「衰亡のバズド」
『ウルトラマンデッカー』第22話
2022年12月17日放送(第22話)
脚本 足木淳一郎
監督 辻本貴則
有翼怪獣チャンドラー
身長 36m
体重 1万5千t
アガムスがシゲナガ博士が開発した脳波コントロールシステムを使って使役した怪獣。
空を飛んで口から炎を吐くがGUTS-SELECTとTPUの攻撃で空に逃げると最後はGUTSグリフォンのグリフォンキャノンビームで倒された。
『Z』の「ファースト・ジャグリング」のペギラの着ぐるみを改造している。
精強宇宙球体スフィアソルジャー
全長 不明
重量 不明
アガムスが呼び寄せてテラフェイザーに寄生させた。
ウルトラマンダイナ
身長 55m
体重 4万5千t
ミライでデッカーや地球人と共にスフィアと戦っている。
物語
地球人を滅ぼす為にスフィアに手を出したアガムスは追いつめられていき、切り札であったチャンドラーも倒され、遂に自らの破滅と引き換えにデッカーを倒そうとする。
アガムスの戦いの先にあるものは一体……。
感想
今回のサブタイトルは「衰亡のバズド」。
バズド星はまだ「滅亡(滅び)」ではなく「衰亡(衰え)」となっている。
遂にバズド星で何があったか描かれた。
「バズド防衛軍とデッカーが力を合わせてスフィアを撃退したら小康状態になった」「スフィアの研究が進んでいる」はスフィアが地球をバリアーで覆ってから一年間は大きく動かなかったり、サイテックラボラトリーホールディングがスフィアを回収して研究しているのを思わせる。
今回の話で「地球人によってバズド星にスフィアがもたらされた」「バズド星人アガムスによって地球にスフィアがもたらされた」と未来と現在とで地球とバズド星とスフィアは似た展開をしている事が分かる。
未来で宇宙に進出した地球人はスフィアと遭遇してデッカーやダイナと共に戦う事になったが、その中で一機の宇宙船がバズド星に不時着した事からバズド星もスフィアとの戦いに参加する事になった。
アガムスが「私はバズドの科学があれば地球人達を救ってやれると思った」と言っているので、おそらくバズド星がスフィアと戦う事を決めたのはアガムスの意見が大きく関わっていたと思われる。
戦いに加わった事でバズド星もスフィアの攻撃を受けて妻のレリアを失ってしまったアガムスは地球人がバズド星に不時着しなかったらと考えるようになる。
問答無用で巻き込まれたのならともかく自分達の意思で手助けをしてそれで犠牲が出たら非難を始めると言うはさすがに逆恨み八つ当たりと言う感じがするが、それはアガムス自身も十分に分かっていて過去の地球に来た理由を「スフィアをバズド星に連れてきた地球人と地球人達を助けられると科学を過信した自分の罪を精算する」と説明している。つまり、アガムスの攻撃の対象は地球人と自分自身。これは一種の拡大自殺と言えるのかもしれない。
スフィアの反応が検知された事からムラホシ隊長とカイザキ副隊長はテラフェイザーにスフィアが内蔵されていて、その為にテラフェイザーの起動に地球怪獣達が反応したのではないかと推理する。
「機神出撃」で『新世紀エヴァンゲリオン』の3号機のような場面があったのでテラフェイザーがスフィアに乗っ取られる展開があるかと思いきや無かったなぁと思っていたら実は最初からテラフェイザーにはスフィアが内蔵されていたと言うのは意表を突かれて驚いた。
アガムスがホットラインを使って連絡を取った相手はムラホシ隊長であった。
『デッカー』の後半はアガムスとの対立が一つの軸なのだが、GUTS-SELECTには個人的な恨みが無かった為にアガムスの怒りがデッカーであるカナタにだけ向かってしまって他のGUTS-SELECTのメンバーとの対立が殆ど無くなってしまったのは残念だった。この後のイチカの話とかを聞くと、敵になってしまったアガムスとGUTS-SELECTのメンバーの話をもっと作ってほしかった。
ムラホシ隊長と会話している時のアガムスは敬語を使っているところがあるが、わざと丁寧な言い回しで相手を挑発していると言うよりムラホシ隊長個人には恨みが無いので自然とアサカゲ博士時代の言動になっていたと言う感じがする。
アガムスは「人と怪獣」でシゲナガ博士が開発した制御装置のペンダントを手に入れていた。シゲナガ博士がネオメガスをコントロールするのに使ったペンダントは破壊されているので今回登場したペンダントはその時とは違う物と言う事になる。
シゲナガ博士は逮捕されたが脳波コントロールシステムの研究はどこまで進んでいたのだろうか。実は二個目のペンダントを完成させていたのか。シゲナガ博士の逮捕で止まった研究をアガムスが手に入れて二個目を完成させたのか。それともシゲナガ博士不在でも残された人達でペンダントの量産化が出来るところまで研究が進んでいたのか……。(一番怖いのは逮捕されたシゲナガ博士だが実はそこでも研究を続ける事が出来ただが……)
最大の障害であるGUTS-SELECTを排除する為にアガムスは自分を餌にした作戦を展開するが満を持して出したチャンドラーがGUTS-SELECTとTPUによって撃退されたのを見て「馬鹿な!?」と驚く。
いやいやいや! 準備万端のGUTS-SELECTとTPU、さらにカナタの行動を制限していないのでデッカーが登場する可能性も大いにあった状況をチャンドラー一体で勝てると思ったアガムスの考えに「馬鹿な!?」だよ!
