帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「野獣包囲網」

「野獣包囲網 ー獣人ウルフガス登場ー
ウルトラマンガイア』第12話
1998年11月21日放送(第12話)
脚本 川上英幸
監督 原田昌樹
特技監督 満留浩昌

 

獣人ウルフガス
身長 2m~47m
体重 130kg~3万8千t
宇宙から地球に飛来したカプセルに入っていた。
地球より重力の強い状況下で育った生物で凄まじい跳躍力を誇り、チーム・ライトニングと夜通し鬼ごっこを繰り広げる。太陽光線を浴びるとガス化する特殊な生物で、我夢の推測によると宇宙での苛酷な環境に耐えうる為に何者かに改造されたかもしくは自己進化して体質を変化させた悲劇の存在らしい。
非常に柔軟な成分で構成されていて他の気体を同化させやすい。昼間はガスタンクの中に潜んでいたがXIGの撃った強力麻酔弾がきっかけで体質変化を起こして巨大化した。ライトニングに撃ち込まれた細胞気化弾で再びガス化すると最後はガイアによってガスタンクの中に収められて宇宙に放たれた。藤宮によると、それは救いではないらしいが……。
名前の由来は「ウルフ」と「ガス」から。

 

物語
目撃された怪物に対してXIGが包囲網を展開するが何故か怪物は発見されなかった。
そこに藤宮が現れて……。

 

感想
初期設定を紹介し、根源的破滅招来体とはどういう存在なのかを示し、XIGの各チームの紹介をしてと約1クールかけて下地が整ったところでいよいよ『ガイア』の本筋と言えるアグル編が開始となった。
今まではチラッと現れてはすぐに消えていた藤宮も今回の話から本格的に物語に絡むようになる。

 

謎の怪物と遭遇した青年はなんと服を脱いで怪物に戦いを挑む!
青年は最初はウルフガスを圧倒していたが怒ったウルフガスの反撃を受けて……。と、どう考えても殺されていそうな展開だったが後に生きている事が判明する。アンタはMACの青島隊員か!?
因みにこの青年を演じたのはアグルのスーツアクターである清水一彦さん。特撮ではアグルがウルフガスを圧倒しているが本編ではスーツアクターがウルフガスの反撃を受けているのが面白い。
人間大の怪物に挑む民間人や特別チームと言う展開は『レオ』っぽい。意外と『ガイア』は第2期ウルトラシリーズに通じるものが多いのかもしれない。

 

今回はどう考えても空から捉えるのは難しそうな事件なのだが何故かチーム・ライトニングに出撃命令が下りる。
ピースキャリーにチーム・ハーキュリーズがいなかったのかな? でも、ライトニングのあの様子を見るとエリアル・ベースからハーキュリーズを呼んだ方が良かったと思う。
ロック・ファイト」でチーム・クロウが「何故我々を出撃させないのか?」と堤チーフに詰め寄っていたが、どちらかと言うと「何故ライトニングばかり出撃させるのか?」と問い詰めてみたくなる。

 

今までの梶尾リーダーはムキになるところはあるが任務では的確に仕事をこなすプロフェッショナルな人物として描かれていたが今回の話で実は射撃が壊滅的に下手だった事が判明する。
サバイバル訓練を受けているとして先回りしてウルフガスを追い詰めるまでは良かったが、ただ突っ立っているウルフガスに一発も当てる事が出来ず、最後は我夢のジェクターガンをぶんどって撃っても当てる事が出来なかった。おまけに翌日は筋肉痛に……。まぁ、ビビって撃てなかった大河原よりは遥かにマシではあるが。
因みにファイターに乗るとあんな小さなウルフガスに何故か一発で命中させていた。やっぱりアンタはパイロットだ!

