「最終三部作Ⅲ 心からの言葉 ー暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人登場ー」
『ウルトラマンメビウス』第50話
2007年3月31日放送(第50話)
脚本 赤星政尚
監督 佐野智樹
特技監督 原口智生
ゾフィー
身長 45m
体重 4万5千t
エンペラ星人によってスペシウム・リダブライザーが破壊されそうになったのを見て参戦。
サコミズ隊長と一体化し、M87光線を放って形勢を決定付けた。
エンペラ星人との戦いが終わった後、「地球は自分達の手で守っていける」と言うリュウの言葉を聞いて光の国に帰還した。
ウルトラ兄弟
エンペラ星人によって闇に覆われていった太陽を回復させた。
参加したのは初代マン、セブン、ジャック、エース、タロウ、レオ、アストラ、80の8人。
ウルトラの父
身長 45m
体重 5万t
地球での戦いを見守り、エンペラ星人に光と闇の関係を諭した。
暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人
身長 56m
体重 4万9千t
ウルトラマンの身体を分解する作用を持つレゾリューム光線でメビウスを分解した。
メビウス達が立てたあらゆる勝利フラグをへし折っていったが、スペシウム・リダブライザーによって増幅されたメビウスフェニックスブレイブのメビュームナイトシュートとゾフィーのM87光線を受け、最後はメビウスフェニックスブレイブのメビュームフェニックスで倒された。
「人間の希望と言う光」と「人間とウルトラマンの絆」によって自分が敗れた事を認め、光となって消滅した。
念動宇宙人サイコキノ星人
身長 155cm
体重 44kg
メビウス達の戦いを見守り、エンペラ星人との戦いが終わった後、静かに地球を去って行った。
健啖宇宙人ファントン星人
身長 2m
体重 92kg
メビウス達の戦いを見守り、エンペラ星人との戦いが終わった後、静かに地球を去って行った。
マケット怪獣リムエレキング
身長 40cm
体重 4kg
エンペラ星人との戦いが終わった後、粒子加速器が回復したのを受けて元気な姿を見せた。
物語
エンペラ星人に撃墜されたリュウはヒカリと一体化して一命を取り留める。そしてミライは限界を超えてメビウスに変身する。しかし、エンペラ星人の前にメビウスとヒカリは倒されてしまう。
絶望の淵に追い詰められたCREW GUYSだったが、まだ希望の光は残っていた。今こそ友情の絆による不死鳥の勇者が誕生する!
感想
『メビウス』最終回。
昭和ウルトラシリーズの設定と平成ウルトラシリーズの要素を繋げ合わせた、まさに40周年に相応しい記念作であった。エンペラ星人も出したので、M78星雲シリーズは本作で終わりになるかと思ったが、本作で設定が整理された事で、逆に本作から新たな物語が始まる事となった。
リュウのガンクルセイダーが撃墜されたのを見たミライは「よくも大切な人を!」と感情を露わにするが、そこに「ミライ。俺なら生きているぜ。そう簡単に死んでたまるか。セリザワ隊長に頼まれたんだ。お前の事、地球の事を!」とリュウの声が聞こえてきた。
リュウは死ぬ直前にヒカリと一体化して一命を取り留めていた。これは『メビウス』での最初の戦いでセリザワ隊長とヒカリが一体化した展開の再現。
遂にウルトラマンになったリュウ。第1話から登場している人物が最後にウルトラマンになるのは『ネクサス』の孤門と同じ。ウルトラマンへの接し方は真逆であるが、他の人よりウルトラマンの事を強く意識しているのも二人の共通点。
『A』では「ウルトラ6番目の弟」と呼ばれる梅津ダンが登場して普通の人間がウルトラマンを目指して努力する様子が描かれた。ダンの話は路線変更によって途中から描かれなくなってしまうが、ウルトラマンを目指して努力する人間の話は他にもいくつかある。今回のリュウや孤門は最後に本物のウルトラマンになる事で上に挙げた話に一つの答えを出したと言える。
