帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…』

ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…』
2023年2月23日配信・公開
脚本 根元歳三
監督 武居正能

 

ウルトラマンディナス
身長 55m
体重 4万5千t
ラヴィー星人のディナスが変身するウルトラマン
ラヴィー星人はテレパシーが発達していて動物や植物とも意思の疎通が可能で動物や怪獣達と平和に暮らしていた。ディナスはギベルスの軍団の襲撃で重傷を負うがダイナから光を与えられた事でウルトラDフラッシャーが誕生してウルトラマンディナスへの変身能力を手に入れる。
ラヴィー星人は戦う事に向いていない種族でカラータイマーも常に赤くなっていてギベルスからは「ウルトラマンのなり損ない」と言われるが、心を通わせた生き物の力を秘めたディメンションカードを作る事が出来、ディナスはそれを変身前も変身後も様々な用途で使用する事が出来る。

 

ウルトラマンダイナ
身長 55m
体重 4万5千t
ギベルスの軍団に蹂躙される惑星ラヴィーに降り立って戦い、重傷を負ったディナスに光を与えた事でウルトラマンディナス誕生のきっかけを作る事となった。

 

雛怪獣ベビーザンドリアス
身長 60cm
体重 5kg
惑星ラヴィーでディナスと仲が良かったが……。

 

若親怪獣ヤングマザーザンドリアス
身長 48m
体重 2万t
惑星ラヴィーでギベルスの軍団に襲撃される。

 

策略宇宙人ペダン星人
身長 2m
体重 50kg
ギベルスの軍団のリーダー格でキングジョーを出撃させる。
ディナスを捕らえようとするがグレーズに倒された。
因みに本作に登場するペダン星人・クカラッチ星人・ゼラン星人は安田大サーカスの3人が声を担当している。

 

宇宙ロボットキングジョー
身長 55m
体重 4万8千t
ペダン星人に呼び出されて街を破壊する。
分離・合体機能を駆使してテラフェイザーを倒し、ウルトラマンディナスも追いつめるが、テラフェイザーの攻撃で形勢逆転され、最後はウルトラマンディナスのディナライズバーンズで倒された。

 

異次元宇宙人イカルス星人
身長 250cm~40m
体重 300kg~1万8千t
ギベルスの軍団の一人で自分に有利な異次元空間に敵を引きずり込む。
2体いてそれぞれウルトラマンディナスとカナタを追いつめるが異次元を展開する装置をGUTS-SELECTに破壊されると最後はGUTSグリフォンのハイパーソーンレーザーとウルトラマンディナスのかかと落としで倒された。

 

ゾゾギガ星人プロフェッサー・ギベルス
身長 250cm
体重 250kg
実験要塞艇ゾルガウスを拠点に全宇宙の支配を目論む悪の天才科学者で「一番美しい侵略方法」を探していくつかの星で実験を兼ねた侵略行為を行っていた。
部下の宇宙人や怪獣を強化し、地球人も人間の精神エネルギーと怪獣の精神エネルギーを融合させて進化させた上で自分の配下にしようとした。
最高の知能と最強の肉体と最上の美を持つ命こそが宇宙を支配するのに相応しいとして全宇宙の生命体を自分にひれ伏させようとする。
ディナスや地球人の精神力を認めていたが追いつめられると「地球人ごとき」と言う本心が漏れた。

 

銀河皇獣ギガロガイザ
身長 61m
体重 4万8千t
ギベルスが変身した姿でウルトラマンディナスを倒した。
ゾルガウスと合体してゾルギガロガイザにパワーアップする。
ゾルガウスを破壊されると形勢不利と判断して宇宙へ逃げるがデッカー・フラッシュタイプのセルジェンド光線で倒された。
名前の由来は「皇帝(カイザー)」かな。

 

銀河要塞獣ゾルギガロガイザ
身長 70m
体重 6万3千t
ギガロガイザがゾルガウスと合体した姿で一度はナースデッセイ号、GUTSグリフォン、テラフェイザーウルトラマンディナスを倒すが復活したデッカーとの戦いの途中でゾルガウスをGUTS-SELECTに破壊されてしまった。

 

メトロン星人ナイゲル
身長 2m
体重 4万t
TPUがギベルスの軍団に占拠されたのを受けてグレースと共に奪還作戦を行う。

 

宇宙格闘士グレゴール人グレース
身長 180cm~55m
体重 74kg~4万7千t
TPUがギベルスの軍団に占拠されたのを受けてナイゲルと共に奪還作戦を行う。
実は得意ではないが変身能力を持っていて、ペダン星人を倒して変身する事でギベルスの軍団に入り込む事に成功した。

