帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「救世主の資格」

「救世主の資格」
ウルトラマントリガー』第19話
2021年11月27日放送(第19話)
脚本 根元歳三
監督 田口清隆

 

炎魔戦士キリエロイド
身長 52m
体重 4万2千t
精神攻撃で幻を見せて救世主の資格の可能性がある者達を試していたが、ユナ以外の全員が欲望に飲み込まれて我を見失ったのを見て失格と判断し、残ったユナも一時の感情で動くのを見て失格と判断した。
その正体はキリエル人でシズマ会長曰く「人間の心を支配し揺さぶる悪魔のような奴ら」との事。
悪魔のような羽を生やして空中を素早く移動するが最後はトリガーとティガのWゼペリオン光線で倒された。
前回の「スマイル作戦第一号」でゴルバーⅡを出現させたと推測される。

 

ウルトラマンティガ
身長 53m
体重 4万4千t
シズマ会長の中の光がスパークレンスになってティガの姿になった存在。
トリガーに光を送り、回復したトリガーと共にタイプチェンジを駆使してキリエロイドと戦い、最後はWゼペリオン光線で勝利した。

 

物語
皆が幻を見たのは何者かの精神攻撃が原因だった。
調査を開始したユナの前に謎の男が現れる。
一方、幻が原因でカルミラとヒュドラムが衝突してしまう。

 

感想
人間の脳に作用して願望や欲望を刺激する未知の宇宙線が発見されて「モルフェウスR」と名付けられる。
元ネタは『ティガ』の「」に登場した「モルフェウスD」であろう。因みに今回の話の舞台となった「チヒロシティ」も「」に登場したドクトル・チヒロが元ネタと考えられる。
モルフェウスD」の「D」が「dream(睡眠中に見る夢)」で「モルフェウスR」の「R」は「reverie(目覚めている時の幻想・空想・夢想)」かな。

 

シズマ会長がいるのに普通に独房から出て司令室にいて皆と会話しているイグニスが面白い。TPUは彼をどういう扱いにしているんだ?

 

ケンゴは前回の「スマイル作戦第一号」の冒頭で見た超古代でのトリガーダークとカルミラの夢もモルフェウスRの影響かと考えるが、モルフェウスRがこれから起きてほしい願いを幻として見せるものなのに対してケンゴが見た夢は過去のものなのでおそらく関係が無いと思われる。つまり、超古代でトリガーダークと一緒にいた時のカルミラが笑顔なのは現実だったのだ。

 

今もケンゴの中にトリガーがいると騒ぐカルミラに向かってヒュドラムは「トリガーはもう元には戻らない」「人間に体を奪われるトリガーは無様」「そんなトリガーを可愛がっていたカルミラの目は節穴」と厳しい指摘をする。
では、ヒュドラムは正気に戻っているのかと言ったらそうではなくて、彼も前回の「スマイル作戦第一号」で見せられた「自分がリーダーになる」と言う幻で気が大きくなっていた。
これまでもちょっとギスギスした時はあったが基本的には仲間として動いていた闇の巨人であったが幻を見た影響で遂にカルミラとヒュドラムが衝突してしまう。とは言え、ヒュドラムがカルミラとトリガーダークに不満を抱いていた感じは以前にもあったので遅かれ早かれこういう展開にはなっていたと思われる。

 

光と闇の邂逅」でヒュドラムはエタニティコアに触れようとするがカルミラに最初はトリガーダークだと言われて不満はあったがその場は大人しく引き下がっていた。
闇の巨人はカルミラとヒュドラムがギスギスしたらダーゴンが仲裁に入ると言う形になっているが、基本的に中立であるダーゴンと違ってトリガーダークは常にカルミラ側に立っているので、ヒュドラムは不満があっても自分一人でカルミラとトリガーダークの二人を相手にしても勝てない事を理解していたのであろう。
そう考えると前回の「スマイル作戦第一号」でヒュドラムが見た幻が「ダーゴンにリーダーに選ばれる」だったのも理解できる。トリガーダークがいない今、ダーゴンが自分の味方になってくれたらヒュドラムは一人になったカルミラに勝つ事が出来る状況になるのだ。

