「99年目の竜神祭」
『ウルトラマン80』制作第35話
1980年12月3日放送(第35話)
脚本 若槻文三
監督 合月勇
特撮監督 高野宏一
三つ首怪獣ファイヤードラコ
身長 80m
体重 3万t
昔、やまなみ村一帯を荒らしまわっていた妖怪三つ首竜。
馬や牛を食べると今度は人間を襲った。村長が酒で酔い潰して首の付け根を切り裂くと竜玉が転げ落ちて三つの首はバラバラになって山奥に逃げ去った。その後、竜玉は神社に納められ、100年経つと竜玉が曇って三つ首竜が蘇ると言われている為、99年目に神社から出されて竜玉が曇らないよう磨かれる事となった。
三つ首竜のうち赤い竜は火吹き男、青い竜は怪力石頭男として大道芸人に紛れて神社の祭りに参加。残る白い竜は光男と言う少年に化けて既に神主の家に入り込んでいた。
光男が竜玉を神社から盗んだ事で3人は合体して三つ首竜として復活する。しかし、光男の竜が反逆し、赤と青の竜は80のサクシウム光線で倒され、残った光男は何も言わずにやまなみ村を去っていった。
『初代マン』の「怪彗星ツイフオン」にドラコと言う怪獣が登場しているが特に関係は無いようだ。
物語
今回の竜神祭で竜玉を磨く大役を担うのは神主に拾われた光男と言う孤児だった。
しかし、竜神祭が近付くにつれて光男は不可解な行動を取り始める。
光男の正体は三つ首竜の首の一つである白い竜だったのだ。
感想
「遠い遠い昔の事じゃ。この地方にはたくさんの妖怪が棲んでいてな……」。
神主を演じるのはなんと『まんが日本昔ばなし』の常田富士男さん。今回の話は妖怪譚になっていて、神主の声が雰囲気作りに大きく貢献している。
神主が「妖怪」と言っているようにファイヤードラコは怪獣と言うより妖怪と言える存在。
それなら『ティガ』の「よみがえる鬼神」に登場した宿那鬼のように漢字の名前にしてほしかった。
光男は「怪獣人間」と説明されているが素直に妖怪と言っても良かったと思う。でも、「妖怪人間」だと『妖怪人間ベム』になってしまうか?
こういう妖怪譚の話を見る度に思うが、怪獣と妖怪は根本的な部分は同じと言えるかもしれない。
光男は赤と青の竜に比べて人間に近い存在だった。
かなり昔から神主の家に入り込んで人間と接してきたので段々と人間になっていったのだろうか? それとも最初から光男は他の二人に比べて人間の部分が強かったので神社の中に入れたのだろうか?
後者の説を採ると、三つ首竜の誕生には人間が少なからず絡んでいそうな気がする。(例えば安倍晴明は人間と狐との間に生まれた子供と言う説がある)
今回登場した神主はイケダ隊員の叔父。
と言う事はイケダ隊員にも三つ首竜を倒した村長の血が流れていると言う事か?
何故か巫女さんとして登場するユリちゃん。
ノンちゃんとユリちゃんはそっくりさんと言う設定だったので、今回の巫女も実はそっくりさんで全国にはノンちゃんのそっくりさんは一体何人いるんだ?と言う展開も面白かったと思う。
猛は80に変身しようとポーズをとった時に三つ首竜に襲われてブライトスティックを落としてしまい、その後も三つ首竜の妨害で落ちているブライトスティックを取れなかった。
『セブン』以来久々の変身道具を落とす展開だった。懐かしい。
三つ首竜になった後も赤い竜は火を吹き、青い竜は石頭を武器とする。
キングギドラを思わせる三つ首竜のデザインはなかなかボリュームがあって良かった。
光男のおかげで三つ首竜は倒されて竜玉も戻った。
その前にも光男は火吹き男から子供を守っているが、結局、光男はやまなみ村には帰らず、一人去ってしまう。
あの村の人達なら光男の事を受け入れてくれそうだが、最後に人間ならざる者が人々の前から姿を消すのは昔話ではよくある展開。
「良かったな、光男君。今度こそ君は人間として生きていける事が出来るだろう。もう君を妨げる者はいない。勇気のある君の事だ。きっと生きていける。どこへ行っても、君の周囲には君を愛する人達が現れるはずだ。今日までのように……」。
猛の最後の台詞がせめてもの救いだ。
監督の合月勇さんはウルトラシリーズは今回と次回の「がんばれ! クワガタ越冬隊」のみの登板となっている。