帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「あなた誰ですか?」

「あなた誰ですか?」
ウルトラQ dark fantasy』第3話
2004年4月20日放送(第3話)
脚本 林民夫
監督 金子修介

 

物語
山崎純は朝目覚めると周り全てがちょっとずつだが確かに昨日とは違っていると感じていた。その事を理髪店に来た一人の客に話すのだが……。

 

感想
目覚まし時計の時間や家具の配置や扉や階段と言った自分の周りの微妙な変化から山崎純の世界が少しずつ不安定になっていく流れが秀逸な恐怖作品。
途中にある台詞が終盤で明かされる驚愕の真実に繋がっているので一度観終わった後にもう一度最初から見ると思わず「なるほど」と頷く場面がいくつかある。

 

陽一郎少年の死体を望月が説明する場面は不謹慎ではあるがちょっと笑える。

 

今回はアメリカの哲学者ヒラリー・パトナムの思考実験「水槽の脳」を扱った話。
怪獣や宇宙人が登場するウルトラシリーズでは怪現象は外的要因で起きる事が多いが、『Qdf』では人間の内部から怪現象が起こる事が多い。今回はその最初の話と言える。

 

現実世界では本を読み聞かせる女性だけが山崎の反応を感じ取っていたが、山崎純の世界では彼女は山崎にとって理解不能で意思疎通が出来ない存在となっているのが興味深い。

 

ウルトラシリーズでは怪現象は怪獣や宇宙人によってもたらされる事が殆どで『Qdf』でも第1話はガラモンとガラQが、第2話ではジラフ星人が登場しているが今回は怪獣も宇宙人も登場しないウルトラシリーズでは珍しい話となった。
今回の話を『世にも奇妙な物語』とかとどこが違うのか?と問われると正直言って難しいところがある。『Q』も『世にも奇妙な物語』も『未知の世界・ミステリーゾーン』等を源流とする作品なのだが、『Q』は途中で怪獣作品に路線変更して、続く『初代マン』以降は巨大ヒーローと怪獣の戦いが主題となった為、それに引っ張られるように『Q』も怪獣作品と括られるようになったところがある。その為、「悪魔ッ子」や「あけてくれ!」と言った怪獣が出ない話は例外的なものと捉えられ、後の『Q倶楽部』や『Qdf』で怪獣に拘らない作風を展開するとこれまでのウルトラシリーズからズレた印象が生じてしまい、スタッフは『UNBALANCE』時代の『Q』を目指したのに視聴者には『世にも奇妙な物語』的な作品に見えてしまう事となった。
単にウルトラシリーズから巨大ヒーローや怪獣を取り除けば『Q』と言う作品が再現できるわけではなく、むしろ、巨大ヒーローと言う分かり易いビジュアルイメージが無いので『Q』は他のウルトラシリーズよりも続編やリメイクと言った再現が難しい作品と言える。

 

後に『超星艦隊セイザーX』のシリーズ構成を務める林民夫さんはウルトラシリーズは今回のみの登板となっている。

 

『Q』の劇場版の頓挫から約15年。遂に金子監督がウルトラシリーズに参加。金子監督は後に『マックス』にも参加し、ガメラゴジラ、ウルトラの日本三大怪獣作品を制覇している。