帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「朝と夜の間に」

「朝と夜の間に」
ウルトラマンブレーザー』第15話
2023年10月21日放送(第15話)
脚本 中野貴雄
監督 田口清隆

 

二次元怪獣ガヴァドン
身長 40cm~30m
体重 400g~2万t
ジュンがクラスメイトのアラタに促されて描いた怪獣ガヴァドンの絵が地球に降り注いだ未知の宇宙線の影響で実体化した。
元々が二次元の存在なので二次元のものを食べる。
「ガヴァッと出てきてドーンとビルをぶっ壊す」としてアラタに名付けられた。
あらゆる攻撃が通じなかったがブレーザーによって夕焼けの彼方に連れて行かれ、その夜、ジュン達は夜空にガヴァドンの星座を目にした。

 

物語
突飛な行動を取るクラスメイトのアラタに促されてジュンが描いた怪獣ガヴァドンの絵が未知の宇宙線の影響で実体化した。
アラタやツムギと一緒にガヴァドンと遊ぶジュンに少しずつ変化が現れる。

 

感想
ガヴァドンが再登場。
今回のタイトルである「朝と夜の間に」は『初代マン』でガヴァドンが登場した「恐怖の宇宙線」の当初予定されていたタイトルで、放送ナンバーも「恐怖の宇宙線」と同じ「第15話」となっている。

 

謎の白い生物の第一発見者を演じた内野惣次郎さんは「恐怖の宇宙線」にも同じタカシ役で出演していた。こういう繋がりが分かると思わずニヤリとなる。

 

運動会が先週に終わっているのに息子に向かって「そろそろ運動会だろ。今年こそ応援に行く」と言うゲントは問題がありすぎる。百歩譲って息子の運動会の日程を忘れていたとしても、運動会の写真を送ってもらっていながら一週間も放置していたあげくに写真の存在そのものを忘れていたのは擁護できない。そりゃ7歳の子供にも「無理しなくても良い」「ゆっくり寝ていれば」「仕事でサービス残業をして家でもサービスしていたら疲れるでしょ」と言われる。ゲントはそんな事は無いと否定していたがジュンから見た今のゲントは子供が気を遣わなければいけないほど疲れていると思われる状態だったのだ。

 

ゲントの「遊びに行こう」と言う誘いをジュンが断ると母のサトコは「せっかくパパが誘っているのに」「パパが連休で家にいられるなんて珍しいんだよ」と諭す。これは息子のジュンに「素直になって良いんだよ」と言っているのではなくて「パパに気を遣って遊んであげて」と言っているようなもの。
ゲントは自分が思っている以上に息子と妻から心配されて気を遣われていた。それに気が付いたゲントは今の自分は息子の頼み事を聞ける状態ではない事を理解し、事件解決後に息子に向かって「たまにはパパとも遊んでくれ」と頼み事を言うようになる。

 

今のゲントの問題は彼がウルトラマンでありSKaRDの隊長である限りは解決は難しい。そしてゲントはTVシリーズの最終回を迎えてもウルトラマンと一体化したままでSKaRDの隊長のままであった。ゲントの方が変わる事が出来ない状況なので、息子のジュンと妻のサトコが今のゲントに合わせて自分を変えていく事になる。(なので、『大怪獣首都激突』でのサトコの妊娠や怪獣が出現している中でのサトコの消息不明等の問題はゲント不在の状態でジュンとサトコの二人で解決する事になる)

 

ガヴァドンが絵を食べたり絵に戻る場面は面白い特撮の使い方であった。
今は特撮作品と言ったら怪獣や怪人との戦いと言うイメージになっているが、こういう子供が主役の藤子・F・不二雄さんの「SF(すこしふしぎ)」的な作品があっても面白いと思う。(昔の東映不思議コメディーシリーズのような感じ)

 

ツムギの「ガヴァドンの事は話していないよ。ネットで呟いただけ」が令和時代の『一休さん』と言う感じで笑った。

 

笑いながら出てくるおばちゃん二人のチョップが妙に威力を感じる演出になっているのが印象に残った。

 

妙に聞き分けが良かったジュンがガヴァドンや友達を通して少しずつ子供らしくなっていくのが良かった。ジュンは友達より親と一緒にいる話が多かったので全体を通して見ると「大人に気を遣う子供」と言う印象であったが、こういう子供だけの話をもう少し増やしても良かったと思う。

 

今回の話は『初代マン』の「恐怖の宇宙線」を元にしているがゲストのアラタに大人への不満や反抗が垣間見えるので『帰マン』の「戦慄! マンション怪獣誕生」のテーマも加えられているように感じる。

 

スパイラルバレードをUFOキャッチャーのように使うブレーザー
この辺りの何でもアリ感は『T』のキングブレスレットを思い出す。

 

ガヴァドンと戦うウルトラマンに向かって子供達が「やめて」と叫ぶのは『初代マン』と同じだが、『初代マン』では初代マンが子供達とガヴァドンの事情を理解してガヴァドンを星座にしたのに対して今回はブレーザーやゲント隊長が子供達に語りかける場面が無いので、ブレーザーは子供達とガヴァドンの事情を理解しておらず、普通に戦って倒せなかったので宇宙に連れて行ったようにも見える。
ブレーザー』は基本的な設定は従来のウルトラシリーズと同じなのだが、これまでの作品だとウルトラマンは色々な事情を理解していて人間を超えた能力で難しい問題も解決する神に近い存在として描かれる事が多かったのに対して、ブレーザーはそういう人間を超えた神のような描かれ方はされていなくて「ただ身体が大きいだけの存在」と言う感じになっている。その結果、怪獣との戦いから敗走したり子供達に涙ながらにお願いされても気付かずにガヴァドンを痛め続けたりと他のウルトラマンでは難しいであろう行動をするところがある。ウルトラマンと言えば仮面ライダーに比べて優等生的なイメージがあるが、こういう方向でこれまでとは違ったキャラの描き方をしていくのは斬新さを感じた。