ヒカリになったリュウはナイトブレードを振り回してがむしゃらに正面から突っ込んでいくがエンペラ星人にいいように弄ばれてしまう。
これが初変身なので仕方が無いが、リュウさん相手だと「バカヤロー! なんて下手くそな戦い方だ! それでもウルトラマンかよ!」とツッコみたくなる。
リュウの危機を見たミライは変身する力が残っていないのにメビウスに変身する。
最後まで諦めず、不可能を可能にする事こそウルトラマン。
しかし、ミライのメビュームシュートとリュウのナイトシュートを同時に放ってもエンペラ星人のマントによって無力化されてしまい、逆にレゾリューム光線でメビウスの身体を分解されてしまう。
レゾリューム光線はウルトラマンの身体を分解する作用を持つと言う『T』の「ウルトラの国大爆発5秒前!」「ウルトラ6兄弟最後の日!」に登場したテンペラー星人の「ウルトラ兄弟必殺光線」をより強力にしたような技である。
ヒカリと一体化して遂にウルトラマンになったリュウ、そのリュウを守る為に限界を超えて最後の変身を果たしたミライ、と普通だったらここで勝利しても良い展開なのだが、これらの勝利フラグもエンペラ星人によってへし折られてしまった。
「悔しかろう、ウルトラの父。かけがえのない星。貴様らがそう呼ぶこの星の未来は今潰えた」。
メビウスとヒカリの消滅を見たトリヤマ補佐官は「私は誰一人犠牲者は出さんと言った! すぐに救助を!」と指示を出す。格好良いのだが、ザムシャーは……。
「絶望の暗雲」でのザムシャーの登場は盛り上がったのは事実だが、ここでのトリヤマ補佐官の発言や後のゾフィー登場のタイミング等を考えると色々と疑問が生じてしまう。
CREW GUYSは自分達が離れた後のフェニックスネストの心配をするが、マル秘書は「大丈夫! ここは私達の思い出の場所でもあるんだ」と言って後は自分達に任せろと告げる。
トリヤマ補佐官とマル秘書は他の特別チームの上官よりCREW GUYSと一緒にあれこれしていた回数が多い印象があるので、この台詞も説得力があった。
リュウは助け出されたがミライは見付け出す事が出来なかった。
「また……何も守れなかった」と落ち込むリュウ。この台詞は『メビウス』での最初の戦いを思い出す。
しかし、そこにウルトラ兄弟からの言葉が聞こえてくる。
エース(北斗)「君達なら聞こえるはずだ。今は傍にいなくても勝利を信じて共に戦ってきた仲間の声が」、
マリナ「仲間?」、
ジャック(郷)「目を逸らしてはいけない。地球の未来は今、君達に託されているのだ」、
ジョージ「地球の未来?」、
セブン(ダン)「君達人間がいたから我々はどんな強敵とも戦って来れた。君達ならその事を教えられる」、
コノミ「私達なら?」、
初代マン(ハヤタ)「そして救ってくれ、弟を。君達が培ってきたものがあれば必ずや地球は守り抜ける」、
テッペイ「ハイ! 必ず!」。
ウルトラ兄弟からの言葉を受け取ったマリナ達はリュウを再び立ち上がらせる。
ジョージ「リュウ、顔を上げろ!」、
テッペイ「守り抜くんです!」、
コノミ「ミライ君と一緒に!」、
マリナ「聞こえるはずよ、ほら!」。
そしてリュウの手にナイトブレスが再び現れ、ミライの声が聞こえてくる。
ミライ「もう一度、力を貸してください。僕達の最後の戦いの為に!」。
ミライから自分達にはまだやれる事があると知らされたリュウ。そのリュウの手にCREW GUYSの仲間達の手が重ねられ、最後に光に包まれたミライの手が重ねられる。ミライの手に再びメビウスブレスが現れ、光に包まれたCREW GUYSに向かってサコミズ隊長が叫ぶ。
「GUYS! Sally Go!」、
「G・I・G! メビウース!!」。
そして遂に不死鳥の勇者メビウスフェニックスブレイブが誕生した!
