「笑顔を信じるものたちへ ~PULL THE TRIGGER~」
『ウルトラマントリガー』第25話
2022年1月22日放送(第25話)
脚本 ハヤシナオキ
監督 坂本浩一
邪神メガロゾーア(第二形態)
身長 66m
体重 6万6千t
闇で地球全体を覆い、ユナを抹殺する為に闇の一部をダーゴンとヒュドラムに変えてナースデッセイ号に送り込んだ。闇の電撃と触手で相手を攻撃する。
光の力だけでは倒す事が出来ず、光と闇の力を持ったトリガートゥルースのトゥルーゼペリオン光線で大ダメージを受け、さらにナースデッセイ号が発射したエタニティコアの力を受けたトリガートゥルースのトゥルータイマーフラッシュで倒された。
敗れた後はカルミラの姿に戻り、トリガーに抱き締められて光の温かさを感じながら消滅した。
『ティガ』の「暗黒の支配者」「輝けるものたちへ」のガタノゾーアと『THE FINAL ODYSSEY』のデモンゾーアを踏まえたキャラクター。
物語
メガロゾーアによって崩壊の危機を迎える地球。
トリガーとトリガーダークでも勝つ事が出来ない中、ケンゴはエタニティコアの力を使う事を考える。
果たして皆が笑顔でいられる世界を守る事が出来るのか!?
感想
『トリガー』の最終二部作のサブタイトルは『ティガ』の最終三部作のサブタイトルを踏まえたものとなっている。
ガタノゾーアと違ってメガロゾーアはカルミラの意思があるので言葉を発するのだが、だからと言って交渉出来る雰囲気は全く無い。
ガタノゾーアは「人間とは全く違う存在故に話が通じない」と言う怖さがあったが、トリガーダークを失ったカルミラ=メガロゾーアは「会話が出来るのに話が通じない」と言う怖さがある。ガタノゾーアが「怪獣的な怖さ」でメガロゾーアが「人間的な怖さ」と言った感じかな。
シズマ会長のガッツウイングの操縦を見たヒマリは「元の世界ではパイロットしちゃったり?」と尋ねる。それに対してシズマ会長は「情報局だったが参謀が厳しい人だったので鍛えられた」と答える。
この参謀が誰なのかは明らかにされていないが『空想特撮映像のすばらしき世界』(朝日ソノラマ)に収録されているTPC年代史によると2009年にタツムラ参謀が失脚した後はシイナが参謀に復帰し、2014年にシイナが参謀長になるとイルマが後任の参謀になったとの事。
ガタノゾーアもデモンゾーアも一般の人がいない海底や遺跡での戦いだったが今回のメガロゾーアは街を舞台にした戦いでかなりの被害が出る事となった。
3000万年前と違って現代はGUTS-SELECTがいるとしてユナがエタニティコアの力を直接集めるのではなくナースデッセイ号に集められる事になる。
おそらく『トリガー』の世界の本来の歴史ではGUTS-SELECTは誕生しなかったと思われるが、別の世界から来たシズマ会長がTPUとGUTS-SELECTを作った事でユザレの末裔でシズマ会長の娘であるユナは消滅の運命を回避する事となった。
「私は運命なんて信じない。必ず変えてみせる」と言うユナの言葉は『ティガ』の「暗黒の支配者」でイルマ隊長が言った「私も運命なんて信じない事にしたの。必ず勝って! 人として!」を元にしていると思われる。
どちらもユザレの末裔が発した言葉であるが、この時はまだ自分の運命を知らなかったイルマ隊長は世界やダイゴの運命について語っていて、自分の運命を知ったユナは自分の運命について語っていると言う違いがある。
タツミ隊長の「力を信じるんだ! 我々GUTS-SELECTの力を! 皆で、皆で笑顔の未来を守るぞ!」も「暗黒の支配者」でのイルマ隊長の「ティガの力だけじゃなく、私達自身の力を信じるのよ、レナ!」を元にしていると思われる。
『ティガ』ではこの時点ではまだGUTSは闇を倒す為の具体的な作戦が無いのでイルマ隊長はGUTSではなく私達として人類全体の可能性を訴えていて、『トリガー』ではGUTS-SELECTも含めた作戦が決まったのでタツミ隊長は自分達の作戦が成功する事を訴えている。
「ラストゲーム」でイグニスはケンゴからトリガーの光を託されたが今回はケンゴがイグニスからトリガーダークの闇を託される事になる。
