帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラゾーン』

『ウルトラゾーン』
2011年10月16日~2012年3月25日放送

 

「これから30分。あなたの目はあなたの体を離れて「もしもこんな所に怪獣が現れたら?」と言うパラレルな世界……ウルトラゾーンに入っていくのです」と言うナレーションにあるようにウルトラシリーズに登場した怪獣を主役に据えたバラエティ番組。
非日常の存在である怪獣が日常の中にいると言うギャップが実に面白い。

 

テレビ神奈川千葉テレビテレビ埼玉サンテレビジョン名古屋テレビ放送の5局共同制作で『戦国鍋TV ~なんとなく歴史が学べる映像~』のスタッフが制作している。
『戦国鍋』のエグゼクティブ・プロデューサーだった大月俊倫さんが円谷プロの取締役に就任したのが企画のきっかけらしい。

 

タイトルの「ウルトラゾーン」は『Q』に影響を与えたアメリカの作品『THE OUTER LIMITS』が日本で放送された時のタイトルである『空想科学映画 ウルトラゾーン』が由来になっていると思われる。

 

タイトル画面は『Q』をイメージしたもので、オープニングとエンディングの影絵は『初代マン』をイメージしたものになっている。何故かいるザムシャーが妙な存在感を発揮している。

 

怪獣を知らない人も笑えるが、怪獣図鑑にしか載っていないようなマニアックなネタまで網羅しているので怪獣を知っている人も十分に満足できる作りになっている。

 

 

 

怪獣特捜隊
「怪獣特捜隊とは地球上に現れるあらゆる怪獣に対し人類にとって考え得る最善の方法で対策する組織。今日もまた地球のどこかで怪獣が現れたようだ」。

 

怪獣特捜隊の基地は『初代マン』の科特隊基地を思わせるデザインにアルファベットの「X」の要素が加えられている。
何故か基地の屋上から水が滝のように流れる時があるが『セブン』のウルトラ警備隊基地が元ネタかな?
背後にある「怪」と言う文字がある山が妙な存在感を発揮している。時々噴火していると言う危険極まりない状態だが、この「怪」の篝火と山の噴火は付近の住民に怪獣出現を伝える為の設備らしい。国家の財政難を受けて人件費が削減されていると言うのにどうしてこんなところにお金を掛けたんだ?(と言うか噴火って怪獣出現よりヤバいだろ)

 

最終回で怪獣墓場に通じるウルトラゾーンが閉じた事が語られているのでこの世界の怪獣出現も終わりを告げたと思われる。
タカダ隊員が最後に歌う『ウルトラマンメビウス』の歌が実に良い雰囲気。

 

 

バトル・シミュレーション
「今日はどうやら怪獣が現れないようだ。そこでタカダ隊員は怪獣との戦い、特に素手によるタイマンバトルを想定して地下道場でトレーニングを積んでいた」。

 

バンダイから発売された「エア怪獣シリーズ でっかい○○」の紹介を兼ねたコーナー。
登場したのはエレキングゴモラで何故かバルタン星人は登場しなかったが『ウルトラゾーン 公式ガイドブック』では円谷プロ社屋にてタカダ隊員とエレキングゴモラ&バルタン星人の戦いが実現している。
それにしても怪獣は殆どが巨大なのに何故に素手でのタイマンバトルを想定するのだ? ひょっとしてタカダ隊員はレオなのか?

 

ぶっちゃけると怪獣の人形相手に独り相撲を演じているわけだが、それで数分も間を持たせる事が出来る役者って本当に凄いと思う。

 

タカダ隊員の掛け声が「セイヤー!」なのは高田里穂さんがヒロインの泉比奈を演じた『仮面ライダーOOO』での仮面ライダーオーズの掛け声が元ネタ。

 

 

タカダ・リホ高田里穂
怪獣特捜隊日本支部の隊員。内勤で怪獣出現の情報を伝えるのが仕事。怪獣が出ていない時は暇なのか色々と暇潰しをしている。
怪獣特捜隊隊員として「よつばのクローバーの見つけ方」と言う名前のオフィシャルブログを開設している。
右手であるが薬指に指輪を付けている場面があり恋人の存在を仄めかす発言もあるが最終回では喧嘩していたようであった。
バトル・シミュレーションでは別名りぃ、身長165cm、体重43kgとなっている。
役者の名前をそのまま役名にすると言うのはウルトラシリーズでは結構珍しい。

 

 

 

コントコーナー
怪獣転校生
「有名中学に毎年合格者を出す、親の平均所得もそこそこ高めの私立小学校」を舞台に怪獣と先生のやり取りで怪獣のマニアックな設定を紹介するコーナー。
ところで小学校6年生のクラスに転校すると言う事はこのサドラやテンペラー星人は小学6年生(12歳)と言う設定なのかな?

