「光を継ぐもの」
『ウルトラマンティガ』第1話
1996年9月7日放送(第1話)
脚本 右田昌万
監督 松原信吾
特技監督 高野宏一
超古代怪獣ゴルザ
身長 62m
体重 6万8千t
ユザレが語った地球に起こる大異変の現れである「大地を揺るがす怪獣」。
最初はモンゴル平原の地下から現れ、次は秋田県北部に出現してティガのピラミッドを目指した。
額から発する光線でティガのピラミッドを消し去り、メルバと共に2体の巨人像を破壊するが、蘇ったティガ・パワータイプの反撃を受けると地下に逃亡した。
超古代竜メルバ
身長 57m
体重 4万6千t
ゴルザと同じく地球に起こる大異変の現れである「空を切り裂く怪獣」。
イースター島の地下から現れると真っ直ぐにティガのピラミッドを目指した。
ゴルザと共に2体の巨人像を破壊するが蘇ったティガ・スカイタイプのティガスカイキックとランバルト光弾で倒された。
物語
21世紀初頭。平和を達成しようとしていた地球に謎の隕石が落下する。
隕石の中に収められていたタイムカプセルは地球に大異変が起こる事を告げる。
それと前後して二大怪獣が突如出現! 人類の滅びとの戦いが今始まるのであった。
感想
V6の長野博さんが主演で、オープニング曲の『TAKE ME HIGHER』もV6が担当している。アイドルを主役と主題歌に起用するのはウルトラシリーズでは初めての試みで、これまでとは違う新時代のウルトラ作品となった。
『TAKE ME HIGHER』は歌詞に「ウルトラマン」と言う言葉が使われない当時としては異色のヒーローソングだったが印象に残る場面で使われた事もあって現在も人気のウルトラソングとなった。
オープニング映像は様々な文字と図形が登場する背景が印象に残る。
『ティガ』の製作状況を考えるとオープニング用の映像を作る時間が無いのでこのような感じになったのかもしれないが古代文明っぽい感じが出ていて結構合っていたと思う。
「21世紀初頭。憎しみや争い事は減り、自然は美しさを取り戻そうとしていた。この星に生きる全てのものの願い、平和が叶えられようとしていた。しかし、大異変は始まった」。
物語の中で平和を掴んでいく作品が多い中、『ティガ』は平和を掴んでから物語が始まっている。『初代マン』が放送された1960年代は21世紀に夢や希望を求める作品も多かったが『ティガ』が放送された1996年では結構珍しい設定だったと思う。
出現したゴルザを見て驚くダイゴとレナ。当初の予定では過去に怪獣は全く登場していないと言う設定で、ダイゴとレナがゴルザが恐竜ではない事に驚いたり、新種の生物であるゴルザに「◯◯ザウルス」と言う名前を付けようとする場面があったらしい。
これらの場面は尺の関係でカットされてしまったが、GUTSが非武装で信号弾くらいしか装備が無かった事から怪獣と言う存在が『ティガ』の世界では一般的ではない事は分かるようになっている。
ガッツウイングのコックピットはレナが前でダイゴが後ろとなっている。女性隊員であるレナがエースパイロットなのに当時は驚いた人もいたらしい。
女性のエースパイロットは過去にも『T』の森山隊員や海外作品である『G』のキムや『パワード』のヤング等がいるが、『ティガ』以降は殆どの作品で女性のエースパイロットが登場する事となった。
ナレーションでTPCやGUTSと言った組織の紹介はあるのだがウルトラシリーズの定番である隊員一人一人の紹介は無かった。GUTSは隊員の役割分担がきっちりとされているので紹介が無くても分からない事はないが、まだ非武装である第1話ではシンジョウは殆ど目立っていなかった。後の活躍を考えるとちょっと意外。
地球に落下した隕石を司令室で解体するGUTS。もし爆発でもしたらどうするつもりなのだろうか……。隕石の中に収められていたタイムカプセルは他の場所で解析されるのだから隕石の解体もそこでやれば良いのに。
タイムカプセルのホログラムで地球星警備団長のユザレが登場する。
ホログラムで主人公にメッセージを告げるのは『スター・ウォーズ』のレイア姫がモデルかな?
