「ファースト・ウェイブ」
『ウルトラマンブレーザー』第1話
2023年7月8日放送(第1話)
脚本 小柳啓伍
監督 田口清隆
宇宙甲殻怪獣バザンガ
身長 51m
体重 2万6千t
宇宙から飛来した50m級甲殻爬虫類怪獣。
両腕にある四つの気門のような穴から起爆性のあるトゲを高速で撃ち出す。
怒ると頭部の角が逆立って腕部の槍上の部分が前に突き出ると好戦的な姿になる。
全身が強固な皮膚に覆われていてあらゆる火器が通じなかったが体内活動を非活性化させる特殊弾頭を鼻腔に撃ち込まれて弱体化したところをスパイラルバレードでトドメを刺された。
物語
宇宙から飛来した巨大怪獣バザンガを迎撃する為に池袋に防衛線が設置される。
バザンガ相手に作戦が上手くいかない中、第一特殊機動団のヒルマ・ゲントは事態を打開しようと動く。
感想
いきなり宇宙怪獣バザンガを相手に繰り広げられる戦闘シーンに驚き。
ウルトラシリーズの戦闘シーンは少し離れた少し高い所から見ていて全体の状況が分かりやすい感じになっている事が多いのだが、今回は地上から怪獣に接近していて周りを高いビルに囲まれていると全体の状況を把握するのが難しい感じになっている。
見えにくいところはあるが今回の方がリアリティがあって実際に怪獣が出現した感じになっていた。
ウルトラシリーズは6人前後の少数精鋭が怪獣事件に対処しているのだが今回は様々な部署の人間が怪獣事件に対処していた。
ウルトラシリーズと言うより『シン・ゴジラ』を思い出す感じで、ウルトラシリーズだと『シン・ウルトラマン』のネロンガ戦が近いかな。『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』から特撮を見るようになった人は他のウルトラ作品より今回の話の方が見やすいかもしれない。
今回の戦いの舞台は毎年夏に『ウルトラマンフェスティバル』『ウルトラヒーローズEXPO』が開催されている池袋。実在する場所が出された事で現実との地続き感が出てリアリティが増したと思う。
この放送の二週間後に開催される『EXPO』の池袋サンシャインシティを舞台にする事でファンが聖地巡礼しやすくなっているのが心憎い。
今回の話は平成ガメラや『シン・ゴジラ』のような「現実世界に怪獣が現れた」と言う感じになっていた。怪獣ではなくて怪人だが『仮面ライダークウガ』も近い作りかな。
ゴジラ、ガメラ、仮面ライダーではこういう作品があったがウルトラシリーズでは意外と少なかった。『ULTRAMAN』が近い感じがするがこの作品は「現実と地続き」より「地球外生命体を扱ったホラー作品」と言う感じが強かったかな。
今回登場した戦闘機の編隊の名前は「ユリシーズ」と「スカイハンター」。
ユリシーズは『USA』、スカイハンターは『パワード』に登場した特別チームのメカだがこれは偶然なのかな?