 

 

ヘアサロン・マグマ&ババルウ
「読者モデルも来店する中目黒の目黒川沿いから一本入った美容室」を舞台にカリスマ美容師のマグマ星人ババルウ星人が色々と陰湿な争いを繰り広げるコーナー。
因みに本作ではマグマ星人が先輩でババルウ星人が後輩となっているが『レオ』当時はババルウ星人の方が格上と言う設定があった。

 

 

怪しい者じゃないです
「都心から電車で30分。閑静な住宅地に立つ瀟洒なマンション」を舞台に「怪獣」なのに「怪しい者じゃない」とのたまう怪獣と若い女性の住人のやり取りを描いたコーナー。
訪問業者のような怪獣達が本当にウザいw
住人は「セブン呼びますよ」で怪獣を黙らせていたが知り合いなのかな?(セブンは女性の知り合い多そうだし)

 

 

怪獣マッサージ
「結構強めに揉んでくれると評判の溜池山王のマッサージ店」を舞台に怪獣や宇宙人の活動を「仕事」と解釈してしまった事で生じるマッサージ師と怪獣達の認識のズレを描いたコーナー。
個人的にガンQ編が大好き!

 

 

不良怪獣ゼットン
「実は子供嫌いと噂のおばあちゃんがやっている不良達のたまり場の駄菓子屋前」を舞台に地球防衛高校(通称チボ校)に転校してきたゼットンが赤王高校との抗争に巻き込まれていく中でかけがえのない仲間を手に入れていく話。
ベタな不良モノだが、その不良をゼットンが演じているのが面白い。無口で控えめながらも威圧感と存在感がハンパない!

 

ゼットンの機械音を周囲の人間は理解できないのでゼットンは無口な奴だと周りに思われている。カオリも最初はゼットンの事を無口な人と言っていたが、いつの間にか会話が成立するようになっていた。愛の力かな?

 

最後の「今のお前の仲間はくっだらねー連中かもしれねぇけど、お前の事を孤独にするような奴、ここにはいねーよ」と言うナオキの言葉が素晴らしい。
因みに第21回のアイキャッチで後日談が描かれている。

 

「宇宙恐竜ゼットンウルトラマンを唯一破った怪獣。何故かこの街ではその凄さを知る者が少ない……」。

 

 

怪獣職務質問
「昨年の夏に変質者が出てそれ以来警察の巡回が強化された新興住宅地」を舞台にしているコーナー。お巡りさんと宇宙人達の認識のズレを描いているのは「怪獣マッサージ」と同じだが、お客さん相手のマッサージ師と違ってお巡りさんは怪獣達を不審者として疑ってかかっているのでワザとイラつくようなやり取りをしているところがある。
実は「不良怪獣ゼットン」に登場した駄菓子屋前が舞台だったりする。

 

ピット星人編は直後のアイキャッチが後日談のようになっている。

 

 

 

ミニコーナー
OLのウワサ話
OL3人がカフェで上司である怪獣の噂話をして最後にあだ名を付けるコーナー。
他のコーナーと違って怪獣の設定は拾わないで怪獣の外見のみに着目しているのが特徴。

 

 

怪獣ことわざ
ことわざに怪獣を当てはめて出来た文章をかるた風に紹介するコーナー。
時々出てくる強引極まりない文章が結構ツボにハマる。
気のせいか「か」が妙に多い。

 

 

怪獣ENGLISH
セサミストリート』を思わせる雰囲気で英語の教科書の例文風に怪獣の紹介を行うコーナー。
英語の日本語訳なので怪獣がですます調で自己紹介をする事になって真面目故の可笑しさが生まれている。

 

 

怪獣漫才
ソフビ人形や怪獣消しゴムを使った怪獣達による漫才。
漫才なので怪獣の設定のおかしな部分にツッコミを入れる事がある。ベリュドラの怪獣が百体以上いる事にツッコミが入ったのには笑った。