詳しい説明は無いが、地球星警備団とは当時のTPCやGUTSのようなものと考えられる。
後の展開を考えるとユザレが地球に大異変が起こる事を告げる場面でのダイゴとレナとイルマ隊長の反応はなかなか興味深い。
ユザレの話では古代のウルトラマンは本来の姿である光となって星雲に帰ったとなっている。
このイメージは昭和のウルトラマンを思わせる。
星雲に帰った古代のウルトラマン達は今どうしているのだろうか?
タイムカプセルが収められていた隕石は謎の星雲から地球に飛来した。
隕石が3000万年前の地層で出来ている事からタイムカプセルが3000万年前に打ち上げられた事が分かるが、いくらなんでも3000万年もの未来の事を予測していたとは思えない。
ティガのピラミッドでダイゴに語りかけた声等、地球に起こる大異変を察知してタイムカプセルを地球に呼び戻した意思が今の地球に存在していたと思われる。
ティガの地はどこにあるのか?と言うイルマ隊長の問いに「ティガありますよ」と即効で答えるヤズミ。
そんなすぐに見付けられるほどティガの地は有名だったのか、それともヤズミの検索能力が凄かったのか。
16年振りのTVシリーズとなった『ティガ』。夕日をバックにしたゴルザと月夜をバックにしたメルバの出現シーンやビルを破壊して現れるゴルザと衝撃波を発しながら海面を進むメルバのシーンはウルトラ怪獣の復活を強く印象付けた。
ゴルザとメルバは『Q』の放送第1話である「ゴメスを倒せ!」に登場したゴメスとリトラがモデルなのかな。
これまで「レギュラーで登場するウルトラマンは一人」と言うイメージがあったので、ティガのピラミッドの中に巨人像が3体いたのには驚いた。
そして、その内の2体が完全に破壊されてしまったのにはもっと驚いた。石像は古代のウルトラマンがかつての戦いに用いたもので今はウルトラマンは宿っていないのだが、それでも怪獣に為す術無く破壊されてしまうのは悲しかった。
もし2体の石像が破壊されていなかったら『USA』みたいに複数のウルトラマンが活躍する展開になっていたのだろうか。
因みに、この時に破壊された2体の巨人像の力がティガに宿った事でティガはトリプルチェンジが可能になったらしい。
残された最後の巨人像のカラータイマーに光となったダイゴが宿った事でウルトラマンが永き眠りから目覚める。
『ティガ』はウルトラマンのTVシリーズの復活作であるが、劇中でもウルトラマンの復活が行われると言うのが面白い。
目覚めたティガはいきなり1対2と言うハンディキャップ戦を強いられてしまうが、力強いゴルザをパワータイプで、素早いメルバをスカイタイプでそれぞれ圧倒する。パワータイプの怪獣にスピードタイプで対抗するのではなく、パワータイプの怪獣をパワーで圧倒する事でティガの強さを見事に見せていた。
タイプチェンジする時のボディカラーの変身シーンが自然で良い。
やっぱりティガのデザインは美しい。今回登場したティガ、ゴルザ、メルバをデザインしたのは丸山浩さん。丸山さんは多くのウルトラマンと怪獣のデザインを担当し、平成ウルトラシリーズのイメージを作り上げた。
戦いが終わった後、誰もいない司令室にユザレのホログラムが現れて「巨人を蘇らせる方法はただ一つ、ダイゴが光となる事。その巨人の名はウルトラマンティガ」と語り、ガッツウイングのコックピットでその言葉を聞いたダイゴは自分が謎の道具=スパークレンスを持っていた事に気付く。
ところで、あれだけの大爆発の中から傷一つ埃一つ無しに現れたダイゴを誰も不思議に思わなかったのかな?
この第1話は撮影した場面の半分近くをカットした為にドラマが殆ど無くて起きた出来事をズラズラと並べた感じになっていて、ダイゴとウルトラマンの関係、GUTSの隊員達の紹介、超古代人とゴルザ&メルバの関係と説明不足な部分も多々あった。その中で第1話として今回はウルトラマンと怪獣を復活させる事に焦点を合わせたのは正しい判断だったと思う。
又、今回の話で説明されなかったところは後の話でフォローされるようになり結果的に『ティガ』はこれまでの作品に比べて縦軸のストーリーが強い作品となった。
今回の話は松原信吾さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。