左手にメビウスブレスを、右手にナイトブレスを備え、赤と青と金と銀のカラーリングのメビウスフェニックスブレイブ。今までの全てが合わせられた、これぞ最終形態!と言えるデザイン。「俺達の翼」であるガンフェニックスストライカーの要素も込められているようで、まさに「ウルトラマンGUYS」と言った存在である。
エンペラ星人が放ったレゾリューム光線をメビウスフェニックスブレイブが全く寄せ付けなかったのに驚いた。これまでエンペラ星人の絶対的な強さを存分に見せつけていたので、ここでの逆転劇はカタルシスがあった。
因みにレゾリューム光線は対ウルトラマン用の技で、人間と強く結び付いたウルトラマンには効果が発揮されないらしい。
メビウスフェニックスブレイブを見たエンペラ星人は「光の者達よ、何故闇を恐れる? 全てが静寂に支配された素晴らしい世界を……!」と訴える。
ウルトラの父「エンペラ星人。地球を照らす太陽の光は消せやしない」、
エンペラ星人「何故だ! ウルトラの父! 何故のうのうと太陽に照らされている命を救おうとする? 闇こそが……永遠の世界なのだ!」、
ウルトラの父「光があるからこそ闇もある。闇があればこそ、また光もある」。
自身の属性である闇だけを認めて光を消し去ろうとしたエンペラ星人と、光の属性でありながら闇の存在も認めているウルトラの父の対比が面白い。
設定ではエンペラ星はウルトラの星と同じく太陽を失っていて、唯一人生き残った皇帝は怨念を力に変えて、絶対的な力で宇宙に闇をもたらそうとしたとなっている。
ウルトラマンと対になっている設定で、どこかで希望の光があれば、エンペラ星人もウルトラマンのように光の属性になっていたのかもしれない。(因みにザムシャーが聞いた伝説だと「自分の一族を皆殺しにして自ら皇帝を名乗った」となっている。この話が真実なのか「皇帝」の印象から作られた噂話かでエンペラ星人に対する印象がかなり変わる)
メビウス達が地球で戦っている中、他のウルトラマン達はエンペラ星人によって闇に覆われていった太陽の回復に当たっていた。
初代マンとジャックのダブル・ウルトラマンによるダブル・スペシウム光線、セブンとエースによるワイドショットとエメリウム光線と言うダブルL字光線、レオとアストラによるウルトラダブルフラッシャー、タロウのストリウム光線と80のサクシウム光線と今までありそうで無かった組み合わせもあって面白い。
サコミズ隊長はタケナカ最高議長から託されたファイナル・メテオールを解禁。スペシウムエネルギーを増幅できるスペシウム・リダブライザーを起動させる。
『新世紀ウルトラマン伝説』で「全てのウルトラマンが基本技としてスペシウム光線を撃つ事が出来る」としていたが、この「ウルトラマンの基本はスペシウム」と言う設定が今回上手く使われた。
メテオールは人間がウルトラマンの心に応える為に開発されたもの。
これまでのウルトラシリーズでは最終的に人間はウルトラマンから自立するのだが、それに対して、ウルトラマンの存在を前提にした、ウルトラマンの戦いを援護するシステムが最後に出てくるのが『メビウス』の方向性を表している。
メビウスフェニックスブレイブはメビュームシュートとナイトシュートを合わせたメビュームナイトシュートを発射。スペシウム・リダブライザーによって増幅された光線がエンペラ星人を追い詰める!
『ネクサス』の最終回「絆 -ネクサス-」もだったが、メビュームナイトシュートの複雑で長い発射ポーズが「最後の特別技」と言う感じがして好き。
『ウルトラの奇跡』をバックにCREW GUYSが最後の戦いに挑む!
マリナ「私達は今日まで勝利を信じて戦ってきた」、
ジョージ「あぁ、地球の未来が今、俺達に託されているんだ!」、
コノミ「どんな強敵にも負けずに戦って来れた私達なら」、
テッペイ「地球も必ず守り抜ける!」、
リュウ「そう。俺達に叶えられない夢なんて無い! 辿り着けない未来も無い!」、
サコミズ「信じるんだ! 我々の力を! 我々の未来を!」。
メビウス消滅と言う絶望のどん底から、ウルトラ兄弟の言葉、ミライの復活、メビウスフェニックスブレイブの誕生、ファイナル・メテオールの登場、CREW GUYSの決意と主人公達の大逆転劇が展開された。これだけの展開を見せれば普通は相手がラスボスであろうと主人公達が勝利するものなのだが、何とエンペラ星人はこれにも耐えるような素振りを見せ、エンペラ星人が発したと思われる念動波によってスペシウム・リダブライザーが破壊されていった。
これだけの勝利フラグすらエンペラ星人はへし折ろうとしたのだった!
