帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「最後の勇者」

「最後の勇者」
ウルトラマンZ』第19話
2020年10月31日放送(第19話)
脚本 根元歳三
監督 辻本貴則

 

ウルトラマンエース
身長 40m
体重 4万5千t
ウルトラ兄弟5番目の弟でヤプールの宿敵。
バラバに苦戦するゼットの前に現れ、超獣との戦い方と新技スペースZを授けた。
ゼットの名付け親でもある。

 

宇宙大怪獣ベムスター
身長 46m
体重 6万1千t
宇宙からやって来てガスタンクを丸飲みする。
2年前にも現れて防衛軍の偵察衛星を飲み込んでいて、地球に餌があると覚えてしまっていた。
空に現れたヒビに怯えて宇宙に逃げ帰る。

 

殺し屋超獣バラバ
身長 75m
体重 8万5千t
空に生じたヒビから出現した。
ヤプールの残留エネルギーが実体化したものでエースを付け狙う。
ゼットとエースを相手に互角の戦いを繰り広げるが最後はゼットとエースの力を合わせた新技スペースZを受けて「ヤプール死すとも超獣死なず」と言う言葉を残して倒された。

 

物語
空に生じたヒビから出現したのは異次元人ヤプールが生み出した超獣バラバであった。
超獣相手に苦戦を強いられるゼットの前に超獣退治の専門家であるエースが姿を現す。

 

感想
今回のベムスターの炎に包まれながらの飛行が格好良い!

 

今回の話は2020年8月4日が舞台となっている。何か元ネタがあるのかなと調べたらベムスター初登場となる『帰マン』の「ウルトラセブン参上!」が1971年8月6日放送で平成にベムスターが再登場した『メビウス』の「ウルトラマンの重圧」が2006年8月5日放送だった。他にも『X』の「オール・フォー・ワン」が2015年8月4日放送だったりと今まで気付かなかったがベムスターは8月に多く登場していた。

 

街で待機している特空機を人々が撮影する場面は日常と非日常が融合していて面白い場面になっていた。
昔はこういう人が怪獣を撮影する場面はTV関係者しか出来なかったが今は皆がスマホで撮影できるようになったので編集されたTV番組とは違う生っぽい映像が出てきて面白い。

 

空に現れたヒビからヤプールや超獣を感じ取ったベムスターは宇宙に逃げてしまう。
『T』の「ベムスター復活! タロウ絶体絶命!」「逆襲! 怪獣軍団」では超獣がベムスターより格下のような扱いだったのを思うと今回の描写は思わずニヤリとしてしまうものがある。

 

バラバの動きがロボットっぽいなぁと思っていたらいきなり「エース!」と叫んで恨み全開で暴れ出したのに驚いた。だが、この「生物兵器」と「怨念の実体化」と言う真逆のものが合わさっているのこそまさにヤプールの超獣と言える。

 

ゼットとバラバのミニチュアセットを中心にした戦いの場面は両者の巨大さが出ているし、人間を配置する事で戦いで建物が壊れる危なさが出るし、画面が右に動いたらバラバが有利で左に動いたらゼットが有利と戦いの状況が分かりやすくなっているしとかなり面白い作りになっていた。

 

異次元を使って相手の攻撃を防ぐバラバの戦い方が面白かった。
そう言えばヤプールは異次元人だが戦いで異次元空間を使った事ってパッと思い浮かばないな。

 

エースの出現に複雑な表情を見せるジャグラー
ウルトラマンがいない宇宙で色々やっていたのに結局はどの宇宙でもウルトラマンが次元を超えて正義を果たしにやって来てしまう。

 

どんな生き物でも攻撃を受ければ痛みを感じ恐怖を覚え隙が生まれるが兵器である超獣はそんなものを感じないので完全に動きが止まるまで攻撃を続けなければいけなかった。
今回のエースの説明は超獣の「生物兵器」と言う設定を上手く捉えていた。
『A』ではギロチン系の技を始めとしてオーバーキルな決着が何回かあったが、その辺りにも上手く説明を付けた言葉であった。

 

前にも書いたかもしれないが、バトル要素が強化されたニュージェネレーションシリーズの作風と全身凶器の超獣はやっぱり合う。
特に今回は技が豊富なエースと全身凶器のバラバが次々と攻撃を繰り出す非常にテンポの良い戦いになっていて、まさに「令和時代の『A』」と言える戦いであった。

 

今回の話でゼットがベータスマッシュに変身したのはエースのウルトラメダルが使われているのが理由としてありそうだが、実は「赤いアイツ」こと『レッドマン』は1972年4月放送開始でエースとはヒーローとして同期だったりする。

 