 

ジオ・ベースの情報部を中心に構成され、地上で発生した超常現象や怪事件を捜査するチーム・リザードが登場。
瀬沼は強面であるが態度は礼儀正しかった。組織モノで情報部は嫌われキャラになりがちだが『ガイア』の瀬沼は情報部所属の強面を若い主人公に理解がある人物とした事でキャラに深みが出た。

 

我夢は翌日になってもまだ筋肉痛に苦しんでいて、呆れたジョジーに筋肉痛の部分を蹴られて「これからは走った方が良い」と苦言を呈される。
梶尾リーダーが射撃の訓練を受けている事を知った我夢は梶尾リーダーの射撃の腕を笑うがアッコに「何様のつもり?」と耳を引っ張られてしまう。

 

地球の洗濯」以来と言う久々の登場となった藤宮。
「安全な場所に避難した方が良い」と警告する瀬沼に向かって藤宮は「今の地球に安全な場所なんてあるのか?」と返す。この時の藤宮を瀬沼は「見た目は普通だが、なんとなく凄みのある」と評する。
その後、ベルマンで移動中の我夢と瀬沼はウルフガスを発見。瀬沼は我夢を制して単独でウルフガスに挑むがあえなく倒されてしまう。そこに藤宮がいきなり現れると内に秘めたアグルの力でウルフガスを怯えさせてしまう。それを見た我夢が「奴には分かったんだ。君がウルトラマン……」と藤宮に話しかけるが実はこの時に瀬沼は既に意識を取り戻していたりする。ひょっとしたら、この時に瀬沼は藤宮と我夢とウルトラマンとの関係に気付いたのかもしれない。

 

ウルフガスは被害者なのかもしれないと述べながらも我夢は石室コマンダーが伝える抹殺指令に迷いは無いと答える。意外と初期の我夢はこういう事で悩まない。

 

アグルの登場に「どういうつもりなんだ?」と出撃する我夢とそれを黙って見送る石室コマンダー。この時点で石室コマンダーは我夢と藤宮とウルトラマンとの関係をどの程度まで把握していたのかな?

 

怯えるウルフガスを圧倒するアグル。
ウルフガスは生き残る為に必死の抵抗を試みるが結局はアグルに追い詰められてしまう。
遂にアグルはフォトンクラッシャーでウルフガスを街ごと爆破しようとするが、そこにガイアが割って入ってフォトンエッジで相殺。そのままガイアとアグルの対決が始まってしまう。

 

ウルフガスに細胞気化弾を撃ち込む任務は本当はハーキュリーズの担当だったらしいがリベンジに燃えるライトニングがハーキュリーズを押しのけて出撃したらしい。
訓練のかいあって見事ウルフガスに命中! ……なのだが、あれだけ大きい的なら普通は当たるような気もする。
因みにライトニングはその後も射撃訓練を続けていて「魂の激突!」では見事な腕前が披露される。

 

再びガス化したウルフガスをガイアはガスタンクに収めて宇宙に放すが、それに対して藤宮は「それで助けたつもりか?」と疑問を呈する。
丸いカプセルに入れられたウルフガスが再び宇宙を放浪するのは今回の話の冒頭に繋がる。劇中で我夢は「ウルフガスは何者かに改造されたか自己進化した」と推測したが、ひょっとしたら今回の我夢のようにウルフガスを助けるつもりで結果的に体質を変化させてしまい、結局は自分の星に置いておけなくなって宇宙へ放したの繰り返しだったのかもしれない。そう考えると我夢はウルフガスを救ったのではなく更なる苦しみを与えただけと言う事になる。では、藤宮は死をもってウルフガスを救おうとしたのだろうか……?
生きていればいつかきっと救われるはずだと思ってウルフガスを殺さなかった我夢と生きていても永遠に苦しみ続けるだけだと考えてウルフガスを殺そうとした藤宮。二人が出した結論の違いは二人が未来に希望を見ているか絶望を見ているかの違いから来ているのかもしれない。

 

前回のミズノエノリュウの存在で地球怪獣が根源的破滅招来体から切り離されたが、今回のウルフガスを実は悪意を持っていない悲劇の存在とした事で後に宇宙怪獣も根源的破滅招来体から切り離される事となった。
前回と今回の話は顔の無い怪獣が続いた事に不満を抱いた原田監督と満留監督が番外編として製作したものらしいが、その番外編と位置付けられた話が最終的には作品の本筋になっていくところが『ガイア』の面白さでもあった。

 

今回は『ガイア』では珍しくかなりファンタジックな雰囲気の話となっている。
話自体はシリアスだが演出がファンタジックで絵本を見ているような感じになっている。こういう演出が出来るのはウルトラシリーズならではだなぁと思う。