帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「生命の輝き」

「生命の輝き ーイフェメラ登場ー
ウルトラマンコスモス』第12話
2001年9月22日放送(第12話)
脚本 武上純希
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

薄命幼獣イフェメラ
身長 51m
体重 4万9千t
500年ごとに現れる怪獣で、千年前の平安時代と五百年前の室町時代にもたった一日だけ現れた巨大怪獣として記されている。
地上に出たばかりの頃は謎のハンマーで辺りの建物を壊して遊ぶ赤ちゃん怪獣だったが、お昼寝から目覚めた後は二本足で立ち上がって自分が壊した建物を直そうとするようになり、更にその後は建物によたれかからないと立てないほどに衰えてしまうと人間が何十年かけて過ごす一生をたった一日で終える生物。
防衛軍のバーニングミサイル攻撃を受け、外敵から巣を守ろうとコスモスにも攻撃を仕掛けるが最後は力尽きてしまう。亡骸の下には卵があり、イフェメラの亡骸はコスモスによって宇宙へ送られ、遺された卵はEYESによって鏑矢諸島に移送された。
名前はラテン語で「一日の命」と言う意味らしい。

 

物語
500年ごとに現れる怪獣イフェメラ。出動したフブキ隊員の脳裏に懐かしい声が響くが……。

 

感想
「朝は四本足、昼は二本足で、夜は三本足。これなーんだ?」。
ドイガキ隊員が出したのはあまりにも有名はスフィンクスの謎かけ。答えは「人間」で「朝は赤ん坊を表していて両手両足の四本でハイハイする。昼は大人を表していて二本の足でしっかりと立っている。夜は老人を表していて杖をついて足と合わせた三本で立つ事になる」と言う意味。しかし、この後に登場したイフェメラも人間と同じ行動をとっているので答えは「人間」と限定されたものではなくて「生き物」とした方が良かったかもしれない。

 

フブキ隊員は過去に3歳の妹を失っているが、その後、妹が成長したと思われる謎の少女と会っている。フブキ隊員の成長に合わせて3歳で死んだ妹も成長した姿を見せたと思われたが、その後、フブキ隊員が大人になっても少女は大人の姿にならなかったりと本当にフブキ隊員の妹と関係があるのか謎だったところがあった。展開的には妹以外には考えられないのだが……。

 

フブキ隊員は蛍が村にあまり帰っていなかったようだが、ひょっとしたら、妹の死を思い出すのが嫌で今まで避けていたのかもしれない。
その時点ではまだ設定が決まっていなかったのだろうが「蛍の復讐」でフブキ隊員が蛍が村に帰った時に妹に関する話が全く出なかったのはちょっと勿体なかった。

 

ムサシにも少女の姿が見えたのはウルトラマンだったからかな。

 

フブキ隊員がムサシを蛍が村の神社にまで同行させた理由は何だろうか?
実は一番気心の知れた間柄だったから? それともムサシがウルトラマンだと分かっていたから?

 

イフェメラから攻撃を受けたムサシは変身しようとするが何故か変身できない。実はイフェメラがたった一日しか生きられない事を知っていたコスモスによって変身を止められたのだった。
イフェメラを優しく包み込むコスモスの姿はまさに慈愛の巨人であった。
ウルトラマンと一心同体になった人間とでは持っている情報に差があるとしたのは意外と今までに無い展開だった。

 

夢を追い求めるムサシに現実を突きつける役目だったフブキ隊員の態度が今回の話から軟化していくのを見越してか防衛軍が本格的に登場する事になる。
イフェメラの生態を調査中だと言うEYESに対して防衛軍の佐原司令官は現場の近くには政府のコンピューター管理施設があって破壊されたら政府機能が麻痺してしまうので直ちにイフェメラを攻撃するよう要請する。それに対してヒウラキャップはEYESの責任において被害を抑えると答えるが佐原司令官は話にならんと言わんばかりに通信を切ってしまう。
展開上は悪役の位置だが佐原司令官の言っている事に間違いは無い。もしイフェメラがコンピューター管理施設を破壊していたらどのような被害が出ていたかは後の「時の娘(後編)」を見れば想像が付く。
因みに佐原司令官はEYESにコンディションレベルレッドを発令するよう命令するのではなく要請している。これまでの描写と合わせて考えると、怪獣事件における作戦担当の優先権は防衛軍よりEYESにあるようだ。しかし、佐原司令官は手続きを経てEYESから指揮権を奪ってバーニングミサイルでイフェメラを攻撃してしまう。このようにこれまではEYESの影に隠れていた感じの防衛軍だったが今回の話から色々と目立ってくるようになる。

 

イフェメラを攻撃する防衛軍のバーニングミサイルは最新鋭の迎撃ビームシステムが積まれていたがフブキ隊員はテックサンダーの熱でバーニングミサイルの熱誘導システムを自分の機体に引きつける。
これは完全に命令違反。しかも防衛軍の作戦を妨害しているのでかなり問題になりそう。

 

ムサシは今度こそコスモスに変身するとフブキ隊員のテックサンダーを狙う防衛軍のバーニングミサイルを撃ち落すが、残った一機がコスモスを撃破してイフェメラに向かう。結構本気のコスモスを撃破してしまうとは防衛軍のミサイルって凄いな……。他の話を見ていても防衛軍やEYESが戦力を整えて相手の殲滅を前提に戦えばかなり強い事が想像できる描写がある。
因みにこの場面は「ウルトラマンが怪獣を守る為に人間の武器と戦う」と言うさり気に凄い掟破りになっている。

 

今回の話でフブキ隊員は妹の声を聞く事になったが、ひょっとしたら妹は今までも何度かフブキ隊員に呼びかけていたのかもしれない。現実を前に挫折してしまった心には声が届かなかったが、ムサシやコスモスと出会って再び夢を追いかけるようになった事で子供の頃から自分を呼びかけていた妹の声を聞けるようになったのではないだろうか。

 

今回の話からフブキ隊員は現実の厳しさを示す人物から現実の厳しさを知りながらも夢を諦めない人物へと変わっていく。
ここからのフブキ隊員は厳しい現実を分かった上で怪獣保護の夢を模索していくので理想論が強いムサシより共感できるところもあって物語の終盤ではムサシと共に作品の主人公のような立ち位置となる。