「魔の怪獣島へ飛べ!!(後編)」
『ウルトラマン80』制作第18話
1980年7月30日放送(第18話)
脚本 阿井文瓶
監督 湯浅憲明
特撮監督 佐川和夫
吸血怪獣ギマイラ
身長 59m
体重 5万2千t
元々は宇宙怪獣で、20年前に星沢子一家が乗った宇宙船を襲撃し、そのまま潮風島に降り立った。
人間の思考能力を麻痺させる霧を吐き、人々の生き血を吸って力を溜めていた。
人間を怪獣化させる怪光線を放ち、イトウチーフの前にも星沢子の父親を怪獣化させていた。
80を遥かに上回るパワーを持ち、咆哮で怪獣を操り、角からの破壊光線で80を追い詰めるが、ラブラス(=イトウチーフ)の援護を受けた80のムーンサルトキックで倒された。
人間怪獣ラブラス
身長 55m
体重 3万8千t
イトウチーフがギマイラの怪獣化光線を受けて怪獣にされた姿。死なないと人間の姿に戻れない。
ギマイラの咆哮に操られてダロンと一緒に80と戦うが、すんでのところで咆哮に打ち克って正気を取り戻すとダロンと戦って80を勝利に導く。
その後、ギマイラに苦戦する80を助けて殺されてしまったが、死んで人間の姿に戻ったイトウチーフは星沢子の命を与えられて生き返った。
タコ怪獣ダロン
身長 53m
体重 4万8千t
謎の咆哮に打ち克って正気を取り戻したラブラス(=イトウチーフ)のハサミを首に受け、80のウルトラレイランスで消滅した。
星沢子
身長 165cm
体重 48kg
潮風島に住むイトウチーフの婚約者。
正体は宇宙人で、20年前に宇宙船をギマイラに襲われ、父親を怪獣にされていた。
父親の仇を取る為、孤児となった自分を育ててくれた潮風島の人々を救う為、イトウチーフの為、UGMに協力する。
最後は死んだイトウチーフに自分の命を与えて生き返らせた。
物語
ラブラス(=イトウチーフ)が正気を取り戻したおかげで80はダロンを撃破。諸悪の根源であるギマイラを倒そうとする。
一方、星沢子はイトウチーフが人間の姿に戻れるのは死ぬ時だけだと告げる。彼女の正体は宇宙人だった。
感想
「魔の怪獣島へ飛べ!!(前編)」の続き。
ハサミで80の首を切り落とすかと思われたラブラスだったが、すんでのところで咆哮に打ち克ってダロンを攻撃。危機を脱出した80はサクシウムエネルギーを光の槍状に変形させたウルトラレイランスでダロンを倒す。
この必殺光線を変形させた技は今回登場のウルトラレイランスの他に初代マンのウルトラスラッシュ(八つ裂き光輪)がある。80は初代マンからウルトラスラッシュ(八つ裂き光輪)を習っているので、ウルトラレイランスはその応用かと思われる。
戦いが終わった後、80はラブラスを救おうとするが時間切れで帰らざるをえなかった。
こういう展開の場合、戦いが終わった後は時間経過が無視される事があるが、今回は戦闘後まで時間経過を気にしていたのが良かった。
「分かっています。でも、お願いします! 命懸けで記事を書きます。UGMの隊員が命を懸けて戦っている姿を皆に知らせる為にも」。
オオヤマキャップに現場への同行を直訴するセラ広報員。
この台詞はセラ広報員の立ち位置を明確化させるものだったので、後の話では状況の解説とコメディアシストに留まる事が多かったのは残念。
オオヤマキャップは霧を分解しようと考えるが、城野隊員は霧は宇宙のカオスで薬品分解できないと答える。なんかさり気に凄い事を言っていないか?
「霧は宇宙のカオス」と言う台詞もラヴクラフト作品っぽいかな。
謎の女性の正体はイトウチーフの婚約者である星沢子。
イトウチーフがフランスにいた時は文通していて、日本帰国と共に結婚する予定だったらしい。
今回の前後編の鍵となる存在だが、残念ながら、沢子関連の描写は褒められた出来ではなかった。
話の殆どが沢子の謎の行動とそれを追う猛達となっているが、真相が明らかにされると、沢子が猛達の調査を妨害しなければいけなかった理由が分からず、それまであった展開が全て無意味になってしまった。考えられるとしたら、UGMではなく自分の手でギマイラを倒して復讐したかったであるが、ラブラスであるイトウチーフがそんな計画に手を貸すとは考えにくい。又、猛の妨害をしてまでギマイラの眠る洞窟を爆破しているが結局ギマイラを倒せず、その後の80とギマイラの戦いにもあまり関わっていないと沢子の復讐劇としても弱い。
そう言えば、婚約者と言う設定だが、イトウチーフと沢子の描写が殆ど無いのも残念。二人のスケジュールが合わなくて別撮りだったのでは?と思うほど不自然に二人の絡みが無かった。
ギマイラが角から発した光線をブライトスティックで弾きながら変身する猛がカッコイイ!!
その外見からダロンが触手を用いて人々から生き血を吸い取っていると思いきや、実はギマイラが口の中から触手を出していた事が判明する。
ダロンはラブラスと違って元は人間ではないらしいが、これはギマイラが人間以外の生物(例えばタコ辺り)を怪獣化したものなのか、それとも元々ダロンと言うタコ怪獣がいて、それをギマイラが操るようになったと言う事だろうか?
強敵ギマイラに苦戦する80。そこにラブラスが傷付いた体を押して救援に駆けつけるが、善戦空しくギマイラの角に刺されて死んでしまう。
沢子の言葉通り、死と共に元の姿に戻ったイトウチーフ。怒りに震える80はギマイラに逆転勝利を収めるのだった。
『80』の戦闘BGMはパターンが決まっているのだが、いくら逆転勝利の場面とは言え、イトウチーフが死ぬと共に軽快なBGMが流れ出すのは空気を読めてなさすぎ。
戦いが終わった後、イトウチーフの亡骸を前に沢子は「怪獣でもいい。何でもいい……。生きていてほしかった……」と呟き、今までイトウチーフは色々と尽くしてくれたのに自分は何もしてこれなかったとして、「私の命を……一番大切なあなたに捧げます」と自分の命をイトウチーフに与える。
生き返ったイトウチーフは沢子がいなくなった海岸で「宇宙人でも地球人でもいい。皆で力を合わせて平和な世界を……。そう思っていた、しかし……! 沢子は俺の中にいる。……俺は戦うぞ!」と新たな決意を誓うのであった。
地球人と宇宙人の関係と言う『80』のメインストーリーに関わる上に、地球人に自分の命を与える宇宙人と言う『初代マン』最終回「さらばウルトラマン」のハヤタ隊員と初代マンのIFストーリの側面も持つ話だったが、先に挙げたように行川アイランドとのタイアップ場面にあまり意味が無かったり、沢子とイトウチーフの絡みが全然無かったりと様々な要素を劇中で生かせなかったのが非常に残念だった。