帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「彼方の光」

「彼方の光」
ウルトラマンデッカー』第25話
2023年1月21日放送(第25話)
脚本 根元歳三
監督 武居正能

 

ウルトラマントリガー
身長 53m
体重 4万4千t
マザースフィアザウルスのコアから吸収したエタニティコアのエネルギーを光に変換してカナタを再びウルトラマンにする。

 

精強宇宙球体スフィアソルジャー
全長 不明
重量 不明
マザースフィアザウルスを守る為にGUTS-SELECTを迎え撃つ。
マザースフィアザウルスが倒されると消滅した。

 

最強スフィア獣マザースフィアザウルス
身長 88m
体重 8万8千t
トリガーと接触した事でエタニティコアの情報を手に入れていた。
個々のまま存在しては争いも悲しい未来も避けられないとして全宇宙の全ての命を一つに融合して完全なる生命体になろうとするがカナタ達に否定され、GUTS-SELECTとデッカーの反撃を受けると最後はデッカー・フラッシュタイプのセルジェンド光線でコアを破壊されて倒された。

 

物語
マザースフィアによってテラフェイザーに搭乗していたアガムスは命を落とし、カナタもデッカーへの変身能力を失ってしまう。
しかし、アガムスが遺したデータからマザースフィアの弱点を知ったカナタ達は逆転を賭けた作戦を決意する。

 

感想
最終回のサブタイトルだが「彼方」は『デッカー』の主人公であるカナタの事で「光」は『ダイナ』の最終章完全版のタイトルである「ひかりへ…」の事だったりするのかな。

 

アガムスは胸部のコアがマザースフィアザウルスの弱点である事を知っていたがマザースフィアザウルスが星に降り立つ事は今まで考えられなかったのでこの弱点を攻撃する事は不可能だと考えていた。
マザースフィアザウルスが地球に降り立ったのはエタニティコアを手に入れる為。エタニティコアの力があれば宇宙を作り変える事も可能なので、これまでスフィアは文明が進んだ星や強い力を持った生物を見付けては時間をかけて融合していたが、エタニティコアの力があれば一気に全宇宙の全ての命を一つにする事が可能だと考えたのかもしれない。結局はエタニティコアを狙って地上に降りてしまった為に自身のコアを破壊されてしまう事になるのだが……。

 

マザースフィアザウルスを倒すにはGUTS-SELECTとウルトラマンが共同戦線を展開するしかなく、GUTS-SELECTとウルトラマンが作戦を共有する為にカナタは自分がデッカーである事をムラホシ隊長達に明かす。
ウルトラシリーズ恒例の正体バレであるが今回は「既に正体を知っているカナタ・リュウモン・イチカ」と「ここで正体を知らされるムラホシ・カイザキ」に分かれ、既に正体を知っているグループでも「決死を覚悟するカナタとそれを受け入れるリュウモン」と「カナタの覚悟に納得がいかないイチカ」に分かれるとそれぞれの立場が異なっている。隊員それぞれにこれまでの人生が色々あるのでウルトラマンの正体バレでもそれぞれ違う立場になったり違う反応を示したりするのはなるほどであった。

 

ムラホシ隊長は作品を通して隊員達の特徴を語っていて、「地底怪獣現わる! 現わる!」でリュウモンを「見つめる天才」、「湖の食いしん坊」でイチカを「真っ直ぐの天才」と評し、今回の話でカナタを「努力の天才」と語った。
これまで特別チームの隊員は「発明」「射撃」「操縦」と言った能力で語られるところがあったが、能力ではなく性格や個性や人柄で隊員を語っていくのが訓練校の校長だったムラホシ隊長らしくて良かった。

 

ムラホシ隊長が負傷しているで作戦の指揮はリュウモン隊長代理が執る事になった。
ムラホシ隊長がGUTS-SELECTに若者を多く選んだ理由は人材育成だったのでリュウモンが隊長代理を務める程に成長した事でムラホシ隊長は育成をちゃんと果たした事が分かる。

 

