帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「飛べ! ムサシ」

「飛べ! ムサシ ースピットル登場ー
ウルトラマンコスモス』第3話
2001年7月21日放送(第3話)
脚本 長谷川圭一
監督 根本実樹
特技監督 佐川和夫

 

襟巻怪獣スピットル
身長 62m
体重 6万1千t
埋立地に眠っていた。後頭部に神経中枢がある。口から溶解液を吐く。
鋭い聴覚を持っていて、上空を飛び交う飛行機のジェット音を卵を狙う外敵の威嚇音と思って地上に出て暴れる。
普段は伸縮性のある襟巻状の皮に頭部を隠しているが戦闘時には威嚇の為に開く。
コスモスの協力を得たEYESの麻酔弾によって眠らされ、卵と共に鏑矢諸島に移送された。
『初代マン』の「電光石火作戦」のガボラがモデルかな。

 

物語
EYESに参加してから数日が経って慣れてきたムサシ。
しかし、スピットル捕獲作戦時にムサシは独断専行してミスを犯してしまう。

 

感想
制作は第9話だが第3話の定番として作られた話。平成ウルトラシリーズでここまで制作順と放送順が異なっているのは珍しい。
慢心したムサシがミスを犯し、ウルトラマンの力を当てにするが変身出来ず、やがて失敗の中から自分に足りなかったものに気付くと言うのが今回の流れ。実は『THE FIRST CONTACT』もこの流れに沿っている。
『帰マン』の郷や『ダイナ』のアスカがウルトラマンと一体化した事に慢心したのに対してムサシは自分が元々持っていた怪獣の知識に慢心したところが新しい。アマチュアがプロの世界に入って痛い目に遭ったと言うところだろうか。

 

今回はカオスヘッダーが関わらないと言う怪獣保護を中心に据えた最初の話となっている。

 

「テックサンダーはSRCの主力メカ全ての基盤であるコアモジュールの前後に用途に応じたアパッチメントパーツを組み合わせるコアテックシステムによって完成する飛行メカである」。
設定を劇中でちゃんと説明してくれるのが『コスモス』の嬉しいところ。
高速機動用のAパーツとレスキュー用のBパーツを組み合わせるテックサンダーシリーズ。今回の話はムサシの専用機となるテックサンダー4号の紹介編と言う面もある。

 

午前は飛行訓練、午後は本部内の清掃、夜は研修及びデータの整理。これが緊急時以外のムサシのタイムスケジュール。
どこでも基本は大事。清掃も基地内の構造を知るには良い事だと思う。
入隊当初は皆したらしいが、やはりシノブリーダーやフブキ隊員もしたのだろうか?

 

「新人でも怪獣保護にかける情熱は誰にも負けはしない。頑張るぞー」。
あまりにも棒読みで今後が少々不安になるムサシの決意表明であった……。

 

地底から出現したスピットルに対してヒウラキャップは周囲に民家が無いのでスキャニングデータで特性を見極めてから適切な捕獲方法を選ぼうとするが、スピットルの特性を既に知っているムサシは神経中枢がある後頭部に麻酔弾を撃てば捕獲できると勝手に行動を開始してしまう。
ヒウラキャップはスピットルの事を知らなかった感じ。前回のシノブリーダーもだったが、ムサシが知っている怪獣をEYESが知らないのは不自然だなぁ……。

 

独断専行したムサシはスピットルが自分の知らない攻撃を繰り出した事に驚いて失敗してしまう。
そんなムサシにフブキ隊員の鉄拳が炸裂!
主人公を殴る隊員は久し振りだ。あ、『ダイナ』のリョウがいたか。
フブキ隊員は『ガイア』の梶尾リーダーに似ているが言動は『帰マン』の岸田隊員や『A』の山中隊員に近いところがある。
「このバカが! 勝手な行動しやがって。ピンチになればまた奇跡が起こるとでも思ったか! またウルトラマンが来てくれるとでも思ったか!」とフブキ隊員が言ったようにムサシと違って初期のEYESはコスモスに依存していなかった。