 

物語
スフィアとの決戦から一年後、カナタ達はTPU訓練校で後輩達の指導に当たっていた。
それぞれが新たな道へ進もうとしている中、地球侵略を目論むプロフェッサー・ギベルスとそれを追って新たな光の巨人ウルトラマンディナスが現れる。

 

感想
2年間続いた『トリガー』『デッカー』シリーズの最後のエピソード。
『トリガー』の『エピソードZ』に続いて「TSUBURAYA IMAGINATION」のオリジナルコンテンツとしてツブイマ配信と劇場公開が同時に行われた。

 

TPU訓練校で後輩達を指導しているカナタ、リュウモン、イチカを見ると3人ともかなりの成長を遂げている事が分かる。やはり怪獣や宇宙人相手に最前線で数ヶ月戦った経験は大きい。

 

何となくだが後輩を相手にしているカナタがちょっとアスカっぽくなっているところがある感じがする。

 

カナタ達の訓練校の同期であるサトウ・ノジマ・イソザキもGUTS-SELECTへの配属が決定してリュウモンが新しい隊長に就任する事となる。
サトウ達の年齢は分からないがカナタ達と同期ならそれほど年齢が離れているとは思えないので、かなりフレッシュなチームになりそうだ。

 

半年前に出発した宇宙探索チームが冥王星軌道を越えて太陽系を離脱する。
因みに『ダイナ』でプラズマ百式が発見されたりグランスフィアが太陽系に出現した場所が冥王星だった。それを越えたと言うニュースが出た事で『デッカー』は『ダイナ』のネオフロンティアのさらに先を進む事になったと言える。

 

この宇宙探索チームにはケンゴも参加しているとの事。
アガムスの未来ではトリガーに関する話が一切無かったのでケンゴのその後がどうなったのかちょっと気になる。(まぁ、この時間軸はアガムスの未来とは違う歴史を辿っているのだけれど)

 

カイザキ副隊長が怪獣予知対策センターのセンター長になる事が決まる。
怪獣予知対策センターは怪獣の出現を予知して戦いを未然に防ぐ事で人間と怪獣のどちらの命も守る事を目的としている。これをカイザキ副隊長は「接触の機会を減らし、不幸な衝突を無くす。消極的な平和かもしれませんが」と語っている。
『ティガ』の「うたかたの…」では極論同士がぶつかって議論にならなかったところがあったが今回はちょうど良い落とし所になったと思う。ここは感情に振り回されないで冷静に物事を判断するカイザキ副隊長の良さが出たと言える。

 

皆がそれぞれの道を見付ける中、カナタは自分のこれからを考える。それを聞いたイチカに「目の前の事を一つ一つじゃなかったの?」と問われるとカナタは「一つ一つがいっぱいありすぎるんだよ」と答える。
なるほど。ドラマ等では登場人物が辿る人生はある程度整理された状態なのだが実際の人生では色々な事があってどれを選ぶのが正しいのかその時点では分からないものだ。ヒーロー作品の主人公は将来の夢が子供の頃から一つに決まっている事が多いが「煎餅屋」「GUTS-SELECTの隊員」「宇宙に出る」と様々な夢を持つ事になって悩むカナタの姿は実にリアルだったと思う。

 

ディナスは背が低くて細身で軽装なので火器を装備しているカナタ達と比べると弱く見えるのだが実際はモンスディメンションカードを駆使してカナタ達以上の戦力を誇ると言うギャップが面白かった。これこそ特殊能力モノの醍醐味と言える。

 

ウルトラマンディナスは女性のウルトラマンであるが変身ポーズや仕草に女の子っぽさが無くて肩書も「ウルトラウーマン」ではなく「ウルトラマン」となっている等、同じく女性が変身するアサヒのグリージョとの差別化がされている。

 

ウルトラマンディナスのデザインはデッカーに似ているがカラーリングが紫なので『サーガ』や『オリジンサーガ』でダイナと一緒に戦ったコスモスのスペースコロナモードを思い出す。

 

ウルトラマンディナスの最初から赤くなっているカラータイマーはやはり目を引く。
「ラヴィー星人は戦いに不向き」「ウルトラマンのなり損ない」と言う設定に合っているのだが全編通して苦戦ばかりで常にギリギリな印象だったのでどこかで完全なウルトラマンになって青いカラータイマーで強さを存分に見せる場面も欲しかった。