GUTSファルコンを操縦する事になったイチカの緊張を解そうとカナタはかつてムラホシ隊長に言われた冗談を伝えるが、それに対してイチカは「TPU訓練校宇宙開発課を舐めんな!」と明るく返す。
そう言えばカナタが戦闘機に乗って途中でデッカーに変身してその後をハネジローがフォローすると言う設定なのでイチカが操縦する機会って意外と無かったなぁ。

 

『デッカー』は『トリガー』の続編でもあるので最終回にトリガー、GUTSファルコン、エタニティコアと言った『トリガー』の設定がちゃんと使われるのが嬉しい。

 

トリガーがマザースフィアザウルスのコアから吸収したエタニティコアのエネルギーを光に変換してカナタに送り、それを受け取ったカナタは再びデッカーに変身する。
以前にも書いたが『トリガー』は『ティガ』だけでなく『ダイナ』の要素もあって、続く『デッカー』では『ダイナ』だけでなく『ガイア』の要素もあって、今回の主人公が仲間を経由して怪獣のエネルギーを受け取って再びウルトラマンに変身する展開は『ガイア』の「地球はウルトラマンの星」を思い出した。

 

今回の最終決戦ではトリガーはデッカーと共闘しないでデッカーを復活させて役割を終えている。武居監督によるとウルトラマンが共闘すると最後は光線を一緒に撃って終わる事になるがそれは既にやっているので今回はデッカーとGUTS-SELECTが協力して敵を倒すようにしたかったとの事。
自分もトリガーとデッカーの共闘が今まで無かったら最終回なのにどうして共闘させなかったのかと疑問を抱いていたと思うが既に共闘しているので最終回で共闘が無くても気にならなかった。
『R/B』や『タイガ』では主人公のウルトラマン達にオーブやタロウとの関係が設定されていたがTVシリーズではオーブやタロウがロッソやブルやタイガ達と共闘する事が無かった。個人的には『タイガ』は序盤にタロウを出してタイガの親離れを描いていればその後の話でタイガとタロウのエピソードが無くてもあまり気にならなかったんじゃないかなと思うところがある。課題は早めに片付けておかないとずっと気になっちゃうと言うか。(ボイスドラマやショーを見たらタイガが『タイガ』の本編前に親離れがある程度出来ている事が分かるんだけれど、やっぱりTVで描く描かないは大きいと思う)

 

ハネジローが操縦するテラフェイザーと一緒に戦うデッカー。
ベタだけれどアガムスが遺した物が最終決戦に加わるのはグッとくるものがある。

 

現時点でのGUTS-SELECTの戦力がGUTSファルコン、GUTSホーク、テラフェイザー、ナースデッセイ号で、それぞれをイチカリュウモン、ハネジロー、ムラホシ隊長とカイザキ副隊長が操縦してデッカーであるカナタを援護すると言う流れが実にきれいにまとまっていた。

 

皆が巨人や巨大ロボットや戦闘機を操縦して戦う中、いくらウルトラマンとは言え生身で銃を撃って最前線で戦うケンゴに驚く。歴代ウルトラシリーズでもトップクラスな無茶をしているw

 

スフィアに取り込まれたカナタ達はそこでスフィアの声を聞く。
そう言えばスフィアは『ダイナ』の敵であったが、アスカとスフィアは完全に敵として分かれていて今回のような会話場面は無かった。『ダイナ』の「明日へ…」のクライマックスで会話しているがかなり距離がある状態だったし。それに対して『デッカー』は第1話や最終回でカナタがスフィアに取り込まれ、終盤ではスフィア因子が体内にあったりとカナタとスフィアの距離がかなり近かった。

 

マザースフィアザウルスの精神世界にカナタ達だけでなくハネジローもいたが、これはハネジローも人間と同じく魂や心を持っていると言う事なのかな。

 

『デッカー』では過去に介入しても未来は変わらないとなっている。歴史介入で未来が変わらないのは珍しいなと思っていたが、マザースフィアザウルスの「悲しい未来を避ける」に対してカナタが「悲しい未来は避けられない! だったら、その悲しみを乗り越えてやる! 俺達は前へ未来へ進むんだぁ!!」と返しているので「歴史改変で悲しい未来が無かった事になる」ではなく「悲しい未来が残ったままそれとは違う未来を作る」と言う感じになったのかな。

