帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「地球の叫び」

「地球の叫び ー根源破滅天使ゾグ 破滅魔虫カイザードビシ登場ー
ウルトラマンガイア』第50話
1999年8月21日放送(第50話)
脚本 小中千昭長谷川圭一
監督 村石宏實
特技監督 佐川和夫

 

破滅魔虫ドビシ
身長 62cm
体重 6.8kg
一度はゾグによって消し去られたが、その後に再び世界各地に出現した。
太陽光を遮断して地球の生態系を狂わせようとする。

 

破滅魔虫カイザードビシ
身長 62m
体重 6万8千t
地球怪獣の出現に対抗してドビシの群れが再び合体した。
翼で相手を切り裂く。
地球怪獣と人類の共同攻撃によって何体か倒された。

 

幻影怪物魚人
身長 230cm
体重 計測不能
ゾグによって消し去られた。

 

根源破滅天使ゾグ
身長 127m
体重 9万t
そらの闇を引き裂いて降臨した光をまとった存在。
一度はカイザードビシと魚人を消し去る。
手から波動や光線を放ち、指先で相手を弄ぶ。眼から怪光線を放つ。
ウルトラマンと同じエネルギーを持っていて倒したガイアV2とアグルV2から光を奪った。
ウルトラマン用の最終兵器だからかEXやスティンガーの攻撃にはやや弱い。

 

地球怪獣達
ティグリス、ゴメノス、ゾンネル、ギール、シャザック、ミズノエノリュウが出現。
体内に核融合反応=太陽を持っていて、そのマグマ=太陽の力をイナゴにぶつけて攻撃する。
人類と共にカイザードビシと戦う。
地殻怪地底獣ティグリスⅢ 身長 92m 体重 11万8千t
豪腕怪地底獣ゴメノスⅡ 身長 71m 体重 8万3千t
甲殻怪地底獣ゾンネルⅡ 身長 86m 体重 9万5千t
マグマ怪地底獣ギールⅢ 身長 86m 体重 9万4千t
伝説魔獣シャザック 身長 親・67m 子・38m 体重 親・7万t 子・3万3千t
地帝大怪獣ミズノエノリュウ 身長 111m 体重 11万t

 

物語
降臨した天使ゾグによって二人のウルトラマンは敗北してしまう。
人々が絶望に襲われる中、地球から次々に怪獣達が現れて根源的破滅招来体と戦う!
それはまだ諦めないと言う地球の叫びなのか!?

 

感想
そらの闇を引き裂いてゆっくりと地上に舞い降りる光をまとった存在はカイザードビシを消し去って二人のウルトラマンのエネルギーを回復させる。
ジョジー「天使?」、
千葉「神々しい光だ……」、
堤「我々の味方なんでしょうか?」、
石室「……」。
「天使」と称されたその存在は微笑むとゆっくりと手をかざして魚人を消し去っていく。
リンブン「田端さん、奇跡が起こりますよ」。
リンブンの言葉に笑顔で頷く田端さん。
天使の手招きを受けたアグルV2は何かに魅入られたかのように天使のところへと歩み寄っていく。その時、
玲子「危ない!」。
次の瞬間、天使が放った波動によってアグルV2は吹き飛ばされてしまう! そのまま天使は指先でアグルV2を弄び、ガイアV2も近付く事すら出来ず無力に吹き飛ばされてしまう。思いがけない事態に動転する人々。
サトウ「あいつ天使なのかよ!?」、
マコト「違う! ウルトラマンを葬りに来たんだ」。
根源的破滅招来体から送り込まれた最後にして最大最強の存在、その名は根源破滅天使ゾグ……!