 

ディナスが持つモンスディメンションカードは『仮面ライダー剣』のようにカードに収めた怪獣の能力を自分に付け加える事が出来る。
自分は『デッカー』でのディメンションカード怪獣の扱いについて「設定に関する説明が少ない」「活躍の機会が少ない」とかなり不満があったのだが、ディナスのモンスディメンションカードは劇中でちゃんと設定が説明されているしそれがディナス自身の設定にも関わっているし変身前も変身後も使えるしと大満足な扱いであった。ニュージェネレーションシリーズでは人形やカプセルやメダルと言った小物アイテムが出てくるがディナスのモンスディメンションカードはその中でもトップクラスに活躍したアイテムだったと思う。

 

自分は『ダイナ』の最終回でスーパーGUTSのいる宇宙から消えたダイナは色々な宇宙を旅しながら元の宇宙に帰る方法を探していたと思っていたので、『サーガ』で実は帰ろうと思えば帰れそうなのを見て「いや、心配している人がいるなら一度帰ろうよ! あれからもう15年も経っているんだよ!」と正直言って思ったのだが、『サーガ』に『オリジンサーガ』に『デッカー』の未来に今回の惑星ラヴィーにと行く先々で助けを求める人達がいるのならすぐに帰る事が出来ないのも納得が出来るようになった。スーパーGUTSがウルトラマン不在でも15年間戦い抜けている事を考えたら、おそらくアスカはラヴィー星人のような戦える力を持たない人達を助ける事を優先するだろうなぁと。

 

怪獣に襲われて重傷を負ったディナスに光を与えて救うダイナ。
ダイナ自身はそんなつもりは全く無いのだろうが、「目の前で女性が命を落とすのを救えなかったジャグラーからしたら「ウルトラマンの力を使って女性を救ったダイナ」は癪に障る存在なんだろうなぁと思う。

 

『オリジンサーガ』の頃のアスカはすっかりベテランのウルトラマンになっていたので今回の「アスカも元々は普通の人間」と言う言葉をジャグラーにも聞いてほしいなと思う。

 

明言はされなかったがディナスの話を聞いたカナタは未来人デッカーもダイナの光でウルトラマンになったのではないかと考える。
『ダイナ』『デッカー』の敵であったスフィアが一つに纏まっていこうとするのに対してダイナは一つの光からデッカーやウルトラマンディナスと言った新しい光が増えていって、「可能性を狭めていくスフィア」と「可能性を広げていくダイナ」と言う構図が見えてくる。

 

ディナスは同じウルトラマンであるカナタに変な気配を感じるらしい。自分と同じ光を感じ取ったのに「変な」って……。

 

今のカナタはウルトラマンに変身出来なくなっていた。
やはり「彼方の光」での変身はエタニティコアの力を使ったイレギュラーなものだったのかな。又、カナタがスフィアとの戦いで使っていたデッカーの力は本来は未来人デッカーのものなのでスフィアとの戦いが終わったら本来の未来に戻ったのかもしれない。

 

今回は終盤までカナタがウルトラマンに変身出来ない代わりにディナスがウルトラマンに変身して戦っているので「ウルトラマンに助けられる主人公」と言うウルトラシリーズではかなりレアな場面がある。
今回はその他もウルトラマンであるディナスを先に進める為に主人公であるカナタが途中で敵の足止めを担当すると言った他では中々見られない展開がある。

 

TPUを占拠されてムラホシ隊長達とも連絡が取れなくなったのでリュウモンがカナタ達を指揮する事になるが上官がいない状況でリュウモンは不安を隠せなくなってしまう。
いつもは仕事が出来る副隊長が隊長と言う後ろ盾がいなくなると不安から冷静な判断や決断が出来なくなると言うのはウルトラシリーズでは定番で『ダイナ』でも「決断の時」と言う話があった。

 

今までカナタがリュウモンに頼り切っていたと言うのは聞いてなるほどと思った。確かに何かあったらリュウモンに聞いていたイメージがある。
この後の「リュウモンの命令に従う」もあって今回のカナタはウルトラマンとしてより特別チームの隊員としてのドラマが強かったところがある。

 

イチカの実家は寺で怪獣災害が起きた時に避難所になった事があったらしい。
『デッカー』は『トリガー』の10年後と言う設定なので以前に怪獣災害に遭遇したと言う話が何度かあった。そう言えば『ダイナ』も怪獣災害に遭った子供達が何度か登場していた。

