帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「死を呼ぶ赤い暗殺者!」

恐怖の円盤生物シリーズ! 死を呼ぶ赤い暗殺者! ー円盤生物ノーバ ブニョ登場ー
ウルトラマンレオ』制作第49話
1975年3月14日放送(第49話)
脚本 阿井文瓶
監督 山本正孝
特撮監督 吉村義之

 

円盤生物ノーバ
身長 10cm~57m
体重 200g~1万t
ブラックスターからやって来た悪魔の使いと言うべき10番目の殺し屋。
円盤形態で流れ星に紛れて地球に侵入した後、小型化して白いテルテル坊主として公園に潜伏し、トオル接触した翌日に赤いテルテル坊主になった。
家族がいない事を悲しみ虚ろな気持ちになっていたトオルに取り憑き、家族の幻を見せながら自分を運ばせ、街中に赤い猛毒ガスを撒き散らした。この猛毒ガスを浴びた人間は首に赤い鎖を巻きつかれ、たちまち気持ちが荒れて相手構わず襲い掛かってしまう。
トオルの気持ちが咲子さんの方に向いた隙にゲンによって引き離されると赤い煙と共に巨大化した。ムチや目からの怪光線で防衛軍を全滅させる。レオが出現すると辺りに血のような真っ赤な雨を降らして戦いを有利に進めるが、最後はシューティングビームとエネルギー光球によって倒された。

 

物語
父も母も妹も亡くしたトオル
ゲンが授業参観に行けなくなった事でトオルの不満が爆発する。
その隙を突いて円盤生物ノーバの恐るべき魔の手が迫る!

 

感想
涙よさよなら…」から続いてきたトオルの話の一応の解決編。(まだゲン=レオとの話が残っているけど)

 

今回のノーバはトオルに取り憑くが、その方法は「悪魔の星くずを集める少女」のブラックテリナのように無理矢理操るのではなく、トオルの心の奥にある父も母も妹もいなくなってしまったと言う寂しさを突いたものであった。
トオルはノーバと会う前に自画像として闇に佇む真っ赤なテルテル坊主を描いている。ひょっとしたら、ノーバは既にトオルの心や精神を探って取り入っていたのかもしれない。
人間を利用してきた円盤生物は人間の心や精神を理解できるようになってしまった。

 

幼くして母を亡くし、父を目の前で真っ二つに惨殺され、唯一の肉親だった妹のカオルと保護者の百子を失ったトオル。その後も妹代わりとして接した眉子が目の前で円盤生物に取り込まれてレオに倒されてしまった。
これだけの惨事が続いて何の影響も無いはずはなく、遂にトオルの精神は破綻してしまう。黙ってブランコをこぎ続けたり、ハサミでテルテル坊主の首をちょん切ろうとしたりと、その行動はかなり危ない。

 

ノーバは父や母や妹の幻影を見せ、邪魔をする者を消していく事でトオルに取り入った。
ノーバが見せる幻影の中にいるトオルの顔は幸せそうだったが、父も母も妹も死んでしまったと言う事実に変わりは無い。残酷な事を言うようだが、死んだ人間は生き返らない。大切だった人々との思い出に浸る事を否定は出来ないが、それを永遠に続ける事は出来ない。幻影はあくまで幻影でしかないのだ。

 

ここで咲子さんといずみが現れ、危険を顧みずにトオルを自分達の息子だ弟だと叫ぶ。この声を聞いたトオルは幻影から解き放たれて現実に帰る。
父も母も妹も死んでしまったと言う事実は変わらないが、今のトオルには美山家と言う新しい家族がある。最後にトオルはその事実を、現実を受け入れて咲子さんの腕の中で涙するのであった。

 

トオルの授業参観に必ず行くと言いながら、怪事件が起きている事を知るや、その調査に行ってしまうゲン。この展開は「泣くな! おまえは男の子」と全く同じ。ただし今回のゲンは「俺は行かなくちゃいけないんだ!」と迷う事無く調査に行っている。
MACが全滅し、ダン隊長を失い、「俺がやらなきゃ誰が円盤生物を倒すんだ!」と決意してからのゲンは行動に迷いが無くなった。ヒーローとして成長したのだろう。しかし、次回でゲンは再び自分に迷いを抱いてしまう事になる。

 

ノーバがトオルに取り憑いたのは人質の意味合いが強かったと思われる。人間は子供には手出しできないからだ。しかし、今回の警察は被害拡大を防ぐ為にトオルを射殺しようとする。
ゲンはトオルの気持ちを分かっていながら調査を優先し、警察もトオルが操られているだけだと分かっていながら射殺しようとした。相次ぐ円盤生物の襲来で非常事態になり、人々の考え方も段々とシビアになってきた。

 

再び登場した防衛軍の戦闘機と戦車部隊だがノーバの前に全滅してしまう。
しかし、MAC全滅後も防衛軍が出る事で人間も地球を守る為に頑張っている事が分かる。

 

ノーバが撒き散らした猛毒ガスは人間を凶暴化させてしまう。もしこの猛毒ガスをアメリカやソビエト(当時)の首脳陣が浴びてしまっていたら核戦争が起きて世界はあっという間に滅んでいただろう。
やはり、一番恐ろしいのは人間自身なのかもしれない。

 

雨を降らせてくれと言うトオルの願いは叶えなかったが(それなら逆さに吊るさないといけない)、レオとの戦闘では血のような真っ赤な雨を降らせたノーバ。
レオもノーバも赤を基調としたデザインなので、レオの黄色い目と青いカラータイマー以外全てが赤と言う異様な戦闘シーンが生まれた。
そう言えば、レオって意外とカラータイマーが点滅しない。

 

咲子さんは授業参観であゆみの所だけでなくトオルの所にも行くと言っているが2人は同じクラスではなかったっけ? クラス替えでもしたの?

 

今度は本物のテルテル坊主に明日は晴れますようにと願うトオル
翌日、その願いが叶って晴れになるのだが、夜に雨に濡らされたテルテル坊主の顔が泣いているように見えてちょっと怖い。

 

怪獣紹介にクレジットされているのだが円盤生物ブニョは今回は未登場であった。
話のラストに次回の円盤生物が登場しなかったのは今回だけ。

 

今回の話は阿井さんの『レオ』脚本最終作で、山本監督と吉村監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。

 

 

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