帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「明日への約束」

「明日への約束」
ウルトラマンデッカー』第15話
2022年10月22日放送(第15話)
脚本 根元歳三
監督 武居正能

 

精強宇宙球体スフィアソルジャー
全長 不明
重量 不明
スフィアザウルスをサポートしてGUTS-SELECTやTPUを追いつめるがデッカー・ダイナミックタイプによって一掃される。

 

精強融合獣スフィアザウルス
身長 68m
体重 6万8千t
地球から吸収したエネルギーをスフィアのバリアーに送る。
デッカー・ダイナミックタイプのデッカーフラッシュダイナミックで倒される。

 

物語
謎の人物が変身したデッカーとアガムスが乗り込んだテラフェイザーの戦いは痛み分けに終わった。
カナタは謎の人物から今回の戦いの秘密を聞かされる。

 

感想
色々な謎が一気に解ける重要回。

 

本来の歴史では今から数百年後に宇宙に進出した人類はスフィアと遭遇して様々な星と協力して戦う事になっていた。
『ダイナ』の宇宙では人類とスフィアが遭遇するのは21世紀だったのだが『デッカー』の宇宙では21世紀の数百年後に遭遇するとなっている。
人類が宇宙にまで活動範囲を広げているのは『大怪獣バトル』を思い出す。『大怪獣バトル』ではレイオニクスバトルと言う自分以外は全員が敵と言うバトルロワイヤルが起きていたが『デッカー』の未来ではスフィアと言う共通の敵と戦う為に様々な星の人類が協力しているとの事。

 

未来では地球人や様々な星の人類が協力してスフィアと戦っていると言う説明にダイナや「希望の光、赤き星より」に登場したユザレがいた。
この事から未来にもユザレの力を持った者がいて、その者が時空を超えてケンゴにアイテムを授けたと思われる。
気になるのはトリガーの存在。未来ではデッカーと「もう一人のウルトラマン=ダイナ」が戦っていると言っているのでトリガーはいないようだ。ケンゴはこの二十数年間を普通の人間と同じように歳を重ねているので他のウルトラマンのように万単位で生きる存在ではなくなったのかもしれない。ティガはダイゴの祖先や子孫にも変身能力が備わっていたがケンゴの方は子孫に力が伝わるか不明なので、ひょっとしたらトリガーの力は途中で途絶えたのかもしれない。

 

今回の話でスフィアの目的も判明。
スフィアは文明が進んだ星や強い力を持った生物を飲み込んで自分の一部にしてしまうらしく、送り込まれたスフィアザウルスが星のエネルギーを一定量まで吸収するとバリアーが収縮を始め、そこにより巨大な本体が現れるとの事。この展開は『ダイナ』のスフィアと同じ。
『ダイナ』のスフィアは途中までは怪獣を利用して最終決戦でグランスフィアが登場して星々を飲み込んでいったが、『デッカー』では「怪獣を利用する」と「星を飲み込む」の間に「怪獣を使ってエネルギーを吸収する事で星を飲み込む準備を整える」と言うのが差し込まれてより確実に成功するようになっている。

 

アガムスは「スフィアは宇宙の摂理。勝利する事など出来ない」と言っていて、『Q』の「バルンガ」に登場したバルンガのような自然現象として扱っているところがある。

 

アガムスの目的も今回の話で判明する。
アサカゲ博士が言っていた「故郷」とは地球ではなくバズド星で、地球人が宇宙に進出などしなければバズド星は滅びる事は無かったとして、自分が開発した時空移動システムを使ってスフィアと共にこの時代にやって来て地球を滅ぼそうとしているとの事。
しかし、時空移動システムで過去に行っても未来が変わる事は無くて違う歴史を辿る新たな未来が出来るだけらしい。それについてアガムスは自分の行動はただの復讐で、自分の過ちと共に地球を宇宙から消し去るのが目的だと答える。
この「地球人が宇宙に進出した事でバズド星が滅びる事になった」「アガムスの過ち」についてはこの後の話でより詳しく語られる事になる。

 

アガムスはバズド星は滅んだと言っているが謎の人物によるとバズド星はバリアーに包まれているがまだ滅んでおらず多くの仲間が戦い続けているらしい。この事からアガムスは戦いの途中で絶望した諦めた事が分かり、絶対に諦めないアスカやカナタとは対極に位置する人物となった。

 

『ダイナ』を知っているとアサカゲ博士の裏切りは予想が出来たが『ダイナ』を知らなかったらかなり驚きの展開であったと思われる。ところどころに不穏な台詞はあったが、どちらかと言うとムラホシ隊長の方が気になる発言が多かったし。
アサカゲ博士が宇宙人である事の伏線は無かったと思うが、『デッカー』はカナタが煎餅屋の子供と家族について明確な描写があったり他のGUTS-SELECTのメンバーも過去の話が具体的に語られていたりしていたのに対してアサカゲ博士だけは「故郷」「希望」と言ったふわっとした話だけで家族や過去に関する具体的な話が殆ど無かったので、具体的なエピソードが無いのが実は地球人ではなかった事の伏線だったと言えるのかな。

 

アガムスが時空を移動する時に時空移動システムを破壊してしまった為に他の未来人は過去に行く事が不可能となり、謎の人物はこの時代に感じた光に向けてウルトラDフラッシャーを送り、その後もカナタの求めに応じて様々なカードを送っていたとの事。
ウルトラシリーズでは謎の巨人に変身した瞬間に何故か能力を理解して使用できると言うツッコミポイントがあるが『デッカー』では未来から謎の人物がサポートしていたと言う説明が付けられた。

