていて、その土地を封鎖に追い込んでいる。携帯電話やTVを使って電波で人間の精神に直接侵入して操っていく。
ファイターEXのパイロットウェーブとサイドワインダーで実体化させられる。
胸から光線を撃ち、触手で相手を捕らえる。意外にも飛行能力がある。
操った人間を盾にしてガイアを追い詰めるが最後はアグルのフォトンクラッシャーで倒された。

 

物語
彼女に振られて里帰りするサトウ。視聴者から送られてきた謎のビデオテープに興味を持つ田端。両者の行き先は同じ城岩温泉郷であった。

 

感想
封鎖された街で携帯電話の音と共に何かに操られていく人々。
ウルトラシリーズは昔からホラーな雰囲気の話があったが、どちらかと言うと和風の怪奇話が多かった中、平成三部作はアメリカンホラーな話が多い印象がある。

 

久々登場の田端さん。根源的破滅招来体の理不尽な破壊活動の裏には明確な意思が働いているのではないかと考えるが局長に小難しい理屈は止めて分かり易くしてほしいと注意されてしまう。
田端さんが企画した報道特番は視聴率が最悪だったらしい。難しい話をしたら視聴率が下がると言うのは昔からよく言われている事で、これはネット時代になってもあまり変わっていないところがある。ヒーロー作品も難しめの作品は視聴率が落ちる傾向があるが『ガイア』の時もこのような事が言われたのかな?

 

サトウは好きだった彼女に振られてバイクで実家に向けて一人旅に。彼女がいるのに他の女性を研究室に勧誘しようとするから……。
サトウの実家は城岩温泉郷で「季節風」と言う名前のペンションを経営している。
それにしても3年も家に帰っていなかった事も驚きだが、久々に帰る理由が彼女に振られたからと言うのがなんとも……。サトウらしいと言えばらしいが。

 

居酒屋で田端さんに愚痴をこぼされている時のリンブンがバンダナを外していたので一瞬誰だか分からなかった。
今回は城岩温泉の旅番組。田端さんは送られてきた謎のビデオテープの秘密を突き止めようとするが、どちらにせよ城岩温泉郷に行って事件に巻き込まれる事には変わりない。事件に自ら首を突っ込もうが巻き込まれようがKCBの行く所に事件が起きる。

 

サトウが里帰りした城岩温泉郷マイクロ波による電波障害が起きている事を知った我夢は出動を申し出る。
堤チーフは我夢には自分達とは違う感覚、未知なる危険を察知する能力があると語り、石室コマンダーはその能力を大事にしてやってくれと返す。
この新世代が新しい感覚や能力を持っていると言うのはガンダムシリーズの「ニュータイプ」を思わせるものであった。

 

城岩温泉郷にやって来た藤宮。目的はサイコメザードだと思われる。そして警官に撃たれそうな玲子を助ける。
玲子「あなた、いつか砂漠の街で……」、
藤宮「奴らは人間に興味を持っている。砂漠化した街もここもその実験場として選ばれた」、
玲子「奴らとか実験とかって一体何の事?」、
藤宮「君が知る必要は無い」。
いや、アンタが勝手に喋り出したんでしょうに……。これ以外も藤宮は玲子には色々喋っている。後に藤宮自身が語るように誰かに話を聞いてほしかったのだろう。その辺り仲間を拒絶しながら本当は一人が嫌だったと思われる。

 

玲子は田端さんやリンブンを助けてほしいと頼むが藤宮は存在理由を持たない人間はいずれ消えると拒否する。その割には玲子のように目の前で困っている人間は必ず助けている気がする。この矛盾が藤宮らしい。
玲子は警官の銃を拾うと自分で助けに行くと宣言。せっかく助けた命をと呟く藤宮に向かって「何様か知らないけど一つだけ言わせてちょうだい! 人の存在理由って誰が決めるのよ!」と啖呵を切る。
後にリンブンに襲われた時に逆に殴り倒したり、ガイアを助けようとサイコメザードを撃ったり、玲子はいざと言う時かなり強い。

 

家族が次々とサイコメザードに操られていく中、サトウの弟は何とか逃げ出して救助を待っていた。KCBにビデオテープが送られてきたのが2日前なので、サトウの弟は丸二日もホテルの屋上で耐えていた事になる。この年齢でこれはかなり凄い。今回や「襲撃の森」であっさり操られてしまった兄とはえらい違いだ。
しかし、さすがに絶望感に襲われたのか、田端さんに「人間が死んだらどこに行くのか」「天国は本当にあるのか」と尋ねる。

 

サトウの弟が天国について語るのはやや唐突であったが、そこから天に位置するエリアル・ベースから助けが来る展開は上手かった。
田端さんは今までXIGに懐疑的だったが根源的破滅招来体の脅威に対してさすがにXIGを頼るようになる。

 

今回のガイア登場や激走する場面はオープニングやエンディングで使われているものなのだが今回の話にバッチリ合っていた。

 

飛ぶデザインではなかったのでサイコメザードが飛んで攻撃してくるのには驚いた。

 

今回のアグル登場シーンも文句無しのカッコ良さ。
思わず玲子を見つめるアグルだったが玲子はそこから何かを感じたのかな。

 

今回のアグルは超高速で攻撃をかわして尻尾を掴んで放り投げる等、以前よりスピードとパワーが格段に上がっている。ウェイトトレーニングを嫌がる我夢と違って藤宮は毎日トレーニングをしているのでその成果が現れたのかな。
周りの人間もろともサイコメザードを倒そうとするアグルと身を挺してそれを守るガイアの対比が良かった。
藤宮は我夢に「せっかくの力を有効に使えないのがお前の弱さだ」と指摘するが、これはトレーニング不足と戦いでの決断と言う二つの意味で言っていそう。この辺りで我夢はトレーニングする気になったのかな。

 

今回の取材で報道部に返り咲けるかもと喜ぶ田端さん達であったがテープはノイズばかりで全てオシャカに。全てが無駄だったのかと肩を落とす田端さんだったが玲子はそうでもないと思うとして喜ぶサトウ一家を指差す。それを見た田端さんはやる気を取り戻してXIGへの独占取材へ向かうのであった。
ウルトラシリーズの主人公は全体的に若者が多いのだが平成以降は特に若さ未熟さが強調されるようになったので今回の田端さんとサトウの弟のような大人と子供の話は珍しくなっていった。個人的にはこのパターンの話はもう少し増やしてほしいところ。

 

今回の話は根本実樹さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。