 

モノクロ作品である『Q』の登場怪獣が出る時は漫才の画面もモノクロになる時がある。

 

個人的に「キリエロイドトゥー!!」が好き。

 

放送順に話を見ていくと第20回のドラマコーナー「最後の攻撃命令」の次が第21回のナースのジョーによる怪獣漫才と言う台無し感ここに極まれりな繋がりになってしまう。

 

 

 

ウルトラゾーンチャンネル
『Q』に登場したケムール人、ラゴン、M1号が西村映像による新規造型で登場。
このコーナーは他のコーナーと違ってウルトラ怪獣ではなくケムール人、ラゴン、M1号と言う芸人が様々なシチュエーションコントに挑んでいると思って見た方が良い。
なので、このコーナーはウルトラ関係のネタは少なくてケムール人達のキャラクターを使ったネタが多い。
前半は不条理ギャグが多かったが後半になるとドラマ仕立てになり、人間と怪獣が種族の壁を越えて理解し合う事をテーマにした話が増えていった。
板尾創路さんのナレーションが何とも言えない絶妙な味を出している。

 

ケムール人編
ケムール人の特徴である「ケムール走り」「遊園地での巨大化」「液をかける」を取り入れた話が多い。宇宙人に対して妙に強気な地球人が登場するのも特徴の一つ。

 

「ケムール人登場!」「高校生・ケムール」「ケムール、ファッションモデルになる」でケムール人と地球人の女性の話を描いたのは2011年公開の『電人ザボーガー』を手掛けた井口昇さん。(因みに主演は板尾創路さんだった)
「公園清掃員の挑戦!」「明日は、あっちだ!」でケムール人と地球人の男性の話を描いたのは辻本貴則さんでこれがウルトラシリーズデビュー作となっている。
連作である「ケムール人走る」シリーズを手掛けたのは特殊造形クリエイターで西村映像の代表者である西村喜廣さん。ラストシーンがかなり泣ける。

 

「明日は、あっちだ!」でボクサーのショウを演じた虎牙光揮さんは『ギンガ』でも元ボクサーの大里剛を演じている。

 

放送リスト
第7回「ケムール人登場!」
第9回「高校生・ケムール」
第11回「ケムール人、走る」(ケムール人走るシリーズ)
第13回「ケムール、ファッションモデルになる」
第18回「公園清掃員の挑戦!」
第20回「明日は、あっちだ!」「続ケムール人走る」(ケムール人走るシリーズ)
第21回「続々ケムール人走る」(ケムール人走るシリーズ)
第23回「さよならケムール人」(ケムール人走るシリーズ)

 

 

ラゴン編
恋する乙女ラゴンちゃんの物語。ブサイクでモテないのをネタにしている女性芸人みたいな話が多い。ラゴンちゃんは恋する乙女なのだがすぐに怒って暴れたり相手を連れ去ったり意外と卑怯な手段を使ったりと結構怖い。
ラゴンちゃんを見て男性陣は皆驚くのだが女性陣は意外とあっさり受け入れているところに女性への男女の対応の違いが見られる。

 

タカシやミカと言った同じ名前の人物が何回か登場しているが前回の流れをあまり汲んでいないようなのでそれぞれの話がパラレルになっているのかもしれない。

 

第18回の「ラゴン一家」以降の話は第17回のM1号編「M1号はつらいよ」を経ての話となっていて、ラゴンちゃんは母親になって主役は息子のラゴン君へと代わっている。
「さすらいのM1号 情熱編」と「さすらいのM1号 完結編」に本シリーズの後日談が描かれている。あのラゴンちゃんが普通の母親になっている事に驚くやら泣けるやら。

 

殆どの話を井口監督が手掛けているが終盤の「ラゴン一家」「ラゴンのお弁当」は本作の音楽を担当している福田裕彦さんが脚本に参加している。

 

放送リスト
第7回「ラゴン登場!」
第8回「ラゴンのハッピーバースディ」
第12回「ラゴンの恩返し」
第14回「ラゴン、ダンパに行く」
第18回「ラゴン一家」
第19回「ラゴンのお弁当」

 

 

M1号編
宇宙を漂い続けていたが母親の声が聞こえたので地球に帰って来たと言うM1号のお話。
ナレーションも言っているようにM1号は人工生命なので母親はいないのだが、それならあの母親は何なのかと言う疑問が……。
男はつらいよ』のパロディである「M1号はつらいよ」での着ぐるみキャラの演技は一見の価値あり。M1号の寅さんの格好が似合いすぎ!

