帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ともだち」

「ともだち ーデルゴラン カオスデルゴラン登場ー
ウルトラマンコスモス』第42話
2002年4月20日放送(第42話)
脚本 大西信介
監督 石井てるよし
特技監督 佐川和夫

 

彗星怪獣デルゴラン
身長 64m
体重 6万2千t
星々を渡り歩く性質を持つ怪獣。
大人しかったがカオスヘッダーに取り憑かれてソルの父親を殺してしまう。
エクリプスモードのコズミューム光線で元に戻り、光の粒子になって宇宙に去っていった。

 

カオスデルゴラン
身長 66m
体重 6万2千t
デルゴランがカオスヘッダーに取り憑かれた姿。
口から光弾を発する。高速回転して土煙を巻き起こす。
ワープ能力を使って地球に襲来するが、エクリプスモードのコズミューム光線でカオスヘッダーを除去されてデルゴランの姿に戻った。

 

宇宙少年ソル
デルゴランを研究する生物学者の父と一緒にデルゴランを追って様々な星を巡り歩いていて、どんな星座盤にも宇宙地図にも載っていない地球から遥か遠くに位置する小さな衛星プティワールに降り立つが、カオスヘッダーに取り憑かれたカオスデルゴランに父親を殺されてしまい、宇宙船も破壊されてプティワールで独りぼっちで生きる事になった。
彗星の影響で地球に暮らす堀村と出会い、自分の状況とデルゴランの事を教える。
堀村と再会を約束して別れるが、その後、同じ格好をした何者かが訪ねてくる。

 

物語
彗星接近で宇宙との通信が途切れる中、堀村はパソコン通信で遥か彼方の宇宙からの言葉を受け取る。

 

感想
ちょっとした疑問なのだが、サブタイトル画面にカオス怪獣が紹介される場合とされない場合の基準ってどうなっているのだろう?

 

今回ゲストの堀村は14歳の中学生と言う設定。転校で人間関係が変わってしまったと言う思春期ならではの問題は『80』の学園編を思わせるものであった。
ところで個人的な意見だが、日本の特撮ヒーロー作品のターゲットは未就学児で、これをもう少し上の年齢まで引き上げたいと言う話が時々出てくるが、ターゲットを中学生や高校生にまで引き上げたいのなら登場する子供の年齢を同じくらいまで引き上げると言うのも一つの手なのかなと思う。

 

彗星の接近で地球全土の通信に障害が起きる中、堀村のパソコンに遥か宇宙の彼方からの声が入り込んでくる。堀村からソルの話を聞いたEYESはカオスヘッダーに取り憑かれたカオスデルゴランが地球に迫っている事を確信。「テックブースター出動せよ(前編)」「テックブースター出動せよ(後編)」に続いて宇宙に散らばっていたカオスヘッダーが地球に襲来する展開となった。

 

宇宙から迫るカオスヘッダーを迎え撃つべくEYESは再びテックブースターを出撃させるがカオスデルゴランのワープ能力のせいで活躍の場は無かった。
約半年振りの再登場なのにあんまりな扱いだ……。

 

友達だったソルとデルゴランだったが二人の関係はカオスヘッダーに取り憑かれたカオスデルゴランがソルの父親を殺害した事で終わりを迎えた。
ソル「ムサシさん、一つお願いが……。デルゴランは本当は大人しい怪獣なんです! 何とか助けてあげる事出来ませんか?」、
ムサシ「でも、デルゴランは君のお父さんを殺した……」、
ソル「デルゴランを倒したってお父さんは帰って来ない……。それより、ずっと研究を続けていたデルゴランが救われた方がお父さん喜ぶと思うから……」。
自分の父親を殺したデルゴランを救ってほしいと頼むソルにさすがのムサシも驚く。怪獣に家族を殺されたと言う事で「怪獣狙撃手」のナガレの事が頭に浮かんだのかもしれない。
もっとも、ソルの結論には長年付き合ってきたデルゴランとの心の絆があるので、同じ怪獣の犠牲者とは言えナガレと同じには語れないところがある。

 

デルゴランは救われ、彗星も地球を離れて通信が回復する。だが、それは堀村とソルとの交信の終わりも示していた。
堀村「EYESの人に聞いたんだけど、ソルの星は遠すぎて今の科学じゃ会いには行けないって……。聞こえている? ソル……」、
ソル「聞こえているけれど……、でも……、段々聞きづらくなってきた……」、
堀村「こっちも……。やっぱり……、彗星の影響だったのかな? あれが遠ざかれば……もう……」、
ソル「かもしれない……。だったら……、僕はまた独りぼっちだ……」、
堀村「約束する、ソル。僕はいつか君の星まで行けるロケットを作る。君と……」、
ソル「俊司……」、
堀村「君と……握手する為に……」、
ソル「俊司……! ありがとう……。待っている……。いつまでも……」、
堀村「ソル……? ソル!」、
ソル「さようなら……、俊……」、
堀村「ソル……。僕達はずっと友達だよ……。もう独りぼっちなんかじゃないんだよ、ソル……」。
別れの間際、二人は消え行く画面の中で初めてお互いの顔を見るのであった。

 

空方村に引っ越してきた堀村を空方村ロケットボーイズ&ガールズに所属する河合洋子が誘うが、堀村は何度誘われても断っていた。
堀村「あのさぁ、何で皆そんな仲良くツルんでいるわけ?」、
洋子「仲良くちゃ悪い? ねぇ、友達欲しくないの?」、
堀村「あいにく間に合っているんだ。前の学校の友達ともいつでも電話できるし、パソコンでチャットも出来る」、
洋子「でも、すぐ手を取り合えるってわけじゃないじゃん。それって何か寂しくない?」、
堀村「……別に」。
その後、ソルとの別れを経験した堀村は空方村ロケットボーイズ&ガールズの所にやって来て仲間に入れてほしいと頼む。今まで散々断っていたので皆に冷たい態度を取られるが、洋子は一歩前に出て手を差し出してきて、少し間を置くが堀村も自ら手を差し出して握手を交わす。
堀村がサークルに入ろうとした動機はソルだが、きっかけはともかく、ソルと手を繋ぐ事が出来なかった堀村が洋子と繋いだ手の温もりから何かを感じる事が出来たらそれで良いのだと思う。

 

デルゴランに父親を殺されて宇宙の外れに位置する小さな衛星に置き去りにされたソルと友達と別れて地方に引っ越してきた堀村はどちらも孤独な存在だった。(堀村が空方村に引っ越してきた理由は語られていないが、ソルの話を参考に考えると父親の転勤と言う可能性が高い)
しかし、ソルが文字通り独りぼっちなのに対して堀村は周りに手を差し伸べてくる人がいながらそれを拒否して自分から独りぼっちになっていったと言う決定的な違いがある。
そして最後に堀村は自分から一歩前に出て独りぼっちから脱するようになり、一方のソルも仲間と思われる人物がやって来て独りぼっちの状況から救われる事が示される。

 

冒頭の彗星に関するフブキ隊員と一般市民の会話を見て『セブン』の「円盤が来た」を思い出した。EYESが宇宙と通信できないのに一般市民である堀村のパソコンが宇宙と交信できるはずがないと言う疑問も「円盤が来た」からであろう。
そう考えて見ていくと今回の堀村とソルの話は「円盤が来た」のフクシンと少年を思わせるものがあるが堀村とフクシンはそこから全く異なる展開を辿る事となった。

 

今回からエンディング曲が『心の絆』に変更されている。
内容が堀村とソルの関係に合致していて聴いていて思わず涙。