「操り怪獣 ーノワール星人 テールダス(メカレーター) ネルドラント(メカレーター)登場ー」
『ウルトラマンコスモス』第43話
2002年4月27日放送(第43話)
脚本 川上英幸
監督・特技監督 村石宏實
怪獣狩人ノワール星人
身長 185cm
体重 78kg
怪獣を捕獲して改造する事で文化を築いてきた種族。
自分の星の怪獣が絶滅したので地球でテールダスやネルドラントを捕獲して改造した。
インキュラスやラグストーンを使って地球人のデータを集め、黒装束の男として夢の世界を介してムサシを自分の世界に呼び寄せるとコスモスと一体化しているムサシを交渉相手に選ぶが拒否されてしまい最後はフブキ隊員のラウンダーショットで倒された。
額から光線を撃つ。
名前の由来はフランス語の「ノワール(黒)」かな。
あまりにも『ダイナ』のファビラス星人まんまなデザインは止めてほしかったなぁ。
テールダス・メカレーター
身長 52m
体重 6万9千t
地下から現れて街を破壊するが途中で苦しみ出し最後は口から白い体液を吐いて絶命した。
カワヤ医師の検死によると地球に無い金属で作られた無数の装置が体内に埋め込められていて、脳神経が拒否反応を起こしてショック死したらしい。
ネルドラント・メカレーター
身長 68m
体重 8万6千t
ノワール星人が死に間際に出撃させた。
テールダス・メカレーターよりも機械の数が多くなっていて筋力強化だけでなく麻酔弾が効かなくなるプログラムも組み込まれている。ルナモードのフルムーンレクトも通用しなかった。
エクリプスモードのコズミューム光線で機械を除去されるが結局は改造の影響でショック死してしまう。
ネルドラントは出る度に可哀相な扱いになっているなぁ……。
物語
機械化されて苦しむ怪獣が現れ、ムサシは謎の男に異世界に呼び出される。男の正体は一体……?
感想
怪獣を資源として利用するノワール星人が登場。
ムサシと相反する考えの持ち主で『コスモス』と言う作品におけるアンチテーゼを担える存在であったが、インキュラスが登場した「乙女の眠り」とラグストーンが登場した「魔法の石」が今回のテーマと合致していないので、最終的に4回も登場しているのに準レギュラーとしてはキャラクターが弱かったところがある。
「乙女の眠り」と「魔法の石」と今回の話は脚本を全て川上さんが担当していて設定に関しては上手く繋がっているので監督も同じ人で揃えていたら良かったかもしれない。
フブキ隊員にカスミとの仲を尋ねるムサシ。凄く楽しそう。
地面が突然せり上がってシェパードは危機に陥るが何とか突破。意表を突く展開で面白かった。
地下から現れたテールダス・メカレーターは街を破壊するがやがて苦しみ出すと口から白い体液を吐いて倒れてしまう。
ウルトラシリーズでこういう生々しい怪獣の最期はあまり描かれないのだが『コスモス』は怪獣を生物と定義しているのでこういう場面が何度か出てくる。
怪獣の検死でカワヤ医師が登場。まさか怪獣の検死までさせられるとは思わなかったと呟くが、それなら今まで怪獣の検死は誰がどうしていたのか気になる。まさか『コスモス』の設定で今まで一度も怪獣が検死されなかったとは思えないのだが……。
眠るムサシの夢の世界に現れた黒装束の男。翌日、トレジャーベース内で不審な電波がキャッチされた事を受けてEYESはムサシを調査。ヒウラキャップはフブキ隊員にムサシの後を追うよう指示する。
ムサシの部屋に送られた謎の電波は「乙女の眠り」でアヤノ隊員を眠らせた電波と同一との事。アヤノ隊員の夢の世界に侵入したインキュラスと夢の世界を介してムサシとコンタクトを取った黒装束の男を繋げたのが上手かった。
黒装束の男に呼び出されたムサシはいつの間にやら昭和の時代を漂わせる一角に迷い込む。
今回の話が放送された2002年は昭和が終わってから13年が過ぎていて、小学生は全員が平成生まれになっている。子供達にとって昭和の世界はもう異世界の領域に至っているのだ。
怪獣を捕獲して改造する事で文化を築いてきたノワール星人は合理的で貪欲な地球人が生きた資源である怪獣を利用しない事に疑問を呈する。それに対するムサシの答えは「地球の一部だから」であった。
ムサシの言っている事も分かるが、ここはノワール星人の意見の方が理解しやすい。何故なら人間は地球の一部である牛や鶏や魚を食糧にしてネズミを実験に使ったりしているからだ。
ノワール星人はコスモスと一体化しているムサシを宇宙人と対話できる地球人として交渉相手に選んだ。
ノワール星人は過去にインキュラスやラグストーンを送り込んでいて、テールダスやネルドラントを勝手に改造しているので信用できないところはあるが、それでも一応は話し合いの場を設けようとした事は評価して良いと思う。
自分達の考えを理解してもらえれば楽に怪獣を手に入れられると言っていたので、交渉次第では地球とノワール星に友好関係が築かれて、厄介な怪獣をノワール星に提供する代わりに進んだ技術を地球が受けると言う事も可能だったかもしれない。まぁ、ムサシがそのような交渉をするとは到底思えないが。
ノワール星人の指令を受けたネルドラント・メカレーターが街を破壊。現在のEYESに助ける手段は無く、ヒウラキャップは攻撃指示を出す。それを見たムサシは「救ってみせる!」とコスモスに変身する。
エクリプスモードの奇跡の力でネルドラントの機械部分が除去されて喜ぶEYES。ネルドラントもコスモスに懐くが直後に異変が起きて死んでしまう。日が沈む中、コスモスはネルドラントの亡骸を抱きしめ、泣くアヤノ隊員にヒウラキャップは「コスモスは神ではない」と告げる。そしてコスモスはネルドラントの亡骸を持って宇宙へ去っていった。
エリガルの時はただ呆然とするだけだったコスモスが今回はネルドラントの亡骸を葬ろうと動いたところに成長が見られる。
ネルドラントは助からないだろうなぁと読める展開ではあったが実際に映像で描かれるとさすがに衝撃であった。
水面を使ったモードチェンジが美しくて印象に残った。
今回初めてカオスヘッダー関係以外でエクリプスモードが登場している。
今までは対カオスヘッダー用のモードとして他のモードと使い分けがされていたのだが、今回の話からルナモードとコロナモードの上位モードと言う位置付けになっていく。
エクリプスモードの登場でコロナモードの活躍が減ったと言われる事があるが今回のようにルナモード以上の奇跡を起こす事があるので実はルナモードの活躍も結構奪ってしまっている。
エクリプスモードはムサシとコスモスの力が合わさって誕生しているので他のモードより秘めた力を持っているのかもしれない。
「怪獣は資源なんかじゃない……。怪獣だって地球の一部なんだ!」と叫ぶムサシ。これは『ガイア』後半の流れを受けた『コスモス』の基本となっている部分。
ただ上にも書いたように牛やネズミと言った資源として人間に利用されている生物の存在を無視して「怪獣を含め全ての生物は地球の一部で資源ではない」と訴えても説得力に欠けるところがある。
ここが情中心で動くムサシの弱いところであり、「怪獣保護」と言うテーマに深く切り込めなかった『コスモス』の弱いところでもあったと言える。