 

幻を見せられる話は大抵が「結局は幻だったのか……」で終わって今回の『トリガー』もそうだったのだが、ヒュドラムだけは「カルミラが愚かと言う真実に気付けた事に感謝する」となっている。
又、ケンゴ達が見た幻が「まだ手に入れていないがいつか手に入れたいもの」だったのに対してカルミラだけは「消えた恋人が帰ってきた」だった為に「結局は幻だったのか……」で済ませられない状況になってしまった。

 

遠くにいる謎の男が一気にアップになる場面は視聴者からしてもいきなり心の中に入ってこられた感じがして思わずドキッとした。

 

喧嘩するカルミラとヒュドラムを仲裁して、ユナに誤爆した光線もおそらくカルミラとヒュドラムが放ったものなのに、変身したトリガーの一番近くにいた為に蹴られてしまうダーゴンさんがさすがに可哀想。と言うか復旧したGUTSファルコンの攻撃もマキシマナースキャノンも何故かダーゴンさんに当たっている。ダーゴンさんが一体何をしたと言うのだ……。

 

ヒュドラムの「トリガーは人間に体を奪われた」やカルミラの「お前(ケンゴ)ごときがトリガーの体を……!」と言う発言を聞くに闇の巨人はケンゴの正体がトリガーの転生と言う事を知らないのかな。おそらく「光と闇の邂逅」「三千万年の奇跡」で超古代にタイムスリップしたケンゴが闇の巨人トリガーダークの体を乗っ取って光の巨人トリガーに変えてしまったと思っていそう。

 

カルミラの戦い方は感情剥き出しの喧嘩ファイトで荒々しくなればなるほどに彼女の心の傷の深さが見えてくる。
カルミラは善か悪かで言ったら悪なのだが「お前ごときがトリガーの体を……! 消えろ! 消えろー!」と泣きながら叫んでいる姿を見るとさすがに同情する。

 

カルミラのモデルとなった『ティガ』の『THE FINAL ODYSSEY』に登場したカミーラは顔に涙の痕があるデザインになっていてカルミラもそれに倣っているのだが、ひょっとしてカミーラとカルミラが「泣き顔」なのでそれに対するトリガーが「スマイル(笑顔)」に設定されたのかな。

 

「すまない。お前を戦いに巻き込むべきじゃなかった」とユナに謝るシズマ会長。
GUTS-SELECTはタツミ隊長が指揮官、テッシンとヒマリがナースデッセイ号とGUTSファルコンの操縦、マルゥルが宇宙人としての知識、アキトが開発とそれぞれ役割があるので、ユナがその中に入れた理由はどう考えても「ユザレの力を持つから」しか無い。つまり、シズマ会長はユナの中にあるユザレの力を戦力として考えてGUTS-SELECTに入れたのだ。
シズマ会長の判断はTPUの重要人物としては間違っていないと思う。アキトが変身出来ずトリガーの力を手に入れる事が出来るのか不確定の中、闇の巨人に対抗する戦力としてユザレの力は外す事は出来なかったであろう。ただ、父親としては娘を危険な状況に置いた事に対する後悔はあって、だから今回のシズマ会長はユナに戦いの場から逃げるよう促したのだった。

 

「私、怖い……。死ぬのが……。戦うのも、痛いのも、辛いのも嫌。怖い……。でも、やっぱり守りたい! 皆の笑顔を!! その為に、今出来る事があるなら!」。
特別チームの隊員は軍人に近いところがあるので戦う事や傷付く事に対する覚悟もある程度出来ている人が多い中、こういう一般人に近い言葉で気持ちを語れるのがユナらしいなと思う。