まぁ、戦いの後にカイザキ副隊長が「あんな怪獣まで使わざるをえないなんて」と言って、ムラホシ隊長が「それだけ彼も追いつめられていると言う事でしょう」と答えているので、劇中でもチャンドラーを切り札にするのはおかしいと言う認識になっているが。(個体によって強さが違うと言っても『初代マン』の「怪獣無法地帯」でチャンドラーがレッドキングに負けた事を考えると「誰がための勇姿」でグレースの援護があったとは言えレッドキングが強化されたスフィアレッドキングを倒したGUTS-SELECTにノーマルのチャンドラーをぶつけるって……)
デッカーとテラフェイザーの決戦!
スフィアを使った強化によってデッカー・ダイナミックタイプと互角に戦えるようになったテラフェイザーであったがさすがに無茶な強化であったかアガムスの気力で何とか痛み分けまで持っていけたが後半はデッカーに押されていた。
先のチャンドラーの強さを見誤ったのもだがスフィアを自身に寄生させた事でアガムスは細かく色々考える事が出来ない状態になっている感じだった。
今のアガムスはレリアとの楽しかった記憶を糧に復讐の人生を突き進んでいるのだが、その復讐を成し遂げる為に手を出したスフィアによってレリアの最後の記憶を失ってしまうと言う……。
記憶を失ったアガムスはちょっと間の抜けた感じになっている。レリアとの会話でもちょっとノホホンとしたところがあったので、今の復讐鬼は相当無理をしている事が分かる。ムラホシ隊長との会話の場面でも思ったがアガムスってかなり無理をして「悪役」をしている。(だからツブコン2023の「Evening Sabbat」でジャグラーが「美剣サキとアガムスをダークネスヒールズ扱いするのは気の毒」と言ったんだろうなぁ)
『デッカー』の後半の感想として「アガムス関係の話があまり進まなかった」と言う意見がある。調べてみると第14話と第15話でアサカゲ博士が裏切ってアガムスの素性が明らかになり、次に登場した第18話ではデッカーと戦力差が生じたので何かを利用する事を決め、次に登場した第21話からは「バズド星の悲劇」「スフィアをテラフェイザーや自分に寄生させていた」「記憶喪失になる」と怒濤の展開であったのだが自分も初めて見た時はアガムス関係の話があまり進んでいない印象があった。
おそらくだが第14話と第15話でアガムスの素性が殆ど語られて残された謎が未来の地球とバズド星で何があったかだけになって、その謎が明かされたのが1クールの半分である7話も過ぎた第22話だったのが原因かもしれない。
人間はドラマを見る時に「登場人物の変化」とは別に設定の紹介や謎の開示と言った「新しい情報」で物語が進んだと感じるところがある。『デッカー』は第14話と第15話でアガムスの素性を説明した後、残された謎の開示が7話後の第22話だったので、その間の話では物語があまり進んでいないと感じられたのかもしれない。
今思えば第14話と第15話は「アサカゲ博士の裏切り」「未来人デッカーの登場」「アガムスが宇宙人で未来人である事が判明」「ダイナミックタイプ誕生」と前後編とは思えない程の情報量だったので、この時と比べて以降の話は「新しい情報があまり出ない=物語が進んでいない」となってしまったのかもしれない。そう考えると「『デッカー』の後半は物語の進みが遅かった」と言うより「第14話と第15話が急展開過ぎた」と言った方が合っているのかもしれない。