帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「滅亡の化石」

「滅亡の化石 ー絶対生物ゲシェンク登場ー
ウルトラマンガイア』第20話
1999年1月23日放送(第20話)
脚本 川上英幸
監督・特技監督 原田昌樹

 

絶対生物ゲシェンク
身長 54m
体重 6万2千t
発掘された恐竜の卵に寄生していた。卵のような形態をしているが実際はゲル状の固形。アメーバの一種らしいが単なる単細胞生物ではないらしい。とても不可解な遺伝子を持っていて環境に対し動物的にも植物的にも変化する要素を持っている「絶対生物」と言うべき存在。
実は仮死状態でゲル状から巨大怪獣の姿になって活動を再開する。藤宮によると、かつて寄生する事で恐竜を滅ぼし、今度は巨大怪獣になって人類の数をある程度調整したら根源的破滅招来体を迎え撃ち、全てが片付いて存在理由が無くなったら再び永い眠りに就くとの事。
額の角から赤いホーミング弾を発射する。
チーム・ライトニングとチーム・ハーキュリーズの攻撃で角を折られ、ガイアのフォトンエッジで倒されると残りの細胞も全て消滅した。
ゲシェンク」と言う名前は藤宮が付けたものでドイツ語で「贈り物」と言う意味らしい。

 

物語
発掘された恐竜の化石から恐竜絶滅に関する新説が取り上げられるようになった。
それに興味を持った藤宮はある行動を開始する。

 

感想
これまでの藤宮は根源的破滅招来体との戦いで人類が犠牲になるのは仕方が無いとしていながら自分の手で積極的に人類を滅ぼそうとはしてこなかった。しかし、「アグル対ガイア」で人類が根源的破滅招来体に対抗する為のエリアル・ベースを破壊しようとして今回の話では遂に人類を滅ぼそうと自ら動き出した。

 

今回から石室コマンダーの制服が変更されている。石室役の渡辺裕之さん本人がデザインしたもので『スター・トレック』を意識したものらしい。今までは千葉参謀寄りだったのがXIG寄りになったのをイメージしているとの事。

 

吉田リーダーが恐竜とかマンモスとか絶滅した動物の事が大好きだった事が語られるが桑原が言うようにイメージに合わない。他のメンバーも吉田リーダーにはそのようなイメージが無いのか後の「銀色の眼のイザク」で梶尾リーダーと神山リーダーは絶滅した生物についての話を吉田リーダーにしていなかった。

 

吉田リーダーは長年に亘って地球に君臨してきた生物が絶滅した事を不可解な事として、これがいつか人類にも訪れるのではないかと語る。この絶滅した恐竜と人類の行く末については「46億年の亡霊」で未来も語っている。

 

今日もスティンガーへの装備品積み込みを手伝わされる我夢。その後もウェイトトレーニングに強制参加。しかし、このおかげでガイアは強くなっていく。

 

吉田リーダーの話を聞いた我夢はある環境を支配してきた生物が一斉に淘汰されるのは地球の意思なのか、たとえ根源的破滅招来体によるものだとしてもその要因は他にあるのではないかと考え、藤宮に言われた「今の人類は自然の頂点に立つには自己中心的過ぎる」と言う言葉を思い出す。
我夢の「何故怪獣が現れるようになったのか」と言う問いに梶尾リーダーは「分からない」と正直に答える。ここで「考えるのはお前の仕事だ」と言っている事で梶尾リーダーが我夢を信頼している事が分かる。
梶尾「怪獣を地球の生物とするなら、それが人間社会に相応しくないからと言って無下に殺すのもどうかと思う時もある。だがな、その怪獣によって殺されたり家を失ったりと様々な理由で涙を流す人達がいる。俺はパイロットだ。考えすぎても仕方が無い。ただ戦いの場においてはそういう人々の事だけを考える事にしている」。
これが梶尾リーダーの姿勢。何も考えていないわけではないが、だからと言って悩みすぎる事も無い。こういう時に自分以外の人の意見を聞く事が出来るのが今の藤宮には無い我夢の強みと言える。

 

梶尾リーダーが意外と物事を考えていた事に思わず尊敬の眼差しを向ける我夢。あまりにうっとり……と見つめるので、さすがの梶尾リーダーも「何だよ。何だよ気持ち悪いな。俺、そういう趣味は無いからな」とちょっと引き気味。我夢は「違いますよ」と否定するが、この時の梶尾リーダーへの触り方がなんとも怪しい。
思わず「ね?」と後ろにいる北田と大河原に同意を求める我夢だったが、大河原は「ゴク……」と生唾を飲んで意味深に頷くのみ。ウルトラシリーズでこういう事をするのかと最初に見た時はえらく驚いた場面だった。

 

