帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「金星の雪」

「金星の雪 ーグライキス登場ー
ウルトラマンダイナ』第44話
1998年7月11日放送(第44話)
脚本 長谷川圭一
監督 村石宏實
特技監督 村石宏實・満留浩昌

 

宇宙球体スフィア
全長 計測不能
体重 計測不能
時空の歪みから金星に出現した。珍しい二連タイプ。
金星の大気改造システムであるアイス・ビーナスを破壊して中の人工バクテリアをグライキスに突然変異させた。グライキスに力を与え、自らも先端の開口部から衝撃波を発してダイナやスーパーGUTSを苦しめる。
コスモネットを通じて再び地球人にメッセージを送るが最後はスーパーGUTSに根性で撃ち落された。

 

灼熱怪獣グライキス
身長 54m
体重 7万7千t
スフィアがアイス・ビーナスの人工バクテリアを突然変異させた怪獣。
金星の大気を泳ぐように移動し、口から火球を吐く。戦闘形態と手足を収納した飛行形態がある。
スフィアと共に金星の環境で力を発揮できないダイナを苦しめるが最後はスーパーGUTSの根性を受け取ったダイナ・ミラクルタイプの反撃を受けて弱点である頭部を砕かれて爆発した。その後、呪いから解放されたアイス・ビーナスが雪のように辺りに降り注いだ。

 

迷子珍獣ハネジロー
身長 33cm
体重 5kg
司令室から金星での戦いを見ていた。

 

物語
金星の大気改造システムからの信号が途絶えたのでスーパーGUTSは調査に向かう。
そこには地球人の宇宙進出を快く思わないスフィアの呪いが待ち受けていた。

 

感想
滅びの微笑(前編)」「滅びの微笑(後編)」に続いてスフィアが登場していよいよ本格的に動き始める。『ティガ』に比べて縦軸以外の話が多かった『ダイナ』だが後半に入って色々な話が繋がるようになってきた。
今回の話はもっと前に予定されていたが撮影が困難だと言う事でこの時期まで持ち越されていたらしい。しかし、結果として最終章の前にネオフロンティアスピリッツやスフィアと言った『ダイナ』のメイン要素を振り返る事が出来た。

 

地球と極めて似た特徴を持ちながらも生命を寄せ付けぬ灼熱地獄と化してしまった金星の大気改造計画を進めているマーク浅川博士。スフィアの介入によって計画は中止に追い込まれてしまうが、マーク博士やアスカのように決して諦めなかったら、いつかきっと金星の黄色い灼熱地獄が地球のような緑の楽園になる日も来るだろう。
ところでグライキスが倒された後に降ったアイス・ビーナスの雪を回収したら今後の研究に役立つと思うが回収したのかな。

 

「金星に生物はいない」と断言するナカジマ。確かに金星の環境は厳しいが今まで登場した怪獣はそういう環境でも十分平気だったぞ。
アスカも懲りずに何度も無茶をするが、ナカジマも懲りずに何度も自分の常識で物事を判断してしまう。

 

レーザーの照準に誤差が生じ、ミサイルも大気圧で押し潰され、ダイナの動きも制限されてしまう等、グライキス以上に恐ろしい敵と言えた金星の大気。しかし、グライキスはそんな環境でも全然平気であった。
この事に疑問を抱く人もいるようだが、地球の環境に適した存在が金星の環境では苦戦を強いられるわけで、グライキスのような金星生まれの金星育ちにとって金星の環境は何とも無いはず。逆に地球に来たらグライキスの攻撃にメチャクチャ誤差が生じるかもしれない。

 

『ティガ』のアートデッセイ号に比べてイマイチ印象が薄いクラーコフNF-3000だが出番は多い。だが、今回は金星でグライキスに襲われ、「滅びの微笑(前編)」ではスフィアに乗っ取られ、「移動要塞浮上せず!(前編)」では海底に沈んだりとなんか毎回酷い目に遭っている。

 

リスクが大きすぎると金星突入を渋るスーパーGUTSに向かってアスカは「リスクが大きい分、達成感も大きい。それに、どんな危険にも立ち向かっていく……。それがネオフロンティアスピリッツじゃないですか?」と言って出動する。そして、それを聞いたスーパーGUTSもアスカの事を「馬鹿」と言いながらも付いてくる。
警戒してその場に踏み止まる賢者よりも危険を冒してでも突っ切る愚者になれ!と言うのが『ダイナ』の基本姿勢。

 

金星に投下した大気改造システムは人工バクテリアを増殖させて金星の大気を改造すると言うもの。マーク博士は大気改造システムのアイス・ビーナスを人類の未来にとって夢のお城と語るが、よくよく考えると、これは地球人が他の星の生態系を自分達の都合で変えていると言う事で、「移動要塞浮上せず!(前編)」「移動要塞浮上せず!(後編)」でスヒュームがやろうとした事と同じだったりする。
そう考えるとスフィアが地球人を「侵略者」と断じたのもあながち間違いではないと言える。もっともスフィアも自分達の思想を他人に押し付けると言う侵略行為を行っているので、スフィア=正義、地球人=悪と言う図式にはならない。

 

たとえダイナでも金星の環境で戦うのは大変でミラクルタイプのテレポーテーションやレボリウムウェーブ・アタックバージョンでもグライキスを倒す事が出来なかった。しかし、スーパーGUTSが根性でスフィアを撃ち落し、その根性を受け取ったダイナも根性でグライキスを倒す。ミラクルタイプでも根性でストロングタイプ並の力が出せると言うのがダイナらしい。

 

主役回と言うわけではないが今回の話はコウダ副隊長がかなり目立っていた。
有名な「根性で撃ち落とせぇー!!」だけでなく、マーク博士との会話がそのまま『ダイナ』そのものを語っているとも言える。
マーク「宇宙はまだ人間には測り知れない領域です。私達が追い求める夢は本当に正しいと言えるでしょうか?」、
コウダ「今はまだ分かりません。ただ、夢を見る事が出来る人間て生き物が私は大好きです」。