 

井口監督や西村監督作品で脚本を書いている継田淳さんはこれがウルトラシリーズデビュー作となっている。
継田さんがほぼ全編を手掛けているが「M1号はつらいよ」だけ井口監督が担当している。

 

徳マサの兄貴は『Q』の「地底超特急西へ」に登場したイタチに当たるキャラなのかなと思う。

 

放送リスト
第7回「さすらいのM1号」
第10回「続・さすらいのM1号」
第16回「新・さすらいのM1号」
第17回「M1号はつらいよ」「帰ってきたさすらいのM1号」
第19回「さすらいのM1号 情熱編」
第21回「さすらいのM1号 完結編」

 

 

共演編
それぞれのシリーズとは別に3体の共演を前提とした特別編。

 

「ウルトラゾーンファイト」でナレーションを務めた山田二郎左衛門の正体は大月プロデューサーらしい。

 

放送リスト
第15回「お笑いに参加」
第16回「ウルトラゾーンファイト」
第22回「70年代ドラマが好き!」
第22回と第23回「名探偵M1号」

 

 

 

ドラマコーナー
第6回「THE LOVE」
ザラブ星人登場
脚本 松野拓行
監督 田口清隆

 

『ゾーン』をバラエティ番組だと思って見ていたらいきなり度肝を抜かれた話。
因みに脚本家の荒川稔久さんは「THE LOVE」みたいな話を入れるか入れないかに円谷と東映の違いがあると語っている。

 

ウルトラシリーズの宇宙人は「○○星人」と種族単位で描かれる事が多いが今回はそれを個人レベルの話にする事で「地球人と宇宙人は分かり合えるのか」と言うウルトラシリーズ不変のテーマを個人の恋愛を通して描いた。

 

みつ子は不時着したザラブ星人が夫に似ていると言っているのでザラブ星人それぞれの顔の区別が付くと思われる。それは同じ種族でも一人一人は違う存在だと言う事を示しているのだが、変身能力を持つザラブ星人はみつ子の死んだ夫と同じ顔に変身する事でその一人一人と言う「個」を消し去ってしまう。
死んだ人間は誰かの心の中で生き続ける。死んだみつ子を心の中に留めていられるのは不時着したザラブ星人のみ。それはみつ子と会っていない他のザラブ星人には出来ない事。
変身能力で外見上の「個」を消し去る事が出来るザラブ星人でもどうしても消す事が出来ない「個」の部分が心だと言える。
因みにザラブ星人はにせウルトラマンに変身した事があるので今回のザラブ星人の位置をウルトラマンに当てはめて考えてみるのも面白い。(実際、『メビウス』の「日々の未来」でメビウスは今回のザラブ星人と同じ事をしている)
どうしてウルトラマンは地球人の事を好きになったのかが分かる話とも言える。

 

「兄弟」と言う意味の「ブラザー」を逆に読む事で兄弟を裏切ると言う意味の「ザラブ」になり、さらにそれを「ザ・ラブ」に分ける事で恋愛モノに発展させたアイデアに脱帽。
ただ今回のタイトルはラストシーンまで隠してほしかったなと思う。

 

悪役のイメージが強い宇宙人にあえて善い人をさせると言うのは後のニュージェネレーションシリーズで何度か見られる作りである。

 

脚本の松野拓行さんは田口監督とは日活芸術学院の同期で『ゾーン』でのドラマコーナーのプロデューサーを務めている。

 

今回の話は自主映画『G』や『長髪大怪獣ゲハラ』を手掛けた田口清隆さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。

 

「私はあなたと一緒にいる時間が楽しかったのよ……。他の誰でもない、あなたと……」。

 

 

第8回と第9回「ホシの招待状」
ダダ登場
脚本 宮崎龍太
監督 田口清隆

 

タイトルは「星」と犯人を意味する「ホシ」と正体がダダだった「星野」をかけたトリプルミーニングとなっている。

 

宇佐美探偵事務所シリーズの一作で飄々としている宇佐美探偵とオカルトマニアの小早川助手が互いの考えを打ち合って真実に辿り着いていく流れが心地良い話。

 

