「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」
『ウルトラマン80』制作第37話
1980年12月17日放送(第37話)
脚本 石堂淑朗
監督 外山徹
特撮監督 佐川和夫
宇宙忍者バルタン星人(5代目)
身長 ミクロ~50m
体重 0~1万5千t
政夫に変身してUGMに入ると、「80は実は悪い宇宙人ではないか」と語って猛とUGMを動揺させる。真の目的は80を捕らえてバルタン星の動物園に下等生物として入れる事。
巨大UFOの母船は引力光線で猛のシルバーガルを引き寄せ、ミサイルでスペースマミーを撃退した。
バルタン星人自身も姿を消したり瞬間移動を使ったりして80を困惑させるがウルトラアイで見破られる。ハサミから衝撃波やミサイルを撃つが、これも80のリバウンド光線で防がれた。最後は80に空中に放り投げられ、母船と衝突して爆死した。
人間大時は流暢な日本語を話すが巨大化後はお馴染みの「フォッフォッフォ」。
『ウルトラマン 怪獣大決戦』のバルタン星人の着ぐるみを改造している。
物語
セラ広報員の発案で全国の子供から選ばれたUGM豆記者がUGMを訪問する。
一方、選ばれなかった政夫の前にバルタン星人が現れる。
感想
サブタイトルのせいか、ふざけた話だと思われがちだが実は意外と大事な話。
全国にTV中継されているUGM豆記者のUGM訪問。マスコミを使った話は過去には無かった『80』独自の部分。
親しみやすいUGM隊員と厳しい訓練が映し出される。因みに射撃訓練の的に登場する怪獣はレッドキング、テレスドン、ゼットンと思われる。
UGM豆記者はスペースマミーに乗って宇宙にも連れて行ってもらえるので、選ばれなかった政夫の悔しさも分かるような気がする。ところで子供達はスペースマミーのGに耐えられるのかな?
UGM豆記者からの質問が的を射たもので面白い。
最初は「UGMの女性隊員は現在1人だが、これから先、増やす予定はあるのか?」と言う質問。オオヤマキャップは軽くあしらったが特別チームの女性隊員が1人だけなのは確かにおかしい。因みに平成以降のウルトラシリーズの特別チームは女性隊員は2人以上が殆どとなっている。
次は「80はUGMが負けそうになると出現するが、それはどうして?」と言う質問。これにはセラ広報員は答えられず、フジモリ隊員が「UGMが負けそうになるんじゃなくて、一時的に退却すると80がお手伝いに来てくれる」と答える。
しかし「それなら、どうして80は戦いの初めからいないのか?」と改めて質問されてしまう。イケダ隊員も同じ疑問を持っていたらしく、これにはイトウチーフが「UGMは人事で80ってのは天命なんだ」と答え、猛がその答えを補足する。
「人事を尽くして天命を待つ! UGMだって、さっき君達が見たとおり一生懸命なんだ。つまり人間としてやれるだけの事はやって後は運を天に任す。戦いと言うのは、いや、戦いだけではなく私達の生活全部がそうなのかもしれないね」。
やはり子供への説明は猛が一番上手い。
最後は「80はUGMが開発した秘密兵器(ロボット)なのでは?」と言う質問。これにはオオヤマキャップが「80はロボットではないと思う」と答える。
さり気なく猛が「どうしてそう思うのか?」と尋ねると、オオヤマキャップは「80は我々と口こそ聞かないが我々の考えを皆知っている。その知り具合があまりにも凄いので、80はね、普段はこのUGMの内部のどこかにひっそりと隠れているんじゃないかと疑う事さえあるくらいだ」と答えている。これはどう考えても80の正体を知っているうえでの発言だと思うのだが……。
この後、政夫に変身したバルタン星人がUGM基地にやって来て質問する。
「もしかすると、80は悪い宇宙人かもしれませんよ。もしかしたら地球人に上手く取り入って油断させているのかもしれません。我々地球人を安心させておくのが第一段階で、その次はUGMの解散要求とか地球を寄越せとか言ってくるかも……」。
80に限らず、ウルトラマンとコミュニケーションする機会が殆ど無く、ウルトラマンの真意を推測するしかない地球人にとって、この質問を否定するのは実は難しい。
政夫の異変に気付いた猛はわざとシルバーガルで政夫と二人きりになる。
正体を現したバルタン星人との戦いで猛は「人間としてギリギリまで努力する!」と言って、すぐに80に変身せず、猛としてギリギリまで努力している。
先程のUGM豆記者への答えが頭に残っていたのだろう。後のユリアン編、そして最終回の「あっ! キリンも象も氷になった!!」への布石と思われる。
バルタン星人は80を捕らえてバルタン星の動物園に下等生物として入れようとする。
過去にバルタン星人を倒したのは80ではないのだが、既にバルタン星人の怒りはウルトラマン全員に広がっているのだろう。わざわざ「下等生物として動物園に入れる」と言う辺り、それだけの屈辱を与えなければ怒りが収まらないと言う事か。
ところで「バルタン星」と言っているが、これは「科特隊宇宙へ」に登場したR惑星の事だろうか?(バルタン星人がR惑星に辿り着いてから既に15年近く経っているからなぁ)
今回の80とバルタン星人の戦闘シーンを見ていると、『初代マン』の時代に比べて特撮やアクションの技術が進化した事が分かる。
特にビル街上空を舞台にしたスペースマミーとバルタン星人の母船の戦いは巨大感が表現されていて見事。
因みに今回がスペースマミー最後の登場。もう少し活躍してほしかった……。
今回の話の不満点を挙げるとするなら政夫を登場させる必要性があまり無かった事だろう。バルタン星人がUGM豆記者に変身した方が色々と自然でスムーズだった。
又、全国から選ばれたUGM豆記者の全員と政夫が顔見知りなのも不自然だった。(つまり皆同じ町内と言う事になる。まさか町内の商店街のクジで選んだわけではないよね?)