帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「D4」

「D4」
ウルトラマンZ』第21話
2020年11月21日放送(第21話)
脚本 鈴木智
監督 武居正能

 

宇宙凶険怪獣ケルビム
身長 44m
体重 4万4千t
宇宙からD4の実験場に落下した隕石が変身した。
強いエネルギー波を辿って星を襲い寄生する宇宙怪獣。
D4に引き寄せられて地球に現れ、ストレイジの基地周辺に仲間の卵を次々と呼んで孵化させていったが最後はそのD4で一掃される事となった。

 

宇宙凶険怪獣マザーケルビム
身長 303m
体重 998万9千t
大気圏外のデブリの中に潜んでいて卵を次々と地球に送っていた。
ベリアロクのデスシウムスラッシュで倒される。

 

物語
防衛軍による対怪獣用最終兵器「D4」がキングジョーストレイジカスタムに搭載される事となった。
ヤプールの次元を操る能力の危険性を訴えるストレイジだったが事態を止める事は出来ず……。

 

感想
遂に『Z』もクライマックス突入となった。

 

ヤプールにより生み出された次元を操る能力を有するバラバの角が回収され、その異次元エネルギーを応用した異次元壊滅兵器「D4」が作られる。
ストレイジはその威力を危険視するが、通常兵器から始まって宇宙の生物兵器を解析して作られたセブンガーやウインダムを経て宇宙人のロボットを回収して作られたキングジョーストレイジカスタムまでの流れを見るとセレブロの暗躍が無くてもこの地球の人類はいつか手を出していた力だと思う。実際、ユカも「最後の勇者」でヤプールの技術に興味津々だったし。

 

昔は宇宙人の技術を使ってもロクな事にならなかったが『メビウス』のメテオールや『Z』の特空機と段々と宇宙人の技術を地球人が使いこなせるようになってきた。なので、今はまだ危険視されている異次元人ヤプールの技術であるが、いつかはその技術も使いこなす地球人が現れるような気がする。

 

キングジョーストレイジカスタムのような宇宙人の技術はOKでD4のような異次元人の技術はNGの線引きだが、劇中に安倍元首相が福島第1原子力発電所について使った「アンダーコントロール」と言う言葉があるように現実世界のエネルギー発電に当てはめて考えると分かるかもしれない。簡単に言えばキングジョーストレイジカスタムまでは火力発電でD4は原子力発電なのだ。

 

現状はウルトラマンがいるから怪獣を撃退できているのであって、不確定要素であるウルトラマンがいなくなった場合を考えなくてはいけないと言うクリヤマ長官の言葉にハルキは「俺達で守ってみせます」と答えるが、ゼットが現れてからのウルトラマンと特空機の戦績を見たらハルキの「俺達で守る」に頷く事は出来ない。
続けてハルキは「ウルトラマンは絶対に地球を見捨てたりしない」と訴えるがこれはウルトラマンと直接会話が出来るハルキだから言えるのであって、ウルトラマンとコミュニケーションが取れないクリヤマ長官がその言葉を信じる事は難しいであろう。実際、ゼットはハルキが思っているほど地球そのものに対して熱い想いは無かったし。

 

D4の話を聞いたゼットは「地球人が自力で怪獣を倒せるようになるのは良いと思う」として、あんな恐ろしい力を持つべきなのかと悩むハルキに向かって「それはこの星の人類が決めた事だ」と告げる。
ゼットはセブンのように地球人の行動に感動して地球の為に戦う決心をしたり、メビウスのように前々から地球に対して並々ならぬ憧れを抱いたりしているわけではないので、ハルキが考えているよりドライに地球の事を見ていた。
ゼットの地球に対する意外な反応に驚いたが、ゼットは本来は地球に派遣される予定ではなかったし、派遣された先でセブンやメビウス並みに思い入れを持ってしまったら身と心が保たなさそうなので、ゼットのスタンスが普通なのかもしれない。
地球に対してはあまり接点が無いからかややドライな反応を見せたゼットであるが、ハルキに対しては違っていて、「ハルキ、お前はどうしたいんだ?」とハルキ個人の意思を確認している。

 

『Z』はセレブロがカブラギ、ジャグラーがヘビクラ隊長と言う人間を使って暗躍している物語で、これまではセレブロの正体を知っているジャグラーが優勢なところがあったが、ジャグラーと違ってセレブロは寄生する相手を変えられるので、今回の話でヘビクラ隊長より上の立場の人間に寄生した事で形勢が逆転した。

 

地球防衛軍日本支部の作戦部長ユウキ・マイが登場。
やたらと嫌われている人物だが実はやっている事はキングジョーストレイジカスタムの時のユカとあまり変わっていなかったりする。
ユカとユウキ・マイの違いは主人公側かそうでないかと言うのが大きい。今回の話の時点で20話を超えているので視聴者の多くはストレイジに思い入れが出来ている。そこにドカドカと土足で踏み込んできたユウキ・マイに対して多くの人が自分達のテリトリーを脅かされた荒らされたと嫌悪感を抱いたのだと思う。
又、ユカは解剖したがるサイコっぽいキャラではあるが解剖の対象が怪獣や宇宙人と言った主人公側ではないものだったので視聴者はあまり嫌悪感を抱かずギャグで済ませられた。一方のユウキ・マイもD4の被害を気にしないと言うサイコっぷりを見せたが、ここでの被害者が主人公側であるヨウコ先輩だったので多くの人からヘイトを集める事となった。