 

アガムスの話から自分達は本当に宇宙に行って良いのか迷うイチカ。それが「宇宙から地球にやって来たウルトラマンディナス」との出会いで答えが見付かるのが上手かった。
ウルトラマンを「宇宙から来た友」と捉えて地球人が宇宙と関わるのを肯定していくのはウルトラシリーズならではの展開なのだが『トリガー』は超古代で『デッカー』は未来のウルトラマンだったのでこの「宇宙から来たウルトラマン」と言うのは今回のウルトラマンディナスだからこそ出来た話となった。(ゼットやリブットは「宇宙」と言うより「別次元」と言う話だったし)

 

プロフェッサー・ギベルスは地球を実験場にするところは『サーガ』のバット星人っぽい。美に拘るところは『ダイナ』の「怪盗ヒマラ」に登場したヒマラに通じるところがあるかな。
人間の精神エネルギーと怪獣の精神エネルギーを融合させて肉体に戻す事で地球人をさらに優れた存在へと進化させるのは同じく人間を進化させようとした『ティガ』のマサキ・ケイゴや『ダイナ』のヤマザキを思い出す。

 

ギベルスはスフィアを打ち破った地球人を「勇敢な種族」と評する。
スフィアは色々な星を襲っていたようなので、それを打ち破った地球人は良くも悪くも宇宙から注目される存在となったのかもしれない。

 

ギガロガイザにゾルガウスが合体したゾルギガロガイザは機械部分が加わった事でロボットっぽくなった。

 

グレースとナイゲルの登場は予想外でまさにサプライズであった。
特にグレースは初代にあった変身能力をここで使ってくるのか!と思わず唸った。

 

今回のカナタは終盤までウルトラマンに変身出来ないのでなんとテラフェイザーに搭乗して戦った。ベタではあるがやはり燃える!

 

これまでの作品だと「ゲストが命を落として主人公が怒りに燃える」と言う展開になるところを今回はカナタがウルトラマンに変身出来ないので「主人公が命を落としてゲストが怒りに燃える」と言う逆パターンになった。

 

カナタの死に怒りを燃やして戦うウルトラマンディナスであったが残念ながら『ダイナ』の「あしなが隊長」で「怒りの下僕に成り下がったら人間の負けだ」と言われたように怒りの力では戦いに勝つ事は出来なかった。

 

一度は命を落としたカナタだったがディナスや仲間達の光を受け取って生き返るとウルトラマンディナスのカードがデッカーのカードになって新たなウルトラDフラッシャーが誕生する。
「輝け……。輝け……! 輝け! 輝け、フラッシュ! デッカー!!」。
カナタが変身したウルトラマンは名前とデザインこそ「ウルトラマンデッカー」のままであるが、今回は未来人デッカーから貸し与えられた力ではなくカナタとその仲間達から誕生した力なので正確には「ウルトラマンカナタ」と呼ぶべき存在なのかもしれない。
ギベルス「貴様は何だ? 地球人? ウルトラマン? 貴様は? 貴様はぁー!!」、
カナタ「俺はアスミ・カナタ! ウルトラマンデッカーだ!」。

 

最終決戦での気合いと根性を振り絞るGUTS-SELECTは『ダイナ』のスーパーGUTSを思い出す熱さ!

 

リュウモンが隊長となった新しいGUTS-SELECTは訓練校の同期4人と言う編成になっている。同期故の隊長と隊員の距離の近さが新鮮でこういうフレッシュな特別チームがメインの作品があっても面白いと感じた。
宇宙に旅立ったハネジローに代わってハネサブローが登場。命名者は誰なのかな? 何となくだがリュウモンっぽい感じがする。

 

『デッカー』の最後でカナタは宇宙に旅立つが、リュウモン達に笑顔で見送られ、独りではなくてイチカやディナスやハネジローと言った仲間達と一緒となっている。自分は『ダイナ』の最後を初めて見た時にショックを受けた人間なので『ダイナ』のアナザーとして『デッカー』の最後を完全なハッピーエンドにするのはアリだと思う。

 

カナタ達が目指す「D97星雲第9惑星」は『ダイナ』の放送開始が「1997年9月」である事に因んでいると思われる。
ひょっとしたら、『ティガ』の世界からシズマ会長がやって来た事で始まった『トリガー』『デッカー』の物語は最後にカナタ達が『ダイナ』の世界に行って終わる事になるのかも。

 

主題歌は影山ヒロノブさんの『ソラノカナタヘ』となっている。