帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「後ろの正面」

「後ろの正面」
ウルトラQ dark fantasy』第18話
2004年8月3日放送(第18話)
脚本 武井彩
監督 服部光則

 

金髪少年
殺人サイトを使って男達を誘っては次々に殺していった。目的を持たず、ただ楽しみの為の遊びとして人々を殺害していく。
父親から虐待を受けた庄野麻子が作り出した人格の一つと考えられたが……。
本人は自らを「理由無く人を殺す人がたくさんいる社会から生まれた歪み」と述べている。

 

物語
あるサイトにアクセスすると黒髪の女性が「私と遊びませんか?」と微笑みかけてくる。
その誘いに乗った男達が次々と殺害されていく中、半田刑事は事件現場に花を供えるしおりと言う黒髪の女性と出会う。

 

感想
童謡『かごめかごめ』を鍵とした連続殺人事件から異能者との対決を経て最後は多重人格者による殺人に落ち着く……かと思いきや最後の最後に驚きの結末が待っている。
今回の話も『Q』と言うより『怪奇』に近い雰囲気で「童謡」「インターネット」「多重人格」と言った要素が上手く融合されていた。
話の内容を考えるともっと色々とドギツクやっても良かったかなとも思えるがウルトラシリーズである事を考えるとこれ以上は無理だったかな。

 

玉木刑事の先輩に当たる半田刑事が登場。演じるのは事件モノに数多く出演している渡辺いっけいさん。
玉木刑事が人の話を聞きたがらないと言う刑事としてはいかがなものかと言う人物なので常にアンテナを張って様々な人から情報収集する半田刑事の優秀さが光る。
殺人サイトを解析した剛一が「次の殺人サイトのターゲットは……!」と言いかけたところで「俺なんだな? 丁度良い。この目で殺人鬼を拝んでやる」と返す場面が渋くてカッコ良い。
ただ一般人故の限界か、しおりの正体に気付かず最後は危機に陥ってしまったのは残念だった。

 

剛一に情報を持って来た早紀ちゃん。
涼以外にも剛一に協力してくれる人がいる事にちょっと驚いたが、よく見たら早紀ちゃんは「踊るガラゴン」で剛一の手品を楽しんでいた。普段から仲が良かったのかな。

 

豹変したしおりがコンクリートを手に襲いかかる場面はリアルで地味に怖い。

 

半田刑事が最初に出会ったしおりは大人しい黒髪の女性だったが豹変したしおりは金髪に変わっていた。
しおりの本当の名前は庄野麻子と言う多重人格者で、無感情な麻子に対してしおりは人間の良心を寄せ集めたような心優しい人格だった。
童謡『かごめかごめ』を耳にすると過去に目隠しされて父親に後ろからバットで殴られた恐怖を思い出して人格が切り替わるらしい。
虐待によって感情を失った女性が虐待の過去を持たない人格しおりを作り出し、後に父親への復讐を果たす為に攻撃的な金髪少年の人格を作り出して男達を殺害していったと考えられる。しおりが半田刑事を頼ったのも父親と言う存在に対する感情があったのかもしれない。
金髪の少女ではなく金髪少年となって出会い系サイトを利用して男を誘った手口から麻子は父親から性的虐待も受けていた可能性があるが劇中ではそこまでは語られていない。

 

金髪少年は麻子が生み出した人格と言われているが逮捕直前に麻子の中から消えるとラストシーンで都市伝説サイトで事件のあらましを読んでいた無関係の女性の背後に現れるなど単なる多重人格の域を超えたものを持っていた。
影の侵略者」の入れ替わりや「李里依とリリー」のリリーのように本体から独立した存在となったのか、それとも金髪少年と言う精神体に近い謎の存在がいて心の隙間を持つ麻子に取り憑いたのか、色々考えられる結末となっている。

 

インターネットが重要なツールとして扱われていたので電脳空間と思われた場所が実は複数の人格が住む精神世界だったと言うどんでん返しに驚いた。
ただ、しおりや金髪少年が瞬間移動のように出没しているのであの場所は単なる精神世界ではなく異次元世界のような場所だった可能性もある。