 

ウルトラシリーズは半世紀以上の歴史があって強敵と言われる存在も数多くいる。その中でもゾグは「怪獣」とも「宇宙人」とも違う「天使」と言う特徴的なデザイン、巨人であるウルトラマンですら小人に見えてしまう程の大きさ、エネルギーが回復している状態の二人のウルトラマンを真正面から叩き潰す強さと印象に残る存在であった。

 

ゾグによって二人のウルトラマンは敗れ光を奪われてしまう。玲子は田端さんに中継を止めるよう頼むが、リンブンはどんな事でも全て報道するのが自分達の使命だとして中継を続けてしまい、二人のウルトラマンが人間だった事を世間に知らせてしまう。
ゾグの目的は人類の希望となったウルトラマンの完全敗北を見せ付ける事で人類を絶望に叩き落とす事。残念ながらリンブンは根源的破滅招来体が人類を滅ぼす為の最後の一押しをしてしまったのだった。
リンブンは報道の使命に目覚めたのは良かったが自分がこれから何を伝えて世間にどのような影響を及ぼすのかまでは考えが至らなかった。「無能な働き者」とまで言ってしまうのは可哀相だが、正直言って、リンブンのような人物でも人類の命運を左右する事が出来てしまう「情報の発信」と言う力は恐ろしいなと思う。

 

息子がウルトラマンであった現実を我夢の父親は「そんな馬鹿な!」と思わず目を逸らすが母親は「ちゃんと見て! あれは我夢よ。これまでずっと私達にも黙って、あの子……」と受け止める。
父親と違って母親は我夢がXIGに入隊した後に何度か言葉を交わしているので我夢が何か秘密を抱えている事を薄々感ずいていたのかもしれない。(父親の方も映像には描かれていないだけで実際は「熱波襲来」の後に我夢と会話したと思うが)

 

我夢の危機にファイターEXに搭載されたPALが助けに来るがゾグに破壊されてしまう。PALの救援は予想外で驚いた。ゾグに破壊されてしまった場面は思わず涙が出そうになった。
ところでEXは「XIG壊滅!?」でエリアル・ベースの爆発に巻き込まれていたはず。まさか宇宙空間から自力で戻って来たのかな。凄いぞ、PAL!

 

ウルトラマンはただの人間だった……」「神様じゃなかった……」「ただの人間に地球が救えるはずないよ!」とウルトラマンの敗北とその正体を見せつけられた人々は絶望してしまう。
一方、我夢と藤宮はウルトラマンの石像が埋もれている滅びのヴィジョンの砂漠にいた。
藤宮「あの天使みたいな奴は俺達を倒す為だけに生まれている。最終兵器が天使とは奴ら神を気取っているつもりらしい。しかし、俺達は勝てなかった」。
藤宮の言葉に我夢はまだ負けていないと反論するが手にしたエスプレンダーはひび割れて光を失っていた。
昔からウルトラマンを神や天使と絡めた解釈があるが、『ガイア』では今回の話でウルトラマンは神様ではなくてただの人間だったとして、それと同時にゾグを天使にして根源的破滅招来体を神を気取る存在とした。こういう「ラスボスが神や天使」は多くの漫画やゲームで使われてきたがそれらに比べてターゲットが低年齢のウルトラシリーズでも使われるようになったと言うのは興味深い事である。

 

目を覚ました我夢がいたのはサトウの部屋。どうやら我夢の危機を知ったサトウが助けなきゃと飛び出したらしい。あの状況でウルトラマンの正体に驚くよりも戸惑うよりもまず我夢を助けようとしたサトウは友達の鑑である。
因みに「地球よ永遠に」ではサトウが我夢を助けた理由を「友達だもんな」と答えてナカジに「そういうクサイ事よく言えるよな」とツッコまれる場面がある。こういう友達関係って良いなぁと思う。

 

どこからか我夢の居場所を突き止めた人々がサトウの部屋に迫る。それをサトウは「魔女狩りのつもりかよ……」、マコトは「恐怖心。又は歪んだ正義感」と評する。
仰々しいがワイドショーが有名人を追いかけている感じにしか見えなかったのが残念。「魔女狩り」「恐怖心」「歪んだ正義心」と言うのなら原作版『デビルマン』くらいの雰囲気が必要だったかなと思う。又、我夢を追いかけるのが報道関係者ばかりで一般人が殆どいなかったのも疑問。「死神の逆襲」で死神が「ウルトラマンを差し出せば人類は助ける」と言っている後なのでウルトラマンを根源的破滅招来体に差し出そうとする人々が出てきてもおかしくなかったはず。(でも、ターゲットを考えたらこの辺りが描写の限界だったのかな?)

