帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「闇の支配者」

「闇の支配者」
ウルトラマントリガー』第24話
2022年1月15日放送(第24話)
脚本 ハヤシナオキ
監督 坂本浩一

 

邪神メガロゾーア(第一形態)
身長 60m
体重 6万t
「怪獣」と言うより「邪悪な神」と言うレベルの存在。
強大な闇のエネルギーを発するがGUTS-SELECT、グリッタートリガーエタニティ、トリガーダークの攻撃で倒される。

 

邪神メガロゾーア(第二形態)
身長 66m
体重 6万6千t
一度倒されたメガロゾーアがさらに闇を大きくして進化した存在。
桁違いのエネルギー数値を誇り、地球全体に闇を広げていく。

 

地球の怪獣達
世界各地のエタニティコアからエネルギーが漏れ出して地球が危機に陥った事を感じて避難を始める。
劇中ではゴモラ、パゴス、テレスドン、アーストロンが確認された。

 

物語
エタニティコアに触れて邪悪な神メガロゾーアとなったカルミラ。
地球の危機を阻止する為、ユナが、トリガーが、GUTS-SELECTが、トリガーダークが立ち向かう!

 

感想
メガロゾーアとなったカルミラが発する闇は全てを飲み込む力があって今のナースデッセイ号では振り切るのが難しいほど。これは『ティガ』のガタノゾーアより『ダイナ』のグランスフィアの方が近いかな。(因みにグランスフィアは女性の声で喋る)

 

「マナカケンゴォ! お前さえ現れなければトリガーは私のものだった! 私の全てを返せぇ!!」。
この言葉でカルミラがトリガーダークを自分の所有物のように見ていた事、一方で自分の全てをトリガーダークに委ねてしまっていた事が分かる。
実際はケンゴはトリガーダークの中にあった一部分が発展した存在なのだがカルミラはそれを認めようとせず、ケンゴと言う存在によって自分が知っていたトリガーダークが変質してしまったとしている。
つまり、カルミラは自分とトリガーダークはお互いを完全に理解し合っていて、トリガーダークには自分の知らない部分は全く無いと思い込んでいたのだ。だから、トリガーダークの中にあったケンゴと言う自分の知らなかった部分を認める事が出来ない。
おそらくだがカルミラは変化が出来ないタイプだと思われる。トリガーダークだけでなくヒュドラムもダーゴンも変化して自分の知らない一面が出てくる事をカルミラは認めて受け入れる事が出来ないのだ。
カルミラとトリガーの話は光や闇と言ったウルトラシリーズらしい設定にされているがその本質はかなりドロドロした恋愛模様となっている。
『ティガ』の『THE FINAL ODYSSEY』で大人向けとして恋愛要素が盛り込まれたが、『THE FINAL ODYSSEY』のカミーラとダイゴとレナが三角関係だったのに対して『トリガー』のカルミラとトリガーは恋人を自分と同一視した結果、相手の変化を受け入れる事が出来なくなってしまうと同じ恋愛モノでも違うところを取り上げた。

 

カルミラの闇のエネルギーが触れた事でエタニティコアが暴走して宇宙消滅の危機が発生する。しかし、ユナの訴えに対してカルミラは宇宙が消滅しようと関係無いと返す。
トリガーダークを失った今のカルミラはトリガーとユナを倒したらもう生きる理由が無くなってしまうと思われる。ぶっちゃけるとこれは「あいつらを殺して私も死ぬ」状態に近く一種の後追いと言える。

 

死ぬのは怖いが皆の笑顔を守る為にユナは3000万年前のユザレと同じように自分の命と引き換えにカルミラを封印しようとするがアキトにユザレの末裔であってもユナはユナだとして阻止される。
アキトの行為にユナはこのままでは皆が笑顔になれないと訴える。ケンゴが光の巨人と言う運命の為に自分の笑顔を失ってしまったようにユナもユザレの末裔と言う運命の為に自分が笑う事を諦めてしまった。
しかし、ユナの言葉にケンゴは「ユナは間違っている! 皆の笑顔にはユナの笑顔も必要なんだ!」と告げ、アキトも「大丈夫だ。この世界にはGUTS-SELECTの仲間がいる。ケンゴがいる。俺がいる。それに」と言い、それに続けて「俺がいるってか!」とトリガーダークに変身したイグニスが現れる。
3000万年前の戦いではユザレとトリガーだけで結果としてユザレは消滅してしまったが現在の戦いではユナとトリガーだけでなくGUTS-SELECTとトリガーダークもいてユナが消滅せずにメガロゾーアに一度勝つ事が出来た。

 

「トレジャーハンターは引き際が肝心」と言ってイグニスは変身を解いてケンゴ達と一緒に撤退する。
ウルトラマンが敗退する時はかなりのダメージを負ってしばらくは戦えない状態になる事が多いが、イグニスは早めに変身を解除する事でケンゴ達を守って退却するだけの力を残す事が出来た。これは数多くの修羅場を潜り抜けたイグニスだからこそ。前作『Z』のジャグラーもだが、若くて経験が乏しい主人公とは別に経験豊富なベテラン戦士がいると話が締まる。

 

ナースデッセイ号の整備でホッタさんが登場。あの状況からわずか三日で機能の89%を回復させるとは凄い。
『ナースデッセイ開発秘話』だとマルゥルやテルミちゃんから見た姿なので情けないところが多いが、タツミ隊長やGUTS-SELECTから見たらちょっと愚痴を言うが的確に仕事をこなす職人に見えると言うギャップが良い。