「三千万年の奇跡」でケンゴは「希望の未来に光も闇も関係無い」と言っていて、今回の話で光と闇を合わせたトリガートゥルースに変身する事でケンゴは光と闇の対立関係を無くす事が出来た。
又、光と闇を合わせた力でカルミラのエネルギーを中和した事から実はカルミラのエネルギーは闇だけでなく光もあった事が分かる。(カルミラが闇だけの存在なら中和するのに光だけでなく闇も必要とはならないはず)
最終的に主人公と敵の両方が光と闇を持った存在になると言うのは面白かったが、『トリガー』は物語の後半で光の部分をトリガーのケンゴで闇の部分をトリガーダークのイグニスで分けて描いた為に光の闇の両立と言う点ではもう少し書き込みが欲しかったところ。
トリガートゥルースは光だけでなく闇も持った存在として黒い部分が加わるのだが劇中ではずっと暗い場面が続いていたのでちょっと分かり難いのが残念だった。
カルミラによって闇からダーゴンとヒュドラムが作られる。
ダーゴン本人とは違うと思うが、それでもダーゴンと互角に戦えるタツミ隊長が凄い。さりげに人間のレベルを超えているかも。
トリガーの戦いを見守る人々。ここで子供達がたくさんいて彼らの応援が光になってトリガーに届くのは『ティガ』の「輝けるものたちへ」を元にした展開。
『ティガ』でこれまでの作品に比べて子供の話が少なかったのに最後にいきなり子供の光が出てきたのは意味は分かるし面白かったけれど違和感と言うか唐突さを感じた。そして今回の『トリガー』もウルトラマンとGUTS-SELECTの関係者の話が殆どだったのに最後にいきなり一般の人達の応援が光になるのは違和感や唐突さを感じた。
コロナ禍もあって色々大変だったとは思うが、この展開をするのならもっと子供達を取り上げた話を作ってほしかった。
人間の光がウルトラマンを助ける展開は『ティガ』と同じだが『トリガー』では「皆の笑顔が僕に力を与えてくれる!」「これはあの時と同じ。そう、笑顔には世界を救う力があるんだ!」と「光=希望=笑顔」と言う分かりやすい図式になっている。
全体的に『トリガー』は『ティガ』の要素を子供向けに分かりやすくシンプルにまとめているところがある。ここは『ティガ』が作られた90年代後半と『トリガー』が作られた2021年と言う時代の違いも関係しているのかもしれない。
主題歌がかかる中で皆が「スマイルスマイル♪」と言いながら戦っていく場面は『トリガー』のクライマックスに相応しい盛り上がる場面。
「スマイルスマイル♪」と同じ言葉を言う事で逆にキャラクターそれぞれの個性が出てくるのが面白い。
撮影の事情かもしれないが、最初の方は海がメチャクチャ浅かったのに途中からいきなりメチャクチャ深くなるのはちょっと気になった。
戦いが終わり、カルミラはケンゴに問う。
カルミラ「何故私を……、闇を拒絶する……?」。
たまたまかもしれないが、カルミラのこの言葉の時にケンゴの服が黒い部分だけ画面に映る形になっている。
カルミラの問いかけにケンゴは手を差し伸べてカルミラを立ち上がらせて答える。
ケンゴ「違うよ、カルミラ。僕は……光であり人である。そして闇でもあるんだ。だから、闇を拒絶なんかしない! 僕は世界中の皆を……、カルミラも笑顔にしたい!」。
地球を覆っていく闇が消えていく。
そしてトリガーに抱かれてカルミラも消えていく。
カルミラ「あぁ……。これが光かい……。温かいね……」。
カルミラの最期は『ティガ』の『THE FINAL ODYSSEY』のカミーラより救いがあった感じだった。最終決戦でトリガーが光と闇を持ったトリガートゥルースに変身する等、90年代後半の『ティガ』『ダイナ』と2021年の『トリガー』での光と闇の扱われ方の違いは色々と考察しがいのあるものとなっている。
カルミラのやってきた事はギリギリアウトな感じがあったのだが一方で「せめて心は救われてほしいなぁ」と思っていたので無念の死でなくて良かったと思う。
『ティガ』の『THE FINAL ODYSSEY』の闇の巨人達も闇を選択したウルトラマンと言う実に興味深いキャラクターであったが、それを元に作られた『トリガー』の闇の巨人達も実に魅力的なキャラクターであった。