 

セレブロに寄生されたクリヤマ長官はD4の使用を強く訴えるが、よく考えたら、セレブロに寄生されていない防衛軍総司令部もD4の実戦投入の命令を出している。(セレブロが一度に寄生できるのは一体だけなのでクリヤマ長官以外の幹部はこの時点ではセレブロに寄生されていないのは確か)
セレブロに寄生された状態でのカブラギやクリヤマ長官の言動を見るとセレブロに上層部を説得して自分の思う方向に誘導するコミュニケーション能力があるとは思えないので、セレブロとは無関係にこの地球の防衛軍はD4使用に動いていたとなる。(実際、「生中継! 怪獣輸送大作戦」の時点でアメリカ本部の事務次長が「ウルトラマン以上のロボットの開発」を望んでいる)

 

しつこくD4の使用を求めるクリヤマ長官に向かって「黙ってろ!」と強く返すヘビクラ隊長。「滅亡への遊戯」でセレブロに寄生されたクリヤマ長官に向かって「セレブロ。今はそいつの中にいるのか?」と尋ねているので、この時点のジャグラークリヤマ長官の中にセレブロがいる事を知らなかった可能性が高いが、それでも普段の彼はクリヤマ長官にこういう話し方はしないので、確証は無いがクリヤマ長官にセレブロが寄生していると考えてセレブロに向かって「黙ってろ!」と言ったのかもしれない。

 

クリヤマ長官からの命令に逆らってヘビクラ隊長はハルキをウインダムで出撃させるがウインダム一機でこの状況を変えられるはずがないので、この時のジャグラーはハルキがゼットに変身する事を望んで出撃させたと考えられる。つまり、ヘビクラ隊長(ジャグラー)はウルトラマンの力を頼りにするしかなかったのだ。
D4の是非についてクリヤマ長官と言い争った時にハルキは「俺達が守ってみせます」と言ったが結局はウインダムとキングジョーストレイジカスタムだけでは対処できず、防衛軍にとって不確定要素であるウルトラマンの力を使うしかなかった。

 

ケルビムは強いエネルギー波を辿ってやってくるらしいが、『メビウス』で地球に現れたのはメテオールが原因だったりするのだろうか?

 

『オーブ』の「ニセモノのブルース」で使ったケルビムについて喋ってしまった為にユカにツッコまれてしまうヘビクラ隊長。ユカが知らないと言う事はこの地球には出現したデータが無い怪獣と言う事になると思われるので、そんな未知の怪獣について知っているとしてしまったのは彼にしては珍しいミスだった。

 

マザーケルビムが宇宙にいる事が判明するがウインダムもキングジョーストレイジカスタムも大気圏を脱出する事が出来ないので結局はゼットに頼むしかなくなる。
ひょっとして、これが後の宇宙セブンガー開発に繋がったのかな?

 

今回は人間が制御できるのか不確かな異次元エネルギーに手を出す話であったが、ゼットのデルタライズクローに使われるウルトラメダルのゼロとベリアルもウルトラマンでも制御できるのか不確かなプラズマスパークに手を出した者であった。
果たして人間は力を上手く使いこなしたゼロになるのか、それとも力を使って暴走したベリアルになるのか……。

 

アンダーコントロールであると散々言っていたはずなのに結局はD4の使用で次元崩壊が始まってしまい、ウルトラマンであるゼットが光線で押し返さないと大惨事が起きていた。
これを見て「今はまだ人間はD4を制御できない」と考えるのではなく「ウルトラマンの力を手に入れればD4を制御できる」と考えてしまうのがユウキ・マイの凄いところであり恐ろしいところである。

 

今回は異次元エネルギーの恐ろしさがこれでもかと描かれていて、これを完全に使いこなしているヤプールの恐ろしさが改めて分かる話にもなっていた。

 

ストレイジが総司令部に従わなかったのは今後の防衛計画の遂行にとって極めて深刻な問題だとしてクリヤマ長官はストレイジを解散させてしまう。
『帰マン』のMATから特別チームが解散や活動休止の危機に陥る話はいくつかあったが本当に解散されてしまうとは驚きだった。

 

今回の話は鈴木さんの現時点でのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。

 

 

まさかの休号に驚き。
ヨシダはストレイジ側だからか今号でD4の危険性をちゃんと取り上げている。(逆にストレイジにとって都合の悪いところはこれまであまり取り上げてこなかった)

 

 

メビウス兄さん」
ウルトラマンゼット&ウルトラマンゼロ ボイスドラマ』第21回
脚本 足木淳一郎
CG 渋谷怜央加
編集 坂口俊昭

 

メビウスのキャラクターが変わっていて驚き。
あのかわいい末っ子キャラだったメビウスもすっかり兄さんキャラになった。
「サコミズ隊長のキャラに似ている」と言う話を聞いてなるほどと思った。
今回のメビウスのゼロを楽しそうにからかう感じは漫画やアニメではよく見かけるがウルトラマンでは殆ど見かけないものなのでかなり印象に残った。
メビウスはこれまでは目上の人物か他の星の人間を相手にしていたのもあって敬語がメインであったが今回の話で同郷の近い年代や年下相手にはこのように接する事が分かって新鮮であった。

 

メビウスとゼロの絡みは意外と無い。
メビウスとのやりとりは師匠筋のウルトラ兄弟や弟子筋のニュージェネや仲間のウルティメイトフォースゼロとは違った感じになっていて、こういうゼロはあまり見る事が無かった。