 

不完全な時空移動システムでは違う時代に長時間滞在する事は出来ないのだが謎の人物は「大人にはなぁ! ……責任ってものがあるんだよ。この命に代えても俺の手で奴を!」と言ってダメージの残っている体でデッカーに変身しようとするがカナタに止められる。
「なんだよ、それ! 分かんねぇ。分かんねぇよ! オッサンの言っている事も博士の言っている事も分かんねぇ! 何でそんな簡単に命を捨てられるんだよ! 捨ててどうなるんだよ! それで本当に解決するのかよ! オッサンの仲間達も今戦っているんだろう! だったら! 何が何でも生き延びろよ! 生きて! 一緒に頑張れよ! 巻き込まれたからじゃない。俺は今、俺の世界を守りたいんだ! こっちは俺に任せて、さっさと未来に帰りやがれ!」。
カナタの訴えはまだ何も分かっていないガキがデカい口を叩いているだけかもしれない。が、絶望して諦めてしまったアガムスや大人の責任として死を想定した決着を考えていた謎の人物では辿り着けない未来に行くにはカナタのような明確な答えは出せなくても生きる事と守る事を掲げ続ける愚直さが必要なのかもしれない。

 

謎の人物からウルトラDフラッシャーを託されたカナタはデッカーに再び変身する。
今回の戦いはミラクルタイプやストロングタイプを駆使して戦術は悪くなかったのだが残念ながらテラフェイザー相手ではスペックで劣っているところがあった。しかし、カナタの「負けられねぇんだ!」と言う思いに呼応して誕生したダイナミックタイプのウルトラディメンションカードによってデッカー・ダイナミックタイプに変身するとその状況が一気に変わる!

 

オープニング曲の『Wake up Decker!』は1番の歌詞にデッカーのタイプである「フラッシュ」「ストロング」「ミラクル」が入っているが2番の歌詞にも新しいタイプの「ダイナミック」がちゃんと入っている。

 

『ティガ』以降の平成ウルトラシリーズは主人公ウルトラマンのパワーアップ形態が定番になっているがダイナにはそれが無い。(客演作品でグリッター化するとかはあるが)
なので今回のダイナミックタイプ登場はデッカーがダイナの影響から外れて独自の道を進み始めたと言う事も出来る。ダイナミックタイプを見た謎の人物が「それがお前だけの、この時代の地球を守るウルトラマンの姿か……」と言っていたがまさにカナタだけの、2022年のウルトラマンが誕生したのだった。

 

謎の人物の名前は「デッカー・アスミ」でカナタの子孫であった。
ウルトラシリーズウルトラマンに選ばれる人間は勇気ある人物である事が多いが、怪獣が現れた時に勇気を出したのは主人公だけではなかったはずと言う疑問は出てくる。そこを『デッカー』は「諦めなかった」に「ウルトラマンに変身する人間の祖先だった」と言う条件を加える事で数ある人間の中からカナタだけが選ばれた理由をより納得できるものとした。
未来人デッカーが接触したのが祖先のカナタだったのはアガムスが破壊して不完全になった時空移動システムで数百年前の地球と接触するのは大変難しくて血縁関係とか目印が必要だったと言う事かな。(そう考えると「希望の光、赤き星より」で未来のユザレがケンゴに接触できたのって実は……となっちゃうが)

 

『ティガ』では超古代について言葉で触れられる事があってもがっつりとその時代の出来事が描かれる事は少なかったし、『ダイナ』で語られる未来は人々が目指す目標や夢みたいな感じでこちらも具体的に描かれる事は無かったのだが、『トリガー』では実際に超古代を舞台にした過去編が作られ、『デッカー』でも数百年後の未来がどうなるのかはっきりと語られた。
同じウルトラシリーズでも作られた時代やスタッフの違いによって作品の中身が変わってくる事が分かる。

 

未来人デッカーは『仮面ライダーアマゾンズ』で鷹山仁を演じた谷口賢志さんの怪しさ大爆発な素敵スマイルが印象に残るが「信じてくれ! 俺達は未来の宇宙に平和を取り戻そうとした。今でもその思いを胸に仲間達は戦い続けている。それだけは……!」や「負けるな! ウルトラマンなら立ち上がれ! 掴めぇ! カナタァ!!」の場面はまさにヒーロー!と言う感じになっていた。
自分はこういう「一見するとヒーローには見えないが中身は完全なヒーロー」と言うキャラクターが好きなのだがウルトラマンでは外見と中身にギャップがあるヒーローはあまりいなかった。

 

「主人公の前に同じウルトラマンに変身していた人物がいた」と言う未来人デッカーの存在はウルトラシリーズでは珍しい。設定を考えたら初代マンが地球の前にどこかの星に滞在してその星の人間と一体化していたとかありそうなのだがハヤタ隊員や郷秀樹と言った映像作品に登場した人間の前にウルトラマンと関わっていた人物が出てくる事は殆ど無かった。思い浮かぶとしたら『R/B』の先代ロッソと先代ブルくらいだろうか。

 

「好青年ではない」「映像作品で最初にそのウルトラマンに変身した主人公の前に変身していた人物」と今回の未来人デッカーは半世紀以上の歴史を持つウルトラシリーズでも過去にあまりいないキャラクターであった。
仮面ライダーに比べて変身者が限られているのであまり色々出来ないところがあるのかもしれないが、ウルトラマンに変身する人間のタイプはもっと増えても良いと思う。