帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「悪魔のマユ」

「悪魔のマユ ー宇宙怪獣ゴキグモン登場ー
ウルトラマンガイア』第30話
1999年4月3日放送(第30話)
脚本 増田貴彦
監督・特技監督 原田昌樹

 

宇宙怪獣ゴキグモン
身長 60m
体重 7万t
月の裏側から地球に襲来した。
口から出す白い粘膜でビルを繭にして中に100以上もの卵を植えつけた。餌は人間。
ソニックウェーブと両手の鎌が武器。
ガイア・スプリームヴァージョンのフォトン・ストリームで倒され、繭もチーム・ライトニングのファイヤーボムで焼き払われた。
「ゴキグモン」と言う名前は千葉参謀の「ゴキブリと毒グモを合わせたような」と言う発言を元に我夢が付けた。

 

物語
宇宙から襲来した怪獣はビルを特殊な繭で固めてしまう。
そのビルの中にはアッコの姉・律子が取り残されていた。

 

感想
梶尾リーダーを呼び出した我夢は後ろに花束を持って何故かモジモジ。そして、
我夢「か……梶尾さん! この花……受け取ってください!」、
梶尾「お……お前……。ウソォ……?」。
実はアッコから梶尾リーダーに花束を渡してほしいと頼まれていたのだが、それならどうして「アッコからの花束です」と言えなかったんだ? 我夢……。
花束を渡した直後にゴキグモンが襲来してしまったが、梶尾リーダーは花束を渡そうとした本当の人物を知る事は出来たのだろうか? まさか誤解したままでは……。

 

エリアル・ベースのコマンドルームから月の裏側に潜み地球を狙うゴキグモンまでカメラを一気に引いた演出が見事。本編と特撮が上手く融合した場面だと思う。

 

石室コマンダーはゴキグモンは根源的破滅招来体と関係がある存在なのだろうかと呟く。劇中でこの答えが明かされる事は無かったが、この疑問はかなり重要だと思う。
根源的破滅招来体は『A』のヤプールのように明確な意思を発するわけでもなく、『レオ』の円盤生物のように同じ場所から出撃するわけでもなく、『ダイナ』のスフィアのように同じ反応を持っているわけでもない。ただ地球に現れる謎の存在達を「根源的破滅招来体」と一括りにしているだけなのだ。ひょっとしたら、偶然に地球に現れただけなのに根源的破滅招来体と言う人類に害を成す存在だと勘違いされてしまった存在もいたのかもしれない。

 

ゴキグモンの醜悪な姿に嫌悪感を示すジョジーと割と平気な彩香。
そう言えば彩香の焦ったり取り乱したりした場面って記憶に無いなぁ。

 

「ゴキグモン」と言うあまりにまんまな命名をする我夢とそれをあっさり了承する石室コマンダー
石室コマンダーも「アンチマター」とか「ウルフファイヤー」とかまんまな命名をするからねぇ。

 

港の近くのある場所に花束を置く律子。ここが「あの人」の死んだ場所。怪獣に殺されたらしいので「光をつかめ!」でコッヴに撃墜された防衛隊のパイロットだったと思われる。
あの人の死の影響か、この話の律子はどこか自分の死を願っている雰囲気があった。

 

赤い風船が木にひっかかって泣いているのは「滅亡の化石」で藤宮に助けられた少女。
今回もゴキグモン事件に巻き込まれると怪獣に縁がある少女となってしまった。
因みに名前はユキちゃん。

 

麻酔弾を撃たれたゴキグモンは速攻で眠ってしまった。ウルフガスもだったがかなりの効果だ。
計算より早く目覚めてしまうのは麻酔弾の悲しいお約束。

 

「ミッションエリア内に肉親がいた場合、当該担当者はその任から外れる」としてアッコが任から外される事になる。
よく考えたら当たり前の事なのだが、ウルトラシリーズでは昔から家族や知り合いが事件に巻き込まれて隊員が奮起する話が何度もあった。ドラマを盛り上げる為にはアリかもしれないがリアリティを考えると確かに無理な展開ではあった。

 

現場で律子のドライフラワーを見付けた我夢はアッコが梶尾リーダーに渡そうとしていたドライフラワーの事を思い出して律子を助け出す決意を新たにする。
そう言えば、この時のアッコはまだ梶尾リーダーと律子が惹かれ合っている事を知らなかったのかな。もし知っていたら律子が作ったドライフラワーを梶尾リーダーに渡そうとは考えないはずだし……。

 

律子からの反応は無く、卵が孵化する時間は刻一刻と近付いていた。千葉参謀に決断を求められた石室コマンダーは遂にファイヤーボムを搭載したチーム・ライトニングの出撃を指示する。
心配するアッコからの呼びかけにも応えないで梶尾リーダーは任に赴く。やはり梶尾リーダーとアッコは住む世界が違うのだろうか……。

 

ライトニングの出撃を知った松尾は「突入しましょう! 俺達はレスキュー隊です。見殺しには出来ません!」とマイクルや我夢と共にビルに突入しようとするが、神山リーダーは「命令に従うんだ。俺達が行ってビルから抜け出せなくなったらどうする? 民間人だけでなく、梶尾は仲間まで撃ち殺す事になるんだぞ? そんな泥をあいつに被せる気か?」と言って皆を止める。
神山リーダーも本心では松尾達と同じく助け出したいであろうが、それでも冷静に状況を判断して行動する。人々を助ける為にはそれが最善だと分かっているから。

 

梶尾リーダーが人々を守る為にファイヤーボムを撃つ決意をする一方、我夢も律子を守る為にガイアV2に変身する。
ガイアV2は繭が攻撃されないように邪魔をするが、それでも梶尾リーダーはファイヤーボムを撃つ。しかし、ゴキグモンが子供達を守る為にファイヤーボムを素手で叩き落としてしまう。
シーガルは人々を守る為にシーガル・ファントップで消火活動に当たり、ガイアV2はスプリームヴァージョンにヴァージョンアップし、梶尾リーダーは律子を助ける為に繭に飛び移る。そして律子が助け出されたのを確認したガイア・スプリームヴァージョンはフォトン・ストリームでゴキグモンを倒すのだった。
今回は皆が「何かを守る為」に行動する話であった。「守る」と言う行動は皆同じなのだが、「何を守るのか」と言う目的が違った事で微妙なすれ違いや対立と言ったドラマが生まれていた。

 

事件解決後、病室にて。
梶尾「何故ナビで助けを呼ばなかったんですか?」、
律子「私一人の為に大勢の人が犠牲になる……。そう思ったら……。それに……あそこは主人が死んだ場所ですから……。何だか……、あの人に怒られるような気がして……。あの人……、防衛隊のパイロットでした……。あそこで……怪獣と戦って亡くなったんです」、
梶尾「自分は……あなたのいるビルを焼き払おうとしました。言い訳はしません。それが任務ですから」。
病室から出ようとする梶尾リーダーを律子が呼び止める。
律子「あの人が生きていたら……、きっと、同じ事していたと思います」、
梶尾「……」。
無言のまま病室から出る梶尾リーダー。外では我夢とアッコが待っていたが梶尾リーダーはそのまま去っていき、梶尾リーダーの去る姿を見たアッコは無意識に我夢の側へと近寄る。
去る梶尾リーダーの手には律子のドライフラワーが一輪握られていた。梶尾リーダーにドライフラワーを渡したいと言うアッコの願いは実現したのだが……。