「Episode11 人形 -マリオネット-」
『ウルトラマンネクサス』第11話
2004年12月11日放送(第11話)
脚本 長谷川圭一
監督・特技監督 小中和哉
ダークファウスト
身長 48m
体重 3万2千t
リコの所に向かう孤門の前に立ちはだかって孤門と人類の行く末に暗雲を投げかける言葉を発する。自分は影でネクサスが存在する限り消える事は無いと意味深な発言をする。
メタフィールドでもネクサスを圧倒するが油断したところを突かれて退却する。
リコと同じ箇所を負傷していたが……。
フィンディッシュタイプビーストノスフェル
身長 50m
体重 3万9千t
かつてリコの家族を惨殺した謎のビースト。
毛の無いネズミをイメージしている。
名前の由来は吸血鬼「ノスフェラトゥ」かな。
『コスモス』の「怪獣密輸!?」のバデータの着ぐるみを改造している。
物語
「オ前ハ大切ナ者ヲ失ウ」。
不吉なメッセージを受けた孤門はリコの所へと急ぐ。
一方、ナイトレイダーに謎の影が迫り恐ろしい真実が明らかになる。
感想
ウルトラシリーズは昔からホラー描写に定評があって今回もかなりのもの。やり過ぎなところもあるがここまで徹底したからこそ自分は『ネクサス』への評価を改めて最終回まで見る事が出来たところがある。
一方でただでさえ陰鬱な展開に嫌気が差していた視聴者に止めを刺して最終的に放送期間短縮に至ってしまったのは否めないと思う。
小中監督のインタビューを読むと子供にトラウマを持たせようと確信的にやったようだけれど自分はそこにはちょっと首をかしげるところがある。
同じトラウマ回でも「ノンマルトの使者」や「怪獣使いと少年」等が現実の問題とリンクするところがあったのに対して今回の話は「ヒロインが実は惨殺されて化け物にされていた」と言う内容が現実離れしすぎていて同じトラウマでも道徳の授業等で社会の問題を知って受けたトラウマとグロ映像を見て受けたトラウマと言う違いを感じた。その為、今回の話を子供に見せるのは子供を泣かせたくてお化け屋敷に放り込むような感覚を受けた。個人的に今回の話は視聴者の子供達の事より制作者達の趣味嗜好を優先させてしまったのではないかと感じるところがあった。
ただ、上に書いたように大人の自分が『ネクサス』に本格的にハマったきっかけはこの話なので子供向け番組としてはどうなのかなと思うところはあるが好きか嫌いかで言ったら間違いなく好きな話である。
ネクサスと連携してビーストを倒して、リコと言う存在を通して人を守る事を再認識して、迷いを吹っ切った孤門は絶好調。キスと言う具体的な出来事があったのが大きいと思われる。
一方、溝呂木の影に心を乱した西条副隊長には細かいミスが出るようになった。それでも孤門のように実戦で大きなミスを犯さないのはさすが。
人間を捨てた溝呂木がどんな姿で現れるのかと語る和倉隊長。
ひょっとしたら西条副隊長は子供時代に会った人型ビーストを想像していたかもしれない。
実際の溝呂木は姫矢が変身するネクサスと似た姿形をしたメフィストに変身する。
孤門の所に送られた「オ前ハ大切ナ者ヲ失ウ」と言うメッセージ。
直後に石堀隊員がやって来ているが、ここは素直に溝呂木が送ったものと考えて良さそう。この時点の石堀隊員は溝呂木を自由にさせていたように思える。
MPの調査によるとリコはナイトレイダーに入隊できるだけの免疫判定を示したらしい。
この説明から孤門がナイトレイダーに選ばれたのも免疫判定の結果だった事が分かる。
リコのR7性因子は生きている人間が示す数値を遥かに超えたものだったらしいがおそらくそれはリコがファウストだったからであろう。
ファウストの力は結果的にザギの力だったのでネクサスと似た力である可能性が高い。この事からウルトラマンの力を持つ者も高いR7性因子を示す可能性があるが後に姫矢を調査した時にネクサスはそういう数値でデュナミストを選んではいなかった事が判明する。(ただ、姫矢のR7性因子が高かったらネクサスに変身しても疲労が少なくなっていたのかなと思うところはある)
孤門の前に立ちはだかるファウスト。
数メートルの大きさだと人間と巨人が同じフレームに収まるので逆に巨人の大きさが分かる事になる。
この数メートルの大きさの巨人は『ネクサス』以外にはあまり見られなかった。こういうこれまでに無かった映像を作り出していった『ネクサス』のチャレンジスピリッツはもっと評価されてほしいところである。
ところでファウストの発言は誰のものなのだろうか?
「砕け散れ」等の発言は溝呂木だと思われるが「滅びる運命の人間は我らに従え」と言う発言は溝呂木の言動と微妙に合わないところがある。
溝呂木とは別にファウスト自身の意思があったのか、それともザギがファウストの口を借りて発言したのもあったのか……。
真上から降り注ぐダーククラスターを避けたネクサスを空中でファウストが捕らえて地面に激突させる一連の流れはCGを使って表現された。
質感に違和感があるものの空間を縦横無尽に動くウルトラマンの戦いはCGならではの新時代の映像でこれらの積み重ねがウルトラマン版板野サーカスへと発展していく事になる。
CGの使用には賛否両論あるが自分は特撮は着ぐるみやミニチュアだけだとは考えていないのでCGを駆使した戦闘は賛成。(ドラゴンボール世代だから高速空中戦闘が好みと言うのもあるけれど)
リコの惨殺場面は特別チームの隊員が人間を殺害すると言う衝撃的なもの。
前回の話でリコは制服姿の孤門を格好良いと言っていたが実はリコはその制服を着た男に殺されていたのだった。
いよいよ本格的に姿を現したあの男=前副隊長=溝呂木。
当時のウルトラシリーズでは珍しい悪役の人間レギュラーとなった。
ウルトラマンと言う絶対的な力を世界の平和の為ではなく個人の欲望の為に使ったらどうなるかと言う点で溝呂木は歴代主人公のネガ版とも言える存在となった。
溝呂木の登場によって『ネクサス』は対立構造が明確になって話が分かりやすくなった。