帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「異星の少女」

「異星の少女 ーグインジェ登場ー
ウルトラマンコスモス』第25話
2001年12月22日放送(第25話)
脚本 増田貴彦
監督・特技監督 原田昌樹

 

超銀河宇宙人スレイユ星人ラミア
身長 157cm
体重 39kg
防衛軍の秘密基地に接近した一機のUFOは防衛軍戦闘機の攻撃を受けて脱出カプセルを射出。中にはラミアと言う一人の少女が人工冬眠装置で眠らされていた。
体組織は地球人と全く同じで地球と同じ進化を辿ってきたと思われる。
右手のブレスレットから各種の特殊光線を放つ。
スレイユ星は軍事力を持たない平和な星だったが他の星から攻撃を受けて文明が崩壊したので、将来に災いを及ぼすであろう好戦的な星を調査して危険と判断したら即抹消する事を決議していた。
一度は地球人を好戦的と判断したラミアだったが他人を庇うカワヤ医師やコスモスの行動を見て考えを改め、地球人が必ずしも好戦的な種族だけではない事を訴える為にスレイユ星に帰還した。

 

惑星破壊ロボットグインジェ
身長 55m
体重 6万5千t
スレイユ星人のUFO。飛行形態と戦闘形態を持ち、さらに分離・合体機能も持っている。
ラミアが持っていたコントロールボックスを奪った不良グループが起動スイッチを入れた事で起動した。
地球人の抵抗力を奪った後に地球のコアに向かって惑星消滅ミサイルを発射する予定だったが、考えを改めたラミアがプログラムを解除した事で元のUFOに戻った。

 

物語
UFOから射出された脱出カプセルの中にいた異星人ラミアを巡って対立するEYESと防衛軍。
地球の現状を見たラミアはグインジェの起動を決断する。

 

感想
トレジャーベースの全女性職員に振られまくったSRC伝説の名物男カワヤ・ノボル登場。
演じるは平成ウルトラシリーズの顔とも言える影丸茂樹さん。『ティガ』『ダイナ』のシンジョウ隊員や『平成セブン』のカジ参謀とは全く違うキャラクターに驚く。まさかここまで異なる面を見せてくるとは思わなかった。

 

女性に突き返された指輪を密かに回収すると言うこの上も無く格好悪い場面で出会ったムサシとカワヤ医師。初対面でありながらカワヤ医師が振られた事を楽しそうに指摘するムサシは鬼だ。
その後もカワヤ医師がシノブリーダーやアヤノ隊員にまでちょっかいを出していた事を聞かされたムサシは笑いを堪えきれない顔で「誰でもいいんだ」と発言。……殺されるぞ。

 

女性にかなり嫌われまくっているカワヤ医師だが、バッテラ寿司に誘われた時のシノブリーダーはまんざらでもなさそうだったし、カエルの縫いぐるみをちらつかせられたアヤノ隊員も一度は誘いに乗ったっぽいと、どうやら女性の趣味を探る能力は高いようだ。

 

防衛軍秘密基地に接近したUFOに対して出撃した防衛軍戦闘機はEYESの攻撃中止命令を無視してUFOを攻撃し、その後も脱出カプセルを強引に回収しようとするなど、とにかく強行的だった。最近の話でSRCがワロガ、ギギ、ミゲロン星人の侵入を許して多大な被害を出しているので仕方が無いかもしれないが。

 

行方を眩ませたUFOを見付ける為にベンガルズの戦車が街中を進み防衛軍の戦闘機が上空を飛ぶ。こんなに目立ちまくったら逆効果だろうと思ったが、岡隊長がムサシを見付けて睨む場面があるので、ひょっとしたら、UFOではなくEYESにプレッシャーをかけていたのかもしれない。

 

ラミアが運び込まれたSRC特殊医療基地に向かったムサシは応対に出た右田医師に「お前はあの時の!?」と「時の娘(前編)」での件を持ち出されてしまう。あの時の強行突破が印象に残っているらしく右田医師のムサシに対する不信感がかなり強い。
めでたく再登場できた右田医師はこの後も準レギュラーとして活躍する事になるが、同じ医者としてカワヤ医師と立ち位置が被ってしまった新見医師はこの後登場しなくなってしまう。カワヤ医師も好きだが新見医師も好きなキャラクターだったので残念。

 

ラミアをSRC特殊医療基地から防衛軍本部に移送しようとする石井達に向かってビビリながらも啖呵を切るカワヤ医師がカッコイイ。でもその後に眠り続けるラミアを「眠れる森の美女」または「氷の美女」として目覚めのキスを試そうとするのはかなりカッコ悪い。て言うか犯罪だ。
因みに童話繋がりで考えると、ラミアの口付けでカワヤ医師から弾丸が取り除かれて目覚める場面は男女逆だが『白雪姫』がモデルかな。