 

ゾグの狙いはTV中継を使ってウルトラマンの敗北を見せつける事で人々を絶望させ、さらにウルトラマンの正体を白日の下に晒して人々がウルトラマンだった人間を襲うように仕向ける事であった。このTVを使って人間の心理を操り破滅へと導いていくのはメザードを思い出す。

 

ゾグはウルトラマンに光を与えたり逆に奪ったりしているので、ゾグとウルトラマンのエネルギーは同じ又は非常に近いものだと考えられる。これには金属生命体が得ていたウルトラマンのデータが関係しているのかもしれない。

 

我夢は人々の狙いは自分だと言うがマコトはここまで来たら一緒だとして我夢の制服を着て人々を自分へと引きつける。そこにKCBのリレイラーが到着してサトウが最高の展開だぜと喜ぶ。
確かにKCBは我夢の味方だったがサトウ達がどうしてそう思えたのかはちょっと疑問。サトウ達とKCBの話は殆ど無かったので他の報道関係者と同じに見えてしまう気がするのだが……。
リレイラーに乗り込んだ我夢は残されたサトウ達の事を心配するがサトウ達は「俺達は大丈夫だよ。なんたって俺達ウルトラマンの親友だぜ! 我夢! 平和をヨロシク!」と答える。

 

ジオ・ベースにやって来たG.U.A.R.Dの幹部は最終プログラム=命乞いに入る事を告げる。相手は知性ある地球外生命だから交渉は不可能ではないとの事。そう言えば確かにその通り。「XIG壊滅!?」で千葉参謀とタコ型の宇宙人が和平交渉をしていると言う記事があったがあれは単なるトンデモ記事で片付けられるものではなくて実はあり得た可能性だったのかもしれない。
人々を守るのなら交渉も立派な選択の一つではあるが残念ながら『ガイア』の根源的破滅招来体は交渉相手になるような存在ではなく、人類が決して諦めずに立ち向かっていかなければならない障害に近い存在だった。(メインライターの小中さんは根源的破滅招来体を「不条理」と定義していた)

 

自分達にはまだ戦う力が残っているとXIGの武装解除を拒否する石室コマンダーに向かってG.U.A.R.Dの幹部はXIGがG.U.A.R.Dの指揮から離れるのなら造反扱いになると脅すが、石室コマンダーは自分達が守るのはG.U.A.R.Dと言う組織ではなく地球の人々だと反論する。
因みにゲームのスーパーヒーロー作戦シリーズの寺田貴信プロデューサーは「主人公のチームを立たせるには体制から離れないといけない。だから絶対反逆の話を入れるべき」と教わったとの事。XIG造反の話はそれを思わせるものだったが、G.U.A.R.Dの指揮から離れた後の話が殆ど無かった為にあまり造反したように見えなかったのが残念。1話で良いのでXIGとG.U.A.R.Dの対立を軸にした話があれば良かったかも。

 

「自分は前にある人物に問われた事があります。どんなに先端の科学であっても我々の組織や装備は元来人と人とが争う戦争の為に作られたもの。その我々に地球を守る資格があるのかと……」と言う堤チーフの話に石室コマンダーは「何と答えた?」と尋ね、それに対して堤チーフは「答えられなかった」と正直に答える。それを聞いた千葉参謀の「答えは……これから出すものじゃないのかな? 藤宮とか言う若者が言っていたらしいが、確かに我々人類はこの地球を大事にせずに生きてきた。その人類に地球は生きる光を与えてくれた」と言う話に堤チーフは決意を新たにする。
ここまで話を進めてきて「答えはこれから出すもの」と言うのは今更感があるが、その今更な答えでも出せた事に意味がある。その今更な答えも出なかったら人類は何も変わらない。この答えは今まで人類が生きていたからこそ出せたもの。もし人類が滅んでしまっていたら答えを出す事もそれ以前に疑問に思う事すら出来なかった。人間はなぜ存在するのか? それは人間が存在する事に意味があるのだ。