ヤプール、かつてお前は言った。「勝った者は負けた者の怨念を背負って生きるんだ」と。それでも私は、ウルトラマンは戦い続ける! この宇宙に真の平和が訪れるその日まで!」。
『A』の「ベロクロンの復讐」で女ヤプールが残した名言を今回の話でエースが見事に返した!
『A』では戦い続けるヒーローの姿に少し物悲しさや悲壮感があったのだが『Z』ではかなり前向きと言うかポジティブな感じになっている。『A』では南夕子と別れたり北斗星司が人間の姿に戻れなくなったりしたのに対して『Z』ではゼットと言う若き存在が現れたと言うエース自身の環境の変化もあるが、ベトナム戦争等が問題となった『A』の時代とレジェンドヒーローの扱いが確立した『Z』と言う時代の変化も関係していると思われる。

 

ゼットのウルトラホールにゼットとエースのエネルギーを溜めた新技「スペースZ」でバラバを倒す。
こういう技の継承があるとゼットとエースの関係がより印象に残るものとなる。
プロレスで先輩レスラーから後輩へ技の継承が行われる事があるが今回のもそのイメージだったりするのかな。プロレスラー要素が強いベータスマッシュでやっているし。

 

高峰圭二さんの声がかつての納谷悟朗さんの声に近くなっているのが興味深い。

 

ゼットはエースに世話になった事があって「ゼット」と言う名前もエースに付けてもらったらしい。
「「Z(ゼット)」にはな、地球の言葉で「最後」と言う意味がある。お前がこの宇宙から戦いを無くして平和をもたらす最後の勇者となれ!」。
今回の話はアルファベットの最初の文字である「A(エース)」と最後の文字である「Z(ゼット)」から連想された話だと思われるが、ウルトラシリーズで作品が終了してもウルトラマン達の戦いが終わらなくなったのは「ウルトラ兄弟」の設定を本格導入してシリーズの流れを確立させた『A』からなので、そのエースが戦いの終わりを求めて若いウルトラマンに「Z(ゼット)」と言う名前を付けたのは色々と考えさせられるものがある。

 

「エースはゼットの名付け親だった」。 これだけでもエースとゼットは特別な関係として成り立つのだが、「エースは孤児でウルトラの父に引き取られた」と言う話を知っているとエースとゼットの関係を更に色々考える事が出来るのがウルトラシリーズの面白いところ。

 

そう言えばボイスドラマの「ゼットとゼロの出会いの話」でゼットがウルトラ6兄弟に弟子入りするのは恐縮すると言っていたのは自分の名付け親であるエースがいるからなのかな。

 

別れ際にゼットとエースが握手ではなくお互いの腕をクロスさせているがこれは「クロスタッチ」と言う絆を結ぶ新たな印で2020年の「ウルトラマンの日」に配信された動画で紹介されている。
新型コロナウイルスの感染予防の為に握手の代わりに作られた挨拶だが、ちゃんと本編でも活用されていて、「メダルいただきます!」でゼットがハルキとしようとした後、「獅子の声」でハルキがユカとして、今回の話でヤプールと超獣との戦いに向けて決意を新たにしたゼットとハルキがしている。初代マンから教わったゼットがハルキに教え、さらにハルキからユカへと伝えられたと言う感じかな。

今思えば光の国を出たゼットが最初に会いに行くウルトラ兄弟がエースだったのは以前から知っている間柄だったからなのかな。

 

ゼットは飛び去る時に「Z」の文字に飛んでいくのだが、ぶっちゃけると自分は「Z」ではなくて「N」に見えて、もう少し角度を変えれば良いのに……と思いながら見ていたのだが、今回の話でゼットとエースの二人が飛び去って「A」の文字が出来た時は思わず「おおっ!!」と声が出た。この為にゼットの飛び去る角度がああなっていたのかな?

 

残されたバラバの剣を見て異次元を破壊する力に興味津々なユカ。
この辺りからジャグラーの思惑を少し超えた事態になる。

 

今更言ってもと言うのは分かっているが、今回の話を見たら、やっぱり『タイガ』で『T』関係のエピソードをやってほしかったなと思う。

 

 

ふと思ったのだが、事情を知らない人だとゼットが先輩で新しく登場したエースが後輩に見える可能性もあるのかな? でも、戦闘中にエースがゼットに指示を出している感じがあったから、やっぱり先輩が救援に来たように見えるのかな?

 

 

「兄さん」
ウルトラマンゼット&ウルトラマンゼロ ボイスドラマ』第19回
脚本 足木淳一郎
CG 渋谷怜央加
編集 坂口俊昭

 

メビウス』でウルトラ兄弟の設定が復活した時はこれからどんどん増えていくのかなと思ったが意外にもヒカリ以降は増員されなかった。劇中でも触れられているが、ゼロがウルトラ兄弟に入っていないのでそれ以降のウルトラマンを入れにくくなったと言うのはありそう。

 

うっかりゼットの事を「弟子」と言ってしまったゼロ。
ウルトラ兄弟」と言う括りや他のウルトラマンに勉強を教える80と言ったようにヒーロー達にも色々な人間関係があるのがウルトラシリーズの面白いところ。