帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「三千万年の奇跡」

「三千万年の奇跡」
ウルトラマントリガー』第12話
2021年10月9日放送(第12話)
脚本 ハヤシナオキ
監督 武居正能

 

物語
現在ではケンゴを失ったトリガーが闇の巨人として復活して人々を襲っていた。一方、3000万年前の超古代ではケンゴと出会ったトリガーダークが光の巨人に変身して人々を守っていた。
ケンゴとトリガーの秘密が明かされ、事態は新たな段階へと進む。

 

感想
トリガーの正体が闇の巨人だったと判断したタツミ隊長はトリガーダークを攻撃する事を決定する。タツミ隊長は当初からトリガーに対して警戒感を抱いていたので悪い予感が的中したと言う感じかな。
まぁ、闇の巨人が現れてそれとは別の巨人が現れたとしたら、その巨人も闇の巨人と関係しているのではないかと言うのは予想できた事で、シズマ会長からティガの話を聞かされていたアキトはともかく、そういった情報無しでトリガーを好意的に見ていたテッシンとヒマリはちょっとお人好しすぎたところがあったかもしれない。

 

トリガーダークとの殴り合いの中でケンゴは「僕はユザレにルルイエだと……希望だと言われた。でも、本当の希望となったのは僕じゃない! かつて地球が襲われた時、希望になったのはトリガー、君だった! 僕にとっての光は君なんだよ!」と訴える。
今回の話を見たら現代のケンゴが超古代にタイムスリップしてトリガーダークを光の巨人にしたように思えるが、次作『デッカー』でこの世界ではタイムスリップしても歴史は変わらないで新たな時間軸が誕生すると語られているので、本来の歴史ではケンゴが未来からやって来る事は無くてトリガーダークが自身で光の巨人になったと思われる。ケンゴの「本当の希望となったのは自分ではない」「かつての地球で希望になったのは君(トリガー)だった」と言う言葉からも本来の超古代ではケンゴの存在とは関係無しにトリガーダークが人々の希望となった事が分かる。
そう言えば今までの話で闇の巨人達が現代でケンゴを見ても超古代にいた人間と発言した事は無かったなぁ。

 

「希望の未来には光も闇の関係無い。君の中にもきっと光はある!」と訴えるケンゴ。
「光も闇も関係無い」と言う言葉通りに今回の話では光の巨人トリガーの中に闇はあったし闇の巨人トリガーダークの中にも光があって、最終的に光の存在であるケンゴと闇の存在であるトリガーダークが手を結んだのだが、では、この後のトリガー=ケンゴが光と闇を両立させた存在かと言われたらやはり光の要素が強かった気がするし、ユザレの訴えも光と闇の両立と言うより光の肯定と闇の否定に聞こえるので、この辺りもう少し光と闇のバランスを上手くとってほしかったかな。

 

『ティガ』のダイゴはTVシリーズは古代英雄戦士の末裔で『THE FINAL ODYSSEY』では明言されていないが超古代のティガそのものみたいになっていて、そのズレのせいでカミーラに超古代での裏切りについて色々言われるダイゴを見て「そんな事を言われてもダイゴも困るだろうに……」と言う感想を抱いた。『トリガー』のケンゴはトリガーの力を得た人間と思いきや実はトリガーダークの中の光から生まれた存在だったとされ、これならカルミラがケンゴを糾弾するのも理解出来た。超古代での話を見たらカルミラ達からしたらトリガーダークの裏切りでしかなかったし、ケンゴはその元凶でしかなかった。
『トリガー』でのケンゴの描き方は『ティガ』のTVシリーズのような「光を得た人間」と『THE FINAL ODYSSEY』のような「超古代の巨人そのものであった」を両立させたかなり上手いものであった。

 

ケンゴがトリガーそのものであったわけだが、こうして見るとオープニング曲の『Trigger』の歌詞にあった「引き金は僕だ」は「状況を変えるきっかけになる」と言う意味だけではなく文字通り「引き金(トリガー)は僕だ」と言うケンゴの正体を暗示したものだった事が分かる。

 

「僕達は未来を築く希望の光……! 僕はウルトラマントリガーだ!」。
合体したケンゴとトリガーダークは光の巨人トリガーに変身し、さらにエタニティコアの影響を受けてマルチ、パワー、スカイの3体に増殖する。
『ティガ』でティガがタイプチェンジを使えるようになったのは他の巨人の力を得たからとなっているが『トリガー』ではダーゴンとヒュドラムに倒されたトリガーのパワーとスカイが光になって遺跡の中に消えていったので遺跡の力で三つのタイプを得たようだ。

 

光の巨人になったトリガーダークを見てヒュドラムは「何だ!? あの醜い姿は!?」と驚いている。人間から見たらトリガーダークの姿が禍々しいものなのだが闇の巨人から見たらトリガーの姿が醜いものになるのか。

 

作品の序盤で防衛組織が「ウルトラマンは未知の存在で、その力が我々にとって脅威になる可能性がある」とする展開は何度かあるが実際に主人公のウルトラマンの力が防衛組織に向けられる展開はあまり無かった。今回はトリガーダーク相手ではGUTSファルコンでは太刀打ち出来ずナースデッセイ号のナースキャノンも通用しないとしてウルトラマンと人間の力の差がハッキリと出てしまった。

 

ウルトラマントリガーが、ケンゴが敵になるなら、俺がアイツを止める!」と叫ぶアキト。でも、この時にアキトが選んだGUTSハイパーキーは「トモダチ」と言う言葉を発するガゾートだったりする。

 