スペシウム・リダブライザーが破壊されていく中、サコミズ隊長にゾフィーの声が聞こえてくる。
「サコミズ……。共に行こう。今こそ、君の力が必要だ」。
そしてサコミズ隊長は光に包まれ、フェニックスネストからゾフィーが出現。M87光線でメビウスを援護する。
ゾフィーの援護を受けたメビウスフェニックスブレイブは腕を十字からL字に変えてメビュームナイトシュートの威力を増させる。
マントでも攻撃を無力化できなくなったエンペラ星人は遂に片膝を付き、3万年前の戦いで受けた右脇腹の傷を抑える。
「余は暗黒の皇帝……。光の国の一族なぞに敗れは……せぬ!」。
しかし、メビウスフェニックスブレイブは自らを炎に変えてスペシウム・リダブライザーに突っ込むと、エネルギーが増幅されたメビュームフェニックスでエンペラ星人の身体を貫くのであった。
メビウス達の勝利フラグをへし折って来たエンペラ星人も遂に敗北。『メビウス』が最後に立てた主人公達の勝利フラグは「ゾフィー登場」であった。第2期ウルトラシリーズの頃は登場する事が敗北フラグのような扱いだったゾフィーだが、今回のエンペラ星人との決戦では最後の勝利フラグとして登場し、決着をもたらす存在となった。
「旧友の来訪」でサコミズ隊長は怪獣頻出期には地球圏外にいてウルトラマン達と一緒に戦っていなかった事が語られている。
そして地球に常駐した事が無いゾフィーも人間と一緒に戦う事は殆ど無かった。
似た者同士の二人が宇宙で出会って将来を語り、一人は地球の特別チームの総監でありながら隊長として、もう一人は宇宙警備隊の隊長として戦っていく。
そんな二人が最後に一体化して一緒に戦うと言うのが感動的。一回のみの変身であったがサコミズ隊長とゾフィーの繋がりは他の人間とウルトラマン達と同じくらい深くて濃かった。
出番は多くはなかったが『メビウス』でのゾフィーはキャラクターが深く描き込まれていたと思う。
「何故だ? 何故、余がウルトラマンごときに?」。
自分の敗北が信じられなかったエンペラ星人だがすぐにその答えに辿り着く。
「余は……ウルトラマンに負けたのではない! そうか……人間のちっぽけな希望と言う光に……、ウルトラマンと人間の絆に……負けたのか……」。
そしてエンペラ星人の体の中から光が溢れてくる。
「余が……余が……光になっていく……」。
光を否定して全てを闇で覆おうとしたエンペラ星人は最後は自身が光となって消滅した。最後に何を思ったのであろうか……?
戦いを終えたミライは「聞こえていますか、ウルトラの父。僕自身にしか見付けられない事、大切なものは今確かに僕の胸の中にあります」と語る。第1話の「運命の出逢い」でウルトラの父に出された課題に対し、メビウスは遂にしっかりとした答えを出したのだった。
そして「大丈夫。地球は俺達の手で守っていける」と言うリュウの言葉を聞いてゾフィーとヒカリは一足先に光の国へと帰還した。
サコミズ隊長に「これで君もウルトラ兄弟の仲間入りだね」と告げられるミライ。個人的にはメビウスが最終回でウルトラ兄弟になるのなら、他のウルトラ兄弟を「兄さん」と呼ぶのも最終回以降にしてほしかった。
ミライはGUYSメモリーディスプレイをサコミズに返す。それはCREW GUYSとの別れを意味していた。「最後の戦いが終わった今、僕には新しい使命が出来ました。この星の人達と共に得た大切なものを光の国の新たなウルトラマン達に伝えていきます」。
ミライの言葉にCREW GUYSは明るい笑顔で送り出す。
ジョージ「いい顔しているぜ、アミーゴ!」、
マリナ「しっかりやりなさいよ!」、
テッペイ「君と出会えて本当に良かった!」、
コノミ「ずっと応援しているからね!」。
そしてリュウもしばしの間を置いて、「……行けよ」と笑顔でミライを送り出す。
「さようなら……。今まで、ありがとうございました!」と涙ながらも笑顔で別れを告げるミライ。地球を去るメビウスに向かってリュウは遂に第1話から言えなかったあの言葉を告げるのだった。
「ミライー! ありがとうー!!」。
M78星雲シリーズの最終回は主人公との別れがあるので、どうしても悲しくなりがちなのだが、笑顔で別れる事が出来たのが『メビウス』らしかった。
エンペラ星人との戦いの後、ジョージはスペインリーグに復帰し、マリナはロードレースの大会で優勝、テッペイは医学の道を進み、コノミはみやま保育園に戻った。
そしてリュウは一人CREW GUYSに留まる。が、隊服の襟が白い指揮官仕様になっている。リュウはCREW GUYSの新たな隊長となったのだ。
この白い襟を見せる演出の為に以前からリュウに隊服のジッパーを上げる仕草をさせていたのならお見事!