ユナの行動を見たキリエル人は「あなたも失格だ。あなたも他の者達と同じように一時の感情で動いている。そのような存在に強大な力を手にし救世主となる資格は無い」と断じる。
『ティガ』では自分達が救世主になろうとしていたキリエル人が『トリガー』では救世主を見定めようとしている違いが興味深い。『ティガ』の時代は自分こそが救世主だと世間に向かって自ら述べていたのが『トリガー』の時代になると救世主を見定める立場になる事で皆に見えないところから世の中を動かそうとした。まぁ、どちらもおこがましい事には違いは無い。

 

キリエル人は『ティガ』では前半の登場だったので後半に登場したアートデッセイ号やガタノゾーアや闇の巨人に勝てそうなイメージが無かったが『トリガー』では後半に登場して闇の巨人を破滅に向かわせ、ナースデッセイ号の攻撃が通じないとかなりの強敵になっていた。精神攻撃が強力なので人間的な心を持っていないガタノゾーアと違ってカルミラの心を持つメガロゾーアなら勝つ事も出来そう。

 

キリエル人の目的は「この宇宙の運命さえも左右する大いなる力を手にして使うのに相応しい存在を見定める」であった。この「大いなる力」とはもちろんエタニティコアの事である。
『ティガ』では救世主になる可能性があるのはティガで、そのティガが救世主になる条件が人々に認められる事であったので、キリエル人はティガとティガを認めるイルマ隊長を狙った。一方で『トリガー』ではエタニティコアの力を使う者が宇宙の運命さえも左右する事が出来るので、キリエル人はエタニティコアに触れる可能性があるGUTS-SELECTと闇の巨人を狙った。キリエル人の行動の違いはそのまま『ティガ』と『トリガー』の世界の違いに関わっている。

 

ユナ「お父様の中にある光……。彼と一緒に戦った勇気と希望がまだ輝いている!」、
シズマ「まさか……、そうなのか? 私の中に彼の光が……」、
ユナ「お父様は私に話してくれた。「人は誰でも光になれる」って……。信じて! お父様の光を!」、
ユナからの光を受けてシズマ会長の中の光が増幅され、スパークレンスが現れてティガが登場する。
シズマ会長は『ティガ』の「輝けるものたちへ」を体験している。人が光になるのを見た者が次に自分が光になる展開は『ダイナ』の『光の星の戦士たち』を思い出す。
今回の話でキリエル人は次々とダメ出ししていって救世主候補を削除していったが、最後にシズマ会長が自分の中の光を信じてティガを呼び出す事で「人は誰でも光(救世主)になれる」としたのが上手かった。

 

『ティガ』のBGMをバックに同じタイプに変身して同じ技を使うティガとトリガー。
さすが視聴者が求めるものが分かっている大満足の戦闘シーンであった。

 

 

命名
『ナースデッセイ開発秘話 ~特務3課奮闘記~』第19話
脚本 足木淳一郎
監督 村上裕介

 

テルミ「不服があるなら声を上げれば良いのに」、
ホッタ「ダメダメダメ。偉い人ってさ、よく「現場の声を聞きたい」とかさ「下から意見を広く採り上げたい」とか言うでしょ? あれ、嘘だから。絶対に聞く気無いから!!!」。
……分かるw

 

ナースデッセイ号の名前は元となったナースにシズマ会長が知る最高の船を合わせて名付けられたとの事。会議でシズマ会長が「デッセイ」に拘るのを見て困惑した人達とかいたのかな?

 

ガッツウイングの技術の出所はシズマ会長と言う噂が流れているらしい。
『トリガー』にはマスコミ関係者はチラッとしか登場しなかったが、もし『ガイア』の田端さんや『ネクサス』の根来さんのような人がいたらシズマ会長に関する不穏な情報がボロボロ出てきそう。(そう言えば戸籍とかどうしたんだ、この人……)