宇佐美探偵シリーズはこの後も続くが宇佐美さんは今回限りの登場。
とりあえず、風邪を引いたのならマスクをしてください。

 

「一人だが三つの顔を持つ」と言うキャラクターだったダダを「三人が一つの顔を持つ」と言うキャラクターに変更して三人それぞれの性格を変える事で多重人格の要素も加えている。
ダダ三人の性格の違いは地球人に対する意識の違いで、Aは地球人の良さを信じ、Bは地球人に敵意を露わにし、Cは地球人に恐怖している。

 

「地球における知的生命体同士の争いに絶望した」と言いながら同じ種族と戦いを繰り広げるダダと言う図にこの世から争いが消えない理由を垣間見る事が出来る。

 

今回の話ではダダの人間標本になった人は自ら地球を脱出したいと願った人達となっていて『セブン』の「円盤を見た」のテーマも加えられている事が分かる。

 

そう言えばダダはその外見からCMや漫画等では女性っぽいキャラ付けをされる事が多いが実写の映像作品で実際に女性だった事はかなり珍しい。ひょっとして本作だけ?

 

脚本の宮崎龍太さんは本作以降のウルトラ作品で助監督を務めていて『ブレーザー』では監督デビューを果たしている。

 

 

第10回と第11回「スフラン島の秘蜜」
レッドキング バードン バンピーラ ピグモン スフラン登場
脚本・監督 田口清隆

 

宇佐美探偵事務所シリーズ第2弾。

 

今回は懐かしい南海の孤島編となっている。
スフランが巻き付いてくる演出や崖から人形を落とす演出はさすがに21世紀にやるとコントになる。わざとそう言う風に演出したのだろうが。
特別チームもウルトラマンも登場しないので人間が上空から島を見下ろすと言う場面が無くて鬱蒼と茂った森から怪獣を見上げる構図に終始しているのでジャングルならではの追い詰められている感が表現されていた。

 

高木刑事が小早川助手の事を好きだと判明するが積み重ねが無さすぎると言う事ですぐに振られてしまう。でも、ある意味、死亡フラグが早目に折られて生存する事が出来たとも言える。

 

登場怪獣のセレクトは『三大怪獣 地球最大の決戦』がモデルになっていて、レッドキングゴジラバードンラドン、バンピーラがモスラとなっている。

 

宍戸開さん演じる諸田探検家はピグモンの生き血で不老不死の研究をする為には手段を選ばない人物。役者繋がりで『マックス』のヒジカタ隊長と比べてみるのも面白い。
しかし、あれだけ人間を助けてきたピグモンが最後は人間の為に地雷で死んでしまうと言うのは嫌だなぁ。

 

 

第12回と第13回「いつも隣にホーがいる」
ホー ルナチクス登場
脚本 中沢健
監督 田口清隆

 

人が失恋した悲しみで生まれる怪獣ホーを見る事が出来るようになったノボルとタマエの話。
言われてみればホーは全ての人間に関わる可能性がある怪獣だった事に気付く。

 

ノボルの意思を感じてかルナチクスからノボル達を守って戦うホー。
メビウス』の「思い出の先生」での再登場でホーは単純な悪ではないと言うイメージが付いたが今回の話では最終的には『80』の「泣くな初恋怪獣」と同じく暴走したホーが人間を襲うようになる。
ルナチクスは『A』の「さようなら夕子よ、月の妹よ」で北斗星司と南夕子が別れるきっかけとなった超獣だが今回はノボルとタマエが付き合うきっかけとなっている。

 

ルナチクスによる街破壊やその後のホーとルナチクスの戦い等、低予算でも市街地戦が出来る事に感動。

 

冒頭の公園の場面で前回の話で小早川助手に振られた高木刑事が登場している。

 

今回の話は「歩く雑誌」として様々なジャンルで活躍している中沢健さんが脚本を担当している。

 

 

第14回と第15回「東京ジュラ紀
ガッツ星人 地底人 ピット星人 テレスドン エレキング登場
脚本 中沢健
監督 田口清隆

 