今回は第1話であるがSKaRDの結成前の話なので「第0話」と言った方が近い内容になっている。
第一特殊機動団の隊長だったゲント、指揮所で戦況を分析するテルアキ、チームとは別に上からの指示を受けて動くエミと従来のウルトラシリーズでよくあった「○○隊員は以前は防衛隊の○○に所属していて」と言う説明文を実際に描いた感じになっている。
「上からの命令には逆らえないから提案する」と言うのは新人には出来ない隊長ならではの台詞。命令違反にならない範囲で状況を良くする為に行動していくのが面白く、こう言った駆け引きが『ブレーザー』の一つの魅力となっている。
別部隊からの連絡が途絶えたのでゲント隊長は「俺が行く!」と言い残して一人で救出に向かってしまう。これはこの後の話で作戦中にSKaRDから離れてブレーザーに変身して戦うようになるのに繋がる。
『ブレーザー』は隊長のゲントがブレーザーに変身するので作戦中に隊長が不在になるのだが、おそらくこの場面で「ゲント隊長は昔から詳しく説明しないで単独行動を採る」「ゲント隊長の部下は途中から「隊長はそういう人」と認識して動くようになる」と言う説明をしたのかなと思う。
ただ、まぁ、ウルトラシリーズで作戦中に不在になる隊長は『Z』のヘビクラ隊長と言う特殊なケースくらいしかなかったので、ウルトラシリーズを見ている人ほど作戦中に不在になるゲント隊長に違和感を覚えるところはあったと思う。(たとえば『ティガ』で現場指揮官のムナカタリーダーが作戦中に不在になって、それをGUTSメンバーが特に気にしないでムナカタリーダー不在のまま作戦を提案して実行するかとなったらしないと思う)
本作では何十年も前から宇宙飛行士達の間で噂されていた未確認大型宇宙人のコードネームが「ウルトラマン」となっている。
この未確認大型宇宙人の正体がブレーザーなのかと思ったが後の話を見るとブレーザーが地球に現れたのは3年前が初めてのような感じがするので、実はブレーザーとは別の未確認大型宇宙人がいた可能性がある。
ブレーザーの動きだがブレーザーにしては地球人っぽい動きやゲント隊長にしては野生児すぎる動きがあったので今のブレーザーはブレーザーの意思で動いているのかゲント隊長の意思で動いているのか分からないところがあった。二人の意思が混ざり合っていて状況によってブレーザーの意思が強く出たりゲント隊長の意思が強く出たりしていると言う感じかな。
本作はインナースペースの場面が極力外されているのでこれまでのニュージェネレーションシリーズに比べてウルトラマンや変身者が戦闘中に何を考えているのかハッキリしていないところがある。
多くのウルトラマンは「宇宙警備隊」と言う組織に属している戦士なのだが今回のブレーザーはそう言ったバックボーンを外す事で「野性的」と言う他のウルトラマンには無い強烈な個性を手に入れる事となった。
スパイラルバレードはウルトラマンでは珍しい槍状の必殺技なのだがブレーザーが建物に上って高い所から攻撃したり大声を出して相手を威嚇したりと「野生児」「狩人」を思わせる動きをしていたので槍で決着を付けても違和感が無かった。逆にこの流れで最後だけ普通のウルトラマンのようにスペシウム光線のようなものを撃っていた方が違和感があったと思われる。
「野性味溢れるウルトラマン」と言えば『ティガ』の基となった企画の『世界初ウルトラマン』を思い出す。この企画も当時の「ウルトラマンと言えばウルトラ兄弟」と言うイメージを変える為に考えられたところがあると『ブレーザー』に通じるところがある。
『ブレーザー』は世界同時展開されるので海外の初めてウルトラマンを見る人の事を考えて過去作との関連が外されたらしいが、日本でも『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』から特撮を見るようになった人がいると思われるので、このタイミングで一度過去作との繋がりを切った作品を出した事は間違った選択ではなかったと思う。
今回の話を見てウルトラシリーズの特撮の進化にはいつも驚かされると改めて思った。
ウルトラシリーズに限らず長く続いているシリーズは基本的なところは変わらないもので異色作なイメージがある『ブレーザー』も基本設定を文字にすると意外と従来のウルトラシリーズと違っていない事が分かる。
基本的なところが変わらない長期シリーズで新しさを出すにはどうしたら良いかで各作品様々な工夫がされているがウルトラシリーズは「特撮の進化」を見せる事で新しさを出していると思われる。『ブレーザー』の10年前が『ギンガ』であるがこの10年間は「新しいウルトラの特撮が凄い事になっている!」と毎年驚き続けた10年間であった。
第1話のオープニングがカットされた事でオープニング曲よりエンディング曲であるMindaRynさんの『BLACKSTAR』の方を先に聴く事になると言うちょっと珍しい形になっている。