この会話の時に我夢はラーメンを注文している。「ロック・ファイト」での要望が通ったようだ。

 

東西大学の須貝助教授に変装して修央大学に保管されている恐竜の卵を見に行く藤宮。
眼鏡をかけた藤宮が見られるのはここだけである。
因みに本物の須貝助教授は車のトランクに閉じ込められていた。何故か口から火を吐く。

 

修央大学に残されていたメモから藤宮のアジトを突き止める我夢。
藤宮は我夢を気絶させてトレーニングマシーンに縛り付けるが、前回と今回のチーム・ライトニング関係の話を見ていると、ちょっと危ない想像をしてしまう……。

 

藤宮「ゲシェンクの復活も破滅招来体の出現も全て人類が呼び起こした事だ。結局、人類は増えすぎたんだ。大いなる淘汰を人類自身が求めているんだよ」、
我夢「僕は誰も失いたくない! 奪われたくもない! 藤宮、君にはいないのか? 失いたくない人が、誰も!」。
我夢の言葉にリリー、稲森博士、玲子の存在が藤宮の脳裏を駆け巡る。
我夢「君は地球の為と強調しているが一番簡単な方法を採ろうとしているだけだ! もっと悩んでもっと苦しめば地球も人類も全て助ける方法がきっとある!」。
その言葉に藤宮は何も答えずに去っていった。
我夢の「藤宮は一番簡単な方法を採ろうとしているだけ」と言う指摘が良かった。実際、今の藤宮の行動は結論ありきなところがある。

 

藤宮にエスプレンダーを取られた我夢だったが「守りたいんだ! 僕は人類を地球を守りたいんだ! 僕は守りたい! いや、守ってみせる!」と言う決意に呼応してエスプレンダーから光が開放された事でガイアに変身する。
藤宮があまり残念がっていないところを見るに我夢ならそう出来るだろうとどこかで思っていたのかな。この辺り藤宮はどこか迷いがあると言うか誰かに自分を止めてほしいと願っているのを感じる。

 

人類が淘汰される事は避けられないと語りながらも藤宮は少女にビルが倒れ掛かったのを見て思わず助けてしまう。
少女の「ありがとう……」と言う言葉を聞いて自分がとっさに取った行動を理解して困惑する藤宮。
人類を滅ぼそうとするが、そういう藤宮自身が人類の一人。頭で人類滅亡を考える事は出来ても心や体は人類を見捨てるように動いてくれないと言うのが人間である藤宮の限界となる。

 

ゲシェンクとの戦いはライトニングとチーム・ハーキュリーズの連携が良かった。
主題歌のインストからの逆転劇が燃える。
北田の「お前の敵はウルトラマンだけじゃないんだぜ!」が格好良かった。

 

戦いが終わってガイアから戻った我夢だったが歩道橋で倒れ込んしまう。ここまでダメージが残ったのは初めて。

 

地球上の生態系調節を担っていると言われるゲシェンク。藤宮はゲシェンクを「地球の為の贈り物」と語っているが「誰からの贈り物なのか」については語っていない。地球自身か、それとも別の何者か……。
ゲシェンクは中々壮大な設定があるのだが外見は普通の怪獣なのでイマイチ設定の凄さを感じられなかった。ここは「ウルトラ怪獣」と言うイメージが確立して殆どの怪獣がそのイメージの中で作られているウルトラシリーズの難しいところかもしれない。

 

今回のエンディングの映像は何故かピースキャリーの発進シーンが中心となっていた。

 

増えすぎた人類を調節する為にゲシェンクが現れたと言う藤宮の話を聞いて漫画版『デビルマン』を思い出した。
漫画版の『デビルマン』では人類が増えると食料が無くなり、食料が少なくなると奪い合う為の戦争が起き、戦争で人が死ぬと生き残った人々に食糧がいきわたると言うように戦争が人口調節になっていたのだが核兵器の開発で戦争は人口調節ではなく人類滅亡を引き起こす危険が生まれて戦争が起こりにくくなり人類は無限に増えてしまった。一方の動物界では食物連鎖による天敵が存在するので人類のように同じ種族同士で大戦争を行う事は無い。天敵が存在しない人類は自然界のルールから外れていると言えるが、デーモンと言う人類の天敵が出現した事で自然界のバランスが保たれるようになった。つまり、人類がデーモンに襲われて殺されるのは自然界にとって正しい事であると言う話があった。
因みに『デビルマン』ではライオンに襲われた鹿は逃げる。逃げる事が鹿の戦いである。だから、人類がデーモンに襲われて殺されるのが自然界にとって正しいとしても人類は全力でデーモンと戦うのだと言う結論が出ている。衝撃のクライマックスが取り上げられる事が多い作品だが他にも面白くて興味深い話が多いのでオススメ。