 

メガロゾーアとの戦いでダメージを負って昏睡状態に陥ったケンゴは精神体を火星にいる母親のところに送る。「こんな僕を見てもあんまり驚かないんだね」と言う精神体のケンゴの言葉に母のレイナは「あなたの母親だもの。あなたの事なら何でも知ってるわ」と答える。
レイナの言葉は「母親だから驚かない」と言う意味にも「ケンゴの正体を知っているから驚かない」と言う意味にも聞こえる。ひょっとしたらケンゴは後者の意味で受け取りかけたかもしれない。ケンゴは「三千万年の奇跡」で自分が光の化身である事を知って「狙われた隊長 ~マルゥル探偵の事件簿~」で母は自分の正体を知っているであろうとしていながら最終決戦で生きるか死ぬかの状態になるまで母親に話を聞きに行かなかったがレイナにとって自分が一体何なのか確かめるのが怖かったのかもしれない。
しかし、会話の最後でレイナが言った「たとえあなたが光の化身だろうとあなたは私にとってたった一人の大切な息子よ。何があっても私はあなたを信じている」と言う言葉でケンゴは母が自分を息子として大事にしていた事を知る事が出来た。

 

ケンゴは3000万年の長い年月をかけて光の意思から生まれた奇跡の子で、21年前に赤ん坊のケンゴを抱きかかえたレイナはその時に全てを知ったらしい。
この話を聞くと、レイナが奇跡の子を見付けて自分の子供として育ててきた話をもっとじっくり見たかった。シズマ会長の過去編があったのでケンゴの母親の過去編も作ってほしかった。

 

『トリガー』は『ティガ』を元に作られた作品だが、実は主人公のケンゴは光の化身と言う『ティガ』にはいなかったタイプで、イグニスの方が残されたウルトラマンの力を使って変身するようになったと言う『ティガ』のダイゴに近いタイプだったのは不思議で興味深い。

 

カルミラがケンゴを狙っている理由をテッシンとヒマリが問い詰め、それに対してタツミ隊長が「我々はGUTS-SELECTの仲間だ。お前がどんな秘密を抱えていようとも何も変わらない」と告げると、ケンゴは自分がトリガーである事をずっと黙っていた事を明かす。
ウルトラシリーズ恒例の正体バレであるが、ここでタツミ隊長が「やはり、そうだったか。今までお前にたくさん負担をかけてしまった。……すまない」と頭を下げたのには驚いた。
序盤の話でタツミ隊長が隊員の勝手な行動は許さないと言う描写があった上で中盤からはケンゴ達の勝手な行動を黙認するようになったのはウルトラマンの力を当てにしていたからである。元々、ケンゴは他の隊員と違って「ウルトラマンに変身出来るので入隊する事になった」と言うイレギュラーな存在である。そんなケンゴのウルトラマンの力を頼りにすると言うのは本来地球を守る組織である自分が率いるGUTS-SELECTの力不足を意味している。だからこそ、タツミ隊長はウルトラマンとして戦い続けさせてしまったケンゴにこれまで負担をかけてきた事を謝るのであった。

 

ケンゴの事を「ケンゴ」ではなく「トリガー」と呼ぶイグニス。他の皆はたとえトリガーでもケンゴはケンゴとして接するのだが、イグニスだけはケンゴは最後は人間マナカ・ケンゴではなく光の巨人ウルトラマントリガーとしての道を選ぶんだろうなぁと薄々感じている雰囲気があった。

 

「僕は光であり人である。この光と闇の争いを終わらせなくてはいけないんです。一緒に戦ってください」と言うケンゴの頼みを聞いたイグニスはシズマ会長に向かって「アンタ、この地球の人間じゃないんだってな?」と尋ねる。「そう。私は別次元の地球から来た漂流者だ」と答えるシズマ会長にイグニスは「故郷でもない星の為に何故命を懸ける?」と尋ね、それに対するシズマ会長の「この地球には私の大切な娘がいる。大切な仲間達がいる。今はここが私の故郷だ」と言う答えを聞いて「なるほどね。確かにこの地球はゴクジョーだ。カルミラに渡すわけにはいかないな」とケンゴ達と一緒に戦う事を決める。
シズマ会長とイグニスを「生まれ育った故郷から離れてしまったがこの地球で新たな家族や仲間を得た」と言う共通点で結び付けたのが上手かった。今回の話で二人の会話があるまで気付けなかった。
シズマ会長の「別次元」「漂流者」と言う言葉は『ダイナ』最終回後のアスカを思い出すところがある。

 

ケンゴとイグニスのW変身は光と闇と言う相反するものが並ぶ形となった。
暴走したカルミラをトリガーダークの心から生まれた者とトリガーダークの力を得た者が止めようとする。これによって最終的に物語を「カルミラとトリガーの愛憎劇」で一つまとめる事が出来た。

 

 

「完成、そして……」
『ナースデッセイ開発秘話 ~特務3課奮闘記~』第24話
脚本 足木淳一郎
監督 村上裕介

 

遂にナースデッセイ号が完成。
同じ日に放送された『トリガー』では「秘密を打ち明けられる側」だったマルゥルがこちらでは「秘密を打ち明ける側」になっている。秘密を抱えるのはウルトラマンだけではないと言う事が分かる回。

 

カルミラは相棒のトリガーダークの変化や仲間達が自分から離れる事を受け入れられなかったがホッタさんはマルゥルの変化をちゃんと認めて受け入れる事が出来た。