メガロゾーアを倒してもエタニティコアの暴走は止まらず、エタニティコアに直接触れたケンゴが暴走を止めに行く事になる。
ケンゴ「ほら! 皆! スマイルスマイル♪」。
しかし、アキトが初めて会った時と同じようにケンゴに掴みかかる。
アキト「ウザい!」、
ケンゴ「ごめん。アキト……」、
アキト「それがウザいって……。……嫌だ。嫌だ嫌だ! 誰が笑顔で見送ってやるか。笑顔になってほしいなら……一日でも早く帰ってこい!」、
ケンゴ「……うん」。
「皆を笑顔にしたい」「スマイルスマイル♪」と言っていたケンゴが最後に選択した行動で最も身近にいるアキトの笑顔を一時的にでも奪ってしまった。
『トリガー』は基本的に分かりやすくポジティブな作りになっていて、元となった『ティガ』もウルトラシリーズで屈指のハッピーエンドだったので、この次に『エピソードZ』があるからと言ってTVシリーズの最終回をビターエンドにするのは予想外でかなり驚いた。でも、振り返ってみると、ケンゴの自己犠牲や誰かの笑顔の為に誰かの笑顔が失われると言うのは第1話から描かれていたので納得出来る結末であった。
ケンゴが皆の前から去る直前にルルイエの花が咲き、それを見た皆、そしてケンゴも思わず笑顔になる。
咲いたルルイエの花が一番最初に笑顔にした人物、それはマナカ・ケンゴであった。
『ティガ』のダイゴは「人間がウルトラマンになった」でTVシリーズの最終回ではウルトラマンから人間に戻ったが、対するケンゴは「ウルトラマンが人間になった」でTVシリーズの最終回ではウルトラマンとして人柱になって人間社会から消える事となった。
こうして見るとやはり『トリガー』は『ティガ』の要素を取り入れながらあえて違う描き方をしていたと思われる。個人的には『ティガ』と『トリガー』はアメコミ映画のスパイダーマンのサム・ライミ版とマーク・ウェブ版に近い感じを受けた。同じスパイダーマンの映画として共通している部分や展開が多いが一方であえて逆にされている部分も結構あった。自分はそういう映画の「あえて同じようにしたところ」と「あえて違うようにしたところ」を探して考察するのが好きなので『トリガー』は非常に考察しがいのある作品だった。
ウルトラマン込みで立てられた作戦や主人公が皆の前からいなくなる等、『ダイナ』を思わせる展開も結構あった最終回だった。
「この広大な宇宙にはリシュリア星を復活させる方法が必ずあるはず。そいつを手に入れるまで俺のトレジャーハンターは終わらないのさ」。
この台詞を聞くにイグニスがトレジャーハンターになった目的の一つはリシュリア星の復活のようだ。
アキトの「いつでも戻ってこいよ」と言う言葉にイグニスは「この地球はゴクジョーだ。お前らが俺を必要になったらまた戻ってきてやっても良いかもな」と答える。イグニスらしい言い回しになっているが「地球人が必要としたら地球に戻ってくる」と言うのはウルトラマンの精神と同じ。トリガーダークはウルトラマンにカウントされていないがイグニスは立派なウルトラマンになったと言える。
トリガーがエタニティコアの中に消えていくと共に『明日見る者たち』が流れるエンディングはウルトラシリーズの中でも切なさを感じるものとなっている。
「地球はお前が守った笑顔で溢れているぞ、ケンゴ」。
「さよならマルゥル」
『ナースデッセイ開発秘話 ~特務3課奮闘記~』第25話
脚本 足木淳一郎
監督 村上裕介
こちらも最終回なのでミチルとザガァが登場。
それにしてもテルミとザガァの結婚には驚いた。マルゥルも言っていたが他の事がどうでも良くなるほどのインパクトであった。ウルトラシリーズで地球人と宇宙人がハッキリと結婚したって他に思い浮かばないなぁ。
『トリガー』本編は「主人公のケンゴが皆の前から消える」で『ナースデッセイ開発秘話』は「主人公のホッタだけ残る」となっている。
皆いなくなってしまったからか最後のホッタさんの場面はちょっと寂しさもあった。またすぐに賑やかになると思われるが……。
「ここは地球平和同盟TPU技術部特務3課。度重なる怪獣災害に対応する為に新設された特殊チームGUTS-SELECTの装備開発を任されている」。