 

ファイターが整備中で出撃できず焦るパイロット達。そこにオペレーター3人組がやって来て、通信不能になって失業したがまだ諦めていないから整備の手伝いをしていると語る。それを聞いてパイロット達は自分達もまだ諦めていないとし、乱橋チーフはまだ諦めていないのは整備も同じだと整備の人達を集める。集まった整備の人達を見て梶尾リーダーは大切な事を思い出す。
「忘れていたわけじゃない……。ファイター一機飛ばすのにどれだけ大勢の人々が働いていたのかを……。すみません。自分達の焦る気持ちを抑える事が出来ずに……」。
そんな梶尾リーダーに乱橋チーフは「あと4時間待ってくれ。最高の機体に乗せてやる」と告げる。
特別チームの戦闘機は毎回簡単に撃墜されているイメージがあるが、よく考えたらその修理等に携わっている人達がいるはず。その普段は語られない裏側を少しでも見せてくれた意義は大きい。
特別チームの整備班の物語と言えば『機動警察パトレイバー』があるが、実写版の『パトレイバー』に参加した田口監督や辻本監督が関わる『Z』では整備班が作品の重要な位置を占める事になる。

 

地球からティグリスが現れ、リンブンはこんな時に怪獣なんて出なくてもと愚痴をこぼし、田端さんはこれが破滅なのかと嘆くが、我夢は違う事に気付く。
ここから今まで人類が戦ってきた怪獣達が次々と現れて根源的破滅招来体と戦っていく展開はクライマックスに相応しい盛り上がりでウルトラシリーズでもトップクラスに燃える展開であった。
地球怪獣が根源的破滅招来体と戦っているのを見た柊准将が「奴らは立ち上がった。自分の生まれた星を守る為に……」と言って「地球で……共に生きるものの為、対空防衛網で怪獣を支援する」とG.U.A.R.D陸戦部隊に出撃命令を出す場面は何度見ても鳥肌が立つ。
これまでも人類と怪獣が敵対しない話はあったがどちらかと言うと異色回な扱いだった。それが『ガイア』ではメインのストーリーとなった。これはウルトラシリーズの人類と怪獣の歴史の中でも大きい出来事だったと思う。

 

地球を守る為に地球怪獣が立ち上がる展開は今までの話からうっすらと見えてはいたが、これまでの作品でそう言う展開が無かったので実際に見られるのかどうか半信半疑なところがあった。それだけに実際に地球怪獣総決起を見る事が出来た時の感動は凄まじいものがあった。
ただ地球怪獣総決起に大きな役割を果たした黒田恵が今回の話に登場しなかったのは残念。一瞬だけでも出てほしかった。

 

人類と地球怪獣が力を合わせて根源的破滅招来体と戦う姿を見た我夢はエスプレンダーが壊れてウルトラマンに変身できなくなった自分を責める。
「こんな時に何も出来ないなんて。僕はウルトラマンになれなければ価値も無い人間なのか?」。
リパルサー・リフトを始めとしてウルトラマン以外でもかなりの活躍を見せてきた我夢にしてはかなりの卑屈っぷりであるが、それだけ知らず知らずのうちにウルトラマンの力に依存していたと言う事かもしれない。
アグル復活」で藤宮が我夢に問うた「ウルトラの力を失った自分」が現実になってしまったわけだが、その問題は既に藤宮で描いたからか我夢の悩みは結構あっさりと終わる。今回の話はウルトラマンだった人間に迫る人々、G.U.A.R.Dの指揮を離れるXIG、ウルトラマンの力を失った我夢と面白い要素が色々あったが時間の関係であっさりと流されたところがあってちょっ勿体なかった。

 

今回のエンディングは今まで登場した怪獣達の紹介となっているが、テンカイ、アネモス&クラブガン、レザイト、アンチマター、ルクー、シャザック、クインメザード、シンリョクは外されている。理由は何なのだろう? 基準がちょっと分からない。