宇佐美探偵事務所シリーズ第3弾。
「アカンバロの瞳」をマクガフィンにして密室の中から一歩も出ずに部屋の外で起きた事を推理すると言う安楽椅子探偵に近い作りの話。
今回の話では宇佐美探偵の代わりに小早川助手が推理に参加している。松原警部に「小林君」と間違われるが、今回の話は怪盗赤色の登場も含めて小林少年が活躍する『少年探偵団』のようなノリになっている。

 

テレスドンエレキングの戦いのレベルが高くてバラエティ番組と侮ってはいけないと再認識させられる。

 

着ぐるみが無かったからか鳴き声と名前のみの登場となったアロンが哀れ……。

 

今回のピット星人は同じ放送回の「怪獣職務質問」では常に二人組と言う紹介がされていたのに珍しく一人のみの登場となっている。

 

「アカンバロ」とは恐竜土偶オーパーツが多量に発掘されたメキシコの街の名前である。

 

 

第17回と第18回「メフィラスの食卓」
メフィラス星人登場
脚本 松野拓行
監督 田口清隆

 

ホームレスから始まって、社会に不満を抱いている若者、そんな社会を作った政治家、そして子供と母親を経て最後に再びホームレスへと帰っていくメフィラス星人の話し相手。現在の日本と言う社会が抱える問題を描きながら最後に「家族」と言う最小の社会に帰結する展開が見事な名作。
本作ではウルトラマンや特別チームが表立って登場しないので、戦闘を外して物語をじっくりと展開してテーマをより明確に描き出す事が出来た。
社会の様々な問題を怪獣や宇宙人と言ったキャラクターを通す事で手短に分かりやすく描く事が出来ると言うウルトラシリーズの可能性を再認識させられた話となっている。

 

ホームレスで住所を無くしたが故に逆に地球全てが自分の住処と言う発想が面白い。
ホームレスの男性はメフィラス星人に「地球はあんたのもの」と言っているが、それは地球を明け渡したのではなくて誰かと一緒に食べる食事がおいしい理由を見付けるまでメフィラス星人の地球滞在を許すと言う意味もあった。

 

今回登場したメフィラス星人には兄弟がいるらしい。『初代マン』『T』『メビウス』に登場したメフィラス星人は三兄弟と言う設定があるらしいが、それと関係しているのかな?

 

『T』の「出た! メフィラス星人だ!」の時はウルトラシリーズを代表する迷言だった「卑怯もラッキョウも……」と言う台詞がまさか時を経てこんな感動的な話に繋がるとは思いもしなかった。

 

今回の話の影響かどうかは不明だが『シン・ウルトラマン』に登場するメフィラスも食事と交渉を両立させる人物となっていた。

 

今回の話はソフト化に際して未放送映像を加えた完全版が収録されている。

 

 

第19回と第20回「最後の攻撃命令」
ペダン星人 キングジョー登場
脚本・監督 田口清隆

 

今回の話は自衛隊とキングジョーの戦いが凄い!
ウルトラシリーズの新作が少なかった時期に「今、自分は特撮を見ている!」と言う気持ちになれた話だった。

 

またもや石橋けいさんで死を取り扱った話となった。

 

最後の謎の足音は誰のものなのかだが、物語の冒頭で防衛軍としての山本隊長の足音が強調されているので最後の足音も防衛軍関係者だと思われる。なので、最も可能性が高いのは副隊長の松島であろう。
今回の話は山本隊長と洋子が「親」の位置で、洋子のお腹の子供と山本隊長が育てた部下の松島と山本隊長が開発に携わった新型ミサイルが「子」の位置に当たる。山本隊長が洋子を殺す「親が親を殺す」、山本隊長がお腹の子供を殺す「親が子を殺す」、新型ミサイルがお腹の子供を殺す「子が子を殺す」の構図があるので残るは「子が親を殺す」となる。残った登場人物でこれをするには松島副隊長が山本隊長を殺すと言う展開が考えられる。(新型ミサイルで洋子を殺すのが「子が親を殺す」に当たるのではないのかとも考えられるが洋子と新型ミサイルの関係が薄いのでここでは外す)
実際、松島副隊長は作戦中の山本隊長に疑問を抱いていた。状況から山本隊長が侵略者と通じていたと疑った可能性は大いにある。
因みに松島副隊長は未制作に終わった「赤い転校生」にて隊長として再登場する予定だった。

 

ウルトラマンがいれば洋子は新型ミサイルが命中する寸前に間一髪で救出されてハッピーエンドになっていたのかなぁと考える事がある。

 