 

街に出たラミアが見たものは上空を飛び交う戦闘機と街中を蹂躙する戦車。
さらにそこにやって来た不良グループはラミアからグインジェのコントロールボックスを取り上げ、助けに来たカワヤ医師にも暴力を振るうと、ラミアは同じ地球人でありながら殴る者と殴られる者とに分かれる地球の現状を知る事になる。
今回の話に限らないが、地球のように同じ星に生きる者達が傷付け争うと言うのはウルトラシリーズの宇宙では意外と珍しいのかなと思う描写がある。

 

時期的にまだ早いかもしれないが、実際に攻撃を受けた事があるので自国を守る為の先制攻撃は当然の権利と言う主張は9・11事件後の対テロ戦争に突き進んだアメリカを思わせる。
又、そこまで考えられていたかは分からないが、かつてのスレイユ星は軍事力を持っていなかった為に他の星の攻撃を受けたと言う話は一応は軍事力を持っていない事になっている現在の日本を思わせるところがある。もし今の日本が9・11事件のような攻撃を受けた時、どのような反応が起こるのだろうか……。

 

防衛軍戦闘機の攻撃を受けたグインジェは高層ビルの壁面にへばりついて一週間隠れていたが、あんなバレバレな状態で何故誰も見付けられなかったのだろう?(特にビルの中で働いていた人達)

 

ルナモードのアンビシャス・ロケッツを分離機能で回避するグインジェは『平成セブン』の「模造された男」のキングジョーⅡを思い出す。
今回の特撮場面は実景との合成が多用されてグインジェの巨大感がよく出ていた。

 

グインジェが街を破壊する中、カワヤ医師は先程自分を痛めつけた不良グループが怪我をしたのを見て手当てをし、手当てを受けた不良グループはカワヤ医師にお礼を述べ、ラミアに謝罪の言葉と共にコントロールボックスを返す。
ウルトラシリーズで地球人の罪が取り上げられる場合、最初に一部の悪い人間を見て滅ぶべしと決断するが後に一部の素晴らしい人間を見て希望が残っているかもしれないと考えを改める展開が多く、最初に登場した悪い人間は改心する事無く終わる事が多いのだが今回の話では不良グループにはまだお礼と謝罪の気持ちが残っていたとした。
グインジェの起動スイッチをラミアではなく地球人自身が入れたりと今回は過去によくあった話でありながら今までとは違った展開を見せた。

 

不良グループから返されたコントロールボックスを持ってきたカワヤ医師の「侵略者なのか?」と言う問いにラミアは「自分達は争いを好まない」と答えるが、そこにやって来た石井が「侵略者!」と叫んでラミアを撃とうとしてカワヤ医師が庇って撃たれてしまうと怒ったラミアはグインジェに石井を襲わせようとするがコスモスに阻止される。
劇中では悪役になってしまった石井であるが彼自身に悪意は無い。侵略者によって地球人に被害が出て、石井がそれに対する怒りから侵略者に厳しい態度を取るようになったと考えたら、それは石井や不良グループにカワヤ医師が傷付けられた事にラミアが怒りを見せたのと同じとなる。
他人を庇うカワヤ医師やコスモスの行動を理解できなかったラミアはやがて「私は……私達は間違っていたのかもしれない……」とグインジェのプログラムを解除するのであった。

 

ラミアが地球に来た目的は何なのかムサシが考えた時、カワヤ医師は自分に会いに来たのかもと答える。もちろんそんなわけはないが、カワヤ医師と出会って「信じる」と言う言葉をかけられた事でラミアはもう一度相手を信じてみようと思うようになった。

 

宇宙に帰ったラミアにまた会えると願うカワヤ医師だがそこにトレジャーベースの女性職員がやって来て「私達は会いたくなかったわ」となにやら険悪な雰囲気に……。
カワヤ医師曰く「お姫様達に王子様のキスを」とシノブリーダーにイヤラしく迫る。すぐさまシノブリーダーがパンチを放つがカワヤ医師はそれを鮮やかにかわして……。
シノブリーダーのパンチをかわせるとは凄いな、カワヤ医師。でも、こう言う時にしか発揮されなさそうな運動能力ではある。

 

今回の話は地球とスレイユ星の関係を逆転させると『平成セブン』のフレンドシップ計画とほぼ同じ構図になる。『平成セブン』でフレンドシップ計画を推し進めたカジ参謀が今回はラミアを信じようとするカワヤ医師になっているのは狙いか偶然か……?