 

EYESの怪獣保護失敗を受けたTV番組でコメンテーターが「怪獣など百害あって一利無し。人間にとって危険なものはただちに抹殺し我々の安全を確保しなければならない」と訴え、それを見たイケヤマ管理官は「何でもかんでも敵と見なし攻撃する。その考えがよっぽど危険なんだ」と呟く。
怪獣保護について世間はまだ懐疑的である事が分かる場面。

 

ヒウラキャップに「EYESにとって大切なのは真実を見極める目」「リドリアスとの関係からムサシになら怪獣達の本当の心を知れると思った」と言われたムサシは初心に帰る為に鏑矢諸島に行く。わずか数日で初心を忘れるとは……。
ムサシがEYESを辞めたわけではない事を知ったイケヤマ管理官はちょっと残念そう。
リドリアスが電磁シールドのメンテナンス中に発生する超低周波を嫌って洞窟で寝ている事を聞いたムサシは怪獣にはそれぞれ特性がある事を思い出してスピットルがなぜ暴れたのかを考えるようになる。リドリアスは音の好き嫌いが激しいと言う「光との再会」での設定が生かされたのが良かった。

 

状況をまるで判断しないで中途半端な知識だけをひけらかして仲間を危険な目に遭わせた自分の行動を反省するムサシ。今までの作品だと慢心した主人公が反省したところで許されるのだがヒウラキャップはそれでもなお処分を解かなかった。その理由をシノブリーダーに問われたヒウラキャップはこう答える。
「ムサシの怪獣に対する情熱は本物だ。だが……情熱だけではチームの一員は務まらない。それをあいつに理解してもらいたいんだ」。
話がヌルいと言われる『コスモス』だがこういう部分は意外と厳しい。

 

ヒウラキャップに処分を解かれなくてもムサシはスピットルが暴れ出した理由を調べていき、航空機の飛行ルートがスピットルの眠る埋立地に変更されていた事から鋭い聴覚を持つスピットルが激しいジェット音に過敏に反応していた事を突きとめる。
そこで音が嫌いなら他の場所に移れば良いのにと言う新たな疑問が浮かび上がり、そこから埋立地にスピットルの卵がある事に気付いて、スピットルは航空機のジェット音を卵を狙う外敵の威嚇音だと思って暴れた事を明らかにする。
怪獣の生態を一つ一つ丁寧に語っていくのはウルトラシリーズでも実は少なかったりする。怪獣をただ倒す相手ではないとした『コスモス』ならではと言える。出来ればこの手の話をもっと増やしてほしかった。

 

ムサシの部屋に置かれていた写真には子供時代のムサシの家族やゴンが写っている。懐かしい。

 

ムサシは単なる情熱だけでなくスピットルが暴れる理由と確かな証拠を出す事で遂にヒウラキャップから処分を解かれる。
ムサシの情報を元に航空機全ての離着陸が中止されるがエンジントラブルを起こして墜落の危険がある一機が着陸を求める。それを知ったムサシは機動性の高いテックサンダー4号で囮になってフブキ隊員が操縦するテックサンダー1号でスピットルの後頭部に麻酔弾を撃つ作戦を提案する。
自分一人だけでなくてちゃんとチーム全体を見渡して意見を言えるようになったのは大きな成長。今までどこかEYESに馴染んでいなかったムサシが初めてチームプレイが出来た場面かもしれない。
その後、テックサンダー4号はスピットルの吐く溶解液で墜落してしまうが、コスモスに変身できたムサシはスピットルを押さえ込み、その隙にEYESが麻酔弾を撃つ事に成功する。コスモスもまた初めてEYESと力を合わせたのだった。

 

今回登場したスピットルをデザインした「祖蔵宝太郎」はイメージボードの橋爪謙始さん、なかの☆陽さん、奥山潔さん、キャラクターメンテナンスの宮川秀男さんによる合同名との事。