今回の話はソフト化に際して未放送映像を加えた完全版が収録されている。

 

 

第21回と第22回「悪魔が降りた日」
ベムラー登場
脚本 田口清隆・中沢健
監督 田口清隆

 

宇佐美探偵事務所シリーズ第4弾。
家賃滞納によって宇佐美探偵事務所が立ち退く事になってしまう。
宇佐美探偵によって厳重に封印されている事務所の一室には何かが閉じ込められているらしく松原警部が覗きこんだら手の影が一瞬だけ現れた。かなり驚く
因みに宇佐美探偵は風邪をこじらせて入院して二か月になるとの事。それはもう風邪のレベルじゃないような……。ダダとの接触で宇宙の菌でも貰ったのだろうか?

 

怪獣特捜隊のタカダ隊員が登場。今までモニター越しにしか見ていなかった怪獣と生で接触する事になる。
怪獣事件の専門家でありながら実際に怪獣と接触した事が無いタカダ隊員と一般市民でありながら何度も怪獣事件と遭遇して経験豊富となった松原警部達の構図が面白い。

 

今回は怪獣特捜隊の一般隊員が登場したり様々な装備が明かされたりと怪獣特捜隊のあれこれが分かる。
予算が削減されたり怪獣事件や宇宙人襲来が続いて部隊の立て直しが出来ていなかったりと妙なリアルさが『ゾーン』らしい。

 

今や懐かしい『ノストラダムスの大予言』が取り上げられる。今までのは全て前兆で本当の災厄はこれからかもしれないとの事。
「悪魔」と称されるベムラー。これは『初代マン』の「ウルトラ作戦第一号」でウルトラマンベムラーを「悪魔のような怪獣」と説明した事から。
又、新宿に悪魔が降りる事から『ULTRAMAN』のザ・ワンも思い出す。(そもそもザ・ワンベムラーをモデルにした怪獣だったし)
因みに田口監督の特撮初体験は『ゴジラ』(1984年版)らしく、新宿の高層ビルに大穴が開けられるのもここから来ているらしい。当初はゴジラ繋がりでゴメスを出す予定だったが『サーガ』にゴメスが登場するのでベムラーに変更になったとの事。

 

死亡フラグを立てまくりの松原警部と高木刑事。
彼らの生死は不明だが、ビルが倒壊するまで時間を稼がなくてはいけないとして松原警部が爪楊枝を持ってベムラーに立ち向かい、ベムラーは真下を見てそれを踏み潰そうとする場面があるので、ベムラーの真下に行って爪楊枝で威嚇した松原警部を見たベムラーが立ち止って踏み潰そうとしたところにビルが倒壊したと考えられる。なので、松原警部は死んだと考えるのが妥当。
高木刑事も落ちた瓦礫で頭を打っているのでこちらもかなり危険。
タカダ隊員は後にウルトラゾーンが閉じるのを観測しているので生存していると思われる。
だが、この話の登場怪獣がベムラーなので、ここから一つの推測が出来る。それは「ベムラーを追って地球にやって来たウルトラマンが皆を助ける」と言うものだ。
怪獣が主役だった『Q』は『初代マン』になってベムラーを追って来たウルトラマンが地球に現れた。それなら怪獣が主役だった『ゾーン』も最後はベムラーを追って来たウルトラマンが地球に現れる可能性は大いにある。

 

 

 

アイキャッチ
怪獣が日常に入り込んでいる一枚絵になっていて、そのシュールさが面白い。
着ぐるみを用意する必要が無いからか他のコーナー以上にマニアックな怪獣が出てくる。ジュダ様が出た時はさすがに驚いた。
又、「ヘアサロン・マグマ&ババルウ」や「不良怪獣ゼットン」と言ったコントコーナーと絡んだ絵もある。
シリアスなドラマコーナーが終わった直後の「台無しだよ!」感はなかなかクセになるものがある。

 

最終回はタカダ隊員が登場する連作になっていて、タカダ隊員のある一日と言う内容になっている。
この連作はTVで放送されたものの続きがDVDとBlu-rayの最終巻パッケージに描かれていて、これがアイキャッチシリーズの真の最終回となっている。
尚、『ゾーン』においてバルタン星人が登場するのは最終回のアイキャッチのみである。