超古代でユザレはエタニティコアの力を使ってトリガーと闇の巨人を封印して自らも消滅してしまう。ユザレの消滅を見たケンゴは最後の力を振り絞って闇の巨人を宇宙に連れて行き、闇の巨人は宇宙に、トリガーは火星に落ちるのであった。

 

闇の巨人として目覚めたトリガーを見てアキトは思わず「ケンゴ」と呼びかけてしまい、ユナにトリガーの正体がケンゴであった事を知られてしまう。ここでアキトはトリガーダークの中にいるであろうケンゴに向けて必死に訴えるのだが残念ながらケンゴはそこにいなかった。しかし、アキトからトリガーとケンゴの事を知らされたユナもケンゴに向かって訴え、やがて二人の訴えは次元を超えて超古代のケンゴに届き、ケンゴは現代に帰ってくるのであった。

 

現代ではユザレがケンゴに色々な事を伝え、超古代ではタイムスリップをしたケンゴがユザレに色々な事を伝えていた。そしてユザレの正体をケンゴは今まで気付いていなかったが、一方でケンゴの正体をユナは今まで気付いていなかった。二人の関係は始まりと終わりを担当していたり対になっていたりして中々濃いものになっている。
アキトはこの超古代から続く輪に入っていないのだが、超古代から続く因縁に無関係だったアキトがGUTSファルコンやナースデッセイ号やGUTSスパークレンスを作って物語を次のステップへと進ませたと言うのが大事なのかもしれない。結局のところ、カルミラを始めとする闇の巨人達は超古代の因縁を引きずりすぎたところがあった。

 

現代に帰ったケンゴはアキトから手渡されたGUTSスパークレンスでトリガーに変身してトリガーダークと対峙する。
この辺りの経緯が結構複雑なので整理すると、超古代で闇の巨人トリガーダークの中に光があってそれが成長してマナカ・ケンゴと言う人間になる。「光を繋ぐもの」で分離していたトリガーとケンゴが一体化した事でトリガーが復活する。前回の話でカルミラの呪術を光のエネルギーで押しのけようとした結果、トリガーの体からケンゴが弾き出されて超古代にタイムスリップしてしまい、光の部分であるケンゴがいなくなった事でトリガーは闇の巨人トリガーダークとして復活する。超古代に飛んだケンゴはエンシェントスパークレンスを使ってまだ光を持っていたトリガーダークと一体化してトリガーに変身し、ユザレによってトリガーと闇の巨人が封印された辺りでアキトとユナの声で現代に戻る。そして光の部分を失ったトリガーダークと自分の素性を知ったケンゴが変身するトリガーが戦う、と言ったところかな。

 

3人仲良く援護に駆けつけたりトリガーダークの暴走に驚いたりとトリガーダークを含めた闇の巨人4人にはちゃんと仲間意識があった事が分かる。
ウルトラシリーズに限らず悪のチームはギスギスしていて裏切り等が横行していて最終的に破滅しても納得出来るところがあるのだが、カルミラ達は何だかんだ言って仲の良い場面が描かれていたので、ここから破滅に向かっていく姿は見ていてちょっと可哀想になった。

 

今までユナが意識を失う時に現れていたユザレの精神だったが今回はユナと真正面から向き合い、ユナに超古代の記憶とエタニティコアの欠片を与えている。

 

ユナがユザレから託されたエタニティコアの力を受け取ったケンゴはエタニティキーを生み出してグリッタートリガーエタニティに変身する。
まさかこんなに早くグリッターを使ってくるとは思わなかった。
カラータイマーが三つあるのも驚きだがマルチ、パワー、スカイの三つのタイプからの発想でこれはなるほどと思った。
今回のグリッタートリガーエタニティは強化フォームのデビュー戦として圧倒的な強さを見せるのだが、圧倒的すぎる力を制御できないとしていきなりカラータイマー点滅までエネルギーを消費してしまう。これは新フォームの強さとデメリットを上手く両立させた描写だったと思う。
過去に『ガイア』のスプリームヴァージョンや『コスモス』のエクリプスモードが活動時間がわずか1分と言う設定があったが今回のグリッタートリガーエタニティのように出力が増したのでエネルギー消費が早くなってしまったと言う事だったのかな。

 

今までの話で闇の巨人達はケンゴを見ても超古代で見た人間だとは一言も言っていなかったが今回の話でマナカ・ケンゴが元凶であったと言う事に気付く。
『デッカー』の設定を考えるなら『トリガー』の世界は①超古代でトリガーダークが何かしらのきっかけがあって光の巨人トリガーになって闇の巨人達を宇宙に追放する。②トリガーから分離した光がマナカ・ケンゴとなって人間として成長する。③「光を繋ぐもの」でトリガーとケンゴが一体化してトリガーが復活する。④前回の話でケンゴが超古代にタイムスリップして①とは違う時間軸が生まれる。⑤超古代でトリガーダークがタイムスリップしたケンゴと出会った事でトリガーになる。⑥ケンゴは元の時間に戻り、⑤の時間軸は②③とは違う3000万年の歴史を辿る。となるわけだが、現代に戻ったケンゴがGUTSスパークレンスでトリガーに変身した時に闇の巨人達の記憶が①から⑤へと書き換えられた感じがする。

 

 

「新型戦闘艇」
『ナースデッセイ開発秘話 ~特務3課奮闘記~』第12話
脚本 足木淳一郎
監督 村上裕介

 

なんか今回のテルミちゃんが妙に厳しい。
でも、TPUにはマルゥルのような宇宙人がいるので、その宇宙人のものを参考に新型戦闘艇を作れば良いのではと言うアイデアを出す等、特務3課に大きな成果をもたらす発言もしている。