 

『ダイナ』の最終章はあえて宇宙を舞台にして地球の場面を少なくしたらしいが、逆に『デッカー』の最終章は地球を舞台にして宇宙の場面が少なかった。
こうして見ると『ティガ』と『トリガー』程ではないが『デッカー』も『ダイナ』とは変えている部分が結構ある。

 

戦いが終わった後、カナタはケンゴに向かって「結局、戦いの先に何があるのか答えは見付かりませんでした。でも、俺はこれからもこうやって生きていきます。目の前にある事を一つ一つ……。それが未来に繋がると信じて……!」と答える。
カナタの答えは漠然とした未来ばかりを見ていて一つ一つの事を疎かにしていったスフィアと対になっているところがある。

 

マザースフィアザウルスが倒された事で火星との通信が復活して多くの宇宙船が地球に帰還する。
『ダイナ』の最終回が宇宙に旅立ったアスカを皆が見送る形だったので『デッカー』の最終回が宇宙から帰ってきた人達をカナタ達が迎えると言うのは対になっていてなるほどとなった。

 

マザースフィアザウルスが倒された事で火星や未来のスフィアも消えたらしい。
『ダイナ』に登場したスフィアはグランスフィアが倒されても『サーガ』や本作に生き残りが出てきたが、どうやらそこからさらに繋がりが強くなってマザースフィアが倒されると他のスフィアも一緒に消滅してしまうとなったようだ。
アガムスは妻レリアが死んだ事で自分や地球人にも死を求めたがマザースフィアは実際に自分の死を他の個体の死に繋げていた。人生の終わりである死をマザースフィアに繋げられてしまうと言う事はそれぞれの人生をもマザースフィアに繋げられてしまうと言う事。それは人がそれぞれ違うからこそ生まれてくる可能性を消してしまう行為であった。

 

 

「ムラホシ タイジの場合」
『GUTS-SELECT交流記 ~帰ってきた特務3課~』第5話
脚本 足木淳一郎
監督 村上裕介

 

今回の配信日は本編が最終回を迎えた後の2023年2月4日となっていて内容もスフィアとの戦いを終えた後となっている。因みに冒頭でマルゥルが言った「少し前までホッタは「世界は破滅だぁ!」と騒いでいた」は特別総集編③の「立ち上がれデッカー」でのお話。

 

アサカゲ博士の話になってホッタさんは「私、思うんです。あの人は確かに私達に正体を隠していたかもしれない。でも、GUTSホークやテラフェイザーを開発している時は、あの時だけは偽りの無いアサカゲ博士だったんじゃないかって……。でなきゃ、あんな素晴らしい物作れません」と語る。
ホッタのおっちゃん……。
この話を聞くと開発している時のアサカゲ博士とホッタさんの映像が本編とかであったらアサカゲ博士のイメージがまた変わったものになっていたかもしれないと思った。実際、本編にあったGUTS-SELECTとのあまり多くないやりとりでもアサカゲ博士の素の部分が見えるところがあって復讐鬼は無理してやっているんだろうなぁと言うのは伝わってきていたし。

 

スフィアとの戦いを終えてGUTS-SELECTやTPUのこれからにも話が及ぶ。スフィアと言った敵を倒す事ではなく宇宙開発を頑張っていく事について「本当の戦いはここからだ」としたのが良かった。『ダイナ』のアスカのこの言葉は「前に進む事」でもあったので。

 

ムラホシ隊長に奥さんがいると言う話を聞いて、やっぱりアガムスとムラホシ隊長の話をもっと作ってほしかったと感じた。
アガムスはカナタとの対立がメインになったけれど設定を考えると同じく結婚しているムラホシ隊長や同じ技術屋であるホッタさんとの方が話が展開しやすかった気がする。

 

『デッカー』は秘密をポロッと喋ってしまう人が多いが最後がまさかのムラホシ隊長だったのは予想外だった。(またマルゥルかカナタが喋っちゃうんだろうなぁと思っていた)